「こうしたほうが派手でいいじゃないか。ものごと、ショッキングでなければならぬ。なあ、そうじゃないかい」
現在、ちょいと身辺整理中です。元々物が多いってのもあるけど、いろいろとけじめとして終わらせないといかんというのもあるけど、昨今の時代的にサブスクもあるから物自体持ってなくていいんだなってやっと気づいたのである。いや、重要な物は今でも現物主義だけど、固執する必要はないなって。
僕、決断までは時間かかるんですが、一度決めたらさっさとやってしまうにかぎるのでこのままやってみようと思われる。
■感想
久しぶりに星新一のショートショート。毎回思うんだけど、これを読むと前にテレビでやっていたドラマとかアニメとかまた観たくなるんだよなぁ。
夏に購入したプレミアムカバー2021ver。
黄色でおしゃれな感じだが、よく見るとカバー裏が透けてしまっているのが残念かな。
ま、どうせ僕はブックカバーつけちゃうんで関係なくなるんですがね。
ショートショートなので今回もお気に入りだけピックアップする。
■住宅問題
部屋代を払ったことがないエヌ氏のアパートには広告が溢れていた。部屋に響く声は常に商品を紹介し、視界の邪魔にならない部分にも常に広告が入る。無料だから仕方ないと諦めていたが、格安で高原地方に家を買えることになり、広告のない静寂を求めて見学もせずに購入を決めてしまう。
これは時代を先取りしすぎている。携帯広告なんかがまさにそうじゃないか、広告消したければ課金せよ、ってね。
エヌ氏も静寂を求めて高価な買い物をするんだが、そこにあったのは自然すら広告に変えた景色で……。
うわー、なんつーデストピア。途方に暮れる以外の行動ができないよ。
ちょっと早いけど、今回のお気に入りはこの話から。
エヌ氏の家に響く声や視界に入る広告について書かれた説明のところ。
巧妙きわまる画面の構成と色彩、心の奥底に忍び込むような音楽、反感を刺激しない洗練された上品なしゃべり方、生かさず殺さずの極致といえた。押しつけの度がすぎて住民の頭をおかしくしてしまっては、スポンサーたちにとっても、もともこもなくなるではないか。
この、生かさず殺さずの極致ってとこ。
本当に笑えないよな。現状、僕らは搾取されることに慣れすぎているから、気づかないのであれば気にならないのであれば、別に構わないって思ってしまうもんよ。
■陰謀団ミダス
軽率で優秀でもない青年は就職の面接中、嫌味な担当に当たった。腹を立てて出てきてしまったが。ひょんなことから手に入れた図面の家に嫌がらせの意味も含めて泥棒に入るが先客がいて失敗してしまう。
脅される形で住所等を教えてしまったのだが、その時の反応が陰謀団ミダスに認められて合格となる。殺人はしないという陰謀団ミダスからやってきた指令は宝石店に強盗に入ることだった。
これは面白いな。
要するに、依頼の強盗は決められたもの。この騒動により、保険への関心、警備員の警報器の強化、人質になった女は脚光を浴びてタレントになどなど。陰謀団ミダスの目的は強盗の結果ではなく、強盗騒動によって引き起こる副産物の方ってわけだ。
こんな一団で尖兵できるなんて楽しいのに、青年は欲をかいて陰謀団ミダスのことを告白しようとする。世間の注目を自分に集めるためっていう、僕には一切ない自己顕示欲のためだ。
けど、そんなのさ、組織が対応していないはずないだろ?
青年の告白は精神異常者の妄言とされる。現代病患者として、研究と治療のための資金集めとして利用されるのだった。
■さまよう犬
毎日なにかを探す犬の夢を見ていた女だが、ある男に出会い結婚すると夢を見なくなった。
そして、夫となった男が夢の中でなにかを探す犬になっていたことを知る。
たった2ページの作品ですが、テレビ版も含めて印象深かった。
星新一のショートショートはいいぜぇ。
■宇宙の英雄
『私たちは死に瀕しています』
そんなメッセージを収めた小型ロケットが地球にもたらされ、宇宙パトロール隊員の男は周囲の制止を押し切って駆けつける。
様々なトラブルに見舞われ、つらく死ぬ思いをしても「いかなることがあっても行かねばならぬ」と使命感を胸に行動し、ついには目的地へと到着する。
そして、SOSのメッセージの意味が「退屈で死にそうだからここまで大冒険して辿り着いてその話を聞かせて」というのはなんとも報われないオチだった。こういう悪意のない悪意、好きなんだよなー。
あと、エヴォリミットの雫を思い出したな。どうしても月へ向かうという説明できない使命感。まぁ、全年齢化してないんでまだやってないんですけどねエヴォリミット。簡単に説明してもらっただけなんですけどね。二挺鉈とか、すっげー読みたいんですがね!
好きなのはこんなところでしょうか。
やっぱり読むと面白いですね、星新一作品は。
妄想銀行
星新一
新潮社; 改版 (1978/4/3)
ラベル:星新一