「ここにあるすべての本は
歴戦のサバイバーなんだから」
幸か不幸か、3万もする限定ゲームセットをもらった。布教兼ショップ特典目当てで買ったモノらしいが、10シリーズも入ってるらしいすげー。でも確実に始めたら終わるよね、時間的な意味で。
よし、まずはこの500円で買ったゲームをサクッと楽しんでから――20時間かけて1週目が終わった。1週目の時点で楽しいのに2週目から解放特典クソ楽しい! めっちゃルート変わるんだが!と彼此れ60時間を突破した。3週目に俺の本命が嫁にできるはずなのにフラグの回収ができず2週目が終わらないんや。
いやはや、どんなゲームだって始めちまえば時間泥棒なのだよ。ブログ書く暇があるなら戻りてぇのよ。
■あらすじ
古本屋・十月堂には様々な客が訪れる。
本との出会いを求めてやって来る人々だが、知り合いと偶然に出会ったり本がきっかけでの出会いもあり、一人ひとりその人にとっての特別な1冊がそこにはある。
■感想
これまた発売日を分かってなく、やらかし飯3巻と一緒に買ってた。今回は特典ペーパーがありましたが、『十月堂通信第二号』ってあるから1巻にもあったのかな? 惜しいことをしたぜ。
僕の好きな連作短編なので古本屋と客、そして本の話。
今回は特に登場人物たちが繋がっていて、あの話の人じゃないかと出て来る度に楽しくなりましたね。
まずは中野さん。
町に古本屋が出来たことを喜びながら通っていた中野は今日もと十月堂に向かうがお休み。仕方なく大手チェーン店の古本屋に行くと、そこで十月堂の店主と出会った。
「敵情視察ですか?」には笑ったw
相手にされないじゃなく、僕は同じだと思ってなかったんですよ。あそこは綺麗な本を少しでも安く手に入れたいという需要かと思っていたら、同じようなことを書かれていてすごく納得した。
でも掘り出し物あるんだよなー! 誰かにとっては価値がなくても俺には超ある。『童夢』があったとはすごいとしか言えん。
この話は本好きならきっと中野さんと同じ気持ちになれる。
次は読み終わるまで絶対死ねない本として『ガダラの豚』全3巻を買い、最終刊だけ置いていった女性の話。
若くして大腸ガンとなった雨宮は買った本を読みながら、お腹に人工肛門などこれから生活が一変することに備えながら当日を迎える。執刀する医師・菊川は医療機械の訓練で折り鶴を素早く折ったりして日々腕を磨くが、雨宮が読んでいた本が気になり十月堂で聞いてみると非売品だが3巻だけある、と。
そして、取りに来た雨宮に出会うわけですが――分かる。いろんな不安があって家に引きこもりたくなっちゃうこともあってもさ、続きが読みたいという欲求だけはどうにも抑えられんのよ。
辞書の話はですね、僕は小学館の『日本国語大辞典』が好きでしてね。あれは欲しかった。絶対に家にあっても読まないけれども、自分のモノだったらどんなにいいかと思ったことは一度や二度じゃない。賢しいって言葉を引いてみろ。俺にとっては最上級の褒め言葉さ。
だから気持ちは分かるんですが、この話のメインはそこじゃない。たくさん出版される本とパンクする本屋。発行から1年以上の本が本屋に並ぶことは難しく、古本屋にすら流れないものもある。
SNSやらで知る機会は増えたけれども、本屋で出会うという喜びはなかなか捨てられない。でも、電子書籍だとセールがでかいんだよなー。
次回作が書けない漫画家・人見がふと目に止まったホテルに泊まる話。江戸川乱歩のエログロ摂取しすぎて許容量を超えたは分かる。摂取しすぎると入らなくなるんだよ。
昔乱歩が好きだったということで古本屋で買った乱歩の本を手にホテルで現実逃避気分をしながら満喫しょうとするのですが――このホテル、本を読み終わった後で観た『私にふさわしいホテル』で舞台になったところかな? 螺旋階段とか天ぷらとかめちゃくちゃ見覚えがあった。残念ながら該当映画は途中でギブアップしましたが、人見はそこに泊まりに来ていた中野と出会う。
奥さんがわいわい話しかけてくるんだが、漫画家であることを伝えると漫画大好き中野さんが食いついてきて奥さん置き去りになるというぷち修羅場へw
この話は好きだなー。スランプという言葉を自分に使うには烏滸がましすぎて殺したくなるけれども、どうにもできないという時はある。書くまで行けない日もある。ブログの更新がないのはそういうことさー。これは冗談だとしても自分を責めてもどうしようもなく、他人は自分が思うほど関係なかったりする。この記事を書くのも2時間くらいは余裕でかかっているとか思うまいて。
今作の作者さんも、詳しくは調べてませんが作品を書くまで大変だったらしいと耳にした。けれども、これまでの生む苦労とか全部引っくるめての評価なんか絶対に欲しくないだろうし、どんなに頑張っても同じ気持ちが理解できるはずがない。
でも、だからこそ、それでも形にしてくれた物語を全力で楽しみたいと思うのである。
最後は質屋に束見本を持ってくるおじいさんの話。
束見本というのは初めて知った。内容が印刷されていない本の見本なわけだけど、なかなか理解できなくて。つまり、前川さんの本はなかったということでいいのかな?
毎回珍品・束見本を質に入れて必ず迎えに来る前川さんだが、次は自分の本を持ってくると行ったりもう現われなかった。年齢的に亡くなった可能性もあり、けれども住所地なんかに行ってしまえば家族に知られてしまうから質は流すしかない。
長年のよしみで束見本を質にしていたが、ここでは売れないので十月堂に行くと大切にしてくれる人に連絡を取ってくれる。
1巻で本はほとんど読めないけれど、装丁好きなジョージさんたちが登場。源氏物語は大学時代に研究していましたが、僕はそこで使われる言葉にしか注目していなかったので雲隠とか知らんかったなー。教授にバレたらブチ殺されそうだw
巻名だけが伝わり本文がない『雲隠』。なら前川さんの本もないんじゃないか。ジョージさんが言うように、内容のない束見本に自分の作品を思い馳せていた……ということだったらいいのだが、あまり自分の解釈に自信がない。
今回もとても面白かった。
本というかその作品だけでなく出版業界の話なんかもあって興味を惹かれるのに本好きたちはマニアックだったりw
次巻も期待しています。
では、ここで今回のお気に入りへ。やっぱり中野さんかな。
十月堂店主を誘っていったラーメン屋でポロリと古本屋のこと、自分の楽しみについて話したところを。
「古本屋に寄った帰り道
鞄の中に買った本がある
帰ったらこれを読もう
飲み物は何にしようか
本棚のどこに置こうか
そんなことを考える
ただそれだけで
世界は少し輝いて見える」
……こんな人と結婚できた奥さんが羨ましいな。
本棚の整理をする瞬間の幸せは何物に代えがたいが、新しい本をどこに置くかを考えるのもめちゃくちゃ楽しいんだよな。

本なら売るほど 2 (HARTA COMIX) - 児島 青
2025/4/15