2020年06月07日

オーバーロード14 滅国の魔女



 斃れゆく国、群雄。


 苦しいノルマがやっと終わった! しかし、次のノルマがやって来る世知辛さよ。
 私はほとんどvtuberを知らないのですが、自粛でリアルイベントがなくなったせいか友人が廃人レベルでハマってたw 勧められたけど、あんまりゲーム実況とかどうも好きじゃないんだよなぁ。見るより実際にやる派なので、ゲームやりたいんでオススメ教えてくれよおお、と勧めてもらったゲーム面白いからこれからじっくりやるんだ。なに、次の期限まで一ヵ月ある。一週間前くらいまでは遊べるさ。うん、三日前くらいまでなら手をつけなくてもいいのさ。……うん、最終的に間に合わせれば過程なんかどうでもいいのさ。


■あらすじ
 聖王国への支援として食料を運んでいた魔導国の旗を掲げた荷馬車が王国貴族によって襲撃された。この魔導国も王国も予期していなかった事態から戦争へと発展することになり、アインズらは王国に宣戦布告する。
 降伏も認めない殲滅戦に王国は総力を集結するも崩壊していくが、そんな中、パワードスーツを持つアダマンダイト冒険者、朱の雫のリーダー・アズスと白金色の全身鎧を身につけたリク・アガネイアを名乗る人物がアインズとアルベドの前に立ち塞がる。


■感想
 やー、発売日に勝ったのに読むまで大分時間がかかってしまった。
 だって、この巻超厚いんだ。三、四センチあるんじゃないの? こんなの持ち歩けないから読む機会減るに決まってるじゃんw

 さて、ざっくり内容。
 アルベドが八本指・ヒルマを通じて利用していた貴族・フィリップが魔導国の旗を掲げた馬車を襲撃するというバカな作戦を立てる。フィリップの取り巻きも失敗して切り捨てる前提で行なったこの作戦は、思惑が奇妙に絡み合い成功してしまう。馬車を運んでいた商人もヒルマから「フィリップは愚かだが利用できるから聞き流せ」と言われていたこともあり、農民ソルジャー率いるフィリップなんか一蹴できたけど上の意向が分からず立ち去ることを選んでしまったのだ。
 というわけで、王国貴族が魔導国の馬車を奪うという図が完成してしまったのだった。

 王国陣、ザナックやラナーもびっくりだが、もっと驚いたのはアルベド。
 早急にアインズを呼び、フィリップの責任者としてヒルマを呼び出し責任を取らせようとするこのシーンは面白い。いや、社会人としてはヒルマの気持ちめっちゃ分かる。悲しいかな、現代社会では責任は押しつけるものだからなー。アインズ様、こういう時は会社員モードだから助かる。
 フィリップの暴走をなにか裏があるのではとアルベドたちは考えすぎますが、それでも結果は変わらない。どんな理由であれ魔導国に楯突いた時点で王国は飴と鞭の鞭を選んだことになってしまう。

 王国では魔導国との戦力差もあって敗色濃厚でも協議を重ねていますが、アルベドがやって来て宣戦布告。一ヵ月後から攻め込むとのことだが、これってなにか意味あるんかな? アインズ様が実験しているせいもあるけど、大分ゆっくりと攻め込んでいくから少し怠く感じたなぁ。

 途中、攻め込まれていく王国の人々の奮戦やパワードスーツおじさまが登場するが、あんまり魅力的じゃなかったかな。パワードスーツ自体が、ああこういうアイテムって後から出てくるよね、なもので、ユグドラシルで後続プレイヤーに対する支援アイテムだったロボットスーツである。八十レベルくらいだからアインズ様たちにはそんなに強くないが、この世界ではすげー代物だよ。
 このパワードスーツの装着者のアズスは蒼薔薇ラキュースの叔父さんでもある。この後、ツアーが操るリク・アガネイアなる全身鎧と出てくるが、そんなに印象に残っていないからあら不思議。

 一番印象に残っているのはザナックだよなー。
 ザナックはアインズ様と一対一の話し合いをすることになるんだが、この話し合いは面白かった。今巻でのザナックの次期王としての、本来の後継者だった兄やレエブン候を失ったことへの苦悩、自分に残されたラナーという鬼札に悩む姿は好感が持てた。てか、僕らの知らんところで話進みすぎだよ! レエブン候がいないことも誰だっけあいつ、前巻まで一緒にいた顔の怖い娘が顔なしとして聖王国で神官長並みになってるとか、さらっと言うけどその辺り詳しくだよ!
 ザナックの最後は予想できませんでしたが、ある意味この時の王国に相応しい終わりだったかと。一番幸せなのはコキュートスに一騎打ちしてもらったブレインかな? 氷づけにされて保管されたっぽいからブレインはまだでてくるかもな。

