2019年02月03日

ロード・エルメロイU世の事件簿9 case.冠位決議(中)



「自分がどうすればいいのか、もう、私には分からない……」


 体調が絶不調でーす! 身体とかいろいろおかしいですが、それよりもゲームが出来ない現状に精神が参ってます。もうやだ、やりたいノベルゲーが2本とPQ2がまだ途中なのにできない。でも今はRPGやりたい。KHは無理だ、今の状態じゃ理解できる気がしない。ルルアのアトリエは買わないと悩みに悩んで決めたのに、トトミミの情報公開ですっげー気持ち揺れるけど発売3月だから今の俺は癒やされない。
 つまりなにが言いたいかというと、ゲームしたいなと思いながら生きてます。キャサリン発売まで持つかな……。


■あらすじ
 ハートレスの目的がイスカンダルの召喚であることが分かり、同じ願いを持つロード・エルメロイU世は苦悩することになる。そんな中、現代魔術科の学術都市スラーがハートレスとフェイカーに襲撃されてしまう。生徒たちの避難をフラットに任せて、ライネスとスヴィンはハートレスたちを追うが、そこで蒼崎橙子と出会うことになる。
 冠位決議(グランドロール)の前に明らかになっていく君主(ロード)たちの陰謀と霊墓アルビオンについての真相。エルメロイU世はこれまでの多くの出会いに支えられ、霊墓アルビオンへハートレスを追うことを決意する。


■感想
 毎回楽しみにしているU世の事件簿最終章の中巻。
 読み終わったのは水曜あたりだったりするのですが、体調悪くて感想を書くのが遅くなった。なのでテンションが僅かに収まっているのは勘弁してほしい。

 さてさて、前回のスラー襲撃からの続きとなりますが、今のところハートレスの過去でしか現われていないクロウの話はどこか不思議と惹かれるところがある。どうにもハートレスを敵というか悪というか、そういう区別が私の中で出来ないのは彼の存在があるからかもしれませぬな。

 フェイカーのスラー襲撃を目の当たりにしたライネスはU世不在のために自ら調査に出ることになる。
 スヴィンがすぐさまライネスを『姫様』と呼び、上下関係を構成するのはライネスも言ってるけど実に犬っぽくていいですな。U世がいない今、スヴィンの忠誠は頼もしすぎるけれども、グレイのことを引き合いに出して遊ぶことを忘れないライネスが好きw

 破壊された現代魔術科の旧学舎、封印されていたというその奥に進んでいくとハートレス&フェイカーvs蒼崎橙子というわくわくマッチが起こっていた。てか、橙子さんは出てくるだけで嬉しすぎるのだがな!
 今回のカラーイラストにですね、橙子さんの戦闘シーンがあるのですが、もう格好いいのである。トリム装備スヴィンと共闘とか、もう最高すぎるのである。
 けれども、僕の乏しい感性ではその戦闘シーンを完全に想像できないので是非コミック版を待ちたい。あ、感想書いてないけど漫画版も読んでます。

 騒ぎを聞きつけたU世がスラーに戻ったときには全て終わっていた。ハートレスたちはアルビオンに行ってしまい、ライネスはスヴィンに守られて無事でしたが、案の定スヴィンはダウン。
 橙子さんに預かり物であるタバコを返したことと、意気消沈U世に「興醒め」発言からもう出てきてくれないのか? でも、この辺りはイスカンダル至上主義としてはもうこれ以上は言ってくれるなと思わないこともなかったのである。

 沈んで引きこもってしまったU世の元にやってくるのは死んだアトラムからの手紙、そしてルヴィア。
 アトラムの存在は意外でしたね。でも、高貴な方の考えは説明されると納得。しかし、私の中ではそのあとに来るルヴィアさんの存在でほとんど印象がないw
 ルヴィアがですね、かなり好きなんですよ。元々凛派ではあるのですが、二人揃っているとハンパなく嬉しい。まだ凛と会っていないルヴィアの高貴さが高くて素敵ですね。

