2013年11月28日

ガラスの麒麟



 人間はいつになったら、正しい道を選択できなかったという負い目から、自由になれるのだろう?


 そういやP3映画観てきました。ゆかりっちがヒロインしてて俺得。風花まで行ったので、次はラブホ回があると期待していいんですよね?
 あまりに出来が良かったのでBDは買う予定。てか、タナトスフィギュア買ってしまった勢いで。……どこ、置こうか。家族にバレない場所が知りたいぜ。
 

■あらすじ
 一人の女子高生が通り魔に殺された。
 美しく聡明だった女子高生・安藤麻衣子の死を発端にその周囲の人たちは危うい内面を晒し出すことになる六つの物語。


■感想
 薦められて手に取った本でしたが、なかなか興味深く短編なのに先が気になる作品でした。結構がっつり読んでしまったよ。
 さて、ざっと短編それぞれの説明。これは所謂連作短編というやつで物語は全て繋がっています。

・ガラスの麒麟
 安藤麻衣子の亡くなった後、娘の直子が安藤麻衣子を名乗って豹変してしまう。その事態に困惑する父・野間となぞを解き明かす保健室の先生・神野の話。
・三月の兎
 教師・小幡はクラスの中心人物で優等生の安藤麻衣子を失い、生徒を理解できていないことを痛感する。そんな中、生徒を疑わなければならない事件が起こる。
・ダックスフンドの憂鬱
 幼馴染の少女から飼い猫が血塗れで帰ってきたことで助けを求められる高志。なんでも猫が切られる事件が多発しているようで、ひょんなことから神野に伝わり真相が分かる。
・鏡の国のペンギン
 学校に安藤麻衣子の幽霊が出るという落書きが発見され、小幡がそれを伝えると神野はただの悪戯ではなくSOSだと言う。それは一人の少女が見えない視線を感じてしてしまった行動だった。
・暗闇の鴉
 恋人にプロポーズした伸也は断られてしまい、その原因となった手紙の差し出し主・安藤麻衣子を求めて神野を訪ねてくる。しかし、彼女は証印の日には既に殺されていた。
・お終いのネメゲトサウルス
 野間は神野を通じて安藤麻衣子の母に会い、彼女が投稿していた絵本を本にする話があることを告げる。そして、彼女が残したもう一作を読み、神野の動かない足に関する過去の事件、そして安藤麻衣子の死の事実を知る。


 ざっと、こんなもんでしょうか。
 全てに共通して出てくる神野先生は聡明で、どこか探偵役のような印象を受けますが、どうにも実感の無い人だなと思いました。なんというか、きっと目の前にいても目を反らせば思い出せないようなそんな印象がつかめない感じ。

 それぞれ人の心の脆さに触れる話ですが、ダックスフンドがお気に入りですな。ああなるほど、そういう理由で猫は傷つけられていたのか、と。
 あと、高志がぼろくそにいう両親が小宮夫妻だとは気づけなかった。あの両親素晴らしいじゃん、なんで文句を言うのか! 
 私は高志を許せないな。だって、最後に彼女できやがったんだぜこいつ。

 神野はいろんなことを解決していきますが、最後は彼女の話。神野は結婚目前で婚約者を未成年の飲酒運転による交通事故で失っている。その時の後遺症で足が完治していないのだと。あれだ、精神的という奴だ。
 しかし、その引きずった感情が一人の少女をこんな行動に走らせてしまう。

 安藤麻衣子という少女は実に聡明で、屈折した価値観を持っていたのだろう。自分に似ていた神野に懐いていたが、彼女の身に起こった事故を知り、彼女が「人殺し」という呪いをかけた犯人に恋をした。
 丁度、麻衣子の両親は離婚で揉めていて彼女は死にたいと思っていた。だから、「人殺し」の言葉に縛られている犯人を本当の人殺しにすることで呪いをかけてしまった神野も二人とも救い、自分は死ぬという結論に至ったらしい。

 うむ、上手く説明できないな。
 でもこれ読んだ時、頭がいいって大変だなって思った。生き難い、生きづらい。
 彼女は多くの人に影響を与えていて、彼女一人の死がさまざまなことを巻き起こした。だけど、その死に救いたいという思いがあったとは。だが、この子は聖女じゃないから性質が悪い。ずかずかと入り込んで、一方的な救いを押しつけられる感。

 うーん、上手く言えない。ただ彼女はもっと気楽に生きればよかったんじゃないかと思うよ。
 分からない、女子高生分からない。最後に野間と神野がいい感じなったのかも僕には分からないよこんちくしょうっ!

 では、今回はこの辺でお気に入り。
 ダックスフンドの憂鬱より、高志が猫の一件を遊びに来ていた直子に話すシーンから。物語とは関係なく、高志の話を聞いてなんてことないように猫の件についての情報を集めていた母の姿を見ていった直子が言った言葉。


「いっつも人のために忙しいよね。普通はさ、みんな自分のことで忙しがってるじゃない? わたし尊敬しちゃうな、おばさんのこと」


 この時はまだ小宮夫妻が両親だと思ってなかったからさ、それが分かったらこの母の強さを実感した。てか、この物語の女性癖が強いから癒しだったわけですよ。
 でも、すごいよな。他人のために忙しい、それは私の価値観にはないことでした。こんな人になれたら人生違うんだろうな。




ガラスの麒麟
加納 朋子
講談社(2000/6/15)
posted by SuZuhara at 22:23| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする