ようこそ、人類の生み出した全ての叡智が管理される場所――アカシックレコード“悪魔の書架”へ。
ふー、また随分と久しぶりになってしまった。
ちょこちょこ本は読んでいるけれども、それ以上に暑くて死んでいる。夏は本気で弱いんだって。
しかしこのままぶっ倒れてもいられないから動き出さないと――ああ、クーラーの効いた部屋でな!
もうFGOの頼光ピックアップでエミヤ(オルタ)、エミヤ(アーチャー)、エミヤ(アサシン)という爆死で石を使い切ったことからいい加減立ち直らないといかんしな。
■あらすじ
片倉彰文は記憶が失われているような感覚に襲われていた。そんな中で友人の甲斐浩太郎が投稿している小説サイト『悪魔の書架』を管理人を名乗る悪魔から浩太郎が書き、そして現在は放置している作品が紙魚よって蝕まれ、改変され食い荒らされることによっていずれ消滅するという事態に陥っていることを知らされる。
同じく紙魚と戦う作者(クリエーター)として鳳かりんとともに作品の中に入り、キャラクターたちの力を借りて世界を正していく。
読者である彰文はクリエーターではなく自分のキャラクターも持たないが、なぜかライラという夢魔の少女をして同行し、その先でライラとの関係、そして失われた記憶について知ることになる。
■感想
久々に行った本屋で手に取ってみた本。というか、このレーベルを初めて見てデザインが良かったからというのが目についた理由かな。イラスト帯を外すと真っ白のデザインとか、良いと思います。
だから、この作品自体の背景を全く知らなかったのです。スマホゲームであることとか、作者さんの前作とか一切知識がない上に辛辣になってしまうかもしれないので注意。
内容はざっくりあらすじで語ったけれども、私はこの世界観がいまいち理解できていない。そして好きではない。
要するに『悪魔の書架』はなろう等の投稿サイトで、登場人物たちはそこに投稿する作者だ。そして主人公はそこの読者。この関係は僕らにとって非常に慣れ親しんだものだけど、彰文がチート読者すぎる。
連載物で続きが投稿されずに放置されたり誤字などがあったりすると紙魚に食われて作品が永遠に失われる――失われたことすら分からないという完全消去されてしまう。
それを阻止するために作者である浩太郎が悪魔に呼ばれた時に彰文も一緒に来てしまう。
自キャラを召喚して戦うとか、作者なら憧れるものでしょう。そりゃあ僕だって子どものころはポケモンとかゾイドとか本当だったらって何度も考えたさ。
ほら、レクリエーターズのアニメとかもロマンがあるよな。けれども、これはそれらとはちょっと違う。
物語の世界に入って物語をなぞりながら紙魚を見つけ戦う。けれども、その戦いのために作者はキャラの設定は盛れる。作者以上に作品を理解している読者は作者じゃなくてもキャラクターを召喚できるとなると、それ何が楽しいんだ?疑問符しか私は湧かなかった。え、これのどこに負ける要素があるの?
かりんが怪我したが浩太郎の作品は紙魚退治できたため、浩太郎はもう戦わないと言う。作品のために死ねぬ、と。しかし、リアルな世界でポケモンGOしながらかりんと接触するよ、かりんには許嫁がいるけどなんかあれで浩太郎とファーストキッスするよ。その間に彰文は失われていた記憶、幼馴染の穂村千尋がいる作品に入るよ。
……そこから始まる両想いだけど気持ちを伝えなかったことでの擦れ違い、モテモテ彰文、千尋の嫉妬とか、なんだかおいていかれて進んでいく。
ずっと読みながら考えていたんだが、私がこんなにも興味を抱けないのは彰文が無色というかなんの感情も抱けないのがこの作品に入り込めなかった理由だと思う。共感とか一切抱けなかった。
浩太郎が微妙に主人公しててかりんとの恋愛描写とかあるが、あくまで第三者でどんなことにも理解のある彰文。
千尋は彰文が転校しちゃうことから絶望し、今までのモテモテだけど彰文は気づかない状況を小説に書いて彰文に見せようと思ったのに間違えて投稿しちゃってバッシングを受けて歪むという地雷っぷりもあれだが、彰文になんの愛着も持ってないから話に全然入れないまま終わってしまったよ。
1とナンバリングされていないから続くか分からないけれども、彰文と千尋、浩太郎とかりんの恋愛よりも悪魔の書架で起きていることや世界観についての方がもっと知りたかった。
読み終わってからスマホゲームであることを知ってその辺はゲームでってことかと納得したけど、なにかと消化不良でした。
では、今回はお気に入りではなく印象的なシーンで。
作者である浩太郎も思い出すことのできないキャラクターを読者である彰文は覚えていて、そして召喚できると分かった時の台詞。
「世に出した時点で、作品はもう作者だけのものじゃないんだよ」
ここから世界観について掘り下げられると思ったら、まさかの千尋と二人の世界=物語へだった。
悪魔のこと全然語られなかったなー、残念だ。
アカシックリコード
水野 良(著) 中原,ずじ(イラスト)
KADOKAWA (2017/6/15)