 今回の表紙にもなっているのでたぶんメインだろう、アインズ様vsリク・アガネイア戦について。
 まぁ、戦闘前にアルベドがアインズ様にタメ口を使っている時点でパンドラズアクターであることは予測できる。アルベドがパワードスーツにつられてアインズ様から離れたところでリクとの一騎打ちとなるのですが、様子見戦だからそんなに楽しくなかったかな。
 僕にしては珍しいことにツアーはドラゴンでもそんなに好きじゃないんだよなー。

 私的に楽しみだったラナーの本性。
 はい、ここに至っても一部しかお見受けできません! 父も国も全てを犠牲にしてクライムを手に入れるためにアインズに下り、悪魔となったラナーはクライムにも悪魔化することを望み、二人で永遠に生きていこうね。今日は初夜かな、それともじっくりの方がいいかな、ともっとえげつない感じで望みを見せてくれますが、そのデミウルゴスも手玉に取っているっぽい有能さを見せてはくれないんだ。でも、アインズ様がお芝居に付き合ったから本気を出してくれるようだが、それも次だからなー。

 そんなこんなで今回は王国が滅んでおしまい。
 二年ぶりくらいのオーバーロード待望の最新巻でしたが、正直あまり面白いとは思えなかったからな。王国が終わると帯で明かされていることを長々と読まさせれる。もちろん、展開はそれだけじゃないんだけど、王国は他のどの国よりも長く関わってきたにも関わらず、パワードスーツとか初出の人たちに持っていかれるのはちょっとなー。ツアーもまだよう分からんし。
 蒼薔薇にもちゃんと戦って欲しかった。早くイビルアイにモモンの中身知って絶望してほしいものよ。
 次は2021年初春らしい。あと三巻で終わってしまうようですが、それまで長いなー。

 では、今回のお気に入りへ。
 お気に入りと言うよりもアルベドのこの発言気になるよってとこ。ナザリック入りしたラナーに対して言った言葉。


「その優秀な能力をこのナザリック――私の下でもしっかりと発揮して頂戴」


 今巻の初めでアルベドがいろいろ考えていることを漏らしてくれているのですが、やっぱりラナーを使うことを考えてもいるんだなと。ラナーが分析しているようにアルベドはアインズに茶番をさせたことを快く思っていないからこの二人がどう付き合っていくのか楽しみだな。
 確かラナーは階層守護者扱いなんだよな? あのメンツにラナーが加わるかと思うとそれだけでアインズ様の胃が大変で俺たちは楽しいのであるw







オーバーロード14 滅国の魔女
丸山くがね
KADOKAWA (2020/3/12)
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2019年10月05日

ロード・エルメロイU世の事件簿 10 「case.冠位決議(下)」



「彼は、この霊墓アルビオンで、魔術師のための神霊をつくりあげようとしています」


 どうにも休日は寝だめしてしまう昨今。というわけで、おはようございます。ついさっき起きました、もう一日終わるやん……。
 さて、私の近状としましては現在はモノを減らす週間ですね。俺のシュレッダーが唸り声を上げてるぜ! どんどんぶち込むぜ、仕事の書類なんか見たくもないからな!
 ……むぅ、寝起きだからテンションおかしいな。まあ、書いていればぼちぼち落ち着くでしょう。


■あらすじ
 エルメロイU世は仲間たちとともに霊墓アルビオンに乗り込み、同時にライネスはU世の代わりに冠位決議へと望むことになる。
 同時進行で行われる迷宮探索とロードたちの陰謀渦巻く決議。時間のリミットがある中での未知の迷宮の先で、エルメロイU世は神霊となった王と再会する。


■感想
 発売日に買ったのに、やっと読んだよU世の事件簿最終巻! そういや事件簿アニメもちゃんと観ていました。リアルタイムからは大分遅れていましたが、やはりいきなり魔眼蒐集列車は辛かった気がする。個人的には全部やってほしいけど、双貌塔が見たかった。でも、ルヴィアさんや獅子吼さん出すとか最高でしたね!
 では、小説最終刊の話をしようか。

 U世の事件簿最初のアドラ城メンバー、ルヴィアと清玄、フリューを加えてアルビオンに乗り込むところで終わっていた中巻ですが、今回でアルビオンの内部が明かされる。
 正直、映像で見せてください! 迷宮過ぎて上手く想像できない。言いたいことは分かるんですよ。めっちゃ好きな展開なので。でも、俺の想像力は貧困なんだよ! だから是非映像で見たいなぁと思いながら読んでいました。

 アルビオンに乗り込んだ先で出会ったのは、フリューの師だった。師父殺しと呼ばれるフリューだったが、実はアルビオンの生還者(サヴァイバー)であり、貴重な経験者だったが、如何せん、それは過去のものだ。
 フリューが殺したはずの師・ゲラフと再会し、二十二時間で霊墓アルビオンの古き心臓まで到達したいことを告げると当然一蹴される。だが、U世が、ロードが魔術師の世界で見捨てられていた者に頭を下げることゲラフの心を動かした。自分が持っていた財産を手放していいと思うほどにね。

 実際のところ、このゲラフはめっちゃいいキャラでしたな。アルビオン攻略メンバーの装備を調え、U世に頼まれたらライネスに伝言も届けに言っちゃう。それも、警戒心の塊であるライネスに死んだと思わせるほどね。
 だが、気になる師父殺し。魔術使いであったゲラフはたくさんの弟子を持っていたが、まぁ一言で言うなら素行の悪さというか自業自得な部分があり、たくさんの人に恨まれていた。それで留守中に工房を襲撃され、触媒や呪体を奪われ、弟子たちを拷問の末に惨殺された。フリューはその時に疎遠になっていたから免れた感じですね。
 復讐鬼となったゲラフに最後に差し向けられたのは、東洋人で弾丸一つで魔術回路も魔術刻印もズタズタにする魔術使い――切嗣じゃないか!
 ケリィに狙われたならしょうがない。かつて切嗣の相棒だったフリューはゲラフにトドメをさしたことにして、アルビオンに匿ったということ。切継とフリューのコンビとか胸熱ですな、アニメ化はよですなー。

 アルビオン攻略が始まり、印象に残っているのはグレイたんの背中に羽が、天使か。みたいなこと簡単には言えないのですが、表で行われている冠位決議はライネスでなくとも胃が痛くなる状況でした。橙子さんも出てくるし、クロウがハートレスに成り代わっている、いえクロウは死んでるのよ、ところっころと変わる展開に頭が付いていけなくなりますが、真相はクロウ=ハートレスは正しい。クロウは仲間たちに殺されかけた時、死ぬ直前に裂け目を見つけて三十年前へと移動した。そして、ハートレスとして大人になった彼は、かつての自分であるクロウと出会い弟子としたというわけ。そして、クロウとしては仲間として、ハートレスとしては師弟として仲間たちと付き合い――また裏切られた。
 このことから、仲間たちが裏切るに至った魔術世界を恨み、神代の魔術形式で現代魔術世界を壊すと決めたわけだ。

 ――君の人生を、最も輝かしいものを捧げたまえ。
 ハートレスにとってもっとも輝かしいものはもう失われていたんだ。この辺りの辛さはキツいなぁ。

 それでイスカンダルを神霊として召喚しようとしていたわけだが、イスカンダルのコインを持っている魔術師とパスが繋がることからU世もイスカンダルのマスターの一人となり、U世はライダーに話しかける。
 その手にはルヴィア、エーデルフェルトが持っていた一画の令呪。いつか英霊の座まで行くからと王に決意を語り、ライダーに退去を命じた。
 このイスカンダルはかつてウェイバーと戦ったイスカンダルではないのに、ライダーと言って令呪に応じてくれるのはズルいぜ……。

 ここに来るまでにさ、ロンドミニアドを使ってしまったからアッドとの別れがあったのですが、これが個人的に辛かった。グレイとアッドのコンビがすごい好きでさ、FGOで聖杯を捧げたことに後悔はしていない。けど、やっぱり宝具を使用する時に疑似人格が停止しちゃうのは悲しいんだよなぁ。そして、うちのカルデアには王と内弟子はいてもU世がいない……。
 ご都合主義でも最後の奇跡は嬉しかったですね。例え、グレイたんがアーサー王になりかけてて問題は山積みでも、エルメロイ教室はこのまま続いていってくれるんだろうなって。

 こんなところで感想おしまい。
 10巻なんて思えば遠くまで来たもののですが、かなり面白かったです。スヴィンやフラットが出てくるとひっちゃかめっちゃかになって楽しかったですが、何よりもライネスのキャラが好きでしたね。あのS加減めっちゃ好き。
 是非とも凛も加わったエルメロイ教室も見たいが、ロンドン編も是非とも見たいのだった。

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 やっぱりグレイとアッドのシーンかな。アルビオンでケモノに視線を向けられた時、極東でアーサー王が召喚されたことからグレイに信じられないほどの魔力に後押しされながら師匠を助けるために宝具の解放を迫られる。
 しかし、それをやればアッドが壊れることは確実であり――と躊躇する中、アッドが叫んだ。


「拙、は……」
「吹っ飛ばせ、グレイ!」
「それでも、あなたは――」
「あの故郷を出たんだから、胸を張らなきゃいけないんだろうが!」


 アッドが最高すぎた。
 故郷でのサー・ケイもそうだったんだけど、グレイのことを理解しすぎてて好きすぎた。グレイにだけ聞こえたイスカンダルの言葉よりも、最後に、これからも君がいてくれて良かったとそう思ったほどに。






ロード・エルメロイU世の事件簿 10 「case.冠位決議(下)」
三田誠(著)坂本みねぢ(イラスト)
TYPE-MOONBOOKS (2019/5/17)
posted by SuZuhara at 22:26| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月08日

東京二十三区女 あの女は誰?



「教えて、原田璃々子さんはなぜ死んだのか」


 涼しくなったり暑くなったりの繰り返しですが、クーラーさえあれば元気です。最近はちょこちょこゲームから離れるようになったから人並みに生活できてる、はず。
 詰みっぱなしだった本を読み始めたのですが、ものすごく久々な気がする。最近集中力なかったしね。あとはいろいろやってたりするけれども、基本的には言えないことばかりだったりするのでブログ書くのも久々だ。そんな、ね、switchのフィットボクシング貰ったら筋肉痛と疲れですぐ寝る毎日とか言えるはずないじゃないですかw


 今回は前に読んだ『東京二十三区女』の続編。
 二冊同時に買ったのに今の今まで読まない体たらくさよ……。まぁ、正直私としては蛇足な感じがしました。あまり面白い話はなかった気がする。


■豊島区
 先輩の死の真相を探るために璃々子が豊島区について調べていると、初老の男性が倒れ込んでくる。男――シナリオライターの阿久根は家を出た娘の澪を探して欲しいと言う。親の心配を察した璃々子は無事に澪を見つけ出すが、阿久津は父ではないと言い出す。

 ポルターガイスト云々な話でしたが、正直興味が引かれなかった。澪の目的とか阿久根の結末とか想像通りだったし、それを池袋の女として結びつけるのはちょっと私には受け入れられなかったんだよなー。
 だって、年の差を超えて愛を育む二人、財産狙い的な意味で邪魔してくる親族、年老いた夫は幸せなまま逝く。そして、弟子のように面倒を見ていた男とグルだった妻だぜ。
 うん、これよくある話じゃないですか。


■墨田区
 作家を目指す陽子は永井荷風の『濹東綺譚』に惹かれており、奇妙な縁を感じていた。舞台となった玉の井に訪れて傑作を書き上げようとしていたが、その途中で自分がかつて玉の井で起こったバラバラ殺人事件の被害者となり、殺される家庭を味わうことになる。
 八代保はアルバイトとしてある家に赴き、妻と娘のいる家庭の夫を演じることになる。奇妙なアルバイトに疑問を抱きつつも、妻・可南子に惹かれて一夜を共にした後でアルバイトの理由を聞き出すともうアルバイトの依頼は来なくなり、二人が暮らしていた家に赴いても残されていたのは数十枚のA4用紙だけだった。

 今回の中で一番これが面白かったですな。
 物語は陽子の執筆と保のアルバイトを交互に進んでいくわけですが、璃々子と先輩はバラバラ殺人事件の背景について調べていく。
 どう繋がっていくのかな、と思ったら、保のアルバイトは保の記憶喪失を直すためのもので、陽子は保が書いた小説だった。しかし、『濹東綺譚』はともかく、かつてのバラバラ殺人事件について知らないことから、陽子が感じていた既視感などを小説を書いた保が感じていたは……、と璃々子は疑問がっていましたが、ちょこちょこと璃々子と先輩の関係のおかしさを感じるようになってきたのですげー楽しかったです。


