「審神者として、エルメロイU世が神の名を審らかにする」
年末からまとまった休みなんてもらってなかったこともあり、ちょこっと休みをもらったので積み本を読むよ。撮りだめしたシンプソンズのシーズン31も観るよ。もうこれだけで僕は幸せなのだった。
いやー、実際に小さめの音で音楽をかけて、犬の寝息を聞きながらの読書は良かった。携帯の呼び出しもログインもミッションも気にしないでいいのは素晴らしい。
年始にはFGOで村正課金してしまったからな。簡単には辞められないのだ。
■あらすじ
講義のためにシンガポールへ訪れたエルメロイU世はそこで内弟子のグレイに「教師をやめるつもりだ」という心内を告げる。その内容にグレイが驚く暇もなく、エルメロイ教室の生徒が海賊に捕らえられたというメッセージを受け取って救出へと向かう。
しかし、乗り込んだ海賊のアジトで出会ったのは六本の幻手を持つエルゴという青年と海賊のコンサルトをやっているというエルメロイ教室の生徒・遠坂凛だった。
凛が拾ったという記憶喪失の青年・エルゴに自分と近しいものを感じるグレイとエルゴに助言をしたことから「旅が終わるまで」という期間限定の教師と生徒となったことからエルゴに関わるとある三人の魔術師の実験に巻き込まれていく。
■感想
発売日には買っていたけれども、やっぱり今まで読めてませんでした。いやー、凛が出るのは知っていたけど士郎もいるんですね。この時代のロンドン読みてぇ。ライネスもいて、凛と士郎は恋人じゃないまま来てるからルヴィアとの取り合い激化とか最高じゃないですか。エルメロイ教室の聴講生になりてぇ。
あとがきに書かれたことを最初にあげておくと、この世界線――ルートはセイバー、凛、桜のどれでもないという。いずれ解体戦争に至る独自ルートなんだと。
おおう、いいないいな。どれか明言すると未来が決定されてしまうけど、解体戦争は是非とも読みたいけどあるかもしれないぐらいのレベルがいい。結末を受け入れられるとは限らないから、それくらいの余白があるといい。
さて、本編へ。
始まりは海賊アジトへの強襲から。
U世がいる時点でヤルグなる坊主がグレイであることは言わずもがな。遡ることちょいと前でU世とグレイがシンガポール料理を楽しんでいると、生徒が海賊に捕らわれているという手紙を受け取ってきたというわけ。
まぁ、読み進めているとひしひしと感じるものがある。用意周到な結界、グレイの知らない体術、そして「――Anfang」の詠唱。
ああ、これ凛だわ。誘拐とかない。これ、自分から首突っ込んでるわ。と僕らは一瞬で理解するでしょうな。彼女はそういう人だ。
しかし、グレイは凛と面識がないからU世の制止の声にも止まらずに攻撃しかけるが、そこで本作のキーマンであるエルゴ青年の見えざる手・幻手によって絡め取られてしまうのだった。
再開して話を聞けば案の定、凛は目当てのものをサルベージするために海賊たちに協力してギブアンドテイクでコンサルタントなることをしていた。後々になって分かるけど、この海賊には孤児が多く、そのこともあって凛は生きるためにサルベージ技術や果物の栽培などなどを教え込んだ。
ここを指摘されての凛の返答は、ああこれは凛だわ、って嬉しくなるくらい凛だった。
話が反れましたが、U世の前でエルゴと凛の模擬試合のようなものをやってU世が教師として敏腕っぷりを見せてくれる。観月法っていう瞑想は初めて知った。読んでからやってみたけど、僕には合わない。月を徐々に大きくするんじゃなく周りを小さくする想像しかできなかったんだ。月の大きさは常に最大。だから周りを最小化させようみたいな。……むぅ、俺の人間性が出ますね。
ここで重要なのは、凛とグレイの会話でグレイとアーサー王が似ていること、凛とU世が聖杯戦争の参加者、グレイの成長が止まっていること、エルゴが教師を辞めようとしていたU世の期間限定の生徒になったこと。
ゆっくり話を聞きたいところだが、アトラス院からエルゴを渡せと骨の巨人が現われる。
ここでvs骨軍団が始まるわけだが、初戦はよう分からんままに終わる。
グレイの抜錨前に敵の魔術師・ラティオがU世の首に剣を突きつけて交渉。グレイの宝具を懸念してだったが、最終的に乱入した鷹によってエルゴの頭がぴゅー。うん、ぴゅー。
結果としてエルゴが頭半壊だったはずなのに、島が手の形に潰されたとか云々と言われたら、魔術ってすごいなぁと理解を放棄する。
むしろですね、僕はアトラス院が苦手なんですよ。彼らが出てきた時点で半分ほど理解を放棄する。魔術協会とかは受け入れられるのに、不思議だね。
ってわけで、細かく理解はできていませんのでざっくりと。
曰く、エルゴとは神を喰らった男なのだという。
アトラス院と彷徨海バルトアンデルス、そして――な三人の魔術師が太古の実験で作りあげた存在。
エルゴが常にお腹が空いているのは、神を喰らったせいでそれ以外のものでは満たされない。ある意味神に近しい存在を内に秘めているグレイを見ると食べたくなってしまっていた。
仕切り直しの第二戦はおもろいっすな!
凛が率いる海賊たちとも協力して敵地へ向かえば、そこには凛が探していた沈没船。
ラティオと骨の巨人・タンゲレとの戦闘はロンドミニアドすら囮りで、フラットのハッキング、凛のアベレージ・ワンとしての万能性を前面に出しての勝利。ああ、エルメロイ教室総動員な戦闘見たいな! 士郎が戦うのも是非見たい!!
そして、ラティオからエルゴの記憶飽和――内にいる神の存在が大きくなればなる程自身を失う状態をどうにかするには「神を還すしかない」と助言をもらうが、ここで鷹さん乱入。なんと仙人だという。項羽も虞とも知り合いとか――今回は中国系で来るんですかね。U世が孔明だしでFGO的に見ると面白い。
ほんとざっくりなんだけど、かつてエルゴで実験していた三人の魔術師はエルゴに対しての干渉する順番を決めていて、一番はラティオのクルドリスだったんだけど、助言が協定違反となり二番の仙人・ムシキに移ったと。
ムシキは真っ白の炎ような人になってエルゴにグレイを喰わせようとするが、エルゴはそれに耐えてみせ、ラティオと組んで即席連合軍へ。
アトラスの高速演算による未来視のような指示に従い、グレイはムシキに立ち向かうが相手が強すぎる。ゲームならこれ負け戦闘?って思う展開だが、これは耐久戦である。
U世がエルゴに個人授業をする形で、エルゴの中にいる神を問う。
エルゴの中にいたのは、斉天大聖孫行者。
この辺りの詳しいことは一読じゃ分かり切れていない。エルゴはキーマンだから明かされきれていないし。凛が目立ちすぎるからエルゴ自身の印象があまりないのですが、次の舞台は東京だとか。
しかも、最後に橙子さんから両義幹也宛の手紙が届くとことかめっちゃ気になる展開で終わる。
定期的に出てくれるという信頼はあるのでワクテカ待機してます。そうなんだよ、DDDの続きとか魔法使いの夜も続き待ってるんですよ。やっと月姫がプレイできるのは朗報だけどもね。
読み始めるとスラスラ読めちゃうので今回も楽しませていただきましたが、如何せん、魔術師たちの実験云々は明かされないこともあってむつかしいですね。物語が進めば舞台が難しくなっていくけども、前回までのハートレス並に匙を投げたくなる事情っぽくて困る。
けど、エルメロイ教室に凛たちも加わってるし、今回は出番があまりなかったライネスとルヴィアたちがじゃんじゃん出てくれる時を楽しみに待っています。
では、ここらで今回のお気に入りへ。
今回は不覚にもムシキさんの格好いいと思ってしまったシーンを。
ラティオの分割思考と高速思考による演算で散々苦しめられた後、ムシキはそれを全て簡単に受け止めた。
「つまりさ、計算に頼ってる段階で、致命的に遅いんだ。いちいち演算して行動に移してなんて手間を踏むくらいなら、最初から骨に考えさせておけよ。……で、時計塔の君主も見たよな。手を出したのはこいつら。なら、順番はご破算だ」
俺らがボスだと思っていたのは中ボスで、しかもその後共闘してのボス戦みたいな感じでわっくわくして読んでましたが、今回は本当に「事件簿」ではなく「冒険」なんだな、と。
相変わらずU世の解体は楽しいが、ミステリ的な要素が薄くなったとも感じた。どうなったとしても、これからどうなっていくのか楽しみにしてます。
ロード・エルメロイU世の冒険 1巻「神を喰らった男」
三田誠 イラスト・坂本みねぢ
TYPE-MOONBOOKS (2020/12/25 )
ラベル:TYPE-MOON
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