2018年04月11日

キャロリング



「好きな人が自分のために手を汚すことが平気なの」


 FGOでアナスタシアピックアップはスルーで行こうと決めていたのに皇帝とか来たら回さざるを得ない! と、貯めていた石を全て失う爆死。
 GEのレゾナントオプスが始まったぜ! アリサのためにシナリオ進めて回すぜ! と、シナリオを進めても出るはずがなかった。
 ……うん、知ってた。GEなんかソーマさん二人来たけど、アリサは一向に来ない。しかし、ナナの誘引の優秀さとタツミさんの格好良さには救われる。
 だけれども、神機を作る楽しさがないのは残念だなー。



■あらすじ
 子ども服メーカー『エンジェルメーカー』はクリスマスの日に倒産が決まっていた。それまでの残り少ない時間、会社に併設された学堂に通う小学生・航平は母の海外赴任が決まり、両親の離婚の危機に悩んでいたことから、社員の折原柊子に父親の元に連れて行ってもらうことにする。
 母親には内緒のその行動に気づいた柊子の元恋人である大和も首を突っ込んでいくことになるが、家族同然である部下たちを守るために取り立て屋の赤木は航平を誘拐してなんとか金を得ようとする。


■感想
 あらすじがまともに書けたことなど、ない。
 今回は大分時間がかかってしまいましたが、前回読んだ『代償』と一緒に買った有川浩さんの『キャロリング』です。
 正直、あらすじも何も読まずに買ったので初っ端の誘拐騒動には驚きましたが、いつもの安定の有川さんでした。

 有川さんの作品は結構読んでいるのですが、今回の主人公・大和の過去には泣かされましたなー。
 不憫とか報われないとかだけならまだしも、守ろうとした親にすら理解されないというのは悲しすぎた。大和に英代がいてよかった。
 だからこそ余計に、柊子との食い違いも理解できて辛いんだがな。

 父親の家庭内暴力をいつの間にか自分のせいにされていた挙げ句に、離婚後に再び父親とよりを戻すという母親に呆れた大和俊介は親とそれ以上関わることなく生きていくことを決める。
 そして、子どもの頃から気にかけてくれた母の友達・英代の元で仕事をしていたのだが、ついに倒産の日を迎えることになってしまう。

 五人と小さいながらもやってきた会社が潰れてしまうことを悔やみながらも、せっかくクリスマス倒産なのだからと最後のパーティーをしようと決める。

 しかし、その日までが長い。
 会社に併設された学堂の生徒・航平の親は離婚の危機を迎えており、子どもながらに親の喧嘩を止められなかったことを悔いていた航平は父親に会いに行くことに。
 ここで大和と柊子の終わりを先に読ませておいて航平にその傷をつかせるのはズルい。親の離婚なんて珍しくはないかもしれないけれども、不幸度で航平に勝てるのは大和しかいないもんな。

 航平が父親に会いに行くと父親が接骨院で働き、そこの院長に惚れていたりと、さすが不倫で別居中になっただけはあると感心する始末があった。ここには他にも院長に惚れているおじいさん・大嶽とか居るけれども、誰も取り立て屋のことを心配していなくておかしいなと思ったら自分の気持ちしか見ていないという指摘があって納得した。
 航平と大嶽が協定を結んだことがきっかけで大和にバレてしまうのだが、こいつは本当に歪まずに育ってくれたなぁと嬉しくなる。
 柊子のことは親には言うなとか、航平父にも大嶽にもびしっと言ってくれるし、何より取り立て屋にビビらず対処してくれるのがいいな。

 ここでまさかの取り立て屋サイドになるのだが、親の引いたレールのせいで取り立て屋となり「赤木ファイナンス」を立ち上げた赤木は、上から使えない部下を押しつけられつつも仕事をこなしていた。
 赤木は優秀な男だったが、居場所がない者同士で集まれるここが気に入っていた。
 しかし、事務員として引き取っていた少女・レイが消えた父親の代わりに借金を払うために風俗に行かされることになってしまう。そのためになんとか金を集めようとしていたところに、航平から院長への気持ちを疑われた大嶽が借金を肩代わりしようとやってくる。

 金をだまし取る予定だったが、大和に邪魔されてご破算。
 大和たちの方も航平が父に会っていたことが母にバレて、書きためていた自分の気持ちを物語として書いたノートを渡して父に会うことの許可を得た航平が父親に会いに行ったところで柊子ともども誘拐されてしまう。
 これは部下の男二人の暴走で赤木にも予想外であり、引くに引けなくなった誘拐劇が始まるのだが、いやー、大和と柊子の関係はいいなー。お互い分かり合っていて大好きなくせに一度の傷で触れ合うことはできないってのが。
 赤木とレイの父と子のような関係も、ベンさんと朝倉のでこぼこ感もなんでこいつらの話をもっと読めないんだろうと思ってしまうほど好きでした。
 物語としては特に変わったところはなく、予想通りの終わりを迎えましたが、エンジェルメーカーの社員ズはキャラクターが濃くて面白かったです。

 では、今回のお気に入りに。
 大和は毎回年上を呼び捨てにしてくる航平に文句を言うのですが、最後の最後で大和だけでなく納得させられてしまった航平の言葉をあげておこう。


「いいじゃん、呼び捨てで。友達だったらさん付けなんかしないよ」
 思いがけない言い分に思わず目をしばたたいた。――まあ、それなら許容範囲か。


 大和が柊子に感心する辞書にないという表現も好きだし、英代の言葉はいちいちこっちの弱ったところに入ってくるので参りましたが、それぞれのクリスマスを過ごすために起きた物語はなかなか面白かったです。







キャロリング
有川 浩
幻冬舎 (2017/12/6)
posted by SuZuhara at 22:20| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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