2025年02月02日

リアル・ペイン 心の旅



「でも、なにも感じないよりはずっといい」


 去年の俺を悩ませ続けた胃も快調だった昨今――また壊れた。
 うわあああ、いつになったら通常運転に戻るんだ。完治はいつなんだ。もうすぐ再検査なんですけどどうにかなりませんかねぇええ!
 まぁ、治らないなら治らないならそれはそれで。
 ただ、ただだな、俺がゲームしてる時に邪魔だけはしてくれるな。こちとら飽き性で集中力なんかないのよ、トイレタイムなんか挟んだら続けられないのよ。


■あらすじ
 NYに住むユダヤ人のデヴィットと従兄弟のベンジーは亡くなった祖母の遺言によって数年ぶりに再会、そして祖母の住んでいた家を終着にホロコーストツアーに参加する。
 同じツアーに参加した人々との交流する中で周囲を盛大に振り回しつつも魅了していくベンジーに複雑な感情を抱きつつも彼を心配して一緒に旅をするデヴィットも日常で生きづらさを感じていて、妻もいて子どももいる順風満帆な生活の中でも抱える痛みがあった。


■感想
 うっし、ファーストデーだ映画に行こう!というわけではなく、なぜか気になっていた『リアル・ペイン 心の旅』を観に行って来ました。映画は公開初週の土日の動員が大事だって■■ちゃんが言ってた! このネタは使いたいけど、ドストレートに使ったら終わるので伏せ字にさせてくれ。

 さてはて、元々ロードムービーが好きくらいで何の前情報もなしに行ってきました。最近はこういう突撃が多いですね。でも、この映画上映前の番宣でGQuuuuuuXネタバレ映像を観せられるとは思わなんざ……。

 冒頭、空港のシーンで待ちぼうけになっているベンジーのシーンから始まる。ショパンの曲……すまん、明るくないのでショパンとしか分からないが、今作には多用されているので好きな方には分かると思われる。
 ショパンの曲とベンジーの空港シーンはなんでもないのに印象的で、その後に慌てたデヴィットが何度も携帯に留守電メッセージを残しつつなんとか空港に辿り着く。そして感動の再会シーンで誰もが違和感に気づく。
「なんで? まだ二時間も前なのに!」ごめん、口調までは覚えてないのでニュアンスで。

 つまり、ベンジーは何時間も前から空港にいる。
 デヴィットは早口の伝言に「寝坊」「遅刻」という言葉を使っていたが、約束の時間よりもだいぶ前――神経質な心配性なのだろう、と思う。空港の身体チェックでもその様子がよく分かるからね。

 二人の関係は従兄弟というだけでろくに説明されずに進む。こういう方がいいよね、現実でどこかで観てる誰かのために自己紹介はされない。
 自由奔放、言ってしまえば自分勝手なベンジーの一筋縄でいかない感を感じつつも、二人はホロコーストツアーに参加する。

 無知故にホロコーストってなんぞ?レベルだったのですが、なるほどアウシュビッツ関係なのか。どうしよ、primeに来たら『関心領域』観ようと思っていたのに。
 ユダヤ人の歴史を辿っていくツアーだ。僕たちにとっては修学旅行で戦争に関わる地に行くようなものだろう。僕は防空壕とか洞窟とかに過剰な拒否反応が出るのだが、なんでかな。

 ツアーを通して、てか初っ端からベンジーが鬱であることを明かされるがこれには驚いた。けれども、彼が繊細で周りのことをよく見ていて感情に寄り添えること。明るく楽しい男、かと思えば感情的になって躁鬱な様子が分かる。尻拭いに回るデヴィットの胃の痛さを思うとつらいが、それでもベンジーみたいな人間は愛されるんだ。いつの間にか友達がいっぱいで輪の中心にいる。
 それが、デヴィットにはキツい。子どものままのようなベンジーと違い、場所と空気を読んで大人の対応をできる、強迫性障害を抱えつつもなんとか暮らしているデヴィットには妬ましいんだ。

 これな、すごく分かる。
 てか、普通に考えてベンジーは面倒な奴だ。付き合いきれんし、付き合いたくない人種だって思うだろう。彼の繊細さや人格を知っていてもね。
 それにどんなに仲のいい友達、家族だってさ、他人の成功は妬ましいさ。それが自分にとって欲しいものであったならなおさら。
 けど、ベンジーはそんなものが欲しかったわけじゃない。たぶん、彼は自覚せずにやっている行動だから実感がない。自覚できない成功なんぞそこにはないんだよ。B'zで『ケムリの世界』って
曲があるんだけど、その歌詞をちょいと引用しよう。

 全部自分がやったんだよと叫べる おシゴトしましょう
 それがこの世で一番ステキ


 これがめちゃくちゃ僕は胸に来てましてね。
 昔、僕は映画のエンドロールに自分の名前が載ることを夢としていたことがあったんだけど、その夢は叶ったんだぜ。クラウドファンディングで金払ったからな。あの虚しさは酷かった。クラファンだから、よりお金を出した人の名前が大きく先に出る。DVDが送られてきたけど、二度と観れなかった。
 まぁ、光栄にもクレジット関係に載せてもらったのはその後にいくつかあるんだが、その時は自分にできる限りはやったから後悔はなかった。
 ……うん、この話はやめようか。

 現代人、生きる上でなにかしらのつらさを抱えているわけだが、そのつらさは本人にしか分からない。
 ベンジーの躁鬱さを言葉で現すのはすごく難しい。ホロコーストツアーで彼はガイドに「事実の羅列は冷たく感じる」と言うんだけど、それは「ここで何万人が死にました」というような結果を数字で言うのではなくもっと寄り添えというもの。その感情的爆発は大人になったらやらないものだと思っていた。冷静になれ、大人げないってね。デヴィットもこういうタイプで、裏でガイドに謝ってフォローする。
 ガイドも初めは反発するが、最後には「ご意見くださいと言って建設的な意見をくれたのは君が初めてだった」とベンジーとハグしてデヴィットには手を振るだけ。うーむ、人生は上手く行かないぜ。

 はっきり言って、僕はベンジーの意見には反対だ。
 戦争や過去の出来事に寄り添いすぎると受け止めきれない。直視できない。映画とか漫画とかフィルターを通さずには受け止められないんだ。
 だから、ベンジーのつらさもデヴィットのつらさにも寄り添えない。僕は自殺を試みたことがないし強迫性障害なんか持ってない。想像はできる、けど自分のこととして共感するのは耐えられない。受ける必要のない痛みまで抱えられないよ。

 この映画を観て、すごーくいろいろ考えた。
 何度も何度も書き直しても上手くまとまらない。
 二人の旅は歪なまま、だけど互いへの信頼だけは強固で終わりを迎える。旅は終わっても人生は続いていく。この後を考えたくないと言ったベンジーにデヴィットが道中で知ったベンジーが祖母にされて嬉しかったことをやった時は泣いてしまったよ。

 ひとりじゃないという言葉は好きじゃない。
 けど、お前のことを大切に想う人がいないなんて想ってくれるなよ。エンドロール後の喧騒は今も耳に残っている。

 ……わぁお、全くまとまってないね。
 でも、本当に感想は難しいんだ。面白いという言葉は相応しくないと思うし、けれどもベンジーと無賃乗車しているところは楽しかった。でも、いくら楽しいことがあったってつらいときはつらいんだ。この先の未来だって不安だよ。楽しいことばっかりじゃいられない。苦悩がなくなることはない。
 あー、本当に難しい。こんな当たり前のことが言いたいんじゃないんだ。でも、人生って続いてしまうし終わらせたいわけじゃない。

 この作品では平凡という言葉が行為的に使われていて、誰もがただ平穏に生きていたいだけだと思う。けど、それが一番難しいだよな。

 では、もう今回のお気に入りに行って〆よう。
 ツアー客たちとの夕食時、感情を露わにして席を立ったベンジーにデヴィットは彼をフォローする。けれども、話しているうちにどんどんベンジーに対する負の感情が抑えられなくなってしまいデヴィットは殺したくなる時もあったと口にしてから言う。


「でもあいつになりたい」


 デヴィットの仕事、ネット広告作りを「イカれたシステムだよ」って言い切るところも好きだがね。海外のツアーはすごいぜ、旅でこんな個人的な問題は暴露されても僕ならどうすれって言うんだよになってしまう。









リアル・ペイン 心の旅
劇場公開日 2025年1月31日
posted by SuZuhara at 00:04| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月26日

ReoNa「GG」発売記念リリースイベント 1/26 東京都・TAKE OFF 7




 ちょこちょこっとブログの更新をしてみましたが、この感じでなら今まで通り続けられそうかな?と思っていたりする。
 まあ、更新頻度に関してはどうにもならんのですが、少しずつどうしかしていきたいね。ゲームしたいゲームしたい、寝食忘れてゲームしたいと思い続けているけど、今までと違うこともしているので完全に今で通りじゃないんですがね。
 例えば……うん、最近は勧められるままによくドラマを観てるよ。


■感想
 ReoNaさん10thシングル「GG」のリリイベに行ってきた。相変わらずな渋谷でTAKE OFF 7さんでした。
 前回のライブでReoNaさん熱は沈静化していましたが、このシングルはライブ前に予約していたのでそのまま買って応募したところありがたくも当選していました。

