2010年10月15日

幽霊待合室


 夕子の叔父の幽霊が出現!?

 幽霊シリーズ21弾にして初めて読みましたが、内容に関しては前作を読んでなくても全然平気。連作長編ではありますが、短編と同じように一つ一つ行こうと思う。
 だが、なんだかなあー。どの事件もすっきりしないぜ。


・ジュリエットは真夜中に目覚める
 警視庁捜査一課警部・宇野喬一は恋人の永井夕子を連れてとある劇団の『ロミオとジュリエット』を観に来ていた。その理由は喬一の大学時代の演劇部のスターであり、ロミオ役の河地俊治の母・典子に呼ばれたからだったのだが、そこで典子は喬一に「私、殺されるかもしれないの」と告げる。そして千秋楽の終わり、俊治とジュリエット役の妙美が姿を消す。

 うむ、みなさん親バカと言うか子離れしようぜ、と言いたくなるお話。
 嫌な予感はしていたが、勝手に暴走して勝手に終わった的な……子どもたちの方がよっぽど大人です。

 親はいつまでも子どもが心配だと言うが、あなたの描く幸せが子どもの幸せと必ずしも一致するわけではない。まして、恋愛が絡んでる時点で親の理想は通らないよ。


・雪女によろしく
 ホテルでフランス料理を楽しんでいた喬一と夕子の耳に女性の甲高い音が響く。驚いて振り返れば、そこでは女性関係が派手なことで有名な作家・朝川浩之が揉めていた。一度面識のあった夕子は軽く挨拶をしただけで当初の予定通りホテルに泊まるのだが、夜中にネグリジェ姿の女性の悲鳴に起こされて朝川の部屋に向かえば、そこには血で汚れたバスローブを着て寝ている朝川とバスルームで死んでいる女がいた。
 喬一が現場に不審なものを感じていると、ネグリジェ姿の女が夕子の服を着て消えていた。

 大きな子どもの女癖から親や女房、秘書が乗り込んでくるお話。
 ……これ読むと大きな友達の方が性質は悪くないと思う。こういう人間には辟易する以外の感情は抱けないよ。
 
 お客様がVIPであったために少々振り回されますが、予想通りの展開かな。
 最後の最後になってしまったが、子どもが母の手を離したことだけが救いでしょう。


・幽霊は生きていた
 休暇を利用して温泉旅行に来た喬一と夕子だったが、運悪く村長選挙の時期と被ってしまって心が休まらない。支持が候補者の二人に綺麗に半分に分かれている相手の支持者を一人でも引き抜こうと選挙事務所が動く中、旅館の仲居・桐生兼子の息子で選挙権を持っている京介が帰ってくる。

 うー、この話が一番好きじゃなかった。
 赤川さんの作品は勧善懲悪の色が強いけど、なんだこの結末。ちょっと無理矢理すぎる気がするんだが……。

 しかも、知らぬ間に夕子は京介のフラグ立ててるし。
 散々すぎるだろ、この旅行。


・愛に渇いて
 山荘にやってきた喬一と夕子は朝の散歩中、揉め会う男女と遭遇する。男は逃げてしまったが、大倉絵美と名乗り同じ山荘に泊まっていることが解る。その後、朝食時に同僚の悪戯から刑事であることが知れ渡ってしまい、喬一はK大の北野教授の妻・澄子から「私、殺されるかもしれないのです」と相談を持ちかけられ、自分に捨てられたと思っている息子が仕返しをしようとしていることを知らされる。

 ……またか、と思ったのは内緒。
 殺される云々より男女関係の問題が。短編でも長編でもみんな軽いぞ!

 恋愛のことでごたごたしすぎて、医者を目指す弟の冷たい言葉が一番冷静に思えてしまうのはおそらく周りが浮かれ過ぎているせいだろう。


・灰色の人生
 ホテルのラウンジで喬一と夕子は殺人で捕まり刑期を終えて働いている竜山と出会う。立派に立ち直ったことを喜ぶ喬一だったが、その後竜山の娘・華が助けてくれと訪ねてくる。慌てて家に行ってみれば、近所の公園で子どもが殺されたことからそこではバットやハンマーなどで武装した自治会長たちが竜山の事を探していた。

 『悪人』を読んだ時も思ったけど、罪を犯した人が悪人ではなく悪人ってのは表に出て来ないだけで世の中にはびこっているのですよ、という感じのお話。
 一度殺人を犯したからとまたという脅迫的観念を使って住民たちを盛り上げさせ、歪んだ正義感で全てを排除しようとした犯人に同乗の余地はないが、こういう人は多いよね。

 今回面白かったのは、この話のオチのしたたかな華。
 だが、オチはさすがに書けないので今回はなしということで。


・幽霊待合室
 二泊三日の旅行に出かけた喬一と夕子だったが、列車に乗っている途中で事故に遭ってしまい、その日は駅の待合室で過ごすことに。同じく被害に遭った人たちの中に死んだはずの夕子の叔父・治にそっくりな男性がいて驚く中、夕子は叔父そっくりの木崎と名乗る男の身ごもった妻・リサと一緒に近所の家に泊まることになる。
 残った者たちと待合室で眠っていた喬一が目覚めると、大事そうにアタッシュケースを抱えていた男の腕の中には何もなく、そして男は死んでいた。

 誰も彼も勝手だなあ。正直読んでいて疲れてしまったよ。
 『パパの愛した悪女』の時にも思ったけど、こう言っちゃなんだが一世一大の決心をしてやると決めたならやり通すべきだ。それが死であってもね。何かがあって揺らいでしまうようなら、悩み足りないんだよ。

 私を見習ってほしいな、ゲーム一本買うか買わないかで一週間悩み続けるからな!
 ……決断力がない? 何を今更。



幽霊待合室

幽霊待合室

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 新書



posted by SuZuhara at 16:01| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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