 そしてグレイたんのビンタで復活したU世はハートレスの真意を探ることに成功しますが、正直そんなことより迫る冠位決議での民主主義派の動きの方が気になる。
 メルヴィンが見せしめとして巻き込まれたトランベリオとイノライの茶番。使い魔での覗きがあると分かってながら情報を出し、そしてメルヴィンの心さえ折るトランベリオの出力とアシュアラさんが娘という告白。
 前回書いたかは分からないのですが、トランベリオ自体は好きなおじさんです。私ならばこの人の存在で民主主義派を選ぶほどには。
 しかし、アシュアラがこっちにつくとなると予想が難しくなってくるな。

 アルビオンに行くと決意したU世が戻るとライネスと連絡がつかなくなるのですが、それはライネスが冠位決議に臨む決意をしたからこその情報規制であり、ライネスとメルヴィンの悪あがきからU世の元へは魔眼蒐集列車と魔術師フリュー、清玄、ルヴィアがいた。
 たった二十四時間でアルビオン攻略とハートレスたちを打倒するというミッションが始まることになるというところで今回はお終い。
 グレイが「最初のメンバーですね」とちょっと嬉しそうなのが可愛い。作中でもしも自分が事件簿を書くのであれば、時系列は故郷のことが始めでも剥離城を最初に選ぶと言っていたりする。その気持ちはめちゃくちゃ分かるので、どうしてアニメは魔眼蒐集列車からなのかとも思うがね。

 うーむ、いつも以上に支離滅裂に書いている気がしますが、体調おかしいので勘弁してもらおう。背中の痛みは選手生命の危機だ。なんでか背中が痛すぎるんだよぅ。

 では、ここいらで今回のお気に入りへ。
 今回は引きこもってしまったU世を見守るグレイのけなげさを一つ。


 いてもたってもいられなくて、だけど、今だけは待っていたかった。
 この人が何かを発しようという気持ちになるまでは、どれだけでも待っていよう。たとえ、結果としてこの心臓が砕けても、足が萎えて立ち上がれなくなったとしても、それだけのものをこの人からもらったのだから。


 日が傾くまで待って、いろいろな人に支えられているU世を最後に勇気づけてくれるグレイたんはマジヒロインでした。一緒に来いと言われるだけで嬉しいとか……スヴィンになりたい。
 事件簿は本当に好きなので次で終わると思うと悲しいですが、それ以上に早く続きが読みたい。その後で全巻読み直すのを楽しみにしてるんだ。









ロード・エルメロイU世の事件簿9 case.冠位決議(中)
三田誠(著)坂本みねぢ(イラスト)
TYPE-MOONBOOKS (2018/12/31)
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2019年01月26日

幼女戦記 12



「我が第二○三遊撃航空魔導大隊の損害を報告いたします」


 『マスカレードホテル』を観てきました。東野圭吾さんの作品は大分ご無沙汰だったりしたのですが、ホテルという舞台もあって大変興味深かったです。「お客様がルールです」というのは僕には無理だなー。
 展開的には比較的分かりやすい伏線だったと思うのですが、松たか子さんの存在には写真を見るまで気づかなかった。
 まあともあれこれで、今のところ全てのFGO映画館礼装は貰えてるんだぜw


■あらすじ
 新兵を押しつけられたターニャは「新人を殺すな」という上の以降を履き違え、「損害を出してでも訓練させるべき」と考え、新兵の一部を連れて作戦を実行する。
 戦場で先輩たち、そして白銀の姿を見たグランツたち新兵は軍人として成長するが犠牲を二人出してしまう。それと同時期、ターニャ自慢の古参兵からも一人の脱落者が出てしまう。
 物資潤うアレーヌ市でラインでは考えられない食事を楽しむこと一時、上空からフランソワ共和国兵が襲い来る。


■感想
 やー、幼女戦記の漫画はスパンが早くて嬉しい! けど、今はペルライチケット代払って金ないから正直きついw

 さて、ライン戦線にて新兵を押しつけられたターニャは「殺さないようにラインを経験させてやってよ」という遠回しな言い方を「被害を出してもいいから経験させろ」といつもの如く履き違える。
 部下たちとの会話でも「兵を第一に思われている」と勘違いされたまま夜間浸透襲撃に新兵の一部を参加させることに。脳筋よりのセレブリャコーフ少尉可愛い。あとここの作戦内容説明の狼たちがいつも以上に好き。礼儀正しくノックしよう。ショベルで素早く念入りに。殺さないように、それでも起きないように念入りにってことだろw

