偽りのエデンの園で行われる≪脱出ゲーム≫
鍵となるのは自分とペアの“価値”!?
最近一日とか映画の安い日に観に行けなくなったことから前売り券を購入することにした。昨日買ったのはアベンジャーズとタイバニの二枚。
アベンジャーズはホークアイが好きなのだがストラップは彼がおらず、アイアンマンが売り切れだったのでキャプテン・アメリカを貰い、タイバニはワイルドタイガ―にした。そのついでに一番くじを一回引いてみたのだが、J賞シークレットの斎藤さんだった……w
■あらすじ
極限ゲームを提供していた『極限ゲームサークル』は、高校卒業前の最後のゲームとしてOBが主催する無人島からの脱出を目的とした参加者100人のゲームを開始する。
サークルメンバーの斎藤進一や神楽坂愛奈すら詳細は知らずに参加者として始まった脱出ゲームでは、女子は身体に機械をつけられておりそれに男子は触れることでペアとなることだけ伝えられており、沖田瞬は初めに神楽坂と組むことになる。普段のゲームでの行動からサークルメンバーに目をつけられていたために自由に動けない沖田だが、ゲームを進めていくうちに明かされていくゲームの内容からいち早く真意に気づき、誰よりも早い脱出を目指す。
■感想
土橋さんの最新作。え、アトリウムはと思ったことは内緒。来月これのニ巻が出るらしいけど、え、アトリウムは?
初めに思ったのは女子が多いこと。決して悪いことじゃないけどいまいち違う気がして不安だったのだが、読んだら全て杞憂。最近読んだ中では一番面白かったぜ!
さて、途中で力尽きているがあらすじで書いたようなことから無人島で脱出ゲームをすることになった高校生男女100人。無人島で脱出ゲーム以外は知らされず、女子に渡されたのは白いワンピースと身体に装着した機械。私物の持ち込みはできず、男子は女子の持つ機械に触れて認証されてペアになる。
何もなく誰もいない無人島では解放感はあったが困惑もあり、同じ参加者とは言えサークルメンバーである斎藤と神楽坂はなんとかゲームを進行させるように努め、そのために利用したのが最速脱出記録を持つ沖田。
おそらく彼が主人公だろうが、記録を持つのとは裏腹に何かと問題の多い沖田をみんなにも注視させるためにも斎藤と神楽坂は行動したんだろうな。
現に、ペアである間は神楽坂は沖田から離れなかったのは情報の一人占めを防ぐ意味もあったし。
この辺でざっと一巻で明かされた無人島ゲームのことを箇条書き。
・女子は身体に装着した機械でスタンガン「ブリッツ」を使える。
・各エリアにはぬいぐるみがあり、それをブリッツで倒すことでエリアが解放される。
・自販機などの施設は男子が認証し、ペアの女子が機械にあるマネーで購入できる。
・男子は複数の女子とペアになることができる。
・脱出の際、男子が持ち出せるのは木の実(宝石)色によって価値が違う。女子は服。脱出後、現金に換金できる。
・服によって女子のランクが上がり、ブリッツの威力も上がる。
こんなところかな? 見て分かる通り、男子の役割が圧倒的に低く、それを察した須藤によって後半問題が起こる。
沖田に話を戻すと、彼には以前カウンセリングの養護教諭と何かあったようで早く行動することを自分に強いている面がある。恋仲かは知らんが、最後の梨央との関係を思うとあまり断言はできない。
これによって誰よりも早い脱出を目的とするが、嫌な意味で賢い神楽坂がペアだったために僅かな情報から自分の心を見透かされちょっとしたいざこざに。無理矢理チッスとかねー。
ゲームを進めていくうちにひょんなことからクラス委員長・中野香織里とペアになってしまい、男子が複数ともペアになれることが分かるのだが、神楽坂とのぎくしゃくからペアを交換することに。
この、委員長の見た目がめちゃくちゃ好みだw どうでもいいかもしれないが、神楽ちゃんには悪いけどペア変更で俺は歓喜したぞ! 聡明さをひけらかして生涯になる女より自分を頼ってくれる女の方がいいに決まっているだろうがww
それに神楽ちゃんは私の好みである賢い女とは違うんだ。不思議な子だ、賢いのに好きになれない。きっと彼女には寝首をかいてくるような狡猾さを感じてしまうからだろう。敵ならいいけど身内にはできない。
その点委員長は違うからな、沖田には姉のように背伸びして接するが少なからず想っていることはバレバレで、沖田なんて一番信用しちゃいかん男に信頼を寄せてるんだ。いいな、すごいいい。使いやすいという最低な意味で私は彼女が好きだw
ゲームの明確な報酬、現金を得る方法が分かってからは宝探しとなり、そこで発見したエリアロックとブリッツ返しのアイテムをもって須藤はゲームを終わらせにかかる。
女子を奪いペアとなり、男子からは宝石を奪って縛る。沖田が如月未来に託した瓶から脱出方法を知った彼は女子に服を着させて、子分の計おんぶには宝石を持たせて共犯者という意識を根づかせて脱出を図ろうとするが、そこに立ちふさがるのは沖田。
花穂結羽という押しに弱く、このゲームの前に沖田とちょっとした関係がある子なんだけど、沖田は彼女と以前ゲームで約束したように脱出させるために女子だけが持つ武器、ブリッツで須藤を攻撃させようとするが打つことはできない。
他の女子たちも同様で、だからこそ須藤は女子たちにブリッツを構えるという脅しに留まらせて手に入れた方法で脱出に出る。
だが、それは沖田が作ったフェイクだった。
そして沖田は田中梨央という、人に向かってブリッツを打てる女子を残していた。彼女の笑顔で打てることを知った須藤は耐えようとするが、まだ明かされていなかった服の価値、威力の増大を知らずここで倒れることに。
この方法から沖田は花穂と断絶は完全なモノになり、沖田と変わり者・梨央の絶対的信頼関係が明かされる。一人心理テストに引っかかった異常者という過去が沖田にはあり、それからカウンセリング云々となるのだが、その時提出した心理テストは沖田のものではなく梨央のものだった。
蝉を壁にブッ刺して飾るとか異常者の傾向は見せていたコレクター梨央だが、この件以降二人の間には与え合うという絶対的な信頼関係ができている。
今回は須藤が檻に入れられるところでお終いですが、最後の須藤と斎藤の会話でちょっと梨央が心配だ。沖田は女が傷つきやすいことを知らない、という会話で一番被害が出そうなのが梨央だから。個人的趣味としては梨央には破滅しようとも沖田との関係を貫いてほしいものだが、ヒロインって絶対花穂の方だよな……。
私が土橋さんの作品が好きな理由として男と女の違いが物語に反映されているというところがあるのだが、今回はそれが顕著にあらわれていましたな。
ゲームはまだ序盤なので、これ以降どうからんでくるのかが楽しみだー。
では、今回のお気に入りシーンへ。
お気に入り度で言えば沖田と委員長の「裸で泳げば。見ないから絶対」「信用できない絶対だ」的な会話の中にある気安さが好きなのですが……シチュエーション違うって! 印象深かった神楽ちゃんの最後のシーンを。
梨央が放ったブリッツはゲームの進行を攻撃的な咆哮に進めてしまい、神楽坂は見つかっていない残り一つの宝を手に入れて思う。
梨央が放ったあの青白い光を思いだす。
美しかった。まるで神話の女神のように放つ電光のような……。
――光。スポットライトと同じく光に身を委ねるのだ。仮面をかぶり踊れ。この島は非現実の舞台だ。音楽と観客の視線のなか感情を燃え上がらせ強く美しく、ライトが消えるまで演じるのだ。部隊が暗転しフェードアウトしても消えない拍手……。
神楽坂は宝箱に入っていた棒を握った。あの光はきっかけのような気がした。何かが壊れ何かが生まれた変化を象徴する聖なる光――。
次で確実に神楽ちゃんは変わる。今までのゲームを進行させるポジションではなく参加者として、そして梨央以外でブリッツを人に向かって使える戦える女子として。
元々、サークルのゲームでは案内役の妖精などを演じていた彼女だ。この島での出来事を非現実と割り切り、自身の取るべき役を見出してしまったら……沖田と梨央を脅かすのは彼女だろうな。
楽園島からの脱出
土橋 真二郎
アスキー・メディアワークス (2012/5/10)