「モンスターはリアルだ。ゴーストも。
どちらも我々の内部に生きていて、ときどき人に一杯食わせるんだ」
朝起きて窓を開けると、一夜にしてでかい蜘蛛が窓に蜘蛛の巣を張っていた。
もうね、戦争だよ。俺の先制攻撃で巣を壊す。蜘蛛の巣は壊すと呪われるとかなんとか――うるせぇ知ったこっちゃねぇ!
蜘蛛は様子を見ている。怖がる俺が撤退する。蜘蛛は再び巣を作り始める。俺の不意打ち、蜘蛛の巣は壊れた。を繰り返しているのですが、僕んち裏手が山なせいか結構虫に襲われる。そして私は虫が怖い。自分にないモノを持つモノ、できるモノは怖いんだ。あいつら足ありすぎじゃない?
そんなこんな性格なので、僕にとって世界の大半は怖いものばかりだよ。
■概要
「情報」ではなく、「コトバ」を紙の本で残したい。そんな思いを実現すべく創刊された、集英社クオータリー『kotoba』2020年夏号、スティーヴン・キング特集。
■感想
まず、ふらっと入った本屋でこんな赤い装丁見たら手に取っていた。しかも、最近『書くことについて』読んだばっかりだったし、自分の中でタイムリーなスティーヴン・キング特集だったので購入。
こんな写真をあげといてなんだが、中身はほとんど文字である。
著名人によるキングへの想いや解説が書かれていてなかなか興味深い。読んでいて面白かったのは、浦沢直樹さんと永井豪さんで、二人の漫画を読んでいる身としてはこういう話が聞けるとわくわくしてしまう。
でも、中でも町村智浩さんの「キングと父になること」が一番印象に残っている。
キングのアル中やヤク中については知っていたが、その葛藤の中に父親に捨てられたことが根幹にあるとは思わなかった。幸いなことに私は親に捨てられるという経験はしていない。だからこそ、物心つく前にいなくなかった存在がそこまで傷跡を残しているとは思っていなかった。
キューブリックの『シャイニング』に大してキングが激怒したことは有名だが、その理由が原作改変だとか気に入らないとかふんわりとしか分かっていなかったんだ。
ここに書かれた怒りが正しいかなんてキングにしか分からないだろうけど、『シャイニング』でジャックに父親としての自分を、ダニーに息子としての自分を重ねているというのはすごく説得力があった。
だから、原作と違うジャックの印象や最後の言葉が削られたことについて怒ったんだろうな。
あと、キングの未翻訳を含めた著作、映画化作品全解説はめちゃくちゃ嬉しい。俺、『図書館警察』が読みたいんだけど、売ってなかったんだよな……。
著作は読んでいないですが、映画は結構見てますね俺。
一番好きなのはダントツで『ミザリー』。怖いを通り越して、どう生き残るかを考えさせられる。相手の望む言葉や行動をしても、結局アニーの気分次第なのだからやっぱり人が一番怖い。でも、不思議と私はアニーをサイコパスとは思えないんだよなー。
もちろん、知らない作品もいっぱいあって『キャリー2』なんかもあるんだね。『ペットセメタリー』のリメイクは楽しみにしています。
キングについては半分くらいで、あとは連載コラムなどがあります。
正直、興味のないものは読んでいませんが『水を運ぶ人からスタジオジブリ証言録〜』は面白かった。
皆さんのキング好きが分かるマニアックな考察がされているのでそういうの好きな人にはお勧めだが、求められるキングに対する基礎知識のハードルは高い。私は映画を観てたのと、『小説作法』(新訳版『書くことについて』)を読んでいたからなんとかついて行けたが、みんな口々に原作読めと言ってくるから大分居づらかったぞw
特に『小説作法』はみんな読んでいるのな。役立てることができることが著名人たる所以なのでしょうな。
では、ここらで今回のお気に入りへ。
解剖学者・養老孟司さんのインタビューにて最後にこんなことを言われている。
まだキングを読んだことがない人が、私には羨ましい。なせなら、懐かしい恐怖と初めて出会う機会が、その人には残されているからです。
ああ、こんなこと書かれたら読むっきゃないじゃん。近々探してきます。
kotoba2020年夏号
集英社 (2020/6/5)