大事故の現場には、必ずその男がいる!?
十年近く愛用していたブックバンドがついに使えなくなる。ゴムが伸びきってしまったんだなー。鞄の中で本がバラつかないということで重宝したのですが、なければないで困るというほどのものでもない。
しかし、愛着というのはなかなか捨てられないもので、まだ戦えると思う自分といつまでも過去に縋りやがってと罵る自分もいたりして、僕はブックバンド一つにいったいなにを考えているのだろうと不思議に思う次第である。
■あらすじ
すずめバスのバスガイド・町田藍は霊を感じやすく行く先々で霊がらみの事件に巻き込まれてきた。藍と行く幽霊がらみのツアーなどで常連客がついていたが、霊と話せるなどと有名になってしまった藍はどんどん霊がらみの事件に巻き込まれていく。
■感想
赤川次郎さんの怪異名所巡りシリーズもついに9巻か。さらっとしていて読みやすいので好きなのですが、今回はいつにも増して藍が物わかりのいい霊のスペシャリストになっていて笑った。
短編集なので特に面白かった二つを紹介。
まずは「救命ボートの隙間」。
戦時中に日本軍の少尉に殺されかけた母子は、少尉の部下が少尉を殺したことによって生き延びた。それから時が経ち孫娘の結婚相手がかつての少尉の孫であることを知り、霊がらみでは有名なバスガイド・藍に助けを求める。
どう展開するのか予想できずに読んでいて面白かった。
仰天するような事態はないけれど、こういう洗脳というか思い込みというか、こういう奴はいそうだと思うので戦々恐々ですが、かつて助けてくれた伍長の孫まで参戦というのは王道すぎるが嫌いになれないから困りものだ。
次は表題にもなっている「死神と道連れ」。
たった一人でバスを手配した男・納谷はかつて事故で最愛の人を失っていた。しかし、それだけではなく、納谷は関わった事件の全てで一人だけ無傷で生還していた。
それに悪意を抱く遺族たちは事故に見せかけて納谷を殺そうとしていた。
特別なことはなく愛する人を追って死のうとする男と生かそうとするかつての女と今愛している女、といったところか。納谷が達観しすぎていて死にたがっているのがよく分かってしまう。
結婚しているか、という納谷の質問の真意に気づく藍はさすがだと思う。
ほぼ全編を通して常連客・真由美とのやりとりは楽しい。真由美が金持ちだから不可能を軽く簡単にしてしまう。真由美が冗談で運命だとか言いますが、軽くそれに近いと思うしね。
では、ここらで今回のお気に入りといきたいところですが、特に印象的なところはなかったので割愛。
強いて言えば、真由美が父親の家族カードを使う関連のシーンだけど、さすがお約束だけあって何度繰り返されても面白いのだ。
死神と道連れ 怪異名所巡り 9
赤川 次郎
集英社 (2017/9/5)
ラベル:赤川次郎