2025年01月25日

楽園の楽園



 人はどんなものにも物語(ストーリー)があると思い込む。
 きっとあなたもそのひとり。



 毎度毎度スマホゲームに悩んでいる。
 僕がやっているのは変わらずFGO、アークナイツ、ロスストの3つではあるが、この毎日のノルマに縛られるのが激しく苦痛である。いや、GEREOに比べればどれもデイリー面倒くさくないよ、最低限しかしないしね。じゃあなにがつらいのか、毎日続けることを強いられるのが、気分屋としては反発したくてたまらん。
 でも、ちょっとサボれば痛い目を見るのは自分だ。けど、ちょっとログインすれば1時間くらいは軽く溶ける。
 なんだかなー、向いてない感が激しいね。


■あらすじ
 大停電に感染症、大地震――立て続けに起きた世界の異常事態は全てとある人工知能『天軸』の暴走であることが分かり、五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の三人は人工知能の開発者であり行方不明となっている<先生>の足取り、『天軸』があると思われる場所を探す。
 辿り着いた先は巨大な樹のある『楽園』の名に相応しい場所で、そこに残された<先生>からのメッセージで三人は自分たちがこの場所に導かれた理由を知る。


■感想
 伊坂幸太郎さん作家生活25周年記念作品。
 昨今は情報収集の必要性をひしひしと感じつつも、それを強いられるのが嫌で全くアンテナ張ってなかったのですが、偶然にも発売前日に本書のことを知ったのでえっちゃら本屋に向かう。あと柴犬ぽんちゃんも買いに行きたかったし。
 ちょうど『ペッパーズゴースト』を読み終わって次に読む本を探していたのでタイムリーに読もう。『ガソリン生活』も気になってるけどこっちにしよう。そう思っていた僕は本屋で本書を手に取った瞬間、めちゃくちゃ悩むことになる。

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 付箋を貼りながらの読書は相変わらずなので気にしないでくれ。
 見てほしいのは本の厚みである。そう……結構薄い。
 本文の最終ページは97ページだった。100ページ満たない短い物語である。そして単行本である。

 ……めちゃくちゃ悩んだ。僕は基本的にケチであり、お金を使うのが苦手なのだ。すぐ終わってしまう話に1,500円が出せるか、後悔しないかと自問自答を繰り返しまくる。
 結果的には興味が勝った。知りたいという知識欲だ。なにより伊坂幸太郎の文章が好きだから買ってみようだ。

 結果は思いの外良かった。
 いや、やっぱり短いしコスパを考えるならどうしたって割に合わないと俺は叫ぶでしょう。もっと三瑚嬢と蝶八隗のことも掘り下げてほしいんですけど!って。
 けど、読み終わっての納得が強い。物語(ストーリー)に関しては特に参考文献にも手を出そうかと考えるほどには納得した。

 さて、内容だ。
 昨今の世界的ウィルスショックがまだ記憶に新しい中、この世界も同様に未曾有の危機とばかりに天変地異が頻繁に起こっていた。けれども、そんなものは個人にはどうしようもないのだが、五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の三人はその原因が人工知能『天軸』にあったことを知らされる。
 だからどうすれって?状態だが、世界の災いに関してはその人工知能自体は開発者の<先生>が止めたのだが、<先生>はその人工知能がどこにあるのかなどは明かさずに行方不明になってしまう。
 偶然が重なって先生の仕事部屋が分かり、そこに残された『楽園』と名づけられた一枚の水彩画がおそらく人工知能がある場所であろうと検討をつける。だが、その場所の特定はできていない。でも、輸送機の墜落事故によってその場所らしき位置が特定されたよ。けど、感染症の問題もありとてつもない免疫力を持っている者しか送り込めないよ、という流れで三人は選ばれたのである。

 五十九彦に関して背景が語られるが、残念ながらあとの二人はほぼ語られない。世界はまだ混乱している中なのでほぼ密入国レベルのミッションインポッシブルで楽園を目指すのだが、この三人はお分かりの通り西遊記がモデルで五十九彦が俊敏さと運動力、三瑚嬢がブレインとしてドローン封じの電磁波スティックとか装備してて道中の小難しい担当、人の三大欲求全振りの蝶八隗は力で解決をサポートしてくれる。

 この三人の旅は、世界を救うような大それたものなのに普通の日常会話で行なわれるから寄り添いやすい。楽しかった。もっと一緒にいたいと思わせる。
 特に楽園に、そして先生にも辿り着いた時まで思っていた。さしずめ先生は三蔵だろう? 僕的は三蔵ちゃんだ、沙悟浄が女性というのは初めてだな。

 ここから明かされる世界の真実はすごく伊坂さんらしく、しかもあり得ないとは思えない。むしろ、納得してしまった。この大樹は世界とも言えるだろうけど、我々が自分の意志で決めたことだってそうなるように誘導された結果であるかもしれない。虫ならば甘い蜜に誘われるが、人間は? ヒトならば物語(ストーリー)に誘われる。この辺りは三瑚嬢の説明が完璧だから是非呼んで欲しいね。

 僕は頭の良い人が好きだが、それは学力じゃなくて納得させてくれることなんだ。どんな嘘でもどんなに力技でもそれを納得させられたら満足する。
 けど、納得できなかった結果が物語(ストーリー)を作っちゃうんだろう。二次創作なんてまさにそれじゃないか? 楽しい。けど、あそこどうなったの? こんなことがあったんじゃねぇの? まさに自分はこれ。しかも、僕という人間は気になっちゃうと全てを投げ出すからどうしようもないね。

 うん、すごく面白かったし納得した。ケチでコスパを追求する自分に勝って良かった。ただ、やっぱりもっと詳しく彼ら個人のことも知りたいし、最後の結末には疑問を覚える。けど、この旅の終わり方としては他も思いつかない。世界は、ヒトはこうやって終わるのかな? まぁ、排除されるのは今までのどんな終末論よりもらしいと思ってしまうのだが。

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 冒頭の帯の文章と似ているのだが、僕の好きな三瑚嬢の言葉を引用して終わろう。楽園で先生が残したメッセージを聞いた三瑚嬢は自分たちが誘われてこの場にやって来たことを理解する。


「人間の大好きなもの? 何だよそれ」
「ほら」三瑚嬢は答えた。「物語(ストーリー)だよ」


 大樹の根がネットワークとか言われてみればそうというか、比喩としては使われ尽くしたことばかりなのにそこに物語が加わっただけでこんなに納得出来るとは思わなかったな。僕は好きだ。







楽園の楽園 - 伊坂幸太郎
楽園の楽園
伊坂幸太郎



posted by SuZuhara at 04:39| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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