2016年10月30日

オーバーロード11 山小人の工匠



「……簡単だ。失われた知識の再現をお願いしたい」


 ご無沙汰してました。元気ですか?って聞くのはやめてくれ。ちょっとかなり忙しかっただけだよ。
 ま、これから12月にかけてもっと忙しくなるのでそろそろ遊ぶのは今やっているので終わりにしましょうかそうしましょう。実質三週目な二週目P5が終わりましたが、特に目新しい発見はなかったな。とりあえず、真が出るドラマCDをください。ヨハンナフィギュアください。
 今日の私はたまっていた詫び石で回したFGOガチャでまさかの金アサシンカード。え、クレオパトラ? い、いいや、どどどうせカーミラだろと覚悟したところでまさかのジャックちゃん召喚でひゃっはーしているのでテンション高めで行くぜ!


■あらすじ
 ドワーフと面識があるリザードマン・ゼンベルを案内役にアインズはアウラとシャルティアと共にドワーフの国に向かう。
 道中で出会ったドワーフ・ゴルドよりルーン工匠について聞いたアインズはクアゴアに侵攻されつつあるドワーフの国を救い、技術を手に入れることを決める。
 今回はシャルティアの試験も兼ねているためアウラと共に二人にクアゴアの制圧に任せつつ、アインズはドワーフの王都に住み着いたドラゴンに挑む。


■感想
 映画かするらしいオーバーロード最新刊。
 え、マジでwとテンション上がりましたが、総集編のようなのであまり興味は湧いていなかったり。新作が見たいです、新作が。あ、でもクルシュは勘弁な!

 前回が裏工作の回だったので今回はアインズ様の冒険ターン。私個人としてはアルベドやデミウルゴスの暗躍が好きなので歯痒いですが、相変わらずのアインズ様の行き当たりばったりオーケー感は素晴らしいぜ。

 そういやザリュースの子どもが生まれたらしいよ。クルシュの子どもだよ、という一方を聞き、リザードマンの住処に訪れるアインズ様。いや、ドワーフの件でザリュースに会いに来たのが正しいけれど、ここでのザリュースとの移住の話は興味深い。後々、アインズ様がザリュースを尊重することがレアなリザードマン=クルシュとの子の父親として大切と見ているという表記がされるが、ここ読み違えてザリュースは浮気してるのか。クルシュにバレたら怖かろうにと思っていたことは内緒。
 どうもクルシュが係ると私の目は狂うな。そんなに嫌いなのか。

 帝国が属国とか言い出したけど考えたくないから留守にしよう、とドワーフの国に向かうことにしたアインズ様。アインズ様からの伝言が来てすぐに来ちゃうアウラは可愛いな、と思いながら今回はシャルティアも連れて行くことに。
 血の狂乱があるからと使わないのではなく、いろいろと経験を積ませようというものだった。

 道中で衰退しつつあるルーン技術に執着するドワーフ・ゴルドと出会い、国の現状とルーンについて、クアゴアという敵対種族について知ったアインズ様はルーン技術から肩入れするのはドワーフと決める。
 クアゴアに攻め込まれているドワーフを助けて懐に入ったアインズ様はドワーフのトップ・評議会の連中とザリュース用の武具の作成とこれから国交についての話をまとめる。
 そして、裏ではゴルドに頼んでルーン工匠を集めると自分の持つルーンの刻まれた武器を使い、ルーン工匠たちの心を掴んでしまう。ゴルドを味方につけているからな、この辺は全く心配せずに読めました。

 国交の条件に王都奪還を依頼されたアインズ様はゴルドを案内役に、クアゴアとバックにつくドラゴン討伐に向かう。もう、この世界のドラゴンが頭悪くて嫌になるぜ。

 クアゴアの王はドラゴンに媚びを売りつつもいずれ反逆を狙っており、いきなり攻めてきたアインズ様のデスナイトの存在からドラゴンとぶつけようとしていた。
 ドラゴンの王の子どもの中でも本が好き=知識を重視するヘジンマールがアインズ様の前に立ちますが、速攻で降伏。ドラゴンとか珍しいから殺して素材剥ごうと思っていたアインズ様だったので一命を取りとめ、父に反逆することに。
 父は頭良くないので速攻で殺され、最強のドラゴンが殺されたことに他のドラゴンも降伏。こうしてアインズ様とゴルドはドワーフの王都、奪われていた宝の奪還に成功する。

 ざくっと書くとドラゴンが可哀想だが、もっと可哀想なのはクアゴアである。
 アインズ様は絶対者で時に容赦はないけれども、基本的に慈悲がある。けれども、アウラとシャルティアにその辺は皆無だった。

 世界級アイテムでクアゴアの全ての民を捉えた二人は降伏勧告をする。クアゴアの王もそれを受け入れることは構わなかった。次はアインズの下で牙を研ぐだけだからだ。
 けれどもどれだけ強いか分からないのでは、と前置きしたら最後、なら数を減らして支配しろと言われてるから残り一万引きになるまで殺し合え。そしたら支配下に入れてやる、という交渉の聞かない状態になってしまう。
 クアゴアの戦士たちが突貫しては血飛沫が舞う光景に王は現実を受け入れ、一万匹まで数を減らすしかなかった。

 何もかも上手くいったかのような今回の遠征ですが、ここれネックになるのは、この世界のアダマンダイトとか弱いからこっちの使ってよ、と差し出したインゴットを盗んで鍛冶職人が逃走したことだ。
 アインズ様にとっては大したことないけれども、ここに来てこの展開は嫌な予感しかしない。
 これからどうなるのか。なんかエピローグでアインズ様死んじゃったらしいけど、次回はヤルダバオトが出るらしいから蒼薔薇の面々も出るのかな。楽しみだなー。
  
 では、今回のお気に入りへ。
 なんてことないシーンなんだけど、アインズ様がドワーフたちにザリュースの防具制作を頼むシーンを。


 後で息をのむ音がした。
「そうだ。ゼンベル」アインズは肩越しに振り返り、息をのんだリザードマンに話かける。「ザリュースに贈ろうと思っている。出産祝いという奴だな」


 ここに至るまでゼンベルはアインズ様を信頼しているとは言い難かった。自分たちの支配者であることは理解しているが、ドワーフを問答無用で滅ぼそうとするなら反抗に意志を見せていたくらいだ。
 けれども、ここで完全に掴んだよな。アインズ様交渉はきちんとするし。これから魔導国がどうなっていくのか、本当に楽しみだー。
 








オーバーロード11 山小人の工匠
丸山 くがね (著),so-bin (イラスト)
KADOKAWA (2016/9/30)
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2016年07月31日

僕は君を殺せない



「殺さない。殺せるはずがない。怖がらないで」


 黒いてるてる坊主に出会って心を掴まれる。
 何故だろう、この真っ黒で目だけ書かれた赤いリボンを持つそれは私を酷く揺さぶった。家族に呪いのアイテム買ってきたと言われたが、うんこの見た目なら否定はできないや。
 心を掴まれた理由は本棚の前に立って分かったんだが、ポリ黒のマティアに対する描写にあったんだ「黒いてるてる坊主のようだ」って。ああ、この目の印象はすごくマティアっぽい。
 マティアの方が断然可愛いのだけれど、あの時大迫さんの本に出会えてなかったら今の自分はいなかったことが思いだせたことが嬉しいんだ。


■あらすじ
 クラスメイトの代わりにミステリーツアーに参加すると、次々と人が死んでいく。一人、なんとか逃げ出したおれだが犯人に捕まってしまい、だが無事に生きて帰ることができた。そんなおれと周りの人間が次々と死んでいく誠は一見接点の無いようであったが、二人は既に出会っていた。


■感想
 今回は本屋で買ってみたさくっと本です。
 ミステリーを期待して買ったが、表題作よりも短編の方がミステリだったかな。しかし、こういうタイトル買うだけで顔を二度見とかされると小心者は生きていけないのですが。

 一人称モノであるが、誠がなんとも特殊な語り口なのでちょっと読みにくい。
 友人の代わりでミステリーツアーに参加すると、そこはある一族の人間たちの集まりで猟奇殺人の舞台への直行便だった。おれは完全にとばっちり。
 なんとか逃げ出すが途中で拾ってくれた運転手に薬を盛られてしまう。起きると荷物を持って人里にいたが、免許証の名前に赤丸がされていた。
 要するに、違うから生かされたのである。

