たった一時間半で世界は一変した。
冬アニメが始まっていろいろ見ましたが、やはりクルシュは嫌いだと知るw やっぱりオーバーロードは好きだが、今回BDに小説つかないのか……。
私の近状としては時間のない日々を送ってますが、そろそろゲームがしたいと発狂し出す頃合いかと。ニーアは全然進んでいない。今はノベルゲーがしたい気分なのである。
■あらすじ
神紅大学ミステリ愛好会の葉村謙は会長、神紅のホームズこと明智恭介は事件を求めて映研のサークル合宿にどうにか参加しようと画策していた。すげなく断られていたが、探偵少女・剣崎比留子との取引により参加できることになる。
心霊映像を撮るというのは名ばかりでペンションを提供するOBが主導権を握る合宿は人間関係から複雑さを見せるが、それ以上に想像もできなかった事態に襲われペンションに立てこもる。
そんな中で起こった殺人事件に、葉村たちは外と内からの恐怖に晒されることになる。
■感想
ふらりと寄った本屋で手に取ったのですが、あまり受賞作品とか興味ないので読み始めの受賞の言葉で知る。今回はどちらかというとあらすじよりも表紙に惹かれたわけですが、こういう展開だったとはなー。
いつものようにネタバレありで行きます。
さて、一言で言えばこれはクローズドサークル×ゾンビ。
びっくりな組み合わせですが、なかなか面白かったです。
始まりは大学の一風景。ミステリを求め解決する神紅のホームズ・明智とその助手でワトソン役の葉村の学食推理は笑った。
事件を求めていた明智は心霊映像を撮る映研の夏合宿に目をつける。ここでの心霊番組に対する意見は同意。心から同意。どれだけ縋っても参加は認められないのだけども、探偵少女・剣崎の登場で事態は一変する。
サークル合宿に参加させる代わりに理由は問わないという取引を持ちかけられて受けることになるのだ。ここで夏合宿がOBに女子を提供する場であること、「次の生け贄は誰だ?」という脅迫状が届いたことなどかなりきな臭いのだが、それでも探偵は舞台に登るのである。
少ない参加者の中で映研合宿が始まり、バーベキュー後の肝試し中で一緒になった剣崎が葉村に「私の助手になってほしい」と言う。
正直、剣崎が葉村を贔屓していることは分かったが、彼女の思考は読めなかった。読了後も私は剣崎に対してどうも像が結べないというか、キャラが掴めないでいたのだけどもこれはたぶん彼女だけ現実味がなかったんだと思う。
美少女と言われればそれなりの人物は思い浮かべられる。けれども、剣崎に対してだけ小出しに実は胸がでかいとかそういう情報が与えられるので分かりにくかったのだと思う。強いのか弱いのか、ラブなのかよく分からんみたいな彼女だったので出てくると嬉しい反面、想像が難しかった。
閑話休題。
どっきどきな肝試し中、葉村たちが遭遇したのはゾンビの集団だった。近隣で行われたロックフェスでのバイオテロでゾンビ化した人たちが流れてきたのである。
肝試しメンバーは戻ってペンションに逃げ込むが、ここで逃げ切れなかった明智が噛まれて脱落。
ペンションの一階が包囲され、二階三階とバリケードをつくり籠城することになるが、一夜経って一人が殺されることになる。
映研部長だったのだが、外はゾンビというクローズドサークル内で起きた殺人に葉村と剣崎は捜査していく。しかし、ゾンビの存在もあり上手くいかない。また一夜でもう一人死ぬ。OBの先輩だった。
ここからも書いてもいいんだけど、ちょっと上手くいかなかったので割愛。
私は本格ミステリはほとんど読まないので葉村ほどの知識はないが、殺人事件としてはわりと穴がある。けれども、状況がそれをカバーする。
葉村が真実を隠していることは分かる一文があるのですが、葉村が犯したミスには気づかなかった。俺も腕時計はアナログ派なんだ。主人公は震災経験者とか攻める内容だなと思いましたが、私も譲れない部分に関しては頑ななので彼のことはあまり悪く思えないぜ……。
結末の推理披露とゾンビの襲撃。
俺のホームズ、私のワトソンにはぐっとくるものがありましたが、私も作中のゾンビマスターほどではないですがゾンビに触れてきた者として言いたいのが、ゾンビのスペックはもう少し高くあって欲しかった。
繁殖のために生者を襲うけど、音に反応したりするわけではないのでその辺はノータッチ。ただ前へ前へ。だから殺しが成功した、復讐が成立したわけだが、ゾンビさんにはもうちょっと頑張っていただきたい。
いろいろ書きましたが、それだけよく考えるほど面白かったわけで久々に読書した気分でした。ハードカバーは持ち運びにくいけれども、読み応えあるぜ。
では、ここらで今回のお気に入りに。
わりと付箋を使っていたのですが、そんなに心惹かれるところはなかったかな。なので最後の一番いいところから取らせてもらおう。
迫り来るゾンビに屋上まで追い詰められたメンバー。ゾンビになった明智の姿に固まる葉村を助けたのは――剣崎だった。
「あげない」
強い口調。
「彼は、私のワトソンだ」
自己投影かも知れないけれども、葉村の気持ちはすごいよく分かるんだ。明智を慕ったのは初めて奢ってくれた――自分を必要としてくれた人だったから。
そういう人を裏切るのは難しい。ゾンビだろうとなんだろうと手にかけることなんかできるかよ。
助けてくれた君には心から感謝するが、大切な人を殺した君を受け入れるのは難しい。ラストの葉村と剣崎の関係が微妙な距離感があるのはそうであってくれたらいいな。
屍人荘の殺人
今村 昌弘
東京創元社 (2017/10/12)