負けを知る人々に贈る、人生の応援歌!
毎年1月になると「今年こそ月1で映画を観る」と目標を立てるのだが、だいたい1月の時点で観に行けないので有言実行などできたことはないのだった。
今年もそれは例外ではないのだが、こちとらいい加減で帳尻さえ合わせればなんとかなるさというテキトーさだ。1月に1本も観ていないのなら、2月に2本観ればいいじゃんなのである。
でなわけで、今年2本目の映画に行ってきた。
■あらすじ
サッカー史上に残る歴史的大敗、0−31の記録を持つFIFAランキング世界最弱と言われた米領サモア。せめて1ゴール、とチームを立て直すために米領サモアのサッカー連盟会長タビタは新監督を募集してやってきたのはロンゲン監督。
ロンゲンは選手としても指導者としても実力は十分だったが、ある出来事から成績が残せずサッカー界から追放されかかっており、環境と考え方の違うサモアの人々と自分のサッカーができず衝突を繰り返す。
しかし、ちょっとした歩み寄りから彼らのことを知り、ロンゲン自身も傷ついた心と向き合えるようになっていく。
■感想
今年2本目の映画は『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティ監督の新作にして米領サモアで起こった実話の物語。
……はい、こんな風に書いてみたが当方はジョジョ・ラビット未視聴。ごめんて、プライムにあるから観ようとは思ってたんだけど、今週中に観ようと思ったんだけど、結局ユニコーンオーバーロードずっとしててな。ああ、キャラのスキルだけでも弄りたいな。動かせなくてもいいから編成だけ触らせてくれ。
じゃあなんでこの映画観に行ったの?となりますが、単純に勧められたから。だいたい同じ映画が響く人が試写会で観て良きと言っていたのでという感じですが、私は元々スポーツコメディが好きなんですよ。一番好きなのは『コーチ・カーター』。バスケものなんだが、速攻って言っちゃうと相手にもバレちゃうから違う言葉で言おう。でも、みんな覚えない。せや、「ディライラってめっちゃエロくてぐいぐい来る女がおってな」と話をしてディライラ=ぐいぐい=速攻と教え込はシーンは子どもながらにこの人天才や!って思ってた。たぶん、ディライラで名前合ってると思うんだけど、おかげで俺の中でディライラはどちゃくそエロい子だと思ってるw
そんなスポーツコメディには絶大な信頼があるので気軽に観るにはいいな、と。ハイキューのがっつり満員映画に疲れたというのもある。
米領サモア――以下面倒になってきたのでサモアと書かせて貰いますが、ほぼサッカーと呼べないシロモノのチームだった。歴史的大敗の映像は最早悪夢。ゴールキーパーがひとりで奮戦するとしか言えない状況だけども誰も助けない。
現代になってもチームの状況は変わらず、サモアのサッカー連盟会長タビタは「せめて1ゴール」という望みをかけて新監督を募集する。ここに至るまでのやりとりはおもろい。タビタの息子はサッカーチームのメンバーなんだけど、父と子が話している食卓で実権を握るのは母だ。母が新監督を!と強行したのである。
一方、ロンゲンの方は急にクビ宣告。そしてサモアに行けと言われて渋々来たのでもう機嫌は最悪。
そんな中でサモアの人々の歓迎の歌、35kmしか出せない車などなど今までと違いすぎる環境に戸惑うのだが、サッカーに対する姿勢もぜんぜん違った。まるで遊ぶようなサッカー、急にコートに入ってくる女性は実は第三の性を持つ選手・ジャイヤだった。
第三の性、ファファフィネ、つまりトランスジェンダーということか。この辺りはほぼ無知と言っていいほどなのでコメントしづらいのですが、どうにも私は、この場合は身体は男で心は女?それとも逆なのか?と考えてしまったのですが、困惑するロンゲンにサモアのコーチ・エースが「ファファフィネ、いないと寂しい」と言ったのがすごく印象的だったな。どっちとかじゃないんだ、あるがままに受け入れてるんだな、と。この辺りで自分は無意識に差別的だったのかもしれんって反省したよ。男性の中でのジャイヤは確かに花だもんな。
あとでジャイヤ自身が教えてくれますが、手術はしておらずホルモン注射はしているとのこと。やはり身体的に男性でないと出場できないとのこと。
サモアの人々にとってサッカーは楽しいものだったので、なんもかんも今までの経験と違い、勝つためのサッカーしかできないロンゲンは匙を投げてしまう。ジャイヤの、おそらく男性名であるジョニーをわざと呼ぶことで挑発して喧嘩したりもしたしね。
でも、ジャイヤの方から歩み寄ってくれてさ、そこから少しずつチームの問題を分かっていく。サッカーにおける基本、ワンタッチパスや連携とか誰も彼らに教えてないから一切分かっていなかったのである。セリフは覚えていないのでニュアンスですが、ジャイヤと過去の試合映像見て「この棒立ち野郎は誰だ!」「……私よ」が面白かったw
他にも来たばかりで環境に馴染めないロンゲンに謎の空き缶レディで諭すタビタ妻とか、ロンゲンと遊びながら言葉を教えるコンビニ店員とかおもろい人いっぱいなので、サモアの風潮が嫌いでなければ好きになるってこんな国。
これ以降、ジャイヤとロンゲンのチーム改革が始まる。
練習では連携などを教えながら、練習以外でメンバーのスカウト。歴史的大敗のゴールキーパー・ニッキーを再度スカウトするが失敗、成功してもその場で交通事故に合うとか三歩進んで二歩下がる。
だが、チームとしては確実に前進していてロンゲンもサッカーを楽しむことを思い出していた。
そして運命の試合当日。
試合前にジャイヤが発狂。サッカーのために女性ホルモン注射を止めていたいたため、醜い自分に耐えられなくなっていた。けれども、ロンゲンにはジャイヤに対する信頼があった。「チームを率いてくれ」と渡されたキャプテンマークを身につけいざ行かん!!
前半、ボロッボロだったw
ロンゲン激高である。だが、チームの言い分は「勝つっていうプレッシャーが強くて耐えられない」。
……ああ、これはサモアの人々にとっては感じたことのないストレスだったんだろう。スポーツ選手は常にプレッシャーとの戦い? サモアでは違ったんだよ!
ロンゲンは試合を投げ出してしまうが、ここでタビタに何度も言われた言葉を言われる。「あなたにも幸せになってほしい」。
負けたってみんなで負ければいい。初めから彼の願いは勝つことに拘るのでなく、1ゴール決めてほしいなのだから。
ここでロンゲンの過去が話される。
娘を事故で失ったこと。自分が側にいられたら、と何度も後悔したこと。ジャイヤをニコールと呼んでしまったのは、サッカーが大好きだった娘の名前だった。
楽しもう、と始まる後半戦。決まる1ゴール。興奮で熱狂するサモア。歓喜で発作を起こし倒れるタビタ――熱中症よには笑った。
試合の行方はタビタ親子の会話、サモアの人が過去を誰かに聞かせる形で語られる。
ジャイヤの2点目、ニッキーのスーパーセーブ。あ、ニッキーは試合前日にカムバックした。みんな長く響くホイッスルの意味が分からない。それはサモアの初勝利だった。
試合後も続くよサモア生活。
タビタが神に試合のことを感謝する中、ロンゲンから告げられる他チームからのオファーにみんなしょんぼりするが断わったでうっきうき。でも、サモアを出る発言でそりゃないよ神様って感じで悲壮感はない。それどころか友の門出を祝ってくれるんだからお前ら本当にいい奴だなぁ。
最後、ロンゲンやジャイヤ、タビタにニッキーの現在が語られる。みんなサッカーに携わってたよ嬉しいな。
コメディ色が強いので真面目なサッカーを求める人には向かないかもですが、一つの物語として楽しい映画でした。作中のどっかで「吐き気がするほどのポジティブ」って言葉があったと思うんだけど本当にそれで、サモアの綺麗な風景も相俟ってあたたかい気持ちになれたよ。
あとな、ロンゲンの別居中の妻がエリザベス・モスだったのには驚いた。私のマイベスト映画『透明人間』の主演女優である。久々に会えて嬉しかったなー。
では、今回のお気に入りと行きたいが、謎の空き缶レディシーンだな。
海で流されてきた空き缶を拾いながらどんなヤツもリサイクルできる、変われるって諭してくるんだけど、でもペットボトル別!コイツはどうにもできない!って騒いで去って行くの本当に謎すぎてなw
タビタ夫妻はロンゲンに立ち直りの功績者だけど、ほぼ意味不明だったりするから逆に良かったんだろうな。
ネクスト・ゴール・ウィンズ
監督タイカ・ワイティティ
視聴日 2024/2/23
https://www.searchlightpictures.jp/movies/nextgoalwins