 誠は突拍子もない彼女・レイに振り回されながら葬儀に出る毎日だった。
 親族とともに巻き込まれた事件で生き残った人々も追い詰められていた。いや、一人ひとり人畜無害の顔をした誠が殺していたのだ。

 レイに話して聞かせていたお化け屋敷での怪談は誠の身に起こったことだった。だが、細部はことなり、幼少期に離婚して別れて暮らす母親と遊園地で会った時にそこには彼氏がいて、そして茂みで襲われる。
 その後、入ったお化け屋敷で「邪魔だ」と母親に首を締められる。そして、咄嗟に誠は母を殺してしまう。

 その罪を庇って自殺した父が残した殺害リストを実行するためだけに誠は生きていた。猟奇趣味の友人の力を殺していったが、リストの最後に残るのはレイの名だった。
 レイを愛してしまった誠に彼女は殺せなかったが、友人がそれを許さない。

 過去におれが自分以外の人、妹を守るために行動したことを知っていた誠はおれの今の眠る妹のために金を残し、レイともう一人のリストに載っていなかった親族ことを頼み、友人とのドックファイトを挑む。殺人犯同士の戦闘は泥沼です。けど、埋めて殺すとか琴線触れすぎるからやめて!

 ここまではよかったんだけど、おれに誠のことを聞きに来た男は殺された友人の幽霊ってことでいいのかな? おれが幽霊見える設定が最後に出るのでこの辺は困惑した。
 あと、レイが記憶喪失になったのはなんでだろう? 誠がいない世界を認識しないための自己防衛かな。おれの過去が明かされないのは残念だ。

 他にも短編として『Aさん』と『春の遺書』がありますが、Aさんが読んでて楽しかったかな。
 語り口がまた誠みたいで読みにくいんだけど、異常な行動をする隣人・Aさんの家を毎日トントンとノックするモノがいた。殺した夫が帰ってきているというものだったが、そんなAさんの行動を最後は主人公がしているというのがいいなぁ。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
 全てを終えた誠の最後を。雪の降り積もる湖へ入水自殺をする誠の心は穏やかだった。


 雪が全てを消してくれます。あとは、約束を守ってくれるよう願いながら、絶えるだけなのです。きっと、彼なら守ってくれる。無条件で信じられる。会えてよかった。そんな存在がいることが、これほど有難いとは思いませんでした。 


 道理が合わない。それだけの信頼を勝ち得たおれの行動が知りたいのにっ!
 いや、妹を守ったってことなんだと思うんだけど、このささやかな新聞記事でここまで信頼できるだろうか。
 うーむ、ここがどうしても気になるなー。







僕は君を殺せない
長谷川 夕 (著),loundraw (イラスト)
集英社 (2015/12/17)
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2016年07月30日

モンタギューおじさんの怖い話



「よかろう、エドガー。はじめよう」


 ここ最近ゲームばかりしていたのはストレスが溜まっていたからでしょうが、勢い余ってさくっとPS4買いました。
 い、いや、元々ペルソナ5のために買う気だったんだけど、なんか発売間近に買おうとして売り切れてたら嫌だなぁと、もう買っちまうか、とさくっと。
 でも、今これ以上ゲームし続けて生活に異常来すとまずいじゃないか。しかし、フリープレイの三國無双をやって結局周りが見えなくなる。
 ……ふむ、本気で人としてまずいかもしれない。


■あらすじ
 森を抜けた先にあるモンタギューおじさんの家にエドガーは話を聞きに行く。
 家の中なのに暗いおじさんの家にはいわく付きの品がいっぱいで、エドガーは怖がりながらもおじさんに話をせがんでいく。


■感想
 以前に読んだ『10の奇妙な話』のイラストが好きだなと思い、イラストのデイヴィッド・ロバーツさんの作品が見たくて買ってみた。
 児童書の分類に入るのかな? 平仮名の多さにちょっと読みにくかったけど、子どもの頃に図書室で見つけてたら全巻読破していただろうくらいには好きです。はい、大好きですこういうブラックなの。