■葛飾区
 突然の事故で母を亡くした荒井家の幼い妹・桃は地元で祀られている石・立石様に母に会いたいと願う。すると、生きていたときのように母が現われてこれまでのように暮らしていた。兄弟たちは自分が死んだと知られないように母と暮らしていくが、口喧嘩から母の死が本人に伝わってしまう。

 これは、普通に感動系でびっくりした。
 戻ってきた母との日常は子どもたちだけで父には見えないというものだったが、成仏しないままの母のこと、伝えてしまった時のこと、父が本当は見えていてそれでも見ちゃいけないと思って無視していたこと、母との別れは基本ボロ泣きする私としては号泣してましたが、なんだろうコレジャナイ感。怖い話を求めて観たホラー番組で感動系がくるとがっかりしてしまうのは最低だと思う。私のことだよ!

 ま、璃々子と先輩にとって必要な話でしたな。璃々子も酒の勢いとはいえ先輩に死を伝えているし。先輩も璃々子の秘密に迫っているしね。


■千代田区
 化粧の濃い霊媒師を名乗る女は男の行く先々に現われた。そしてある女性の死について調べているという。
 千代田区に関する蘊蓄を男から聞きながら歩いた女は男に問いかける。千代田区について、将門の首塚について取材中に死んだ原田璃々子の死について。

 ま、男というか僕なんだが、この人が先輩であることは一目瞭然だが、璃々子の死となると話は変わっていくる。 え、璃々子死んだん?と思いながら読み進めるとそうではないことが分かるのですが、うーむ、こいつは厄介ですなぁ。

 原田璃々子は確かに死んでいた。これまで璃々子として僕ら読者と共にいたのは原田璃々子を名乗っている別の女である。
 先輩が本物とは恋人だったって言ってたから、おそらく理由は恋愛絡みなのかな? 先輩は彼女の真意を探るためにつきまとっている。つまり死んでいない。

 でも、ここでの聞き手が「嘘つきの霊媒師」なんだ。そんな女が死んでいないと太鼓判を押しても、先輩は死んでいる気がする。女が璃々子になりすましているのも、先輩の死も真実なんじゃないかなぁ、と。


 全体的に面白かったかと聞かれると首を傾げざるを得ないですが、墨田区は面白かった。千代田区も霊媒師をどこまで信頼していいか分からんからあんまり楽しくはなかったかな。
 しっかし、自称璃々子の闇深いなぁ。

 では、この辺で今回のお気に入りへ。
 今回特にないんだが、先輩の言葉をちょいと書いておこうかと。


「確かにこの道路は、交通事故が起きやすく、死亡事故も多い。そういう場所だから、人々は怖がって、幽霊を見たと思い込んでしまうのだ。心霊現象とは、人間の恐怖心から起こる錯覚に過ぎない」


 ことあるごとに幽霊はいないと言う先輩ですが、原理としては私も同感だったりする。幽霊の正体見たり枯れ尾花ってやつだよ。
 でも、私はいないと断言は出来なくて、自分に関わり合いがなければいいという派なのだった。
 つまりはいつだって保身に走るビビリだよw






東京二十三区女 あの女は誰?
長江 俊和 (著)
幻冬舎 (2019/5/1)
posted by SuZuhara at 12:16| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月06日

東京二十三区女



「だから言ったじゃないですか。今現実に起こっている事件の背後には全て、歴史の奥に封印された呪いや怨念が潜んでいると」


 なんか忙しかった気がしますが、気がするだけで僕は大したことしてませんね。……はい、すいません。しっかりします。
 私の近状としましては、買いたいゲームの発売が遠すぎて途方に暮れています。ガレリア延期はキツいって。今はノベルゲーしたくない気分で、戦闘したいレベル上げたいでもスマホでゲームはしたくないと喚いてます。


 さて、今回は『東京二十三区女』という小説の感想です。オムニバス形式の短編なので久々に一個ずついきませうか。
 この本を手に取ったきっかけは、家族に紹介されて。なんでも「東京二十三区で働く輝かしい女たちの話」と聞いて、うえへぇと思ったのですが、ちょっと待てよ長江俊和さんやん。これホラーよりやぞ、と忠告も虚しく家族はWOWWOWのドラマを観たらしく騙されたと叫んでたことがきっかけ。うん、マジ。
 その後で一緒に観たんだけど、ドラマ一話の「渋谷区の女」がちょっと分からなくてさ、もう原作読もうってわけなのである。

 全体的にルポライターで霊感の強い璃々子と私立大の民俗学講師で幽霊なんか信じない派の先輩・島野仁が東京を歩き回りながら、その場に染みついた怨念等を探っていく話。
 ホラーではない。幽霊が悪さをするというよりもヒトコワ系に近いのではないかと。トリハダ復活してくれませんかねー。


■板橋区の女
 両親が幼い弟を生き埋めにしているシーンを目撃した薫は集落を逃げ出し、そこから様々なことをして生きてきた。知り合った男性・英司と結ばれて幸せになったはずだったが、結婚後に英司が薫が逃げ出した集落にあった縁切り榎に通い、薫と別れたいと願い始める。
 薫がこっそりとそれを外していたことが英司に知られ、別れを切り出されたとき、薫は英司を殺していた。


 これはなー、英司が書いた絵馬の言葉を見た時にいろいろ悟る。だって、璃々子と先輩が暗号かもって教えてくれるし。私がきちんと読んだ長江さん作品は『掲載禁止』なわけだけど、そこでもあったからな。

「妻には過去のゆか 憂い怒る怖い。かなし」
 つまにはかこのゆか うれいいかるこわい。

 かなし。つまり、たぬき方式な暗号なわけだけど、誰かに知られないように暗号で願掛けって発想はなかった。神様は大変だ。

 この話が一番好きだったかな。もしくは品川区。
 何かについて調べる璃々子とグーグル先生以上に頼りになる先輩の蘊蓄を聞きながら東京散策は楽しいのだった。


■渋谷区の女
 結婚を間近に控えた肇は生き別れとなっていた母・カスミに会えると聞き、暗渠に脚を踏み入れた。そこで出会った精神科医・日向に翻弄され、過去に義父を殺しその罪を母が被ったことを告白する。
 璃々子は強い感情に引き寄せられて歩く下、暗渠では変わり果てた母と息子の再会する。


 ドラマ一話の話。やっとしっくりきた、これ主人公は女でなく男ですやん。渋谷区の女はカスミさんの方だったんですね。
 内容は知っていたけど、男が主人公だと母と関係を持っていた精神科医に抱く嫌悪感とかすごいですな。嫌すぎる。
 あと、暗渠というのを初めて知った。渋谷の下にあんなのあるんですね。カスミさんだけでなく何かいそうで怖いや。


■港区の女
 乾航平はタクシーで六本木の家に帰るつもりだったが、運転手の間違えで全く違う場所に行ってしまう。しかし、運転手は霊感の強い人間であり、事業の失敗で入水自殺した航平の目的地として思い出の場所を巡っていく。


 というのは実は航平の思い込みである。
 自殺未遂後、世にも珍しいコタール症候群、自分が死亡していると思い込む病気である航平の取材にきた璃々子だったが、上手く行かず先輩にカマかけしても璃々子の目的も達成されない。

 航平は子どもと妻の声でコタール症候群から回復するわけだが、車に乗せて思い出の地を巡るというのは治療の一種として行われていたことだった。
 しっかし、そうは問屋が卸さないのだった。回復し出した航平と息子を乗せ、妻の運転する車が走る。

「……私、もう無理かも」

 ですよねー。この展開は予想できた。
 ガードレールに突っ込み、海へと沈む車。そして航平はまたあのタクシーに乗っていたのだった。

 あまり動きのない璃々子たちだが、先輩に何かを思い出させようとすると先輩はそれを嫌がる。この辺りではまだ気づきませんでした。


■江東区の女
 雑誌に投稿された女性の生首が写った心霊写真を見て、璃々子はヤバいと直感する。その怨念を探るために先輩とともに江東区を練り歩き、何とか写真を撮った公園を特定することに成功する。
 そこでは投稿者・由菜と過去に夢の島に起こった事件が密接に関係する場所だった。


 かつて夢の島、ゴミ処理場に死体を捨てられてもバレないと言われていたことから、史郎は殺した妻をそこに捨てることにした。伸子とその子どもと生きるために、暴力を振るう妻を殺して二人で捨ててきたが、まだ死んでいなかったことから形勢逆転。
 妻・志津子まだ生きており、史郎はすぐに屈して寝返る。幼い子どもを残してきた伸子だけ殺される。自分が子どもを産めなかったからとかいろいろ思うところはあっても、子どもを奪うのはつらいな。
 詰めの甘い夫に変わり、スコップで伸子の首を切り落とした。
 伸子は娘・花苗への執着が強く、そのさらに娘が由菜だったという話。家族構成から花苗=由菜かと思ったけど、一世代ズレていましたな。

 ここで璃々子が先輩を振り返ると消えているシーンがある。つまり、そういうこと。


■品川区の女
 交番勤務の木内は三ヶ月前から奇妙な視線を感じていた。事故や事件の起こる先々でも感じる視線に、その先々にいる璃々子から大森貝塚、鈴ヶ森刑場に関する歴史を聞く。そしてこの地で怒った冤罪のことを聞いた直後、木内が助けた女性も他人に冤罪をかぶせようと事件を起こした犯人であることが分かる。


 あらすじ力尽きてきた。
 お巡りさん・木内を中心に語られる話。ここでは今まで璃々子と先輩が話して語られていた蘊蓄が璃々子の口から語られるようになる。そして、私じゃなくて詳しい人がいるのだと。
 ざっくり言うと、木内に惚れた女性が木内に会うために起こした事件。こういうのは東京という場所に封じられた怨念が現在を生きる人々に影響するというのはちょっと壮大だが、この手の女性は怖いから気をつけろですな。

 ここで木内が璃々子の目的を聞き出してくれます。
 この町で病気で死んだ人がいた。しかし、その死には不審な事が多く、その人がやっていた研究データ等は一切が消えていた。
 璃々子曰わく、東京の歴史の闇に消されたのだと。その真相を知るために璃々子は東京を歩いていた。
 その死んだ人とは先輩、島野仁。


 うん、面白かったです。
 次も購入済みなので先輩の死の原因が明らかにされることを楽しみにしてます。

 さて、眠さがすごいからお気に入りに行くぞ!
 と言いたいところだが、今回は冒頭に使ってしまったので割愛。
 璃々子の説には同意できないのだが、先輩の蘊蓄は中々面白く東京という街について知りたいならオススメ。





東京二十三区女
長江 俊和
幻冬舎 (2018/10/10)
posted by SuZuhara at 22:39| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月03日

ロード・エルメロイU世の事件簿9 case.冠位決議(中)



「自分がどうすればいいのか、もう、私には分からない……」


 体調が絶不調でーす! 身体とかいろいろおかしいですが、それよりもゲームが出来ない現状に精神が参ってます。もうやだ、やりたいノベルゲーが2本とPQ2がまだ途中なのにできない。でも今はRPGやりたい。KHは無理だ、今の状態じゃ理解できる気がしない。ルルアのアトリエは買わないと悩みに悩んで決めたのに、トトミミの情報公開ですっげー気持ち揺れるけど発売3月だから今の俺は癒やされない。
 つまりなにが言いたいかというと、ゲームしたいなと思いながら生きてます。キャサリン発売まで持つかな……。


■あらすじ
 ハートレスの目的がイスカンダルの召喚であることが分かり、同じ願いを持つロード・エルメロイU世は苦悩することになる。そんな中、現代魔術科の学術都市スラーがハートレスとフェイカーに襲撃されてしまう。生徒たちの避難をフラットに任せて、ライネスとスヴィンはハートレスたちを追うが、そこで蒼崎橙子と出会うことになる。
 冠位決議(グランドロール)の前に明らかになっていく君主(ロード)たちの陰謀と霊墓アルビオンについての真相。エルメロイU世はこれまでの多くの出会いに支えられ、霊墓アルビオンへハートレスを追うことを決意する。


■感想
 毎回楽しみにしているU世の事件簿最終章の中巻。
 読み終わったのは水曜あたりだったりするのですが、体調悪くて感想を書くのが遅くなった。なのでテンションが僅かに収まっているのは勘弁してほしい。

 さてさて、前回のスラー襲撃からの続きとなりますが、今のところハートレスの過去でしか現われていないクロウの話はどこか不思議と惹かれるところがある。どうにもハートレスを敵というか悪というか、そういう区別が私の中で出来ないのは彼の存在があるからかもしれませぬな。

 フェイカーのスラー襲撃を目の当たりにしたライネスはU世不在のために自ら調査に出ることになる。
 スヴィンがすぐさまライネスを『姫様』と呼び、上下関係を構成するのはライネスも言ってるけど実に犬っぽくていいですな。U世がいない今、スヴィンの忠誠は頼もしすぎるけれども、グレイのことを引き合いに出して遊ぶことを忘れないライネスが好きw

