バリスタ・切間美星の趣味は謎解き。
シュタゲ映画の主題歌CDを買ってしまったぜ。得意のエンドレスリピートで聴こうかなと思ったところで、シュタゲ映画の特典が小説とか……いじめか。同じ映画を何度も観るのは趣味ではないので行かないが、この手の特典つき映画はいつ食いつくべきかタイミングが大切だななどと思っていると、カードばっかり持っている自分に気づく。
あれ、カード好きだったっけ俺。
■あらすじ
京都のとある場所にひっそりとある喫茶店「タレーラン」で長年追い求めていた珈琲に出会うが、彼女とのいざこざで食い逃げのように店をさることになった男が置いていったメールアドレスから彼が学生でアオヤマという名であると推理したバリスタ・切間美星。
それから暇を見つけては飲みに来るアオヤマと美星は推理と珈琲を通して仲良くなっていくが、アオヤマとの関係に美星の過去にトラウマとなっている出来事が襲いかかることになる。
■感想
薦められた本ですが、最近この手の本をよく借りるのでその人の人柄が分かって面白い。きっとバリスタのような女性が好きなのだろうな。
あ、無性に珈琲が飲みたくなるので注意。本筋よりも珈琲話の方が面白く思えたことは内緒だw
正直に言っておくと初め読むのがちょいと苦痛だったりした。
宝島社の本って初めてだと思うんだが、解説でキャラについて絶賛されているけど、私はそれが駄目だった。アオヤマも彼女もだめならバリスタにも特に何も感じない。あとどう見ても遠回りのような、賢くない会話にイライラしたのだが、ま、これはいろいろと最後のための伏線だった。
アオヤマが名前ではないことは気づいていたが、本名を彼が口にしていたことには気づけなかった。後はほとんど分かっていたのに、それが分からなかったのはかなり悔しかったなー。
さて、タレーラン伯爵の言うような珈琲を求めていた男は喧嘩した彼女を追い掛けていた時に雨宿りをした喫茶店で理想の珈琲に出会う。だが、彼女からのコールでメールアドレスを書いたカードだけ残して店を去らなければならなくなる。
そして後日来てみれば、メールアドレスから自分のことを推理したバリスタと知りあうことになる。
ここで起こる推理は日常的なもの。ま、僕には縁のない系だが。
持ってかれた傘が返ってくる理由や牛乳をねだる少年の謎とか……いや、こう書くと非日常にしか思えんなw
会話が思うように進まなかったり、違和感を感じるのは大抵アオヤマのせい。古風な女性のふりした寒いギャクを連発するバリスタのせいだったりするww
しっかし、僕はバリスタが好きになれんわ。
なんと言うか、この人はきっと頭がいいんだろう。アオヤマが注釈をつけなければ理解できないような高度なギャグも言うし。つまんないけどなw
でも、それは私の好きな賢さじゃないんだ。うんちくなどいらない、誰にでも分かる言葉で機転を利かせるのが賢い人だと思うから。全くもって申し訳ないがこの辺が好きになれず、結局のめりこむことはできなかったのが残念だ。
だが、好きになれんと言えばアオヤマもである。
この男は嘘つきである。いや、自分からは何も言っていないんだけどね。
バリスタが昔懇意にしていた客にストーキングされた事件の犯人の再来で、距離が近くなっていたはずの二人は別れることになるのだが、この際にアオヤマについて明かされることになる。
彼はアオヤマという名ではなく、人気珈琲店のバリスタであったことが。
バリスタの味を守る、しかし味が変わったから守らないとそんなことを言って別れたアオヤマだが、それはバリスタを守るためだった。元カノとの復縁とかややこしいことがあってキャラが好きになれないとホントに入り込めない。おいてけぼりをくらう。
私は結局最後までよく分からなかった。元カノがてんで分からん。アオヤマの思考も分からん。だから読み終わった今はちょっと放心状態だ。やっぱり人気の本と私は相性が悪いんだろうか、とちょっと悩んでしまうな。
では、この辺で今回のお気に入りへ。
好きなシーンというより心に残った一文を。
思惑というのは、実に浅はかで滑稽だ。うまくいったためしがない。
これがどのシーンで使われるかを言ってしまうとラストのバレになってしまうので裂けますが、彼だからこその発言だなと思った。彼は一生懸命悩んでアオヤマでいることにしたのだろうけど、騙せていたわけではなかった。
しかし、これがどうも空回り気味に思えてしまうのはアオヤマだからか。もうちょっと決めてくれればバリスタとの関係がもうちょい進んだんじゃないかなー。
珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を
岡崎 琢磨
宝島社 (2012/8/4)