 物語はエドガーがモンタギューおじさんの家に行き、その家にある品々の話を聞いていく連作短編。
 おじさんの家のイメージはアダムスファミリーの家ですな。あそこもどうしようもなく不安と恐怖のある家なので。

 今回も全部書くと長くなってしまうので好きな話だけ紹介すると、「ベンチ飾り」と「額ぶち」。

 ベンチ飾りの方は、商人が持っていたベンチ飾りに心を奪われてしまったトーマス。売らないと言う商人の手からなんとか手に入れようと盗もうとしたところ、商人に捕まってしまう。
 だが、商人は怒るわけでもなく謝罪する。来るとしたら父親の方だと思った。商人もベンチ飾りに心を奪われて前の持ち主を殺して手に入れたのだが、これは呪いのアイテムだった。

 殺せ殺せと呪われたアイテムからの声が聞こえ、家族の中傷をわめいてトーマスの心を蝕んでいく。
 両手で耳を塞いでもそれは止まらなくて、目につく人々を殺せと迫って来る。
 捨てることはできない。家族が大切ならば離れろ、と助言して逃げて行った商人に対して全てはあいつのせいだと唆されてトーマスは斧を握る。

 額ぶちは母親が買ってきた額縁のなかにある少女の写真になんでも三つだけなら願いを叶えてあげると言われたクリスティーナ。
 メイドに放っておいてほしいと口を滑らせれば、メイドの不法滞在がバレて警察に捕まる。お金持ちになりたいと願えば、祖母が死んで遺産が入る。自分だけの部屋がほしいと言えば、姉が死ぬ。
 わぁお、これ願っちゃいけない奴だ。望みを結果的にだけ叶える奴だ。

 もう三つ叶えたという写真の少女だったが、全てが終わり警察が迎えに来たのはクリスティーナだった。
 メイドのことをチクったのも、祖母を階段から突き落としたのも、枕を押しつけて姉を窒息させたのも全てクリスティーナだったのだ。
 違う自分じゃない、写真の少女のせいだと叫ぶクリスティーナだったが、母が買ってきたのは金の額縁の鏡だったという話。

 こんな呪いのアイテムがあるモンタギューおじさんについては最後に明かされる。
 おじさんは罪を犯し、それを子どもに押しつけて殺してしまったことから次々と悲劇的な死を迎えた子どもたちがやってくるようになった。そして、自分の話をした後に記念品をおいていく。
 それがモンタギューおじさんの家だ。おじさんしかいないのに誰かの気配がするのは全てその子どもたちだった。

 怖いもの見たさだったエドガーは本物に触れ、そしてそれらが自分を求めていることを知り、嫌がっていた退屈な日常を求めて家に帰るのだった。

 うん、面白かった。
 最近ホラー映画とかよく見るんだけど、化け物だギャーな怖さよりも踏み間違えたら出会ってしまった怖さの方が好きです。
 ものすっごい怖いというわけではないが、読んでいて楽しかったです。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
 「剪定」より目が見えない老婆の家にリンゴを盗みに入ったサイモンはいつの間にか自分が気になっていた。つまり、魔女だったんだ。
 リンゴの木になったサイモンに老婆・タロウばあさんは言う。


「さあて」タロウばあさんは言って、手にした植木バサミの反った刃をひらいたりとじたりしながら、開いたほうの手を枝から小枝へ、サイモンの腕から指先へと、すべらせた。「おまえさんはかなり手入れが必要なようだねえ。そう、かなりね」 


 平凡な毎日が一番ってことだよ本当。
 非日常は想像するものであって体験するものではないのだ。……うん、徹夜でゲームした後なのと早くゲームに戻りたい頭じゃ締めの言葉が思いつかないだけだよ!





モンタギューおじさんの怖い話
クリス・プリーストリー
理論社 (2008/11)
posted by SuZuhara at 06:06| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月02日

小説 君の名は。



 まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。


 ぐはぁ、暑さで死んでます。
 本当に暑さには弱いんでパソコンに向かいたくない。DVD見るのも専らPS3だから起動させると暑いという理由で使ってない。音楽聞くにもパソコンなりを起動させなきゃいかんからこの環境をどうにかせんとまずい。
 まぁ、なにが言いたいかというと、夏の私はより一層使い物にならないということだ。でも、ゲームも本も感想溜まっているからぼちぼち行くかー。


■あらすじ
 田舎町で暮らす三葉と都会で暮らす瀧は、唐突にお互いの身体が入れ替わっていることに気づく。
 初めは夢かと思った入れ替わりの日々を過ごしながら奇妙な親近感を抱いていくのだが、唐突に始まった入れ替わりは唐突に終わりを告げる。
 三葉になれなくなった瀧は記憶を頼りに三葉に会いに行くのだが、辿り着いた先で三葉に起こったことを知ることになる。


■感想
 言わずもがなでしょうが、今回は新海誠監督の新作映画の小説版です。
 個人的には映画を観てから本を読みたいのですが、どうにも公開日周辺は映画館に行けそうにないんで先に本を読んだ。発売日には読了していたので、今日見に行った『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』の番宣で観た新PVはああという思いで見てしまった。
 なるほど、この作品はアニメで観た方が映えるや。

 さて、映画から見る人はネタバレ注意だよ。

 どこかで話したかもしれないが、私が新海監督を知ったのは兄貴の勧めである。思えば、映画に関することで私の兄貴への信頼はかなり高い。
 秒速五センチメートルを絶賛して主題歌をエンドレスリピートする兄貴の姿をよく覚えている。ま、私は『雲のむこう、約束の場所』の方が好きですがね。

 読み始めてすぐに思ったのは、読みにくい。
 一人称モノで俺と私の視線が混在する始まりだったので、ちょっと手に取ったことを失敗したかもしれないと後悔したほど。
 だが、初めだけなのでそこは頑張ってほしい。

 三葉は田舎町で巫女の血筋を引く少女で昔ながらの仕来りの中で生きていた。
 そこでいつも通りの朝を迎えたはずなのに、「昨日のお前はおかしかった」と語る家族や友達。ノートに書かれた「お前は誰だ?」という知らない文字。
 なんのことか分からないままでにその日を過ごし、巫女として舞い、口噛み酒を作る儀式を終えた。
 こんな暮らしはもう嫌だ、と都会の暮らしに憧れながら日々を終えると次の日、三葉は男になっていた。

 男としての身体に驚き、そして視界に広がる都会の風景に驚きながら瀧として学校に行き、パンケーキを堪能しバイトに出た。
 慣れないことに失敗続きだったが、瀧が憧れているバイト先の奥寺先輩の客に切られたスカートをささっと繕い、刺繍までするという女子力を見せた三葉のおかげで奥寺先輩と瀧がぐっと近づいた。
 てか、本当に三葉すげー。ハリネズミとか、そんな簡単に出来るとか、久々に女子力高い女子見たよ。

 瀧がつけている日記に今日のことを書き、手にはノートの問いに答えるように「みつは」と名前を書いた。

 次の日には元に戻り、瀧は自分の手に書かれた三葉の名に首を傾げ、奥寺先輩と近づいている自分に驚く。
 そして気づく、自分たちは入れ替わっているのだと。

 ここまで読んだ時はもっと入れ替わった生活を読みたいと思ったな。
 お互いの行動に対する不満とかを日記やメモで残してコミュニケーションを取るが電話やメールは届かない。それでも、二人はなんとかお互い生活を楽しんでいたと言えると思う。

 三葉が勝手に取り付けた先輩とのデートの日、瀧は上手くすごすことができなくて失敗してしまう。
 そのことを三葉に話したくてたまらないんだけど、その日から入れ替わりは起きなくなってしまった。

 入れ替わりの日々で見た記憶を頼りに三葉の町を探す小旅行に瀧が出ると、先輩と友達もついてきた。
 模写した風景だけを頼りに行った先で知ったのは、そこは三年前に無くなった町であること。

 三葉は最後の日、今日は彗星が見える、と言った。
 三年前に割れて落ちた彗星でその町は地図から消えた。
 入れ替わりの中で知り合った友達や家族、そして三葉は三年前に死んでいたのだ。

 要するに、入れ替わりには時間のズレがあった。
 瀧は中学生の時に知らない女性に話しかけられたことがあるのだが、それこそが三葉でまだ知り合っていない瀧とでは出会うことができなかった。もちろん、電話も繋がらない。

 それでも、その日に貰った組紐だけは大切に持っていた。
 瀧は一人でかつての町があった場所に行き、三葉として山頂の社に奉納した口噛み酒を発見する。
 三葉の祖母に教わったムスビの概念、三葉が噛んだ唾液でできた酒を体内に取り入れる――手っ取り早く飲むことで再び三葉と入れ替わる。

 その日は彗星が落ちる日だった。
 前日に瀧に会いに行き、出会えば必ず分かると信じていたのに瀧が分からなかったことから髪をバッサリ切った三葉に不満を覚えながら、瀧は三葉を――町を救うために動きだす。
 友達のテッシーとサヤちんに事情を話し、変電所で爆発騒ぎを起こした隙に放送を乗っ取り人々を避難させる計画を立てる。

 しかし、父――市長の説得に失敗したことから瀧ではなく三葉でなければならないということ気づき、入れ替わった瀧と三葉は山頂の黄昏時で、カタワレ時で出会う。
 助けるために来たがここから先は三葉でなければならない。お互いの名前を忘れないように手に名前を書こうとするが、その時には時間切れだった。この入れ替わりを二人は忘れてしまう。

 戻った三葉は作戦を引き継ぎ、騒ぎを起こして放送を乗っ取る。
 しかし、それだけでは弱かった。町の人々は逃げるまでには至らない。
 三葉は自分の手に書いてもらった、もう思い出せない名を見ると書かれた「すきだ」の言葉に突き動かされ、再び名前をしるためにも父の説得に走る。

 おお、わくわくしてきたぞ!
 ここからどう説得するんだ? どうなっていくんだ、と思っていると月日が流れたーっ!

 すっかり就活生になった瀧は言葉にしがたい虚無を抱えていた。
 しかし、上りと下りの電車の窓ごしに出会った人の姿を見て二人は走り出す。

 お互いに探していた姿をやっと見つけ出し問うのだ。忘れてしまった名前を――。

 いやー、まさかファンタジー色がここまで強いとは思っていなかった。
 読了後に感じたのは驚きとちょっとした手の届かない歯痒さ。だって、いいところで月日が流れちゃうんだもん。やだそれやだー!
 ま、個人的趣向でしかありませんがもっと続けてほしかった。

 しっかし、好きになる過程が分からんなー。
 入れ替わったら好きになるんだろうか? お互いとして生きれば好きになるんだろうか? この辺、恋愛感情が分からない自分の不具合を痛感するぜ。
 あと素朴な疑問は女になったら必ず胸を揉むのかということだなw

 映画を観るまで分からないけど、私の中で『雲のむこう、約束の場所』を超えるほどではないかな。初めて見た時とか、すごく衝撃的だから。

 では、今回のお気に入りへ。
 今回はやっと出会った二人がカタワレ時が終わって離れ離れになるところから。
 名前を書こうとした三葉が消えて、瀧は慌てて自分で書こうとするが思い出せなくなっていくというシーンから。


「あいつに……あいつに逢うために来た! 助けるために来た! 生きていて欲しかった!」
 消えていく。あんなに大切だったものが、消えていく。
「誰だ? 誰だ、誰だ、誰だ……?」
 こぼれ落ちていく。会ったはずの感情までが、なくなっていく。


 本当はこの先が好きなんですが、さすがに1ページ近くは引用はきついのでここまでで。
 大切だったものが消えていくなんて想像を絶する。そして、それを失ったという悲しみだけ抱えて生きていくなんていうのも。
 うーむ、映画が楽しみだなー。





小説 君の名は。
新海 誠
KADOKAWA/メディアファクトリー (2016/6/18)
posted by SuZuhara at 23:11| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月07日

10の奇妙な話



 純粋で、不器用で、とてつもなく奇妙な彼ら。


 エレベーターが嫌いだったりする。あの重力に逆らう感じと音が嫌いなのだが、それ以上に他人と狭いところにいるのが嫌なんでしょう。
 なにが言いたいかというと、ここで話すことがないんだよ! 最近の近況としては映画をよく観に行ってますね。しんちゃん、スノーホワイトにも行ったよ。でもやっぱり今のところの一番はキャップですね。今年は夏映画が期待できるから楽しみにしてるだ。


■感想
 本屋で惹かれた短編集です。
 あるきっかけで日常と以上の境界線を越えてしまった人々の話、なんて聞いたら読みたくなるに決まっているだろう!