 破壊された現代魔術科の旧学舎、封印されていたというその奥に進んでいくとハートレス&フェイカーvs蒼崎橙子というわくわくマッチが起こっていた。てか、橙子さんは出てくるだけで嬉しすぎるのだがな!
 今回のカラーイラストにですね、橙子さんの戦闘シーンがあるのですが、もう格好いいのである。トリム装備スヴィンと共闘とか、もう最高すぎるのである。
 けれども、僕の乏しい感性ではその戦闘シーンを完全に想像できないので是非コミック版を待ちたい。あ、感想書いてないけど漫画版も読んでます。

 騒ぎを聞きつけたU世がスラーに戻ったときには全て終わっていた。ハートレスたちはアルビオンに行ってしまい、ライネスはスヴィンに守られて無事でしたが、案の定スヴィンはダウン。
 橙子さんに預かり物であるタバコを返したことと、意気消沈U世に「興醒め」発言からもう出てきてくれないのか? でも、この辺りはイスカンダル至上主義としてはもうこれ以上は言ってくれるなと思わないこともなかったのである。

 沈んで引きこもってしまったU世の元にやってくるのは死んだアトラムからの手紙、そしてルヴィア。
 アトラムの存在は意外でしたね。でも、高貴な方の考えは説明されると納得。しかし、私の中ではそのあとに来るルヴィアさんの存在でほとんど印象がないw
 ルヴィアがですね、かなり好きなんですよ。元々凛派ではあるのですが、二人揃っているとハンパなく嬉しい。まだ凛と会っていないルヴィアの高貴さが高くて素敵ですね。

 そしてグレイたんのビンタで復活したU世はハートレスの真意を探ることに成功しますが、正直そんなことより迫る冠位決議での民主主義派の動きの方が気になる。
 メルヴィンが見せしめとして巻き込まれたトランベリオとイノライの茶番。使い魔での覗きがあると分かってながら情報を出し、そしてメルヴィンの心さえ折るトランベリオの出力とアシュアラさんが娘という告白。
 前回書いたかは分からないのですが、トランベリオ自体は好きなおじさんです。私ならばこの人の存在で民主主義派を選ぶほどには。
 しかし、アシュアラがこっちにつくとなると予想が難しくなってくるな。

 アルビオンに行くと決意したU世が戻るとライネスと連絡がつかなくなるのですが、それはライネスが冠位決議に臨む決意をしたからこその情報規制であり、ライネスとメルヴィンの悪あがきからU世の元へは魔眼蒐集列車と魔術師フリュー、清玄、ルヴィアがいた。
 たった二十四時間でアルビオン攻略とハートレスたちを打倒するというミッションが始まることになるというところで今回はお終い。
 グレイが「最初のメンバーですね」とちょっと嬉しそうなのが可愛い。作中でもしも自分が事件簿を書くのであれば、時系列は故郷のことが始めでも剥離城を最初に選ぶと言っていたりする。その気持ちはめちゃくちゃ分かるので、どうしてアニメは魔眼蒐集列車からなのかとも思うがね。

 うーむ、いつも以上に支離滅裂に書いている気がしますが、体調おかしいので勘弁してもらおう。背中の痛みは選手生命の危機だ。なんでか背中が痛すぎるんだよぅ。

 では、ここいらで今回のお気に入りへ。
 今回は引きこもってしまったU世を見守るグレイのけなげさを一つ。


 いてもたってもいられなくて、だけど、今だけは待っていたかった。
 この人が何かを発しようという気持ちになるまでは、どれだけでも待っていよう。たとえ、結果としてこの心臓が砕けても、足が萎えて立ち上がれなくなったとしても、それだけのものをこの人からもらったのだから。


 日が傾くまで待って、いろいろな人に支えられているU世を最後に勇気づけてくれるグレイたんはマジヒロインでした。一緒に来いと言われるだけで嬉しいとか……スヴィンになりたい。
 事件簿は本当に好きなので次で終わると思うと悲しいですが、それ以上に早く続きが読みたい。その後で全巻読み直すのを楽しみにしてるんだ。









ロード・エルメロイU世の事件簿9 case.冠位決議(中)
三田誠(著)坂本みねぢ(イラスト)
TYPE-MOONBOOKS (2018/12/31)
posted by SuZuhara at 22:14| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする