2025年02月26日

きまぐれロボット



 博士、次はどんな夢を見せてくれますか?


 ヘッドホンが欲しいと思いつつも、一番よく使うのはネックスピーカーだったりする。
 基本的に耳を塞がれるのが好きでなく、耳的にイヤホンが合わないので耳掛け式を使うが長距離を移動する時にしかこれは使わない。あとたまに走る時とか。
 家にいる時、パソコンの前にいればそのままスピーカーから。料理や掃除をするならネックスピーカー。ゲーム用のもコレにしたいが、そんなにたくさんあってもしゃーないのだよなぐぬぬ。


■感想
DSC_2195.jpg
 確か夏辺りに本屋でスペシャルカバーってのに惹かれて買ってみた。星新一作品は夏の特別カバーを買うようにしているのだが、これは初めて見た。
 わりと薄い本なのでちょっとした小旅行、ライブに行く時とかに持って行く予定だったんだけど、そんな用事はなかった。そもそも慣れないことをする時の移動時間は睡眠時間だった。

 さて、星新一さんのショートショートについての説明はもう入らないだろう。分からなかったらちょっと過去を遡ってくれ。
 今回の『きまぐれロボット』の表題から分かるようにロボットに関連した作品が多い。そのせいかオチが似ているようなものが多いのだけど、エム博士やアール氏など架空の存在でありながらお馴染みの存在の話ばかりなのですんなり読める。

 特に好きだったのは『ネコ』。
 ネコを大切に、それこそネコに尽くすエス氏とネコが暮らしている家にカード星人が現われる。人間は気を失ってしまうが、テレパシーでカード星人がネコと話し出す。星々の調査をしている彼らはネコの動じない様子に支配階級であると認識して言う。人間がドレイの地位を不満に感じて反逆を考えないか、と。
 その時のネコの返答が、かなり早いがここで今回のお気に入り。


「そんなこと、心配したこともないわ。そこまでの知恵はない生物よ」


 まったくもってその通りだなw
 我々はお犬様やお猫様その他諸々に反逆など考えないほど骨抜きにされている。星新一さんの時代から我々の奴隷根性は染みついたものだったのかと笑ってしまった。

 あとは面白かったが、特筆するような作品ではなかったと思う。巻末にある谷川俊太郎さんの解説曰く、この作品は子どものためにまとめられた本のようで、悪く言えばちょっとありきたりだ。同じような展開だから先が想像できてしまうものもあった。けれども読みやすさと谷川俊太郎さんの解説がめちゃくちゃ興味深いので一読の価値はあると思われる。カドカワさんこれもシリーズ化するなら買いたいなぁ。




きまぐれロボット (角川文庫) - 星 新一
きまぐれロボット (角川文庫) - 星 新一
2006/1/25



ラベル:星新一
posted by SuZuhara at 12:00| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月25日

週末やらかし飯 1〜2巻



「またしんどくなったら 一緒にごはんやらかしましょう」


 そういや書いていなかったのだが、今年に入って僕は陽を浴びる生活をしている。
 健康的? いやいや違うさ。今まで僕の部屋は窓の先が森だった。鬱蒼としていて夜は怖いくらいの森だった。それが全て伐採された途端、ダイレクトアタックしてくる陽。こんなに明るいのか、日中は電気いらんのかと感動する反面で夏が怖すぎて今から震えている。2年くらいかけて隣には高層マンション建つらしいけど、さてはてどうなるんかなー。


■あらすじ
 社長秘書の久留米空子は日頃完璧に仕事をする反動、ストレス発散なども込めて週末にはやらかす。それは食べきれないほどの大量の料理を作って好きなだけ食べるというもの。
 そういう風に自分を甘やかして社会生活を生きる空子さんの週末やらかし飯。


■感想
DSC_2195.JPG
 珍しく本で買っているのと、1巻購入時についてきたイラストペーパー。チキンラーメンでかすぎる。
 あと腹痛で引きこもっている僕に家族がお土産としてやって来てくれたMOTHER2ガチャのネス。わかりみがすごいw

 さて、僕は元々食事ものの漫画や本が好きなんだけど、その話は何度かしたと思うのでさらっと。この作品はネットで更新される度に読んではいるのだけど、空子さんの生活が好きでな、ついつい何度も読みたくなってしまうんだ。

 まず第1話の段階で仕事に疲れたのと雨に降られる不運に見舞われた空子さんがやらかしたのは、チキンラーメン5袋全部入れw
 ちゃんと野菜も取る空子さんだが、基本疲れているのでカット野菜とか食費はかかっても必要以上に手間をかけないのが好きなんだ。ま、真似はできんけどw

 大量に作るだけあって出来上がりは圧巻ですね。空子さんガツガツ食うけど、さすがに食べきれない。けど、ちゃんと残った後のアレンジレシピも掲載されているので面白い。そういう残ったご飯が秘書の完璧空子さんの弁当とかになっているのも楽しいんだよな。

 社長とか後輩とかお隣の小説家さんとか、登場人物はちょこちょこいるけれども基本は空子さんがひとりでやらかす日々。自炊に拘るかと思えばレトルト三昧したりと、分かるめっちゃ分かる。2巻でデパ地下で買い漁り、翌日のレシートで現実に戻るのなんか本気で分かるよ! 

 そんな感じで空子さんのやらかしと飯を楽しく摂取できる漫画ですが、空子さんのギア好きも分かるんだよなー。セカンド冷蔵庫を買っちゃうとか、まだコミックスには載ってないけどワイングラススキーだけど壊しちゃうから100均とかw

 ちょい早いがタイミングがいいのでここらで今回のお気に入りへ。
 2巻にて、ホットサンドメーカーが欲しい空子さんに職場のメンツが「あれなくても作れますよ」と言う。違うよ、お前はなにも分かっていない問題はそこじゃねぇ。そんな空子さんの心の叫び。


「ホットサンドメーカーでホットサンド作ってる自分」に酔いてぇのよ!!


 ここめっちゃ分かるw いや、僕もホットサンドメーカーを持っているけど、そんなに作らねぇよ。むしろ使わないで作ることだってあるよ。だって洗うのめんどいもんw
 けどね、そうじゃねぇのよ。ギアは使ってなんぼでもそれを使う自分に酔うもんなんだ。俺がどれだけキャンプギア持ってると思ってるのか絶対にキャンプなんか行かないのに。

 あと空子さんと母&姉と行くコストコの話とか、お隣さんとサイゼ豪遊、後輩のやけ食いコンビニ飯とか、あまりに近い題材なのがいいんですよ。
 いつか空子さんが作ってたお好み焼き、ピーマンたまねぎにんじん入りとかはやってみたいんだけど、今お好み焼き粉クソ高いんだよね。物価高死ぬ。本もどんどん高くなっていくから生きにくい世の中だぜ……。




週末やらかし飯(1) (コミックDAYSコミックス) - 小村あゆみ
週末やらかし飯(1) (コミックDAYSコミックス) - 小村あゆみ
2024/9/9

週末やらかし飯(2) (コミックDAYSコミックス) - 小村あゆみ
週末やらかし飯(2) (コミックDAYSコミックス) - 小村あゆみ
2024/12/9


posted by SuZuhara at 06:00| Comment(0) | 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月24日

ドライブ・イン・マンハッタン



 真夜中のタクシー 向かうのは<愛とは何か>の答え


 ガンダムの映画、ジークアクス先行に行こう行こうと思っていたら放送日が決まって出鼻をくじかれる。い、いや、お腹いたくならなかったら行くつもりだったんだけど、毎回痛くなってな……あんま縁がないんだろうな。
 まぁ、今年はだいぶ映画に行っているし、来月はミッキー17は観たい。でも、公開日決まって以来絶対に行くと思っていたウィキッド熱はなくなっているのでムビチケとか買えんのよ俺。


■あらすじ
 ジョン・F・ケネディ空港から一人の女性がタクシーに乗り込む。夜の街を疲れた様子の女性に壮年のタクシー運転手はジョークを交えながら会話を交わしていく。
 だが、当たり障りのない会話を交わしていたはずが、女性が抱える悩みを運転手は言い当ててきて、女性にとっては運転手が話す男の本音はつらく心に痛いものだった。
 途中、事故に巻き込まれたせいでタクシーの中にいる時間が長くなる中、二人はもう二度と会うことのない関係だからとお互いの本音を、女性は誰にも明かせなかった秘密を打ち明けていく。


■感想
DSC_2191.jpg
 フライヤーと来場者特典ポストカード。

 僕は会話劇というのがものすごく好きで、会話のテンポがよい作品とかに出会っちゃうと監督と脚本家の部分を絶対にチェックする。あと役者さんにも。僕という人間は普段ここまではしない。興味がない。
 今放映しているドラマならば『ホットスポット』とか。もともと市川実日子さんが好きで、俺の好きな『マザーウォーター』にも出てるしな。そんで見始めたんだけど、これはキャスティングが上手すぎるよな。
 あとオススメドラマは『俺の話は長い』。生田斗真さんと小池栄子さんの殴り合いのような会話がテンポ最高である。僕はこのドラマのせいで清原果耶さんをはるみんと認識している。

 さてさて、話が逸れまくったが会話劇は――さっきから会話撃とか会話撃破とか変換してくれる俺のパソコンの素晴らしさよw
 言いたいことは会話劇は最高だ、ということ。
 この映画に興味を持ったのもタクシー内というワンシチュエーションで行なわれるほぼ二人劇というのがどうしても観たかった。実のところこの映画を観るために2時間かけて上映館にいくつもりだったんだけど、近所の映画館でやるって聞いた時はガッツポーズものでしたね!

 だが、思った以上に男と女で気軽に観に行くことはオススメしない。性的な会話が苦手な方はちょっと待てなので注意。

 はっきり言って、この話はあまりに現実的で、きっと世界にはありふれている。
 空港からタクシーに乗り込んだ女性・ダコダ・ジョンソンに運転手・ショーン・ペン。ずっと携帯とにらめっこすることのない女性に好感を示した運転手がちょこちょこ話しかけてくるんだけど、その会話が女性にとって不快ではなかったのか続けていく。
 むしろ、たぶん不快だったのは恋人からのメッセージ。

 もうついた?
 会いたい。
 黄味が欲しい。
 →君が

 みたいな頭足りない思春期真っ只中としか思えないメッセージはヒートアップして、臨戦態勢のブツ写真とか送ってくる。もちろんモザイクされているが、たった数分の会話でも女性の知的さ、聡明さを感じるのだからこういうのは好きじゃないはず。実際、疲れたから今日はやめよう。渋滞、遅れている。とか、今日は会いたくないメッセージを送っているほど。

 そんな中、運転手に自分の仕草から性格を言い当てられる。それで自分のことをちょこちょこ話してしまうんだけど、この後で「君の相手は既婚者」とこれも言い当てられてしまうんだ。

 これ、めちゃくちゃ驚いた。
 しかも、あのメッセージ男、二人の子持ちだとよ。
 え、こんな頭足りないメッセージを送っている男が?
 会話中も写真送って、下着見せてとか送ってくるような男がだと結婚して家庭があるだとぅ? ――世も末だな。

「愛しているなんて言うなよ」

 その言葉を受けた女性が痛かった。運転手は事実を続ける。そんなものは君に求めていない。

 運転手は数々の浮気を繰り返し二度も結婚を経験したと豪語するだけあって正しい。家庭とか愛とかは妻とするもので、浮気相手に求めるものって性欲を満たすことだ。若い女を囲うのであれば自己顕示欲としてかな?
 つまり、人並みの幸せってヤツはあなたから欲しいものじゃない。だから愛しているなんて言葉は迷惑なんだ。

 ここから男の話をする女性は僕には痛々しかった。
 妻や子どもの写真とか見せてもらっている、男の大事なものを知らされていることから「よほど信頼されているんだな。普通(浮気相手には)見せない」と運転手が言うのがフォローに聞こえてしまうほど。
 そんでさ、うるさく性的なメッセージ送ってきていた男が子どもが起きたと引き下がろうとすると、女性もエロいこと言い出して男を惹きつけるんだ。写真送って、で撮ってあった写真を送るほど。

 ……あ、ああ、なんでそんなことするんだ。
 会話だけでも彼女は知的で魅力的だ。父親に愛されていなかった過去から年上男をダディと呼んで関係を結ぶとか、そんな安く見積もってほしくない。

 正直、これだけならまだよかった。
 運転手と奥さんの話とか、本当に奥さんが好きだったんだなって分かって好きなんだけど、彼女が悲惨すぎてな。

 ドライブ中、二人は張り合うように話していたんだが、最後に女性がポツリと話す。
 今回の離れていた姉に会いに旅行に行っていたんだが、その時に彼女は妊娠していた。旅行中、ずっと止まらない血が流れていた。生理だと嘘をついた。病院には行かなかった。彼女には子どもが出来ていて、見殺しにしていたんだ。

 ここの彼女の心境を、分かるとか言えない。
 でも、どうしようもない感がすごすぎる。子どもを産むという選択ができるはずがないからだ。

 ここでの一夜限りの二人の会話ではなんの解決もしない。
 けどさ、きっと聴いてもらえるっていうのはかなりありがたいものなんだよ。
 本当はパンフを買うつもりだったんだけど、かなり内容が怖いから買わなかったんだ。でもやっぱ買いに行こうかな……。

 僕は会話劇というとどうしてもテンポの良さ、耳心地の良さを期待してしまうのですが、今作はそういうものではなく100分の中で中弛みもせずに濃厚に背景が分かる会話だった。
 日本だったから絶対にできない会話もニューヨークならありえると思えるし、だからこそ曝け出せたものがある。この数時間のドライブで彼女の人生が少しでも良い方向に向かうことを願う。
 でも、その男は絶対にやめたほうがいいよ!!

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 感想では女性の方をメインにして書きましたが、運転手の妻に関する話が終始茶化しながらも愛に溢れてて良かった。頭が弱い、男にとって都合がいいエロさなんて言いつつも彼女との暮らしを本当に愛していたんだと感じたのかここ。


「何かが起きる時、いつも彼女は笑うんだ」


 いたずらを仕掛けたりすると怒るとかでなく笑う。彼女が笑うから男は何度もいたずらしたし、逆に仕掛けられると同じように笑ってしまった。
 何度も浮気をして結婚も二度していたけど、たぶん彼の幸せはここにあったんだろうな。





ドライブ・イン・マンハッタン
公開日 2025年2月14日
配給  東京テアトル




posted by SuZuhara at 10:14| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月23日

野生の島のロズ



 プログラムを超えて 生きる


 何度、いったい何度繰り返したことだろうか。
 繰り返すこと二度三度では足らず、何度も何度も石を全部突っ込んで挑むプロテアリベンジにまたも失敗しました……っ。

Screenshot_20250222-213825.png
 でも無事に白野をLv.120にできた。これで俺のバレンタインは完。なかった、バレンタインなんてなかったんだ……。


■あらすじ
 事故により無人島で起動することになった最新型アシストロボット・ロッザム7134は島に生きる動物たちの力になろうと動き続けるが、自然の前には学習しながらも空回りばかり。
 巣を潰してしまったことから残った雁の卵を狐に狙われつつも無事に孵化させたことでロボットとしての目的達成、かと思われたが雛鳥・キラリにママと認識されてロボットはロズと名乗り狐のチャッカリとともに巣立ちまで育てることになる。
 手探りの子育ては苦難の連続だったが無事に巣立ちを見守るのだが、島は冬眠では越せないほどの大寒波に襲われる。島の嫌われ者であったロズとチャッカリは動物たちを救うために行動する。


■感想
 本当はだいぶ前に観てたんだけど、行ってきたよ『野生の島のロズ』。
 ドリームワークスが好きとかロズに興味があったとかではなく、早くも今年イチ映画とかいろんなところで言われていたので映画館で観てみるか程度の気持ちで行った。それ以上はまったく前情報なしな状態でどうしても字幕で観たかった。芸能人声優だとどうしても芸能人の顔を思い浮かべてしまうので苦手で字幕がなくなる前に行こう、である。

 さすがの映像美であり、野生の島の美しさを観るだけでも行った価値はあった。
 この物語は3部展開になっていて、ロズとキラリとチャッカリの疑似家族生活と巣立ち、ロズとチャッカリによる島の動物たちの避難から島の仲間へ、ロズを取り返そうとするロボットと島の住民たちの戦い。

 赤ちゃんキラリのかわいさはハンパないってレベルであり、まだまだロボットだったロズでも勝てない。効率を殺すことになっても家づくり(キラリの手助けはなんの意味もない)を手伝ってもらうくらいw
 この段階ではチャッカリはロボット騙して甘い汁を吸うタイプだけど、キラリが大きくなる時には立派な家族だった。ここに至る前はコミカルに描かれるのでロズがキラリの親を殺した問題が出た時はそこを認識してなかったくらいコミカルに進む。特にオッポサムファミリーがよいね! 一瞬でシンプソンズを思い出したよw

 キラリの成長がなぁ、実はなによりもショックだった。
 ロズのロボット特有の話し方をする成長後キラリの登場シーンを観た時は、ああああ、って頭を抱えたくなったもんだ。嫌われるこれは嫌われる。
 いや、雁だって分かってたけど赤ちゃんキラリ可愛いんだもん。なにこれこんな現実見たくない。
 ロズに育てられた変な雁でしかないキラリは同じ雁に仲間と思われないんだけど、上記に書いたロズが親を殺した問題でギスギスしつつも一生懸命練習してキラリは他の雁たちとともに渡り鳥として飛んでいく。

 感動のシーンだが、僕のようなひねくれ者にはあまり響かない。なんでだろうな? ああ、ここで泣かせたいのだろうなくらいにしか思ってなかったと思う。僕は終始ロズとキラリの親子愛よりもチャッカリの方が気になっていた。

 キラリがいなくなり、ロズとチャッカリの親代わりは一緒にいる必要なくなった。チャッカリは一緒にいたい感を出していたが、自分に芽生えた感情、愛について考え――ここは混乱かな? ロボットとしての役目を終えたロズは信号を出して帰るべきなんだけどそれができず、島を襲う大寒波の中で家に戻ってくる。
 すると、自分の巣に戻ったはずのチャッカリもいて、寒すぎて島の動物たちもこのままじゃ死ぬことを知る。ロズの家は火が使えるからね。文明最強である。
 ロズに促されてチャッカリはともに島の動物たちを家に移していくことに。みんな冬眠してるんだけど、雪の中で死んでいたりとつらい現実を乗り越えて全部の動物を収容するとロズは力尽きてしまう。ベースに戻れてないしね、ロズはもともと限界だった。
 家で好き勝手、喧嘩なんかしていた動物たちも冬の間は仲良くすると決めて家の中で冬を越すことに。

 最初の頃、キラリと暮らし始めたロズも省エネのために夜は落ちてしまうのだが、そこでキラリが首元、チャッカリが膝にぴったりくっついて眠るシーンがある。
「喋んなくなると寂しい」だったかな? キラリの言葉にさ、ロズが落ちたことを確認してからロズにくっついたチャッカリはびっくりしちゃんだけど、それを思い出した。たぶん、ここが一番好きなシーン。

 春になるとキラリが帰ってくる。
 キラリの無事を喜ぶも、道中でロボット・ロズと同型に襲われるのだが、キラリはロボットを怖がらないことからリーダーを引き継いで無事に旅を終わらせた。もうキラリは嫌われ者ではなく、みんなの中心だった。
 それを見て複雑な感情を抱きつつもロズは先延ばしにしていた信号を出す。信号をキャッチするとすぐに迎えがやって来る。
 キラリが会いたいっての言葉にロズは嘘をついて迎えから逃れるが、ロボットらしくない行動の記録を奪うために襲われることにここからは島の動物vsロボットである。まさかこういう展開になるとは思わんかったなー。
 
 総合的に見ると面白かったんだけど、どうにも荒唐無稽な部分があるせいか僕には響かなかった。高性能なロボットがいる人間たちの世界はほんのちょこっとしか出てこないが、ロズがどういう存在なのかが上手く消化できない。ほら、僕らは子どもの頃から高性能なロボットであるドラえもんとかアトムとか、そんな存在は近くにいた。ロズの記録ってそんなに必死こいて回収するもんなのか? てか、浮遊型がいる方がすごくね? みたいな。

 親子愛も、まぁ親と認識したならそういう展開になるかなくらいの感覚。
 だから、僕にはチャッカリや島の動物たちの方にこそ感情がうごかされたんだと思う。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
 ロボットたちを撃退した島の動物たちは喜びの声を上げていたが、ロズはこれが終わりではないことを分かっていた。回収するまで何度でもやってくることを理解していて、島のみんなのためにも自ら戻ることを選択する。
 だが、事実を述べるだけのロズにチャッカリが泣きながら初めて――やっと本心を口にする。


「話がある時にいなかったら?」


 ここなー、前後をちゃんと記憶してなくてちょっと捕捉を。
 ロズがいなくなることをチャッカリは嫌がるんです。ロズがいなかったらどうすればいいのか? 話がある時にいなかったら、というのはチャッカリがそれをできるのはロズしかいないんです。チャッカリにとってロズは家族であり友達であり、かけがえのない存在だったから行ってほしくなかった。
 でも、ここに至るまででチャッカリもただの嫌われ者じゃなくなっていた。もう「俺が聞くよ」って言ってくれる島の動物がいる。もうひとりじゃないけどそうじゃない。

 この別れの方が僕にはつらかったよ。





野生の島のロズ
公開日2025年02月07日



posted by SuZuhara at 22:26| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月02日

リアル・ペイン 心の旅



「でも、なにも感じないよりはずっといい」


 去年の俺を悩ませ続けた胃も快調だった昨今――また壊れた。
 うわあああ、いつになったら通常運転に戻るんだ。完治はいつなんだ。もうすぐ再検査なんですけどどうにかなりませんかねぇええ!
 まぁ、治らないなら治らないならそれはそれで。
 ただ、ただだな、俺がゲームしてる時に邪魔だけはしてくれるな。こちとら飽き性で集中力なんかないのよ、トイレタイムなんか挟んだら続けられないのよ。


■あらすじ
 NYに住むユダヤ人のデヴィットと従兄弟のベンジーは亡くなった祖母の遺言によって数年ぶりに再会、そして祖母の住んでいた家を終着にホロコーストツアーに参加する。
 同じツアーに参加した人々との交流する中で周囲を盛大に振り回しつつも魅了していくベンジーに複雑な感情を抱きつつも彼を心配して一緒に旅をするデヴィットも日常で生きづらさを感じていて、妻もいて子どももいる順風満帆な生活の中でも抱える痛みがあった。


■感想
 うっし、ファーストデーだ映画に行こう!というわけではなく、なぜか気になっていた『リアル・ペイン 心の旅』を観に行って来ました。映画は公開初週の土日の動員が大事だって■■ちゃんが言ってた! このネタは使いたいけど、ドストレートに使ったら終わるので伏せ字にさせてくれ。

 さてはて、元々ロードムービーが好きくらいで何の前情報もなしに行ってきました。最近はこういう突撃が多いですね。でも、この映画上映前の番宣でGQuuuuuuXネタバレ映像を観せられるとは思わなんざ……。

 冒頭、空港のシーンで待ちぼうけになっているベンジーのシーンから始まる。ショパンの曲……すまん、明るくないのでショパンとしか分からないが、今作には多用されているので好きな方には分かると思われる。
 ショパンの曲とベンジーの空港シーンはなんでもないのに印象的で、その後に慌てたデヴィットが何度も携帯に留守電メッセージを残しつつなんとか空港に辿り着く。そして感動の再会シーンで誰もが違和感に気づく。
「なんで? まだ二時間も前なのに!」ごめん、口調までは覚えてないのでニュアンスで。

 つまり、ベンジーは何時間も前から空港にいる。
 デヴィットは早口の伝言に「寝坊」「遅刻」という言葉を使っていたが、約束の時間よりもだいぶ前――神経質な心配性なのだろう、と思う。空港の身体チェックでもその様子がよく分かるからね。

 二人の関係は従兄弟というだけでろくに説明されずに進む。こういう方がいいよね、現実でどこかで観てる誰かのために自己紹介はされない。
 自由奔放、言ってしまえば自分勝手なベンジーの一筋縄でいかない感を感じつつも、二人はホロコーストツアーに参加する。

 無知故にホロコーストってなんぞ?レベルだったのですが、なるほどアウシュビッツ関係なのか。どうしよ、primeに来たら『関心領域』観ようと思っていたのに。
 ユダヤ人の歴史を辿っていくツアーだ。僕たちにとっては修学旅行で戦争に関わる地に行くようなものだろう。僕は防空壕とか洞窟とかに過剰な拒否反応が出るのだが、なんでかな。

 ツアーを通して、てか初っ端からベンジーが鬱であることを明かされるがこれには驚いた。けれども、彼が繊細で周りのことをよく見ていて感情に寄り添えること。明るく楽しい男、かと思えば感情的になって躁鬱な様子が分かる。尻拭いに回るデヴィットの胃の痛さを思うとつらいが、それでもベンジーみたいな人間は愛されるんだ。いつの間にか友達がいっぱいで輪の中心にいる。
 それが、デヴィットにはキツい。子どものままのようなベンジーと違い、場所と空気を読んで大人の対応をできる、強迫性障害を抱えつつもなんとか暮らしているデヴィットには妬ましいんだ。

 これな、すごく分かる。
 てか、普通に考えてベンジーは面倒な奴だ。付き合いきれんし、付き合いたくない人種だって思うだろう。彼の繊細さや人格を知っていてもね。
 それにどんなに仲のいい友達、家族だってさ、他人の成功は妬ましいさ。それが自分にとって欲しいものであったならなおさら。
 けど、ベンジーはそんなものが欲しかったわけじゃない。たぶん、彼は自覚せずにやっている行動だから実感がない。自覚できない成功なんぞそこにはないんだよ。B'zで『ケムリの世界』って
曲があるんだけど、その歌詞をちょいと引用しよう。

 全部自分がやったんだよと叫べる おシゴトしましょう
 それがこの世で一番ステキ


 これがめちゃくちゃ僕は胸に来てましてね。
 昔、僕は映画のエンドロールに自分の名前が載ることを夢としていたことがあったんだけど、その夢は叶ったんだぜ。クラウドファンディングで金払ったからな。あの虚しさは酷かった。クラファンだから、よりお金を出した人の名前が大きく先に出る。DVDが送られてきたけど、二度と観れなかった。
 まぁ、光栄にもクレジット関係に載せてもらったのはその後にいくつかあるんだが、その時は自分にできる限りはやったから後悔はなかった。
 ……うん、この話はやめようか。

 現代人、生きる上でなにかしらのつらさを抱えているわけだが、そのつらさは本人にしか分からない。
 ベンジーの躁鬱さを言葉で現すのはすごく難しい。ホロコーストツアーで彼はガイドに「事実の羅列は冷たく感じる」と言うんだけど、それは「ここで何万人が死にました」というような結果を数字で言うのではなくもっと寄り添えというもの。その感情的爆発は大人になったらやらないものだと思っていた。冷静になれ、大人げないってね。デヴィットもこういうタイプで、裏でガイドに謝ってフォローする。
 ガイドも初めは反発するが、最後には「ご意見くださいと言って建設的な意見をくれたのは君が初めてだった」とベンジーとハグしてデヴィットには手を振るだけ。うーむ、人生は上手く行かないぜ。

 はっきり言って、僕はベンジーの意見には反対だ。
 戦争や過去の出来事に寄り添いすぎると受け止めきれない。直視できない。映画とか漫画とかフィルターを通さずには受け止められないんだ。
 だから、ベンジーのつらさもデヴィットのつらさにも寄り添えない。僕は自殺を試みたことがないし強迫性障害なんか持ってない。想像はできる、けど自分のこととして共感するのは耐えられない。受ける必要のない痛みまで抱えられないよ。

 この映画を観て、すごーくいろいろ考えた。
 何度も何度も書き直しても上手くまとまらない。
 二人の旅は歪なまま、だけど互いへの信頼だけは強固で終わりを迎える。旅は終わっても人生は続いていく。この後を考えたくないと言ったベンジーにデヴィットが道中で知ったベンジーが祖母にされて嬉しかったことをやった時は泣いてしまったよ。

 ひとりじゃないという言葉は好きじゃない。
 けど、お前のことを大切に想う人がいないなんて想ってくれるなよ。エンドロール後の喧騒は今も耳に残っている。

 ……わぁお、全くまとまってないね。
 でも、本当に感想は難しいんだ。面白いという言葉は相応しくないと思うし、けれどもベンジーと無賃乗車しているところは楽しかった。でも、いくら楽しいことがあったってつらいときはつらいんだ。この先の未来だって不安だよ。楽しいことばっかりじゃいられない。苦悩がなくなることはない。
 あー、本当に難しい。こんな当たり前のことが言いたいんじゃないんだ。でも、人生って続いてしまうし終わらせたいわけじゃない。

 この作品では平凡という言葉が行為的に使われていて、誰もがただ平穏に生きていたいだけだと思う。けど、それが一番難しいだよな。

 では、もう今回のお気に入りに行って〆よう。
 ツアー客たちとの夕食時、感情を露わにして席を立ったベンジーにデヴィットは彼をフォローする。けれども、話しているうちにどんどんベンジーに対する負の感情が抑えられなくなってしまいデヴィットは殺したくなる時もあったと口にしてから言う。


「でもあいつになりたい」


 デヴィットの仕事、ネット広告作りを「イカれたシステムだよ」って言い切るところも好きだがね。海外のツアーはすごいぜ、旅でこんな個人的な問題は暴露されても僕ならどうすれって言うんだよになってしまう。









リアル・ペイン 心の旅
劇場公開日 2025年1月31日
posted by SuZuhara at 00:04| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする