2010年10月24日
神曲奏界ポリフォニカ インタルード・ブラック
これが最後のマナガとマティア!
黒ポリ第十五弾にして最終巻の短編集。
前巻のあとがきでまだまだ続くと言ってくれた時から待ちに待ち、そして著者の大迫純一氏訃報を聞いた五月以降諦めるしかなかったはずの最終巻。
よっし、気合い入れて書こう! だって、短編なんだもの!
・えくすとら・ぶらっく
ルシャゼリウス市警精霊課に配属されたマナガとマティアは、実技訓練のために射撃場に来ていた。マティアにとって最大の難関であり嫌悪してもいる射撃の訓練が終わったあと、マナガとマティアは鉄砲店ツキカゲの主人にマナガ専用のカスタム拳銃を見せられる。
マティアのこともありその場では答えは出さなかったマナガだが、帰り道に寄った馴染みのコンビニで粗末な装備をした強盗に遭遇することになる。
未発表作品で1巻目である『インスペクター・ブラック』の前のお話。
拳銃描写に本気さを感じるぜ、特にマティアの射撃訓練中。この辺は興味ない人はちんぷんかんぷんだろうけど、マティアの「いーっ!」時の絵が可愛いので許される。
でも一番の見所はマティアがマナガにする「なんでこの世に銃なんてあるんだろう?」という質問の答え。
本当にそうだと思う。それと、これは全てのモノに対して言えることだな、と。
それ自体が問題なんじゃなく、それをどうするかが問題なんだ。
・ぶれっしんぐ・ぶらっく
朝早く、マティアは古着屋の前にいた。そしてその二時間後、古着屋に訪れたマナガを見てバイトのロージアは察する。少女の買ったコートは彼に、彼の買ったケープは少女に似合いそうだと。
イデ・マニエティカ巡査の結婚式を前にお互いのトレードマークを手に入れた二人は、交差点のど真ん中に鎮座する巨大な精霊の対処にあたっていた。事はひょんなことから解決することになるのだが、残った交通整理する警察官の中に結婚式の主役であるはずのマニエティカの姿を発見する。
実を言うと、これは読んだことがある。
うむ、黒ポリのためだけに『まぁぶる』買って読んだんだが、他はちょっと合わなかったのでそれ以降は買っておらず、今巻の中で唯一読んだことのある作品。
マナガとマティアの相思相愛っぷりがやばい。まあ、初めのころのマティアはマナガ以外には心を開く気がないから当たり前なのだが。
殺人とか悲惨な事件を担当することが多い二人だが、おそらく日常ではこんな事件もたくさんあったんだろうな、と思うと楽しくなる作品。
ということで、今回の好きなシーンは花嫁を待つ結婚式場でのシャドアニの言葉を。
「花嫁は、きっと間に合います」
旧き精霊が……マナガリアスティノークルが、同じ現場にいるのだから。
「だから、ほら、いつでも始められるように準備しといてください」
ははっ、いつもいつも笑えるところを選ぶわけじゃないのだよ。……と、冗談は置いておき、このシーンは来るものがあった。
シャドアニ関連の話とか読みたかったなあ。
・みすてぃっく・ぶらっく
氷の女王の一件後、残っていた加療休暇を使いきるためと氷の女王の調律師を探すためにメニス帝国の東端・凰都ヴィレニスの温泉町に訪れる。
混浴という言葉に驚きつつも、マナガとお風呂に入りたいマティアが湯衣を借りにいく途中で一匹の猫に会う。
そして、お風呂の後に二人が部屋に戻るとそこにはーー荷物が全てなくなっていた。
マナガとマティアの混浴については是非本編で。マティアの方からお酒飲もうと言い出してさあ大変!
マナガ代われ! 今すぐ代われ、代わってくださいお願いしますっ! そのためなら土下座しよう、人格を疑われたとしても、あの小さい子を抱きしめられるならかまわないのだよ。
これは次のレオンの話にも繋がる話で、素敵な猫の話。
私はレオンの方は1巻しか読んでいないのだが、出てきてるなら読みたいなあ。
・れおん・ざ・りたーなー
無事無罪となったレオンはロレッタと他六人の少女を連れて凰都ヴィレニスのシラホネ温泉に来ていた。たくさんの少女に囲まれ――ではなく振り回されて偶然訪れることになったこの町で、レオンは過去の因縁と向き合うことになる。
レオンもてもてー。
モテモテすぎて軽く引く、というか、少女たちの見分けができねぇ。確か、レオンを1巻で挫折したのはこれが理由だったな……。黒ポリのレオンは好きなのにこっちでは苦手になるのは彼のみんなに優しいところが合わないのだろうな。
レオンは軽くイチャイチャしますが、そのあとボッコボコにもされる。女の子にじゃないよ、猫さんにだよー。
うん、猫さんだ。さんづけするほどの強者猫。
最後の方で、前巻の最後のシェリカと猫の会話の意味が分かる。
むぅ、やはりレオンを再び手に取ってみるべきか。でもその前にゾアハンターが読みたいのだ。
さて、ちょっと独り言を。
黒ポリの『プレイヤー・ブラック』が私にとって初めてのライトノベルだったりした。
どうもライトノベルは手に取りがたかったりして、あと偏見による刷り込みがあった。
でも、この表紙――正しくは帯に描かれていたちびマナガとマティアなのだが、初めの方は前の巻を読んでいなくても分からないなんてことはなく、不器用にも人と向き合うことを決めたマティアと学生の交流、見守るマナガとマナガのピンチに必死に側にいようとするマティアの姿にすごく引かれたのが全巻購入の決め手となったんだろうな。
筆の速い人だからそろそろかなあ、って検索すると新刊の予約が始まっててさ、検索ワードの頻出語句にはいつも名前があったくらいなんだ。
だから、五月に訃報を聞いたときは、正直信じられなかった。何の冗談かと、笑えない冗談は嫌いだって一蹴したかったのにさ、冗談じゃないんだぜ。ふざけてくれよ、頼むから。
だから、今回のあとがきでBUNBUNさんが「にやり。」書いてくれたのを見たときは救われた。うん、もう見れないんだと思っていたものがあったから嬉しくてたまらなかったんだ。
きちんと向き合うことができたその時に、心からのご冥福を祈らせてください。
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