「さあ、どうしてだろうね? 君も僕も駒に過ぎないからさ」 くそぅ、映画行こうと思ったのにやっぱり無理っぽいや。こうなら大人しく家で引きこもりライフと行くしかないですな。
しかし、今思うと体調が回復した頃にLotus juice兄貴のワンマンに行けたのは良かったな。奇跡的に前の方に行けたし、バンドでの『Touch That』が聴けたのとかギターの千鶴さんがCOOLすぎるとか楽しい一夜でした。
ただ楽しいからこそ、英語が分からないということがとても歯痒く感じたりもする。辞書や機械翻訳とかを駆使すればだいたいは分かるけれども、細かいニュアンスまでは正しいか分からない。俺はこう受け取っているけれども、それでいいのかな、と何度も何度も自問してしまうのはきっと一生終わらないんでしょうね。
■あらすじ 過去、大洪水から逃れるために人類は天井に楽園・上界を作った。そして、上界に逃げた人間と大洪水で全てが流された地上に住む人間と分けられることになる。
キルスは上界で生まれた貴族であり、女性ながら強い正義感を持ち警察官として働いていた。しかし、深夜の自宅で突然何者かに襲われ、気がつくと両親が殺されていた。弁明の機会もなく楽園=上界から追放され、犯罪者の世界とされる下界へと落とされる。
そこで自身が今まで信じて来た正しさの弱さを思い知らされながらも自身の正義を貫き、自分を陥れた犯人や世界の不条理に立ち向かうことになる。
■感想 今年はやることが多いな乙女ゲーム。
この作品を知ったのは、クラウドファンディングで資金集めしていたのがきっかけだったんじゃないかな。その時にざっとあらすじ読んで独自の世界観が気になってvitaに移植されたら買おうかなと考えていた。ちょうど風邪でダウンした時の発売したから暇つぶしに買ったんだが、誰か俺がハマれるゲームをくれ頼む。
このゲームは非常に興味深かったです。
がっつり恋愛を求めている人には物足りないでしょうが、主人公であろうともガツガツ死ぬ非情な展開は私好みである。バッドエンドひゃっはー!である。
まず世界観についてざっくり説明すると、かつて地上で暮らしていた人類は来る大洪水から逃れるために上界を作った。イメージとしてはドラゴンボールのカリン塔。うん、カリン塔やないかコレ!と笑ったのは内緒。
しかし、全人類を許容することはできないので髭られたのは僅かな人類だけで、多くは地上に残って災害に遭った。だから下界は人間の住むところではない、犯罪者が送られる汚い世界と支配者と支配される者の関係にあった。
主人公・キルスは上界出身の貴族で警察官なのですが、こいつはたまげたことに乙女ゲーム主人公のクセにキャラが性質まくっている。恋愛感情には鈍感と言うか、上界の自由恋愛は罪という考え方からそういうのはてんで分からないが、ずかずか言うことは言うし、「承知した」と剣を振るう姿はまさに騎士様。
強い正義感から融通が利きませんが、初めは女の子らしくなくどう感じていいか分からずともこういう奴なんだと受け入れられる。
でも、一枚絵は可愛いのに立ち絵はいまいちなのはどういうことか。ルートによって服が変わるというのは基本的に主人公スキーとしてはたまらないものがある。受刑ルートのキャスケット姿可愛いなー!
キルスたち警察官は二人一組で行動という原則があるんだけど、この理由も進めていくと分かるようになる。
キルスは相棒・フィンとともに下級警察官から中級警察官に上がるの視察として一度下界に訪れる。ここで初め不思議だなーと思ったのは、上界は中世の騎士たちが暮らす生活でありながら下界へ降りるためのリフトが存在すること。エレベーターって言った方がいいかな、つまり機械だ。
下界を管理する警察官、通称HOUNDSが支配する犯罪者の保護地区はなんと例えればいいのか、ホームレスと配給の関係にある。家は空いていれば住んでいいし、なければ路上生活。食事はハウンズからの配給があるが毒入りでハウンズの薬=解毒剤に依存していくようになるという支配者としてやりたい放題。
どうでもいいことだが、前にキルスが助けた少年に下界での暮らし方を教わるのだが、この親子はどう足掻いても絶望なのがつらすぎる。
初めは問答無用で下界行きなので、情報屋であるウルリクに雇い主を紹介してもらうか、保護地区へ生きることを決めるかでルート分岐。ハウンズについて知りたかったので保護地区に残り、ハウンズのリーダー・ザクセンに牢屋にぶち込まれる日々へ。……ここでな、脱いだ警官の服とか治療室にいる先客とか嫌な予感しかしなかったけど、その通りだったよ。
ハウンズの副リーダー・イネスのルートはなぜか二人で家庭教師ごっこ、オムレツ教室と平和すぎてぽかーんだったが、良識人イネスが猟犬としてザクセンの指示の元で人殺しを許容するのはハウンズとなった人間が上界に戻る方法がザクセンの許可と上界の許可を得ることだったから。
ハウンズの人間は元警察官であり、パートナーが犯罪者になった等で失った場合、連帯責任として落とされるのだという。イネスのパートナーは貴族のことを調べて不審死し、イネスは下界送りとなり、それを調べるためにも上界になんとしてでも行きたかったのだ。
キルスは断髪の決意を見せ、イネスの部下として上界へついていくことに。そこ知るのは貴族の人身売買だけでなく、自分に罪を着せた犯人の存在。実行犯はキルスの元婚約者で、貴族の重鎮の父親の指示だったんだ。あと、警察官自体もグルなので相当腐っていやがるなのだった。
上界は400年以上生きる聖人、ユネ・セキエイをシンボルとして回っているが、政治にノータッチだったユネ様が本腰を上げ上界の立て直し誓い、キルスとの決闘で負け自害したザクセンの代わりにイネスは下界へと戻ることを決める。リフトでイチャイチャするのはやめて、恋愛禁止だったけど発禁本で知識があるとか生々しいわw
最後にハウンズ入りしたキルスとフィンが再会するのだが、ここで初めて下界のフィン、比較的マイルドな状態に出会ったからこの後がいろいろと衝撃的だったぜ……。ザクセンの洗礼で人殺しも死体の部位集めも出来ちゃう狂犬になってしまっているのだった。
ま、この後すぐにバッドエンド回収で猟犬化したフィンに殺されるんだけどね!
このルートはザクセンの非道さの理由とかイネスのザクセンへの信頼とか分かって楽しかった。
じゃあ、次は保護地区から出てみようかー、とウルリクの依頼を受けて下水道から保護地区を出てみると、外に広がるのは保護地区ではない本当の下界で機械都市・リベラリタス。ここでは銃も流通しているから、上界は意図的に技術を排除された世界だったことが分かる。
リベラリタスは下界の中の一つの地区に過ぎず、そこの代表であるエルトクリードがキルスの腕を買って護衛役として雇いたいという。
ここでは下界での上界差別が分かりますが、隙あればキスしまくるので読んでて恥ずかしくなったわw ま、エルトの人柄とキルスの恋愛無知感と振り回されるウルリクの関係は楽しいことこの上ないのだが。
エルトは個人的感情を全て殺さねばならないほどの重い立場に押しつぶされそうになりは自殺紛いの特攻を強いられるが、キルスが力技で解決していて笑うしかないw さすが俺の騎士様ww
個人的にはウルリクルートの話の方が好きですね。ウルリクはエルトが贔屓にする情報屋ですが、ほぼ何でも屋状態。人嫌いで上界嫌いなのでキルスに初めキツくあたるが、彼のフェリエという家系がその原因の一端となっていた。
ウルリクは上界を作ったアルセンクライムの末裔というヤツなのだけど、人付き合い下手同士が少しづつ距離を近づけていく様子をエルトと一緒に野次馬気分で見てるのは最高に楽しい。……ま、バッドではエルトとウルリクの関係が分かってると苦しくなるがな。てか、キルス並の頻度でウルリクも死ぬよねコレ。
次は下界の闇医者アダージョに行って、ハウンズの医者であるグリッサードの人体蘇生実験の素材にされそうになりながら、聖人ユネには親殺しの罪を買われて殺せないユネ本人を殺せと命じられる。基本、どのルートでもフィンを無視したり、中途半端に優しくすると監禁されたり殺されるよ! 他のルートでも殺された恋人の横でどう見ても犯されるとかあるんだけどね。
え、そういうの苦手じゃないのかって? 絵がなければ大抵のことは平気ですよ俺は。
最後にフィンルートが解禁されたと思うんだけど、正直彼の狂犬具合を見て楽しみにしていたんだけど、ここではキルスの両親を殺したと供述して下界落ちするだけでハウンズ入りしてないのでザクセンの教育も受けていなので面白くないのだった。
保護地区で暮らすフィンとパートナーを失いハウンズ入りしたキルスの保護地区脱走系ラブストーリーよりも、狂気に染まるフィンとの関係の方が興味あったんだがなー。
そして最後の最後にグランドエンド。
キルスが両親を殺害される前に剣を装備していて、未然に防げるというもの。その後、ユネからの依頼で上界と下界の代表で新たに議会を発足するから下界の代表連れてこいと言われて今までの恋愛対象を連れてくると、貴族の重鎮が反旗を翻していて警官たちとのバトルすることに。
キルスの両親も死なず新しい世界が始まっていくというグランドエンドらしいエンドでした。アフターストーリーも含めるならもうちょっとハーレムっぽい方が楽しそうな気がしましたが、堅物キルスじゃ無理なんでしょうな。
エンド後のアフターストーリーもキャラ紹介ページでバッド後の話とか、スチルシーンでの男目線とかあってなかなか充実していました。
恋愛が物足りないだろうと前述しましたが、世界観が好きになった身としては恋愛に入るよりももっとがっつり世界の謎に迫って欲しかったりもした。なかなか難しいね。
いやー、なかなか面白かったですね。
正義の騎士様が不条理と銃の世界に落とされて世界を見つめ直すみたいな感じで。もうちょっと恋愛なり狂気方面なりに振りきれてくれたらいろんな意味で忘れられない作品になったでしょうが、世界観のしっかりした秀作という印象でした。
あと私は好きだがキルスの好き嫌いは分かれそうだなー、と。だが、興味を持ったなら一度はやってみて損はないと思う。
では、ここらで今回のお気に入りへ。
ユネルートでフィンに会うかと聞かれて断ったら、夜道に襲撃されるというバッドエンドから。
キルスは狂ったフィンに拉致されそうになっているところを上界人嫌いの下界人が暴行目的助けられるが、良心を刺激されて慌てて戻るとフィンともども撃たれてしまう。
キルスが撃たれたことで相手を滅多刺しにするフィンだが、死ぬ間際のキルス元に戻ってきて言った言葉を。
「ああ……大変だ、こんなに血が出てる……どうしよう、止まらない……はは……。俺もほら、血……一緒ですね……ふふ……」
この『一緒』には狂気しか感じないが、キルスの後を追って死ぬ→追いかけるのは慣れている→ずっと一緒と続くのはフィンの感情を思うときついものがあるな。
自由恋愛禁止、それでも唯一自分を認めてくれた人を想わずにはいられない。この身は彼女のためにあるはずなのに、彼女は誰かのものになるなんて……最悪の状況に置かれて唯一の支えを失ったならもう狂った方が楽だもんなー。

スチームプリズン -七つの美徳-
dramaticcreate (2017/10/26)