 さて、ライブ前にちょっと寄り道。
 せっかく渋谷に行くのでSHIBUYA TSUTAYAでゴールデンカムイの墨絵グッズが売っているというので行ってみた。何気にここに行くのは初めて。以前にこれまたReoNaさんのリリイベで来た時に難波さんが「帰りにTSUTAYAでReoNaのTカード買ってね」「今改装中だよ!」みたいな会話してたのが感慨深い。

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 格好良すぎる。鯉登少尉だけ上手く撮れてなかった……。
 グッズ自体は欲しかったポストカードが売り切れだったので断念しました。あと全く関係ないのですが、呪術廻戦の伏黒のフィギュア、鵺が最高だった。

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 他の階はポケモンカード、初音ミクさんなどで盛り上がっていましたが、キャプテンアメリカのポップアップショップがあると知り地下へ。
 僕はキャップが好きでしてね。盾で戦うとか最高じゃんか。しかし、クリス・エヴァンスのキャップしか知らない。アヴェンジャーズがちゃんと履修できてないので、サムに変わったくらいしか知らないのだった。

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 そんなふんわり知識でもマーベル好きだよ、グッズとか見るの好きだよでワニロキハットを買う。しかも、ロキどころかソーも履修していない。いつか時間作ってきちんと観たいな。

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 ではライブ。もう何度か来ているのに道を間違えたのは内緒。
 実はちょっと入るまでに面倒くさいことに巻き込まれたりした。さすがにここでは書かないがね、イベント自体はいつにも増してスムーズに進んでさすがでした。

 セトリ
1 GG
2 Mosquito
3 By myself

 いつもなら収録曲全部歌うのだが「私たちの讃歌」はなかった。10分超えの曲だから仕方ないのかもしれないが、前回の「VITA -The Days-」はあったのでちょっと不満というか、物足りない感があった。
 ……でもなー、「私たちの讃歌」は長いからちょっと飽きちゃうので僕的には助かったのかもしれない。

「GG」は言わずもがなに格好いい。
「Mosquito」はここで初めて聴いたのだが、泣いている人が多数で驚いた。僕も曲に寄り添いたかったけど、それ以上に蚊という存在に寄り添って聴いてしまった。
 蚊は嫌いだしよく刺されるから憎んですらいるが、昔PS2の『蚊』というゲームをやりこんだ身としてはあのフォルムは進化の過程で必要なものであり、特にあの羽は――と馬鹿なことを考えてしまっていた。ダメなんだよな俺、こういう歌詞の物語の方が気になってしまう。別で考えればすごくいい曲なんですがね。

 恒例のトーク&抽選会。
 サイン入りポスターは当たりませんでしたが、難波さんがキレッキレでReoNaさんのツッコミが追いついてなかったw
 なんだったかな、口調はうろ覚えですが「東京の渋谷だけど、彼は難波くんです」「東京のみなさんはあったかい! いっぱい反応してくれる!」「みんなそんなに優しくしなくていいよ」「ノリノリで箱(抽選用)をどんどん上げていくから私が取れない」って怒ってたけど、本当にガンガンに上に上げてたw

「ReoNaさん、夏と冬どっちが好きですか?」「それ本当に今聞きたいと思ってる? テキトーすぎない?」笑ったw それ、話題に困ったときの質問だぞww
 ちなみにReoNaさんは夏派らしいです。「奄美大島で育ったから夏の方が遊べる。けど、一つだけ夏にできないことがあって……こんなこと言っちゃいけないんだろうけど、私、一年中ライダースなんだよね……」と言った瞬間、会場中があああってなってる時に難波さんが「ライダースって暑いんすか?」とか言うw どう見たって暑いよ!!
 ReoNaさんも言っていましたが、ReoNaさんライブにはReoNaさんの姿、髪型から服装までまんまってばかりに完コピな方がいらっしゃるのですが「暑いよね」と分かり合っているのにほっこりしました。
 あとは前日に行なわれたリスアニライブの話とかね、タイムリーに聞けたのは楽しかったです。

 これでひとまず僕のReoNaさんライブは最後かな。またリリイベには行きたい気もしますが、ちょっと環境が変わるので難しい。しばらくは様子見なので3月ライブには申し込んでいないのです。
 でも、ReoNaさんの「1対1」のライブスタイルはとても好きです。ただ完全なる1対1なんかにはもちろんなれないので、ライブにおける対人関係についてひどく考えさせられることが多かった。
 あとReoNaさんの「絶望系アニソンシンガー」という肩書き、未だに分からない曲も多い。なんでオムライスは捨てられたんや、みたいに。

 それでもまたライブでお歌を受け取りに行きたくなってしまう。けど、このままだと未練が残るからちゃんと書き記しておかないと。これで最後なんて寂しいよ。
 また「Believer」を聴きにライブに行きたいんだよなー。




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posted by SuZuhara at 22:09| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月25日