 タイトルから分かるように10編ありますが、ここのところまた長くなっているので今回は特に気に入った二つを。

・ピアーズ姉妹
 浜辺の掘っ立て小屋で人目を忍んでクラスピアーズ姉妹。
 ある時、いつものように漁に海へ出ると溺れている男を見つけた。イケメンだからと助けて二人は彼が目覚めるのを待った。
 しかし、起きた男は姉妹――歯の抜け落ちた老婆たちの姿を見て発狂して罵詈雑言。びっくりしたのは分かるが、日本昔話を愛していた私には分かる。それ、最悪の選択ですよ。

 案の定、プッチンしてしまった姉妹は男を海に落として溺死させた。
 波で戻って来た溺死死体を持ち帰る。

 もう、この後は分かるよな。
 彼女らは海の恵みで生きている。男の身体を開いて内臓を奪うことくらい簡単で、燻製小屋でいぶして人形を作った。
 家に男のいる生活は最高だ、と二人は新しい暮らしを始める。

 それからはやってくる男たちを人形にしていく姉妹の誕生である。
 初めは怒りから、最後には道を聞きに来ただけの男もコレクションのために殺した。
 ピアーズ姉妹は男たちとともに暮らしている。

 これは初めの一作なんだけど、境界線加減がぞくぞくするな。
 初めの男が入れてしまったスイッチで完成した殺人姉妹。
 本来であれば踏み越えることのなかった一線の後押しはいつだって他人がくれるんだな。



・蝶の修理屋
 偶然レピドクターを手に入れたバクスターは標本にされた蝶を修理することを決めた。必要な道具を手に入れて博物館から蝶を盗み出したバクスターは調べながら蝶の修理を試みて、最後には全ての蝶を修理して屋根裏部屋を蝶でいっぱいにした。
 バクスターが窓を開けると蝶たちは一斉に飛び立ち、自分たちを捕まえて殺した蝶蒐集家の元へと向かう。

 これは映画にもなっているらしいですが、是非映像で観たいな。ピアーズ姉妹も映画化してるらしいけど、あ、お二人はいいです。ま、興味あるんだけどね。

 バクスター少年が蝶を修理する話ですが、私も蝶の標本は好きではないのでバクスター少年の気持ちは痛いほど分かる。
 しかし、このレピドクターってのはマジなんですかね? 標本に興味が無かったんでどうやってやっているとか知らないんだけど、バクスター少年の献身に近い修理は不可解だった。

 蝶の模様とかでそう動くようにさせられたとかだったら面白いが、まさか蝶たちが最後蒐集家を殺しに行くとは。
 どうにも昆虫って感情がないイメージだからこれには驚きました。

 あとは「隠者求む」とかが好きかな。
 しかし、イラストが好きなので今度モンタギューおじさんにも手を出してみようかなと思う方が強い。この人の絵はもっとたくさん見たいな。

 奇妙な話、とあるように怖い話ではないです。
 限りなくイっちゃってる感の強い人たちばかりですが、まぁこいつなら仕方ないと思わせてくれるような愛嬌があってなかなか面白かったです。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
「もはや跡形もなく」から母親にしかられて家を飛び出した少年の話。森での暮らしで母親も自分の名すら忘れかけた少年はそこで出会った犬と過ごしていたが、ある日別れを告げて犬に言うんだ。


「待ってるのに疲れたら、どこにでも行っていいんだからね」彼が言った。 


 少年は母親に会いに行くが、もうそこには戻れなかった。少年は変わり果ててしまったんだ、身も心も。
 戻るとそこには犬がいた。少年は犬とともに森に消えて行った。
 ああ、犬がいてよかったなー。しかし、境界線というのは興味本位で超えてみたい気もしたんですが、越えるなら戻らないという覚悟が必要ですね。






10の奇妙な話
ミック・ジャクソン (著),デイヴィッド・ロバーツ (イラスト),
東京創元社 (2016/2/13)
posted by SuZuhara at 23:26| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする