2021年06月06日

砕け散るところを見せてあげる



 俺はただ、玻璃を守りたいだけだった。玻璃しか大事じゃなかった。


Screenshot_20210529-004829.png
 うぇーい、なんとかふじのんの召喚に成功しました!単体宝具アーチャーってあんまり持っていなかったので速攻で育てましたが、あれだな、FGOを辞めるのがまた遠ざかったな。辞めたくないけど、結局時間ばかり取られてしまうのは……ぐぬぬ。
 もうすぐ六章も公開ですが、月姫発売の方が嬉しい。けど、遠野家の話は入らない、だと……私は月姫自体はやったことがないのですが、どう考えても秋葉派だと思うんだよなぁ。
 てわけで、PS4版を予約済みです。もしかしたらFGOコラボもするかもしれないのでえっちゃら続けてます。


■あらすじ
 大学受験を控えた高校三年生の濱田清澄は全校集会でいじめられている一年生の女子生徒――蔵本玻璃の存在に気づく。たまらず助けに入った清澄だが、それまで反応らしい反応をしなかった玻璃に絶叫という拒絶をされてどうすればいいかわからなくなる。友人から関わるなと言われても気になってしまう清澄は勝手に玻璃の隠された靴などを回収したりしていたのだが、ある日、玻璃がトイレの掃除用具入れにずぶ濡れの状態で閉じ込められていたところを助けてから玻璃は少しずつ清澄に心を開いてくれるようになる。
 ヒーローを自称した清澄との会話から玻璃はいじめを行うクラスメイトに立ち向かったことでいじめは一端終息していくのだが、清澄は「全部UFOのせい」と言う玻璃の言葉の本当の意味に、玻璃に関する本当の問題について知ることになる。


■感想
 映画館の番宣で気になっていたのですが、どうにも時間が取れずに観に行けなかったので原作を読むことにした。竹宮ゆゆこさんって『とらドラ!』の方だよな。電撃文庫のイメージが強かったのですが、今はこっちで書いているんだな。最近は全然ライトノベルどころか本自体を読めていなかったのでこの辺りの動きが全然分かってませんな。

 さて、どこから始めようか。
 UFOがどうたら、という話から始まるのでちょこちょこ混乱しますが、わりと早い段階で高校生の清澄が過去の時代であることは分かった。
 辻褄が合わないからだ。初めに高校受験間際で父親と同じ大学に行くんだと意気込む青年の言葉と清澄の言動はちょっと食い違っていた。いる、ように私には感じた。

 清澄にとって父親はヒーローではない。
 清澄の過去、いじめのような経験についての話で携帯が出てこないこと。

 後者が一番の違和感だった。だって、僕の高校時代だって携帯は重要アイテムだった。今はLINEのグループが高校入る前からあるとかなんとか……人嫌いには怖すぎる時代だわな。
 待ち合わせで待ちぼうけなんて経験は携帯さえ持っていればあり得ない。だから、これは過去の話なんだなって思った。清澄本人はヒーローに固執しているわけでもないし、冒頭の人物とは違うなって。

 だが、ここではそんなことは気にしない。
 まずは濱田清澄と蔵本玻璃の話だ。清澄はいじめの現場を見てしまったことから見捨てるなんてことはできなくて、玻璃のクラスを訪れるようになる。
 初めは玻璃のことが全然分からなくて、清澄を拒絶する様子から「くらもとニードル」なんて呼んでいたりと清澄と同級生たちの会話は面白い。
 単語を並べるように短く話すくせにしっかりと見てる尾崎や「くら・もとはり?」とかふざけて言ってくる清澄の味方である田丸の存在は本当に愛しいよな。友達ってたくさんいらないんだよ。一緒にいて楽しいな、ずっと続けばいいなって思える少しの人でいい。

 女子トイレの掃除用具入れに閉じ込められた玻璃を助けたことから清澄と玻璃の距離は近づいていく。
 玻璃は清澄をいつも睨んでいたけれども、それは清澄がそう思っていただけで本当のところ玻璃は清澄に感謝していたしずっと拒絶したことを謝りたかった。
 それを伝えるというか、冬にびしょ濡れ状態の玻璃が堰を切ったように話し出すシーンは清澄でなくても「よく喋るな」と言いたくなるw
 濡れたままでは帰れないという玻璃のために清澄は知り合いのクリーニング屋のおばちゃんに頼んで乾かしてもらうのだが、……本当になぁもう、玻璃が可愛かった。清澄に完全同意。でも、俺は尾崎姉妹派です。