楽園の楽園



 人はどんなものにも物語(ストーリー)があると思い込む。
 きっとあなたもそのひとり。



 毎度毎度スマホゲームに悩んでいる。
 僕がやっているのは変わらずFGO、アークナイツ、ロスストの3つではあるが、この毎日のノルマに縛られるのが激しく苦痛である。いや、GEREOに比べればどれもデイリー面倒くさくないよ、最低限しかしないしね。じゃあなにがつらいのか、毎日続けることを強いられるのが、気分屋としては反発したくてたまらん。
 でも、ちょっとサボれば痛い目を見るのは自分だ。けど、ちょっとログインすれば1時間くらいは軽く溶ける。
 なんだかなー、向いてない感が激しいね。


■あらすじ
 大停電に感染症、大地震――立て続けに起きた世界の異常事態は全てとある人工知能『天軸』の暴走であることが分かり、五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の三人は人工知能の開発者であり行方不明となっている<先生>の足取り、『天軸』があると思われる場所を探す。
 辿り着いた先は巨大な樹のある『楽園』の名に相応しい場所で、そこに残された<先生>からのメッセージで三人は自分たちがこの場所に導かれた理由を知る。


■感想
 伊坂幸太郎さん作家生活25周年記念作品。
 昨今は情報収集の必要性をひしひしと感じつつも、それを強いられるのが嫌で全くアンテナ張ってなかったのですが、偶然にも発売前日に本書のことを知ったのでえっちゃら本屋に向かう。あと柴犬ぽんちゃんも買いに行きたかったし。
 ちょうど『ペッパーズゴースト』を読み終わって次に読む本を探していたのでタイムリーに読もう。『ガソリン生活』も気になってるけどこっちにしよう。そう思っていた僕は本屋で本書を手に取った瞬間、めちゃくちゃ悩むことになる。

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 付箋を貼りながらの読書は相変わらずなので気にしないでくれ。
 見てほしいのは本の厚みである。そう……結構薄い。
 本文の最終ページは97ページだった。100ページ満たない短い物語である。そして単行本である。

 ……めちゃくちゃ悩んだ。僕は基本的にケチであり、お金を使うのが苦手なのだ。すぐ終わってしまう話に1,500円が出せるか、後悔しないかと自問自答を繰り返しまくる。
 結果的には興味が勝った。知りたいという知識欲だ。なにより伊坂幸太郎の文章が好きだから買ってみようだ。

 結果は思いの外良かった。
 いや、やっぱり短いしコスパを考えるならどうしたって割に合わないと俺は叫ぶでしょう。もっと三瑚嬢と蝶八隗のことも掘り下げてほしいんですけど!って。
 けど、読み終わっての納得が強い。物語(ストーリー)に関しては特に参考文献にも手を出そうかと考えるほどには納得した。

 さて、内容だ。
 昨今の世界的ウィルスショックがまだ記憶に新しい中、この世界も同様に未曾有の危機とばかりに天変地異が頻繁に起こっていた。けれども、そんなものは個人にはどうしようもないのだが、五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の三人はその原因が人工知能『天軸』にあったことを知らされる。
 だからどうすれって?状態だが、世界の災いに関してはその人工知能自体は開発者の<先生>が止めたのだが、<先生>はその人工知能がどこにあるのかなどは明かさずに行方不明になってしまう。
 偶然が重なって先生の仕事部屋が分かり、そこに残された『楽園』と名づけられた一枚の水彩画がおそらく人工知能がある場所であろうと検討をつける。だが、その場所の特定はできていない。でも、輸送機の墜落事故によってその場所らしき位置が特定されたよ。けど、感染症の問題もありとてつもない免疫力を持っている者しか送り込めないよ、という流れで三人は選ばれたのである。

 五十九彦に関して背景が語られるが、残念ながらあとの二人はほぼ語られない。世界はまだ混乱している中なのでほぼ密入国レベルのミッションインポッシブルで楽園を目指すのだが、この三人はお分かりの通り西遊記がモデルで五十九彦が俊敏さと運動力、三瑚嬢がブレインとしてドローン封じの電磁波スティックとか装備してて道中の小難しい担当、人の三大欲求全振りの蝶八隗は力で解決をサポートしてくれる。

 この三人の旅は、世界を救うような大それたものなのに普通の日常会話で行なわれるから寄り添いやすい。楽しかった。もっと一緒にいたいと思わせる。
 特に楽園に、そして先生にも辿り着いた時まで思っていた。さしずめ先生は三蔵だろう? 僕的は三蔵ちゃんだ、沙悟浄が女性というのは初めてだな。

