日曜日の夜は肉だろう。
自分は未だに子どもの頃から使っていた学習机を使っている。だってこれだけ奥行きがあってでかい机って滅多にないんだ。使い安いし、代わりを見つけるのも一苦労だ。
しかし、もう二十年以上使っていれば塗装だって剥がれてくるし傷も多い。他の机探すかなーっと思っていたら、最近はDIYで自分で修理するのが流行りらしいと聞く。
さて、どうするかなー。本音を言えばもうちょっと可動域のでかい机が欲しかったりするからなー。
■あらすじ
四年間付き合った男と別れた日、次の週末はラムステーキを食べると決めた。
なんとなく恋人と別れようかなんて考えていた時、姉に聞いたレシピで作ったちまきを明日のデートで食べようと考える。
妹と二人でピザを作り、叶わなかった恋の話を聞く。
自分のお腹に子どもがいることを知り、子どもの頃に食べていた干物が母の手作りであった事を知る。
そんな一人ひとり違った生活の中に欠かせない物語と料理の連作短編集。
■感想
何気に角田光代さんの本を読むのは初めてです。
この本を手に取ったきっかけは、会社の先輩である。この人は大のちいかわ好きで、ちいかわをめっちゃ押しつけてくるw だって、ちょっと会社にいないとデスクがちいかわグッズで埋まっている。「ちいかわ好きなんですねー」って知らない人がいっぱい話しかけてくるからコミュ症にはつらいぜ。
おいちょっと待て、俺のロッカーにちいかわマグネット貼るんじゃない! 俺のロッカーデコるんじゃないってケンカしてるのだが、これはどうでもいい話。
そんな先輩の大好きなちいかわフェアが講談社文庫で行なわれるらしい。しかし、先輩は本を読まない。
ここで「本はそれなりに読みますよ」とか嘘ついて気取ってやがる後輩(私)に見栄を張らせて買わせてちいかわ付箋をゲットしようという作戦を決行することにした、と。てか、俺本読むってそこそこ長い付き合いなのに未だに信じられてない。「お前はどう見ても趣味は読書って顔じゃない」と何度も言われる。
これはちょっとばかし考え深い。自分、高校時代に「趣味は読書って顔してんのに、多趣味とか持ってんじゃねぇ」って教師に言われたことがあったので。俺の顔は随分と変わったんだなー。
でも、これもどうでもいい話。
いいよー、って請け負ったけど、対象ラインナップが新作じゃなくてめぼしい作家さんはもう読んでたんだよ。そこでミステリー大作にいく? でも、コロナ禍で本が全てビニール掛けされてると文章の合う合わないの確認取れないから大作に手を出すのはなんだかなー、と迷っていた時に目についた。
高校教師が自分を多趣味だと言ったが、自分に興味があるのは昔から本とゲームと映画、あと料理。『彼女のこんだて帖』というタイトルに引かれて手に取るが背表紙のあらすじは括りつけられているちいかわ付箋で読めない。ページが他の本よりも白い(本来は黄色がかった白)気がする。よし読んでみるか、と購入する。
ちなみに先輩は自分が話をしたその日に本を買ったことに挙動不審になるほど驚いていた。
今回の初めの言葉は一話冒頭なのだが、彼氏と別れた協子が久々の一人の週末にラムステーキを作って食べて、過去を忘れるのではなく受け止めて立ち直る話。
次は協子の同僚で恋が長続きしない景がもう別れようかなって考えていたくせに、姉が家族に作っていたちまきを食べて、そしてレシピ教えてもらって自分で作って彼氏に食べさせることを考えたりする話。
その次は景の姉である衿が子育てしながら自分が平凡な主婦になってしまったことに気づき、夫に家事をストライキする旨をメールする。すると慌てて帰ってきた夫は夕飯を作りだして――と続いていく連作短編。
うん、非常に面白かった。
1話10〜20ページくらいの短編も、たぶん次の話はこの人が主役かな、なんて考えながら読むのも。なにより、巻末に料理のレシピと写真があるのがいい。想像だけが補えないものってのは確実にあって、タイ風さつまあげとか全く分からなかった。あと、ちまきは作ってみたいな。
好きな話はピザからうどん、松茸ごはんの流れ。
食事を食べなくなった妹を心配した兄が「妹の好きな物自分で作って食わせろ」とアドバイスを受けてピザ作りをする。すると、憧れの先輩の彼女が痩身で自分も綺麗になりたくてご飯たべれなくなっていたことを知る。
次は妹の憧れ先輩。間近な受験と他の男のところにいった彼女、挙げ句の果てには姉の家出で親は喧嘩という最悪の状況。そんな時に通学バスで自分でピザを作った女の子の話から小麦粉でうどんを作れることを知る。話しかけたらキョドる女の子に申し訳なく思いつつも、家族のいない静かな家で一人うどんをつくり始める。
その次は家出した姉。家出といっても二十歳過ぎて彼氏とともに夢を抱いて東京へ。けど、彼氏はろくに仕事もせずすぐに辞めて、自分も夢のカフェでの仕事なんか見つからない。このままでは暮らしていけないと母から貰った3万を全て使って松茸ご飯を作り、最後の晩餐に臨む。
妹と先輩は知り合ったら上手く行きそうなのに、と思う単純脳。
でも、こういう繋がってるんだがな関係は好きです。
姉に続く、職場で彼氏に恋心を抱いている女の子の次は絶対ゴンゾーが来ると思ってたのにっ! 来ないって、ゴンゾーって名前だけで気になるだろうに!
本編だけでなくあとがきも面白かったですね。かく言う私も、干物は自分で作る物だと思ってなかった。でもかかる時間を思うと作れんな。自分待つの苦手なんだよー、忘れるんだよー。
では、今回のお気に入りへ。
好きになった人はなんでもできて顔も良い。そんな人に結婚を申し込まれても釣り合いが取れていないと悶々とした時、母から送られてきた格好悪い漬物を見つかってしまう。
喜んで食べる彼氏の姿を見て、今までなんとも思わなかった光景が輝いて見えていることに気づいた。
毎日の食卓が豊かになる。そうだ、この人が私にもたらしたものは劣等感ばかりではないはずだ。私たちの毎日はかっこういいものとかっこわるいものでできあがっている。豊かであるというのは、きっとそういうことなのだ。かっこういいばかりではなく、かっこうわるいばかりでもなく。
ここが好きである理由を話すのは、ちょっと私の根幹に触れるので面倒くさくなること確実なので触れないが、きっとそう思える人っていうのはずっと一緒にいたい人なんだよ、って思ってたら後の話でちゃんと婚約者になってて良かったーって思ったよ。
彼女のこんだて帖
角田 光代
講談社 (2011/9/15)
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