 一方、新兵たちの方は少々不満を抱いていた。
 戦争時なのにマニュアルとは違う行動、魔導師なのに徒歩で何日も歩いて帰還、ジャガイモばかりの生活は思い描いていた英雄の道とは程遠かった。
 召集命令が響き、士官学校でターニャの噂を聞いていたグランツの班が急いで駆けつけると、そこには既に完全武装の先輩たち。グランツの班他三班は早く集合したため、塹壕送りを免れるが先輩たちと夜のピクニックへ。敵の塹壕に行ってお友達(捕虜)を連れてくるよ大作戦であるw

 そこは魔導師として華々しく活躍する場ではなく、ギリギリまで魔導力を使わずにただ任務を遂行する軍人の姿だった。その姿にグランツも心を決め、ショベルノックでターニャに名前を覚えられる。良いことなのかは正直分からんw
 捕虜を取られたフランソワ共和国は情報漏れを恐れて計画を早めることに。

 一方、ターニャは新兵を二人犠牲にしてしまったことに少ないな名指揮官と喜んで上司に報告し、勘違いのまま乗り切るw
 だが、二○三部隊の熟練兵からも損害が出ていた。

 謎の苦しみを訴えるタイヤネン准尉はなんと食あたりで脱落。ジャガイモが古かったんだ……。
 これはですな、正直笑えないんですよ。兄貴の手作り料理(腐った豚肉料理)を食って入院した経験がある人間としてはな! ……兄の初料理がメシマズレベルじゃねぇとは思いつつも傷つけまいと全部食った勇者にこの仕打ちかよともう一人の兄貴と入院したからな。ちなみに本人はこんな料理食う人間の気が知れないとか言ってたけどな。

 ターニャがそんなこんななっている間に上層部も動いていた。ゼートゥーアがかつてターニャに語った世界大戦について説き、敵の戦闘継続能力の粉砕へと目標を写していくことに。ここでゼートゥーア少将って呼ばれているんだけど、准将じゃなかったか? 好きなタイプのおっさんではないから見逃したのかもしれん。

 そして、ターニャはアレーヌ市で部下と食事中――正直、みんなと食事していることに驚いたw
 食事中にフランソワ共和国の戦法がかつて自分がしたことの真似であることに気づいており、他に真似をするとしたらこのアレーヌ市で……と思い至ったところに司令部からの呼び出し、アレーヌ市の上空からフランソワ共和国の襲撃で続く。

 今回も面白かったですが、いつもいつも良いところで終わるなー。
 二○三大隊の面々は面白いのですが、新兵たちが入りどう変わっていくかが楽しみですね。グランツとアレーヌ市はなにか関係があった気がするんだけど、アニメは大分前に流し見しただけなのでほとんど覚えてなかったりする。ほら、キャラも大分絵柄が違うから上手く擦り合わせられないのである。だから映画にはあまり興味がを惹かれていないのだが、特典が漫画の時に行けたら行くかもしれない。うん、でも2月は忙しかったりするんだけどな!


 では、ここいらで今回のお気に入りへ。
 今回は召集命令から三分以内に整列できた新人の班に対してのターニャたちの会話から。


「やけに早いのが三個小隊分いたようだが?」
「普段の成績も優秀です」
「少佐殿と同じ士官学校卒が小隊長です」
「鼻が高いな」
「少佐殿の噂をさんざん聞いたおかげでは?」
「…耳が痛いな」 


 ここ笑ったww
 このくらいのことならケロっという部下たちとの関係がすごく好きなんですよ。決して、セレブリャコーフ少尉だけではないのだよw








幼女戦記 12
東條 チカ(漫画)カルロ・ゼン(著)篠月しのぶ (デザイン)
KADOKAWA (2019/1/25)
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2018年12月31日

沙耶の唄



「沙耶と一緒にいられるのなら、僕はもう何もいらない。何もかも、このままでいい」


 ペルライ先行受付が始まったけど、チケット多すぎてなにがなんだか分からんw
 曲メインのライブなら前列がいいけど、マス席はぼっちにはレベルが高い。どうせ当たらないだろうけど、チャレンジは自由だあっ!と抽選応募だけはしといたがね!
 ライブCMから言ってP5Rは完全版でしょうが、ここ最近長い時間ゲームをする根気がないか不安だ。もうノベルゲー以外は控えようと思いつつ、PQ2クリア向けて頑張ります。


