2016年08月07日

冴えない彼女の育てかた 10



「……私は、このシナリオを、この結末を、許さない」


 夢を見た。
 私は誰かに会いに行って、そしてその誰かに押し倒された。いや色っぽいものではなく、くっつかれたせいでそれが誰か見えない。
 その誰かは死に体で生きているのが不思議なくらいとうに手遅れで、つらいなら頑張らなくていいと口にしていた。もうこれ以上私を待たなくていいよ、と。
 そしてその誰かは重くなった。その意味に泣いて、いったいこの人は誰だったんだろうとぼんやりと考えていた夢。
 ……ちょっと待て、本気でまずいんじゃないの俺。おすすめの鬱ゲーリストとかもらったせいだよねこれ。まだリストの一番上をプレイ中なんだけど、序盤の幼馴染みとのラブラブデートシーンでもう既に違う意味で鬱ゲーだよってなってるのになにこれこんちくしょうっ!


■あらすじ
 加藤と英梨々が仲直りして、倫也たち新生blessing softwareは制作のための合宿として温泉地に来ていた。それに詩羽と英梨々も合流して騒がしくなるかと思われたが、押しかけてきた紅坂朱音が二人を捕まえてフィールズクロニクルの打ち合わせを始めてしまう。
 そこに居合わせることになった倫也が見たものは、紅坂朱音に打ちのめされて泣く英梨々ではなく、全否定される詩羽の姿だった。


■感想
 冴えカノ最新刊です。
 加藤の正妻っぷりは不動だけど、ちょっと怖くなってるからだんだん胃が痛くなってきてるよ!

 今回はうはうは水着回と思いきや、詩羽先輩シリアス回でした。個人的に先輩は好きではないのですが、先輩回は好きです。
 初めこそ楽しい合宿までのごたごた、目的地つくまでのギャルゲ的選択肢とか、楽しかったですよ。加藤さん、倫也にキスのこと吐かせるとか怖いっす。

 まあ、序盤だけなんですけどね。
 紅坂さん出現で二人は打ち合わせに行くことになり、自分のこだわりなどを主張して渡り合っている英梨々だったが、先輩の方は全否定されて打ちのめされていた。
 どこが悪いとかそういった指摘はなく、「つまんねー」。打ちのめされた憧れの人を見て、倫也は作業が心ここにあらずに。

 そんな倫也に気づいていた加藤が先輩シナリオを書くことを勧めてくる。もうなにこの正妻。裏切りだと分かってて許してくれるとか、頭上がらないねこれ!
 倫也の想う天才で邪悪でヤンデレな黒髪ロングヒロイン。
 先輩との出会いから全てを書いて、萌え萌えのヒロインに仕立て上げたシナリオを読んだ先輩は震えた。

 嬉しくて? いいや、怒りで。
 倫也の書いた先輩シナリオはご都合主義。主人公と高校生小説家のヒロインが一緒に小説を作っていくものだったのだが、先輩はそれは許せない。
 だって、自分の作品は自分だけのものだから。作品の根っこの部分を誰かに頼るなど許せない、と。

 けれども、これは倫也のゲームだ。
 先輩の天才クリエーターっぷりは、ゲームのヒロインとしてはいらないのだ。
 倫也渾身のシナリオで二人は袂を分かつが、先輩の復活につながる。

 のちに紅坂さんが倫也に接触して来て、先輩がぶっ飛んだシナリオを書いたことを教えてくれる。その、狂気のキメラボスがいるゲームどれだけ待てばできますか? 五年、十年?
 この後語られる紅坂さんのやり方的な話は面白かった。やっぱこの人を嫌いになれない。かなり好きな分類だ。

 うーむ、展開としては英梨々の時と同じ展開だけど、先輩の話は面白い。しかもゲーム制作の話だからね、楽しかったです。
 引き続き次も買う予定ですが、しかし空気な加藤が恋しくもなって来ているから近々読み直そうかな。

 では、今回のお気に入りへ。
 先輩(仮)シナリオを書いている際、倫也は先輩とのことを細かく覚えていた。それだけ倫也に影響を与えた人だったのだ。


 忘れようったって忘れられるものじゃない。
 きっと、墓場まで持っていくんだろうって確信できるくらい、俺の中で存在感が大きいんだろうな。


 倫也の勝手な妄想、ゲームヒロインの設定としてだが、先輩のことをきちんと理解している。
 ここが好きな理由が確かあったはずなのだけども、ちょっと寝不足の頭が回らないのでらしいことを言って逃げよう。

 似て非なるものと分かりきっているほど理解できる人がいるというのは、それはすごく憧れるなー。
 









冴えない彼女の育てかた 10
丸戸 史明(著),深崎 暮人(イラスト)
KADOKAWA/富士見書房 (2016/7/20)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 23:30| Comment(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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