 これ以降、清澄は玻璃の登校前に待ち伏せするようになるのだが、玻璃が掃除用具入れに閉じ込められたかもと助けに行ってくれた同級生がいた。尾崎妹である。後輩たちからの清澄の渾名であるヒマセン呼びしながらも、玻璃を助けたこと褒めてたり、自分も玻璃の眼鏡拾って届けてくれたりする。
 この辺りでなんか上手く行きそうな感じだったが、玻璃の教室で一波乱ある。詳しく言うと、いつも黙っていた玻璃だったが庇ってくれた尾崎妹が攻撃されたことで立ち上がり、清澄が顔面で投げられたおはぎを受け止めたところで教師が介入し、明るみに出たことでいじめは一端終息する。

 しかし、本当の問題はここではなかった。
 玻璃の口から語られる家族の話、玻璃がいじめられるきっかけとなった夏でも肌を晒さない変な格好でクラスがそういう雰囲気になったという。しかし、手は一切あげていないという。なのに、玻璃の身体には暴力の後がある。
 清澄も気づいたから玻璃の父親と接触するわけだが、ここでの清澄の母の機転は本当に頭が下がる。自分だったら絶対にここまでできないが、すぐさま察して数分の会話で必要な情報を引き出した。
 清澄も確信する。玻璃は父親から暴力を受けている。

 この一件から清澄は玻璃に拒絶されるようになる。
 尾崎妹が好意を向けてくれるが、それを喜ぶ暇もなく玻璃の状況は悪くなっていく。
 だから、「逃げろ」と伝えにきた玻璃がボロボロの状態で現われても驚きはしなかった。
 玻璃の父親によって清澄と母親は命を狙われることになる。清澄は逃げるのではなく、玻璃の父親が沼に沈めたスーツケース――静かになった祖母入りを探し出して警察に突き出すことを計画するが、まぁ、ここは案の定。出て行ったはずの母親が入ったスーツケースが発見されるわけですなぁ。

 ここから父親に見つかり――なシーンは堤真一さんが父親役と知っていたので観てぇと思いながら読んでた。
 UFOを撃ち落とす。ヒーローは自分のためには戦わない。だから、玻璃は清澄を助けるために行動した。

 そこからは少女Aとなった玻璃と自分にもUFOが見えるようになった清澄の話。
 清澄は名前が変わった彼女と出会い、結婚するがいつも不安がつきまとう。彼女が消えてしまいそうに思っていた。
 そして、沈むワゴン車の現場に出会ってしまう。真冬の川に飛び込み、子どもが生まれる前に自分が死ぬことになっても助けた。そうして、清澄はもう一つのUFOを撃ち落とした。

 このUFOという比喩にはいろんなモノが込められている。
 私のUFOに関する考察なんて誰も聞きたくなりだろうから省くが、ここから先の話、清澄との子ども――真っ赤な嵐が生まれてからの話。
 父がヒーローであると聞いて育った真っ赤な嵐は、自分の職業をヒーローとして警察官になろうと決める。けれども、清澄と母――玻璃の過去がその将来の邪魔になる。だから、息子に過去を告げるという流れ。

 さすがに最後の最後まで書いてしまうのはナンセンスなんで書かないが、清澄母は本当にいい人だなぁ。田丸や尾崎ももっと出てきて欲しかった。

 なんというか、読み終わった後は久々に充実した読了感があったな。読書が楽しかった。どうすれば良かったなんて言えないほど物語は始まった時から詰んでいて、それでも足掻いた結果紡がれた愛の話だったんでしょう。……まぁ、愛の件は僕には難しすぎるのですがね。
 うん、映画の方もDVD化したら観ような。このトリックのような書き方をどう表現するのか興味がある。

_20210606_110021 (1).JPG
 そういや、私が買った本には映画のカバーがしてありました。
 愛用しているブックカバーもさすがに十年以上使っているので大分ガタが来ているのですが、同じモノが手に入らないか必死に探していたりする。

 
 では、ここで今回のお気に入りへ。
 今回は清澄が学校を休んでいる玻璃を探しに家に行った時に清澄が思っていたことを。


 玻璃が信じてくれるなら、俺は変身でもできると思った。玻璃が信じるものに俺はなれると思った。ていうか、なりたかった。なりたいんだ。今もなりたい。ただそれだけだ。


 玻璃を鼓舞するために言ったヒーローという存在に清澄はなりたかった。玻璃のためだけになりたかった。
 ヒーローなんて大人になったらそんな言えない言葉をこんなにも誠実に求められるほど、人を好きになれるなんて。そんな相手は絶対に忘れられないし、本気で助けたいって思うよな。なにを犠牲にしたってさ。





砕け散るところを見せてあげる
竹宮 ゆゆこ
新潮社 (2016/5/28)
posted by SuZuhara at 13:11| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。