2025年02月02日

リアル・ペイン 心の旅



「でも、なにも感じないよりはずっといい」


 去年の俺を悩ませ続けた胃も快調だった昨今――また壊れた。
 うわあああ、いつになったら通常運転に戻るんだ。完治はいつなんだ。もうすぐ再検査なんですけどどうにかなりませんかねぇええ!
 まぁ、治らないなら治らないならそれはそれで。
 ただ、ただだな、俺がゲームしてる時に邪魔だけはしてくれるな。こちとら飽き性で集中力なんかないのよ、トイレタイムなんか挟んだら続けられないのよ。


■あらすじ
 NYに住むユダヤ人のデヴィットと従兄弟のベンジーは亡くなった祖母の遺言によって数年ぶりに再会、そして祖母の住んでいた家を終着にホロコーストツアーに参加する。
 同じツアーに参加した人々との交流する中で周囲を盛大に振り回しつつも魅了していくベンジーに複雑な感情を抱きつつも彼を心配して一緒に旅をするデヴィットも日常で生きづらさを感じていて、妻もいて子どももいる順風満帆な生活の中でも抱える痛みがあった。


■感想
 うっし、ファーストデーだ映画に行こう!というわけではなく、なぜか気になっていた『リアル・ペイン 心の旅』を観に行って来ました。映画は公開初週の土日の動員が大事だって■■ちゃんが言ってた! このネタは使いたいけど、ドストレートに使ったら終わるので伏せ字にさせてくれ。

 さてはて、元々ロードムービーが好きくらいで何の前情報もなしに行ってきました。最近はこういう突撃が多いですね。でも、この映画上映前の番宣でGQuuuuuuXネタバレ映像を観せられるとは思わなんざ……。

 冒頭、空港のシーンで待ちぼうけになっているベンジーのシーンから始まる。ショパンの曲……すまん、明るくないのでショパンとしか分からないが、今作には多用されているので好きな方には分かると思われる。
 ショパンの曲とベンジーの空港シーンはなんでもないのに印象的で、その後に慌てたデヴィットが何度も携帯に留守電メッセージを残しつつなんとか空港に辿り着く。そして感動の再会シーンで誰もが違和感に気づく。
「なんで? まだ二時間も前なのに!」ごめん、口調までは覚えてないのでニュアンスで。

 つまり、ベンジーは何時間も前から空港にいる。
 デヴィットは早口の伝言に「寝坊」「遅刻」という言葉を使っていたが、約束の時間よりもだいぶ前――神経質な心配性なのだろう、と思う。空港の身体チェックでもその様子がよく分かるからね。

 二人の関係は従兄弟というだけでろくに説明されずに進む。こういう方がいいよね、現実でどこかで観てる誰かのために自己紹介はされない。
 自由奔放、言ってしまえば自分勝手なベンジーの一筋縄でいかない感を感じつつも、二人はホロコーストツアーに参加する。

 無知故にホロコーストってなんぞ?レベルだったのですが、なるほどアウシュビッツ関係なのか。どうしよ、primeに来たら『関心領域』観ようと思っていたのに。
 ユダヤ人の歴史を辿っていくツアーだ。僕たちにとっては修学旅行で戦争に関わる地に行くようなものだろう。僕は防空壕とか洞窟とかに過剰な拒否反応が出るのだが、なんでかな。

 ツアーを通して、てか初っ端からベンジーが鬱であることを明かされるがこれには驚いた。けれども、彼が繊細で周りのことをよく見ていて感情に寄り添えること。明るく楽しい男、かと思えば感情的になって躁鬱な様子が分かる。尻拭いに回るデヴィットの胃の痛さを思うとつらいが、それでもベンジーみたいな人間は愛されるんだ。いつの間にか友達がいっぱいで輪の中心にいる。
 それが、デヴィットにはキツい。子どものままのようなベンジーと違い、場所と空気を読んで大人の対応をできる、強迫性障害を抱えつつもなんとか暮らしているデヴィットには妬ましいんだ。

 これな、すごく分かる。
 てか、普通に考えてベンジーは面倒な奴だ。付き合いきれんし、付き合いたくない人種だって思うだろう。彼の繊細さや人格を知っていてもね。
 それにどんなに仲のいい友達、家族だってさ、他人の成功は妬ましいさ。それが自分にとって欲しいものであったならなおさら。
 けど、ベンジーはそんなものが欲しかったわけじゃない。たぶん、彼は自覚せずにやっている行動だから実感がない。自覚できない成功なんぞそこにはないんだよ。B'zで『ケムリの世界』って
曲があるんだけど、その歌詞をちょいと引用しよう。

 全部自分がやったんだよと叫べる おシゴトしましょう
 それがこの世で一番ステキ


 これがめちゃくちゃ僕は胸に来てましてね。
 昔、僕は映画のエンドロールに自分の名前が載ることを夢としていたことがあったんだけど、その夢は叶ったんだぜ。クラウドファンディングで金払ったからな。あの虚しさは酷かった。クラファンだから、よりお金を出した人の名前が大きく先に出る。DVDが送られてきたけど、二度と観れなかった。
 まぁ、光栄にもクレジット関係に載せてもらったのはその後にいくつかあるんだが、その時は自分にできる限りはやったから後悔はなかった。
 ……うん、この話はやめようか。

 現代人、生きる上でなにかしらのつらさを抱えているわけだが、そのつらさは本人にしか分からない。
 ベンジーの躁鬱さを言葉で現すのはすごく難しい。ホロコーストツアーで彼はガイドに「事実の羅列は冷たく感じる」と言うんだけど、それは「ここで何万人が死にました」というような結果を数字で言うのではなくもっと寄り添えというもの。その感情的爆発は大人になったらやらないものだと思っていた。冷静になれ、大人げないってね。デヴィットもこういうタイプで、裏でガイドに謝ってフォローする。
 ガイドも初めは反発するが、最後には「ご意見くださいと言って建設的な意見をくれたのは君が初めてだった」とベンジーとハグしてデヴィットには手を振るだけ。うーむ、人生は上手く行かないぜ。

 はっきり言って、僕はベンジーの意見には反対だ。
 戦争や過去の出来事に寄り添いすぎると受け止めきれない。直視できない。映画とか漫画とかフィルターを通さずには受け止められないんだ。
 だから、ベンジーのつらさもデヴィットのつらさにも寄り添えない。僕は自殺を試みたことがないし強迫性障害なんか持ってない。想像はできる、けど自分のこととして共感するのは耐えられない。受ける必要のない痛みまで抱えられないよ。

 この映画を観て、すごーくいろいろ考えた。
 何度も何度も書き直しても上手くまとまらない。
 二人の旅は歪なまま、だけど互いへの信頼だけは強固で終わりを迎える。旅は終わっても人生は続いていく。この後を考えたくないと言ったベンジーにデヴィットが道中で知ったベンジーが祖母にされて嬉しかったことをやった時は泣いてしまったよ。

 ひとりじゃないという言葉は好きじゃない。
 けど、お前のことを大切に想う人がいないなんて想ってくれるなよ。エンドロール後の喧騒は今も耳に残っている。

 ……わぁお、全くまとまってないね。
 でも、本当に感想は難しいんだ。面白いという言葉は相応しくないと思うし、けれどもベンジーと無賃乗車しているところは楽しかった。でも、いくら楽しいことがあったってつらいときはつらいんだ。この先の未来だって不安だよ。楽しいことばっかりじゃいられない。苦悩がなくなることはない。
 あー、本当に難しい。こんな当たり前のことが言いたいんじゃないんだ。でも、人生って続いてしまうし終わらせたいわけじゃない。

 この作品では平凡という言葉が行為的に使われていて、誰もがただ平穏に生きていたいだけだと思う。けど、それが一番難しいだよな。

 では、もう今回のお気に入りに行って〆よう。
 ツアー客たちとの夕食時、感情を露わにして席を立ったベンジーにデヴィットは彼をフォローする。けれども、話しているうちにどんどんベンジーに対する負の感情が抑えられなくなってしまいデヴィットは殺したくなる時もあったと口にしてから言う。


「でもあいつになりたい」


 デヴィットの仕事、ネット広告作りを「イカれたシステムだよ」って言い切るところも好きだがね。海外のツアーはすごいぜ、旅でこんな個人的な問題は暴露されても僕ならどうすれって言うんだよになってしまう。









リアル・ペイン 心の旅
劇場公開日 2025年1月31日
posted by SuZuhara at 00:04| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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