■あらすじ
 交通事故に遭い、家族を失った匂坂郁紀は自身だけは奇跡的に一命を取り止める。しかし、その代償に目に見えるモノ全てが醜悪な肉にしか見えないという後遺症が残ってしまう。風景は臓物、人間は肉塊にしか見えなくなった郁紀の視界で唯一美しい人間に見える少女・沙耶との出会いで救われる事になるのだが、それは狂気側に踏み込むことでもあった。
 郁紀の親友・戸尾耕司が気づいた時には郁紀は既に沙耶と生きることを決めていて、正常な世界で生きていた耕司は取り返しのつかない狂気を知ってしまうことになる。



■感想
 憧れのエロゲー『沙耶の唄』がまさかのノベライズ。あらすじはもう本気でコピペにしたい。こんなの無理だよっ!

 ゲームはしたことないけれども純愛モノの最高潮だと認識してまして、基本的にネタバレOKなのでだいたい内容は知っていた。後書きにもあるけれども、このノベライズは三つあるエンドのどれとも違うモノとなっている。私の認識では、離別以外の二つが混じっているのかな。僕は離別EDが見たいので今度、買ってこようと、思う。
 人生は挑戦だ。どうせ来年は一身上の都合でエロゲをすることになるんだからやるんだって決めたんだ。

 さて、本編へ。
 事故の影響で視界に映る全てが醜悪な肉塊と臓物にしか見えなくなった郁紀は、かつての友人たちとの会話すら苦痛で仕方なかった。……これ、私はまだゲームをやっていないからアレですが、郁紀には声もまともに聞こえていないから私も発狂案件ですな。音が不快なのだけは本当に無理だ。

 そんな苦痛の日常を超えて家に戻れば郁紀にとって唯一人間に見える少女・沙耶がいる。そこで二人はイチャイチャ暮らしているわけですが、当然そのままでなんかいられない。
 郁紀は沙耶の願いで「パパ」である疾走した奥涯教授の行方を探るんだけど、そこで郁紀に想いを寄せていた津久葉瑶に呼び止められる。郁紀からすれば臭く醜い肉塊に分かったようなことを言われればキレる。キレて言った罵詈雑言を他の二人の友人・耕司と青海が聞いてしまって、怒り心頭の青海は郁紀宅へと乗り込んでしまう。

 沙耶がいる、郁紀の家へ、だ。

 腐った生ゴミのような異様な匂いに戸惑いながら青海は進み、そして郁紀の心が安まるように幾重の色で塗り潰された狂気の部屋を見て、そして自らを喰らう捕食者の姿も見てしまうのだった。

 郁紀が戻ると沙耶が何かを食べている。食べて見たら意外にイケる。郁紀もおいしいと思う味。
 これはなー、実際どうなんだろうか。ただ郁紀がおかしい状態になくても、ただの肉をして出されたら人のモノかどうかなんて分からないからあまり責められないと思うんだよなー。
 郁紀と沙耶は共通のご飯を発見して、残りを冷蔵庫に入れて保管するのだった。

 沙耶は郁紀の状態を知るために病院へと忍び込み、カルテを奪う。そして郁紀がどういう状態にあるか理解した後はお隣さんで実験。
 郁紀の家からする異臭に苛立っていた画家・鈴見は突如押し入ってきた何かに襲われる。そうして意識が戻ると世界は肉塊塗れへと変貌していた。蚯蚓(ミミズ)の漢字を初めて知った。あと地獄の『星月夜』は思わず調べちゃったよ。絵画なのか、なるほどなーである。ちょこちょこ表現が難しいのはさすがは虚淵と過去に読んだzeroとかphantomでも思った気がする。

 世界が一変したことで家族もkillしちゃう鈴見氏は唯一可愛い女の子である沙耶を見て速攻で襲いかかる。沙耶をおかしいと感じつつも置かせるなんてすげーや、と思っていると郁紀が帰ってきて化け物退治へ。郁紀からすれば化け物が沙耶を襲っているのであり、滅多刺しである。

 ここで沙耶が脳をいじって郁紀と同じ状態にさせたことが語られる。郁紀と同じになれば優しくして貰えるんじゃないかって。
 沙耶が可愛いから優しいのではなくこれまで培ってきた時間があってこそなんだよ、と諭した郁紀は沙耶に愛の言葉を言おうとするが待ったがかかる。

 今ならば――郁紀を元の状態に戻せる、と。

 ゲーム中に二つしかないという分岐点の一つですね。ここで戻ると最高に悲しい純愛に至れるという。
 だが、郁紀はそれを受け入れない。沙耶と生きることを誓い、お隣さんもその家族も食料とすることを選択する。

 郁紀の異変と青海の疾走から手がかりを求めて郁紀の病院へと来た耕司と瑶は担当医の丹保涼子医師と知り合う。ここではまだ接点は薄いが連絡先の交換。

 後日、奥涯教授の別荘に行くための足として郁紀は耕司を誘い、郊外の別荘へ。恋人が郁紀の家に行くと失踪していながらも親友を疑いきれない耕司は郁紀の異変を探るためにもついて行く。
 その一方で郁紀のためならなんでもやるマンと化した沙耶は郁紀に家族を作るために青海の携帯で瑶を呼び出し、その肉体を作り替えていた。
 耕司が電話したときに、耳が取れちゃった、とか言っていることから状況は察せられる。身体が徐々に腐っちゃう女の子の話を思い出したよ。
 瑶との通話に気を取られていると背後から郁紀に襲われて耕司は井戸へと落とされてしまうのだった。

 郁紀が家に戻ると沙耶が瑶というペットを用意してくれている。郁紀に人間に見える、それがイコールどういう意味かはもう分かっているので何も言うまい。
 瑶は作りかえられる間に言葉をしゃべれなくなってしまうのですが、肉奴隷なので問題ないと楽しむ様子は文字じゃなかったらスキップ必須。僕は直視できないきっと。

 一方、耕司の方は瑶の前に丹保にも電話していたので助けに来てくれる。ここからは先生の言葉遣いが一変していますが、こっちが地であり格好いいのである。
 それから二人で井戸の隠しルートから奥涯教授の下へと行き、沙耶について知ることになる。

 ざっくり言うと、沙耶は地球外生命体というか、人間の文化や知識を吸収して繁殖するはずだった生命体。精子に対する執着はこれが理由だったんだね。
 本来なら繁殖能力を持った時点で繁殖活動に入るはずだったのだが、学習の過程で沙耶は物語とかで愛や恋を知る。だが、唯一接点のある人間である奥涯はパパであり、既におじいちゃんでありそういう対象ではなく恋をしなかった。世界に自分を愛してくれるモノはいないという絶望が繁殖能力を虚勢していた。そう、郁紀と出会うまでは。
 一回読んだだけだからきちんと理解できていないかもしれないけど、こんな感じ。

 しかもですね、沙耶は郁紀に自分のことをタンポポの綿毛に例えて説明してるんですよ。何もない砂漠に綿毛が落ちた時、一面がタンポポ畑になるまで頑張ろうと思うのは、砂漠にたった一人でも花を愛してくれる人がいると知った時だ、と言っているので非常にヤバい段階に来てしまっていることが窺える。

 ここからは耕司のターン。まんま耕司主人公である。
 郁紀に沙耶のことをチラつかせて精神的優位に立った耕司だったが、郁紀が去った家で狂喜の部屋と血塗れシンク、そして冷蔵庫の人肉を見てしまう。ここ、有名なグロフォーカスが効かないというタッパーのシーンですね!
 親友が狂喜に呑まれるのを助けられなかっただけでなく、恋人の手と再会した耕司の心中には同情を禁じ得ない。なんでお前は、ここに至るまで欠片でも信じられたんだよ。

 二つ目の分岐は、郁紀と先生のどっちに電話をするかというもの。今回は先生に。
 耕司は先生も妄想が酷いと警戒しているが、二人で組んで郁紀の元に向かうことに。

 郁紀の方も斧を用意し、瑶を囮に使うということをやってくれますが、もう耕司と瑶の再会がキツすぎた。
 とっくに一線は越えたと思っていた耕司は、先生が何度も忠告してくれたのに瑶と出会ってしまう。沙耶の眷属となった肉塊相手に頼みの四発しかない拳銃も使い切り、鉄パイプでなんとか殺す。そうしてvs斧装備郁紀+沙耶が始まるわけですが、耕司にだってな先生がいるんだよ!
 ……でも、ここで誰に電話したかの表記は要らないと思う。戦闘シーンでいきなり電話の話が出て混乱したから。

 閑話休題。

 郁紀に斧で胸の半ばまで切られようとも、走馬灯を見る瞬間を捨てて先生は沙耶に向けてショットガンを放つ。
 沙耶も郁紀も致命傷で死にかけているが、そこで沙耶は開花する。郁紀との子を出産である。世界を肉塊に変える種、ってことであってる?
 先生は激怒するが、花に近づきすぎて死亡。
 ここで沙耶=耕司にとっては怪物が郁紀に最後の力を振り絞って近づいていくシーンがあるんだけど、耕司は必死に鉄パイプで殴ってそれを止めさせようとする。沙耶が郁紀に触れてしまったら耕司の負けだからだ。何もかも取り返せないから。
 それでも沙耶は止まらず、郁紀の頬を撫でてから動かなくなった。

 あとは壊れた耕司が一人残る。
 かつての友人たち、それも悲惨な姿の三人と話す夢を見たり、先生の幻を見たりで追い込まれてはいるが、隠し持った一発の銃弾に守られている。これがあれば死ねるからだ。
 世界各地で起こっている異変が始まりであることを感じながら。

 おおう、面白かったけれどもこれ続くんですかね本当に。できることならもっと挿絵欲しいです。包丁郁紀とか鉄パイプ耕司とかあったら完全に神だった。せめてショットガン先生はちゃんとゲームにありますよね? ね?

 ですが、狂気の純愛だったかと聞かれると難しいですね。たぶんゲームから入った方がいい。小説だと沙耶との愛を貫くという選択も、正常に戻るという選択も自分で出来ないから流されてしまう。選択しないから自分から落ちれないんだ。
 沙耶を守りたい気持ちもあるんだけど、理性が耕司側――現実を守ることを優先するんだ。基本的には常識人であるはずだからね。

 では、ここいらで今回のお気に入りへ。
 やっぱり最後の耕司のシーンかな。決して耕司が好きとかじゃないんだけど、ひたひたと郁紀に近づく怪物からなんとか取り戻そうと鉄パイプで殴り倒すシーンを。
 体液が飛び散るほど殴ったのに、怪物は郁紀に辿り着く。そして頬を撫でてから動かなくなった。


 最後の瞬間までその怪物は、郁紀を手放そうとしなかった。そして郁紀と繋がったまま死んだ。
「……」
 耕司は、ついに自分が何も取り戻せなかったことを悟った。


 この救われなさはハンパないですね。
 狂った郁紀を許すことなんかできないのに、かつての笑顔とか見るとどうしようもなくなってしまうとか耕司は本当にいい奴なんでしょう。
 だからこそ、最後の最後でかつての親友の姿だけでも守ろうとしたのに、怪物と固く結ばれているところなんてものを見せられたら壊れるしかないよな。








沙耶の唄
大槻 涼樹 虚淵玄(Nitroplus)
講談社 (2018/12/16)
posted by SuZuhara at 16:36| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月27日

やがて君になる1〜6



「私は君じゃなきゃやだけど、君はそうじゃないから」


 生まれて初めて歯医者に行ってきた。うん、縁がなかったんだなー。奥歯に違和感があって行ったんだけど、やはり虫歯だったようです。しっかし、歯がスカスカで変な感じだ。
 そんな中、久々に手に取ったファミ通でうたわれるもの斬が短縮偽りの仮面だと知る。むー、内容が分かっているゲームは何度も出来ないので今回は見送りに。
 だってまだシュタゲエリートもβ世界でクリスとあったところだし。


■あらすじ
 特別という気持ちが分からない小糸侑は高校の先輩・七海燈子が自分と同じではないかと共感を覚えて悩みを相談する。すると、誰も好きにならない侑を燈子は興味を持って「好きになりそうだ」と告げる。
 その冗談のような告白から行動にまで移されて振り回される侑だったが、燈子が「自分のことを好きにならない侑」を求めていること、ドキドキなどせずに変わらない、そうでなければならない自分の気持ちに板挟みになっていく。


■感想
 はい、タイトル買いしてみたらまさかの百合ものだったでござる。いやー、びっくりしたけれども面白かった。僕にも安心なレベルでした。
 疎いので全く知らなかったんだけど、タイトルに惹かれてとりあえず全巻買ってみた。奇しくも最新刊の発売日が今日だったので6巻までの感想です。

 恋愛のドキドキなんて分からない小糸はクールというかドライな女子で、中学卒業時に告白された返事を未だ悩んでいた。そんな中、告白を断る七海の姿を見て誰にも出来なかった告白のことを相談する。
 そのおかげで電話で断りを入れることになるのだが、その後でまさかの七海が告白紛い。
 小糸も冗談だと思うのだが、踏切でキスなんてされてしまっては現実を見ざるを得ない。

 これで恋愛に走ったら私は好きではなかったでしょうが、小糸が一筋縄ではいかない。
 七海に生徒会長選挙の推薦者になってほしいと押し切られて手伝うのだが、ここで集合写真中に隠れて手を握ったりして先輩の反応を見る。
 照れる七海の顔を見て小糸は「ずるい」と思った。

 特別が分からない者同士だったはずなのに、特別を知った七海に嫉妬するんだ。気持ちを受け入れるわけでもなく、ね。
 おもしろいなぁ、と一気に小糸が好きになりましたね。完璧な先輩である七海の弱さに気づいてフォローしたりして、七海が甘えたくなるのも分かる。
 生徒会男子の槙にキスするところを見られてしまったときも、七海のことだけを心配したからね。バレたら怖い思いをさせてしまうって。
 この辺は槙と一緒におもしろいなぁと感心しっぱなしでした。

 七海が完璧に拘るわけが死んだ姉にあることを小糸は知ることになるのだが、ここでの好きにならないという約束は残酷だな。七海はキスをしたりとかどんどん甘えてくるけれども、好きになってはいけない。
 七海の強がりを知っていて好きだと思っている副会長の佐伯先輩との三角関係もあって、一方通行がこじれていると楽しんでいましたが、生徒会の劇――七海姉がやり残したことをやると決まってからは風向きが変わってくる。

 小糸の友達がまるで全てを知っているかのように書いた劇は、七海そのもののことのようだった。記憶喪失の女性がいろんな人が語る、全く違う印象の過去の自分。本当の自分とは……、とざっくりいうとこんな話なんだが、姉の同級生に「似てない」と言われて揺らいだ七海と、誰かになるのではなく今の自分を大切にしてほしいという小糸の気持ちから文化祭当日を迎える。

 劇は大成功で喝采を得る七海。
 正直、ここのMVPは七海父だと思う。母親が納得してなさそうなのは怖いがね。

 劇が終わったら自分たちはどうなるのかと心配していた小糸だが、その勘は当たっていたようで、初めはべったりだった七海が何も言わずにスカウトされた劇団に入っていた。
 そして、これからも変わらないことを求める七海に小糸は察しがいいから全部分かってしまうんだけど、それでも初めて自分からキスをして気持ちを伝えた。
 七海の答えは「ごめん」。好きであれば嫌いがやってくるという怖さから動くことが出来なかったのだ。
 そんなところで6巻はお終い。

 私は小糸の淡泊なドライさが好きですが、最後の告白をするとは思わなかったので驚いた。でも、同時に落胆もした。ああ、君もそっちに行ってしまうのか、と。
 僕という人間も人を好きになれない人間なので、槙のポジションのような読者の位置は楽しかった。七海のように慕ってくれる人なら同性でも好きになるのかもしれない。同性だからどうというより、この人が好きなんでしょうな。
 いやー、なんだよそれ。そこまで想える人がいるなんて羨ましいや。

 では、この辺でお気に入りへ。
 キスとかのことで七海の気持ちをが重くなり始めたとき、断られる前に七海は「好きでいさせてほしい」と言う。それを断らなかった小糸に七海は笑顔でありがとうと言った。
 その時の小糸の独白を。


 ……また 眩しい思いをするだけなのに
 なんで構わないなんて言っちゃったんだろう
 ……この人は やっぱりずるい


 ああ、全く本当にずるいや。
 人であれモノであれ、何かを一番に想えることはきっとたぶん僕には一生ないだろな。 









やがて君になる1〜6
仲谷 鳰
KADOKAWA
posted by SuZuhara at 22:09| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月02日

ロード・エルメロイU世の事件簿8 case.冠位決議(上)



 ロード・エルメロイU世、最後の事件。


 幸運なことに当選したのでGE3体験会に行ってきました! やばい、超楽しい!!
 がっつりとした感想はアンケートに書いたので省きますが、不安そうなクレアの声とかジークのエンゲージ能力の名称格好良すぎた。新神機もだけどアラガミの捕食攻撃の厄介さとか、体験できたのは本当に良かった。捕食でバースト時間減少とか、覚えとかないと厄介すぎるからな。
 あとGEの新グッズ展示があったのだけれども、腕時計スキー、文字盤スキーとしては見逃せないのでアリサモデル買うために金を貯めねば。


■あらすじ
 エルメロイ教室一ヶ月停止の報を受けて驚く中、ロード・エルメロイU世は生徒たちから身を隠し、開かれることになった冠位決議(グランド・ロール)とハートレスを追っていた。
 能力的に騙すことのできないスヴィンとフラット、イヴェットにだけは協力を要請し、U世は妹ライネスと共に冠位決議前に民主主義派と貴族主義派から招待される会合に、ハートレスの跡を追うのはグレイたちととも向かいギリギリで切り抜けながらも、ハートレスが何をしようとしているのかまで辿り着く。


■感想
 毎回楽しみにしているけれども、下巻が出ないまま呼んだことを後悔するU世の事件後最終章。
 正直、全てを理解しているとは言いづらいのですが、時計塔や生徒たちのやりとり、そして兄いじりをするライネスが大好きなのです。

 今回はハートレス問題を抱えているところに冠位決議が開かれる一報が。エルメロイにとっては鉱石科のロードの座を奪われ、現代魔術科を与えられたのもこの冠位決議であり、この前哨戦である二大主義派との会合は胃の痛くなるわくわくでいっぱいでしたw
 いやー、ライネス本当有能。こういう政治的なやりとりを彼女視点で知れるのはいいですなー。

 手札が足りないことからトリムマウの機能を使い、ミニU世となってグレイ、スヴィンとフラットたちとともにハートレスの弟子の元に向かうのですが、ここで嬉しい橙子さんとの再会。今回は敵に回っておらず、興味を持ってくれているために知恵を貸してくれるのは安心感ハンパない。
 別れてからもスヴィンでもホームでないと関知できない使い魔を使って見ているので、下巻で暴れてくれるのを期待してしまうのは致し方ないことだ。

 ハートレスの弟子たち五人が全員時計塔の迷宮・霊墓アルビオンの生還者(サヴァイバー)であること、そして実際に会った二人を含めて死亡、もしくは謎の失踪していく。
 この問題にぶち当たりながらエルメロイの名を背負い、派閥問題まで出てくるんだからU世の胃も痛くなるはずだ。オルガマリーは出てくるだけで癒やされるが、新所長の癒やし度には負けると実感するw

 ハートレスがわざと残した資料から彼らの目的がイスカンダルの召喚であることを知ってU世が驚愕するところで今回はお終い。しかも、フェイカーたちがスラー襲撃する瞬間とかやめてーっ!
 zeroでのイスカンダルとウェイバーを読んで、もう我が王はイスカンダルだと誓い、FGOでも聖杯もフォウくんも全て捧げましたが、だからこそフェイカーの気持ちはつらいなー。
 U世を否定する気持ちも、偽りでしか王に尽くせなかった存在も。うわあーっ、早く下巻読みたいよっ!

 では、ここいらで今回のお気に入りへ。
 ハートレスが弟子たちに言っていた言葉は、ちょっと学生時代に言われたら世界が変わりそうだったので心に残っている。今回はここを。


「君の人生を、最も輝かしいものに捧げたまえ」 


 生還者にしてハートレスとの出会いや弟子になる経緯が描かれる少年にして、今回は出てこなかった最後の一人がいる。その少年の現在は一切語られないのだが、どう関わってくるか楽しみでたまらないや。






ロード・エルメロイU世の事件簿8 case.冠位決議(上)
三田 誠
TYPE-MOONBOOKS (2018/8/12)
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