 ここから明かされる世界の真実はすごく伊坂さんらしく、しかもあり得ないとは思えない。むしろ、納得してしまった。この大樹は世界とも言えるだろうけど、我々が自分の意志で決めたことだってそうなるように誘導された結果であるかもしれない。虫ならば甘い蜜に誘われるが、人間は? ヒトならば物語(ストーリー)に誘われる。この辺りは三瑚嬢の説明が完璧だから是非呼んで欲しいね。

 僕は頭の良い人が好きだが、それは学力じゃなくて納得させてくれることなんだ。どんな嘘でもどんなに力技でもそれを納得させられたら満足する。
 けど、納得できなかった結果が物語(ストーリー)を作っちゃうんだろう。二次創作なんてまさにそれじゃないか? 楽しい。けど、あそこどうなったの? こんなことがあったんじゃねぇの? まさに自分はこれ。しかも、僕という人間は気になっちゃうと全てを投げ出すからどうしようもないね。

 うん、すごく面白かったし納得した。ケチでコスパを追求する自分に勝って良かった。ただ、やっぱりもっと詳しく彼ら個人のことも知りたいし、最後の結末には疑問を覚える。けど、この旅の終わり方としては他も思いつかない。世界は、ヒトはこうやって終わるのかな? まぁ、排除されるのは今までのどんな終末論よりもらしいと思ってしまうのだが。

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 冒頭の帯の文章と似ているのだが、僕の好きな三瑚嬢の言葉を引用して終わろう。楽園で先生が残したメッセージを聞いた三瑚嬢は自分たちが誘われてこの場にやって来たことを理解する。


「人間の大好きなもの? 何だよそれ」
「ほら」三瑚嬢は答えた。「物語(ストーリー)だよ」


 大樹の根がネットワークとか言われてみればそうというか、比喩としては使われ尽くしたことばかりなのにそこに物語が加わっただけでこんなに納得出来るとは思わなかったな。僕は好きだ。







楽園の楽園 - 伊坂幸太郎
楽園の楽園
伊坂幸太郎



posted by SuZuhara at 04:39| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月21日

劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師



「あれは私たちでどうにかできる相手じゃない」


 無事に祖父の葬儀が終了した。
 いやー、疲れた。久方ぶりすぎる親戚に社交力振り絞って接した後、寝込む人嫌いさよ。みんな良い人なので、問題は全て僕にあるんですがね。
 多くの人といると耐えられないのでそのまま映画に行くよ。今は難しいのより気軽に観れる系がいいよ、ということで話題の忍たま映画に行ってきました。


■あらすじ
 タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との決闘に向かった後、消息を絶ってしまった土井先生を探して山田先生や六年生たちが動いている時、不在となった一年は組の担任はタソガレドキ忍者の組頭雑渡昆奈門と尊奈門が行なうことに。
 一年は組は土井先生出張との言葉を信じていつもと違う授業に耐えていたが、きり丸が偶然にも土井先生が生死不明であることを知ってしまう。
 そんな中、ドクタケ忍者の軍師・天鬼に接敵した六年生たちはその顔が土井と瓜二つであること自分たちでは歯が立たない強さを知り、命からがら逃げ出すのだった。
 軍師・天鬼の存在、ドクタケ忍者の暗躍を知り、タソガレドキ忍者も動き出す中、忍術学園と一年は組は土井先生を取り戻すために行動する。


■感想
 上映前から面白そうには思っていたのですが、12月って僕的に相性が悪い。僕ほぼ休みないねん。
 だから観に行けないかなぁって思っていたんだが、忌引きを利用していく罰当たりである。すまんじいちゃん、知ってるだろうけど自分のペースを取り戻せんと俺は生きられないんや。……でも、うちの親族みんな遊びに行ってるがね。

 さて、僕の忍たま理解度。
 子どものころにアニメを観ていた。以上。

 そんな触りしか覚えていないレベルでも十分楽しめた。うん、行って良かった。

 始まりは果たし合いという場に向かうにもいつものように普通に出掛ける土井先生と出会う乱きりしんの3人。ここでのやりとりで僕のような今までご無沙汰だった人間に忍たまのノリを思い出させると同時に終盤の伏線なのは恐れ入った。やられたと思ったね。

 土井先生に果たし状を送った尊奈門を知らなかったのだが、まともな忍具を用いずにあしらうところから圧倒的に土井優勢。鳥の巣を守って崖から落ちることになるが、さすがは忍者と見事に対応してくれる。
 最後、自ら川へと飛び込んで終了……のはずだった。なんかよう分からん玉みたいのが流れてくるまでは。

 残されたのは、行方不明の土井と気を失っていた尊奈門。雑渡さんが状況を説明して忍術学園と共同して土井捜索に向かうというシリアスが展開される中、表の一年は組では雑渡さんと尊奈門コンビによる授業がギャグ的に展開される。
 僕はもう大人なので土井捜索関係をもっと展開して欲しかったが、振り返るとこの案配は素晴らしい。土井を貶す尊奈門に一年は組が団結するところからも土井が慕われていること、画面上下二分割で六年生陣の聞き込み模様とか、無駄なシーンがないから飽きない。じっくり観れる。
 この後の尊奈門先生と生徒の雑渡くんはどうしても一年は組視線に立ちがちな我々の気分をスカッとさせてくれるしね。

 僕は金にがめついと言われる子どもだったのできり丸が好きだった覚えがあるのだが、ちゃんとアルバイトこなしているからきり丸は勤勉だよなぁ。そんなアルバイト中、偶然に六年生の動きを知ってしまったきり丸は先生にして家族同然の土井の行方不明――しかも生死不明を知ってしまう。

 六年生陣も土井を信頼しつつも一切情報がないことから死亡も考慮して捜索を始める。この、死の可能性を口にしただけで揉めちゃうの良い。感情と現実は分けねばならぬ。
 だが、ドクタケ忍者が土井らしき存在を運んでいたという情報を経て、六年生陣はドクタケ領へと潜入する。ここの武器を現地調達しつつ乗り込むとこ、めっちゃワクワクしたな! 六年生陣って記憶上では滅多に出ないけど好きだったんだよな!って。

 潜入を敵の軍師・天鬼に察知されて交戦。
 6対1にも関わらずあしらわれてしまう六年生陣だが、その顔を隠す布を剥ぎ取り土井であると分かった途端、気が抜けた。先生、俺たちですよ。きり丸も待ってるよ、忍術学園に帰ろう。
 その言葉で天鬼は本気になる。忍術学園は敵だ。
 手加減がなくなった天鬼に煙幕を爆弾(すまんこの名称覚えてない)だと偽ることで距離を取り、なんとか逃げ出す。追いかけてきていたきり丸も確保して忍術学園へと戻る。

 ここからドクタケの動きについて。
 ちょっと領地の名前を完全に覚えていないのだが、ドクタケが他の領地に攻め込むけから手出ししないでね的な約束をチャミダレアミタケと結び、チャミダレアミタケはタソガレドキを攻める。けど、ドクタケのそれは嘘でタソガレドキとチャミダレアミタケを争わせてどっちも奪って領地拡大を目指すという策を練っていた。え、あのドクタケがこんな賢い策を? これが軍師の力なのか!?

 あ、ちなみに記憶を失っている土井先生こと天鬼は八方斎の漫画と音楽で忍術学園は敵でドクタケ正義と洗脳されている。踊り出した時はドクタケのお気楽さをらしく感じたが、ちょっとこの八方斎はなんか変だ。俺の知っている八方斎じゃない。
 ここは終盤で分かったんだが、土井先生が川でぶつかった玉こと八方斎ヘッドで2人とも頭を打っている。土井は記憶を失い、八方斎も頭が切れるように――らしくない忍者的思考をするようになっている。いつもよりまつげが長くなってるとか、終盤の描写なしに気づいた人すごくない?

 山田先生と天鬼を探っていた息子の利吉と卒業生2人。六年生、五年生を動員して土井奪還作戦が始まる。その極秘作戦を一人知ってしまったをきり丸は1人で向かおうとするが、一年は組連中がきり丸の異変に気づいてみんなで行くことに。
 大人組が欺瞞だと切り捨てた城には組が行っちゃうのいいよね。そこで大黄奈栗野木下と会えたのめっちゃ嬉しかったね! この人が好きでな! 「お〜きなくりの〜きのしたさ〜ん」と謳うと「穴太だ〜わたし〜」と答えながら大事なこと全部話してくれるから間違いに気づくは組だけど、逃げ切るのは難しく捕まってしまう。

 大人組は3つの拠点のどれに土井がいるか探っていたところ、は組がある拠点に運ばれる。木下さんはそれでバレるとか考えない人やでw 六年中心に潜入、は組救出と攪乱が行なわれ、戦闘は私がするな山田先生は格好良すぎる。あれ、山田先生今回女装してないやん! そんなこともあるんか。

 一方、タソガレドキ忍者としては天鬼が邪魔なので排除へ。
 土井の元へ向かう雑渡の前に立ち塞がる利吉と卒業生2人だが、雑渡さん強すぎぃ……。しかも手加減までしてるよこれ。

 捕まったは組は乱きりしんの3人だけ逃げ出して土井探しだが、しんべヱの腹ぺこと嗅覚でまっすぐ八方斎の元へ行き、悪人ムーブ八方斎は天鬼に3人を斬らせることに。だって、そうしたら記憶が戻っても忍術学園には戻れないだろう? ……そういう考え、嫌いじゃないぜ。

 ドクタケは六年生にいいように攪乱されていたが軍師・天鬼の一言で形勢が変わっていた。しんべヱのよだれを辿って土井の元へ来る山田先生、武器使い切りながらも辿り着く六年生。

 天鬼は目の前に連れてこられた乱きりしんを斬れと言われ戸惑う。いつもの調子で抜けた会話をすると反射的にツッコんでしまう天鬼。そう映画冒頭のやりとりだ。戻れ戻れ、思い出せ。
 きり丸だけは自分の境遇や土井との日々を思い出し、いつも金一番の自分を怒る土井を刺激しつつ言うんだ。先生、帰ろうって。

 雑渡さんが明らか毒塗り手裏剣を投げようとして利吉が泊めようとする中、天鬼は斬った。乱きりしんを縛る縄を。
 ついでにいつもの八方斎をひっくり返すのだが、頭を支える部下は全員捕まっていたために頭を打って八方斎も元に戻ってくれる。

 いやぁ、良かった。
 記憶が戻って大団円。天鬼として戦物資は貧民に配ることになり、あの時代の無残さも描きながら忍術学園の絆に相応しい物語でした。雑渡さんもちゃっかり領地奪ってるしね。原作だともっと領地関係とか詳しく描かれていると聞くから読んでみようかな。
 90分足らない上映時間も本当に無駄がない。欲を言えば、忍術学園陣はもうちょっと観たかった。女性の先生とか学園長も出張って欲しかった。けど六年生陣の戦いが見れたのは良かった。僕は山田先生と土井の関係をほとんど覚えていないのだが、天鬼の正体を知ろうと揺さぶりをかけてくる利吉に山田先生が「知っていたらお前は平然としてない」みたいなことを行っていたり、最後に利吉は土井を「お兄ちゃん」みたいに呼んでいたから家族同然なんだろうな。困るなぁ、知りたくなってしまう。パンフ買おうかと思ったら案の定売り切れだったよ。

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 天鬼に斬られそうになっている中、きり丸は土井に注意された自分の悪癖である金に対する執着について高らかに言う。手裏剣は勿体なくて投げられませんとか。その最後に言った言葉はあまりにらしくて笑っちまうが、土井としては心配でたまらなくなっしまうのだろうな。


「地獄の沙汰も銭次第。だけど、払ってたまるか六文銭!」


 祖父の葬儀でも懐に六文銭を入れてな、この重要性を知っているにも関わらず僕は「これしかないのに使いたくない」とか思っていたのでタイムリーすぎたのだったw






小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師 - 阪口和久, 尼子騒兵衛
小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師
尼子騒兵衛 阪口和久
posted by SuZuhara at 11:34| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月15日

ペッパーズゴースト



「先行上映だ。本人が翌日リアルに体験することを俺は、俺たちは先行上映で少し観させてもらう」


 今年の私はなんと――FGOの福袋を我慢することに成功しました!
 いや、だってファンタズムーンの時に課金しちゃったし……ちょっと様子を見たかったのだ。あとはくのんLv.120の道が長くてな。あとちょっとコインがあれば状態なのでさっさと絆をあげねばな。


■あらすじ
 中学教師の壇は飛沫感染によってその人が未来に見る光景を先行して見ることができる。父も持っていたこの先行上映の力でささやかな手助けをしていた壇だが、生徒の親をきっかけにある事件の被害者家族が集まるサークルと関係を持つことになる。そして、事件へと巻き込まれていくのだが、そこで生徒の書いた小説の中のキャラクター・ネコジゴハンター、「猫を地獄に送る会」として猫の虐待動画を煽り楽しんだ者たちを制裁する二人組と実際の世界で出会うことになる。


■感想
 今年はちょこちょこ小説も読んでいきたい、と手に取ったのは伊坂幸太郎さんのペッパーズゴースト。たしか発売日近辺では買っていたけど、本を持って動くことができない時期だったので年明けから読み始めた、はず。
 さすが伊坂さんと言うべきか、読み始めると早いスラスラ読める。独特の視点切り替えが相変わらず良き案配で、基本的に読書は移動中に行なうのですがちらほら読み進めていましたな。

 さて、ざっくり概要。
 今回の起点となるのは3人。中学教師・壇先生、ネコジゴハンター・ロシアンブル、被害者サークルの一人・成瀬彪子。
 基本は壇先生がメインだが、特殊なネコジゴハンターについてを簡単に。

 過去に「猫を地獄に送る会」として虐待動画がアップされていた。動画をアップした者だけでなくその残虐性を煽った無責任な者たちにやり返すのが猫を地獄に送る会ハンター、略してネコジゴハンター。ロシアンブルとアメショーと猫の種類を名乗る2人組の男たちなのだが、この2人は本当に良いキャラでね。核実験などを心配する超絶心配性のロシアンブルとなんに対しても楽観主義のアメショー。
 猫を愛してネコジゴには容赦しない2人は生徒が書いた小説のキャラクターだ。猫虐待云々で壇は少し辟易としているが、『魔女魔少魔法魔』でも猫殺し趣味の子がいたようにいたぶりやすいんだろうか猫。あんなに強いのにな。

 生徒の小説を読みながら、他の生徒・里見大地が未来に見る光景――先行上映を見て彼が事故に巻き込まれることを知ってしまう。未来を知ったところで事故を未然に防ぐことなどできないと知っている壇先生はせめて生徒が巻き込まれないように占い師の予言を語って忠告する。そして、それを聞き入れた大地は事故を回避するのだが、それを疑問に思ったのが大地の父親だった。
 内閣情報調査室に勤める大地の父・里見八賢は壇が事故を起こしたのではないかと疑うが、先行上映を駆使してその誤解を解こうと秘密を教える。
 それを検証するために再び会うはずが、やって来たのはカフェ・タイヤモンド事件の被害者遺族である野口と成川の2人。なんと里見は壇のことを言い残して姿を消してしまったとのことだが、様子がおかしい。名前が壇ではなく段田だったり、ちょっとおかしい。里見が壇の素性を隠している?と探り探り付き合うことに。

 さて、カフェ・タイヤモンド事件とは簡単に行ってしまうとレストランに猟銃を持った男どもが立てこもり、客や従業員を巻き込んで死んだ事件。被害者遺族曰く、突入しようとしていた警察をテレビのコメンテーター・マイク育馬がおっかけ報道をさせ中継したことから犯人に動きが知られて自爆となったというもの。
 彼らはマイク育馬を恨んでいる。さてどうなるのか。

 壇は先行上映で里見が監禁されていることを知る。
 先生が大変な時でも小説の中ではネコジゴハンターが猫の復讐をしている。
 ひょんなことから本名がバレてしまった壇はあっさり拉致られて監禁される。あいては野口だった。

 拉致監禁で精神的に追い詰められた壇を助けることになったのは、ロシアンブルとアメショーだった。
 うん、2人は小説のキャラクターではなく実在の人物。生徒の父親がネコジゴハンターに懲らしめられているところを目撃した生徒が小説にかいただけ。本物だった。

 ここでもロシアンブルとアメショーは相変わらずで、そこに壇先生が入っていく。被害者サークルが起こす事件に焦点が移っていくわけですが、別々だった視点が最後には一つのパーティになるのがすごく良かった。野口を止めるという目的のために壇、ロシアンブルとアメショー、成川が組んで動くことになるのだが、壇先生だけちょっと損な役回り。相手に舐めてもらった切手を舐める間接キスで先行上映ってw

 このサークル、いや野口たちが起こしたテロはなんとも言えないよな。結局現在は無責任な発言が発端となる時代だ。それがテレビでもネットでも、炎上したらもうどうにも手につけられない。それを上等と狙う炎上商法なんかもあるわけで倫理観が欠けてしまっているのかもしれない。作中で、生真面目に生きてきても奪われるだけみたいな発言があるが、それならいっそと思っちまうことだってあるよなぁ。家族や恋人を失ったなら尚更だ。
 そうやって誰もが一生懸命にテロ、大惨事を防ごうとする中でロシアンブル、もしくはアメショーの行動には笑ってしまった。

 だって、初めから彼らにとってはテロより猫の復讐だ。そんでもって贔屓の球団には勝って欲しい。相手がノリにノった新記録達成間際のバッターならば尚更だ。
 全くもって彼ららしい。そう思えるほどには読後に愛着持ってしまう物語でした。

 え、ニーチェのこと? 僕も学生時代に入門書を囓った程度だから触れられないんだぜ。

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 壇がかつて救えなかった生徒に負い目を抱いていることを知ったロシアンブルの言葉。起こりもしないようなことをなんでもかんでも心配しているロシアンブルが壇に「生徒は死んでいるのか?」と問い、生きていることを知った後に言う。


「だったら、会いに行くなり、何なり方法はあるだろうが」そんなつまらないことで悩んでいること自体、ロシアンブルには羨ましかった。隣国が開発する生物化学兵器が、突如襲ってくる精巣捻転症などの恐怖に比べたら、大した悩みでもないだろうに、と。まだやれることがいくらでもある。


「もうおしまいだ」が口癖のロシアンブルだが、彼は基準がちょっと違うだけで、普通は難しいと思われることをさも簡単のように言ってくれる。
 そういや、僕が小雨であろうとも傘を差す主義なのは幼少期に読んだ酸性雨の怖さからだったと思う。いや、だってハゲるって書いてあったもんw






ペッパーズ・ゴースト (朝日文庫) - 伊坂 幸太郎
ペッパーズ・ゴースト (朝日文庫)
伊坂 幸太郎



posted by SuZuhara at 14:59| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする