「月ちゃん、僕ら、別れよか」
あらすじ
――余命一年。そんな宣告をされた中、一回り以上年下の捨て男・研二と結婚したオカン・陽子。娘・月子は三人と愛犬・ハチと共に新たな生活をスタートさせていたのだが、そこに音信不通だった捨て男の母親・小百合が現れる。
息子を捨てた母親とは思えないほどの自分勝手な態度を取る小百合の姿と友人たちの結婚ラッシュに、母と過ごせる今を大切に想いながらも月子は自分の将来に目を向け始める。そんな中、年上の恋人であるセンセイに突然の別れを告げられて動揺する月子の元に、一歳年下の元彼氏から電話がかかってくる。
感想
買ってすぐに呼んじゃったよ、オカンの嫁入り続編。
一つの作品として完結したものの続編というのは大抵がっくしくるものがありますが、そんなことはなく、その後って本当だなあ、といった感じでした。
本編で涙ぐみ、番外編で号泣。いやいや、ハチ視線はずるいって。
本編の方は、捨て男と小百合の親子の絆と月子とセンセイの恋がメイン。
小百合は読んでいくと初めとの印象ががらりと変わる人で、人柄というかその行動から捨て男の母親だと解るいい人。
月子と一緒に小百合に良い印象は持っていなかったのですが、母に捨てられた捨て男の気持ちを慮る月子と捨て男の気持ちを考える陽子の違いが印象的でしたね。私も当然月子と同じ考えをしていましたが、それは一種の自己中心的な考え方と言いますか、その人に自分を投影しての考え方はその人のことを考えている訳ではないんだなあ、と。
うーむ、人付き合いは難しい。
一方で恋愛の方は、やはり年の差がネックとなった問題。
この問題で私が惹かれたのは、月子のパート先である針灸院の院長・萌子先生。この人の独特な雰囲気と話す言葉はいちいち良くてトキメキかねないから気をつけられたし。薄荷のアメとかハワイの諺とか、こんな女性的な優しさをかけられたら一生パートするね。
大好きなセンセイに別れを告げられた中での元彼と再会して月子はいろいろと考えるのですが、答えは一つです。
最後のセンセイが可愛くて困る。
さて、ここからは番外編であるおかえりについて。
ハチの視線で語られるこの話は、陽子が「行ってきます」をしてから帰ってこない日々が描かれている。もうね、これが何を意味するか解った瞬間泣いてましたな。
月子がたまにしか帰ってこない家で、捨て男とハチは二人で過ごしているのだが、ハチは陽子が帰ってこない意味を理解していなくて、月子が帰ってこないのはお母さん探しに行ったんだと思ってるんですよ。
やばい、無理だ。映画でハチの可愛さに直面した後は特に。
この話で辛いのは捨て男の姿だなあ。
本編で母親と再会できたけど、また愛する人を失ってしまった姿は悲しい。
そして、ハチにまで「ステオ」と呼ばれているところも悲しく愛しいな。ハチは姉ちゃん大好きですから。
最後に、今回は捨て男の良さをアピールしておこう。いや、決して笑えるシーンがなかった訳じゃないんだから。
以下、本編の序盤、母親に会うと言う捨て男に月子が母親を恨んでないのかと聞いたシーン。
「なんで恨むのん。俺を産んでくれた人やのに」
すぐにそう言うて笑うた捨て男の目は、いつもと同じで、なんの気負いもなくて。
ああ、そうや、こういう人やった。こういう人やから、うちのオカンがきっと、最後の日々にそばにいてほしいって思ったんや。ほんで、こういう人やから、あたしもオカンのそばにいてほしいって思うたんや。
そういや、映画では「捨て男」という名称は使われていませんでした。
ううむ、捨て男はこのネーミングあってこそだと思うんだがな。

ゆうやけ色 オカンの嫁入り・その後 (宝島社文庫) (宝島社文庫 C さ 3-2)
- 作者: 咲乃 月音
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/09/07
- メディア: 文庫
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