2017年01月30日

綱わたりの花嫁



「平気平気。あの子はね、これまで散々危ない目にあって来てるの。いつもしたたかに生き延びる奴なのよ」


 そういや山の翁召喚できませんでした。
 ……い、いいんだ。俺にはジャックちゃんがいる。翁目指して回したガチャで切嗣とアンメア、ライダーリリィが連続で来たけど違う。俺は翁が欲しかったんだ……。
 ま、ちまちま育てますけどね。QPないから育成止まってるんですけどね。


■あらすじ
 結婚式場から花嫁が誘拐された。しかし、花嫁は本物ではなく身代わりを頼まれた別人で、本物の美亜は駆け落ち温泉旅行に出掛けていた。
 身代わりとなった久美子の母親が花嫁の父親に身代金の立て替えを頼むのだが聞く耳持たず、母親は心臓発作で死んでしまう。
 テレビでその一部始終を見た久美子は本当に美亜を誘拐するために誘拐犯に加担する。


■感想
 久々に赤川次郎さんの本です。
 最近ちょいと三毛猫ホームズが読めなかったんですが、花嫁シリーズは安心のあっさり読める使用。しかし、今回はちょっとあっさりしすぎだったかな。

 身代わりを立てて行われた結婚式で花嫁が攫われる。
 誘拐犯は身代金をせしめようとするわけだが、久美子は本物ではない。美亜の父親は馬鹿なので「うちの娘じゃないから払わない」とテレビで言い切ってしまう。誘拐犯が気のいい奴らだったから良かったけど、これで久美子の母親が立て替えを頼みに行き、ショック死してしまう。

 主人公の亜由美は好きでしたが、今回はちょっと殺意が湧いた。母親の死を気の毒の一言で終わらせやがった時は湧いたよ。
 母親の死から思い立った久美子は本当に美亜を誘拐するために動き、亜由美はそれを止める。美亜は初めの印象以上に聡い女だと分かるが、それに対する展開的なものがなかったのが残念だ。花嫁シリーズは基本二編構成なんだけど今回一つだけだったからさ、どんでん返しがあると思ったのだよ。

 駆け落ち組と誘拐組、あと金に目が眩んだ芸能関係者が絡んできますが、展開的にはトントン拍子に終わりましたな。ドン・ファンはあまり活躍しませんが、安定した面白さだったと思います。少し物足りなくもあったがね。

 では、ここで今回のお気に入りへ。
 美亜の潜伏先が分かっても父親が退いてしまったことから警察は動けない。そう、警察である殿永は動けないが亜由美は違う。
 だから、亜由美に行かせようとする殿永と亜由美の会話を。

「分かってて言ってるんですね。向こうへ行ってくれ、と」
「そう解釈されても仕方ありません」
「分かりました」
 と、亜由美は言った。「交通費も出ないんですよね!」


 確かにそこは大事w
 出来れば前払いにしてくれないとこっちは動けないぜよ。





綱わたりの花嫁
赤川次郎 (著)
実業之日本社 (2016/12/16)
ラベル:赤川次郎
posted by SuZuhara at 22:48| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月08日

ロード・エルメロイU世の事件簿 5 case.魔眼蒐集列車(下)



「今度こそ、私は勝ちたいんだ。この事件の犯人が私の敵であると分かった以上、私はどうやっても負けるわけにはいかないんだ」


 最近よく寝る子なようで、昨日も17時くらいから意識がなかった。ふー、なにもできてねぇじゃねぇか。仕方ないね。
 今期のアニメをちょこちょこっと観たけど、アキバズトリップは遠くへ行ってしまったものだ。俺はただ瑠衣ちゃんとデートしたりダブプリの手先になったり、肩にトモダチを乗っけていたかっただけなのに……。アキバズビートの発売も知らなかったから、大分情報に疎くなってますな。
 とりあえず今回は亜人ちゃんと闇芝居だけは追っていく。町さん可愛かったから漫画も買ってみよう。闇芝居はシーズン3の握手おじさんみたいなの期待してる。 


■あらすじ
 謎のサーヴァント・ヘファイスティオンに襲われ、怪我を負ったロード・エルメロイU世。氷雪の森、腑海林(アインナッシュ)の仔の発生で魔眼蒐集列車が停止した関係でU世の容体は悪化していく。
 事態の収拾のために乗り出したカラボーとイヴェットと協力することになったグレイはその道中で吐血する調律師・メルヴィンと出会う。
 ヘファイスティオンと交戦しながら、菱理によるトリシャを殺した犯行の推理劇、魔眼オークションを経て、U世の聖遺物を奪った犯人にしてサーヴァントのマスターと対峙する。


■感想
 あらすじはだいたい放棄している。だって、月姫をやっていない身としては死徒云々はピンと来ないんだよ。

 さて、前巻の続きで魔眼蒐集列車の後半戦です。
 イスカンダルの腹心たるヘファイスティオンとの邂逅で大怪我を負ったU世。カウレスの治療と所長――若かりしオルガマリーの手助けあって持ちこたえたが、腑海林の仔の発生で氷雪の森に閉じ込められた状況では危機を脱したとは言い難かった。
 早く魔眼を売りたいカラボーとオークションの魔眼が目当てなイヴェットが事態収拾に乗り出したことでグレイもU世のために出陣する。グレイたん健気、とスヴィン並の感想だったのは内緒。

 途中で倒れていたメルヴィン、前回U世をウェイバーと呼び親友だと名乗った吐血青年。愉しいことが起こるとやって来たわけだが、この人でなしはお人好しなんでしょうね。気に入ったならとことん甘いよな。気に入り続ける行動を取らなきゃいけないんだろうけど、それでも今回の最後を読むといい奴だなとしみじみ感じた。読んでいる間はずっとあやかしびとの愛野狩人を思い出した。……ああ、久々にPSPを起動させようかな。

 メルヴィンの調律とイヴェットの魔眼で霊脈に道標を打ち込んでいくとヘファイスティオンが来る。そこで戦闘になるが、逃げないグレイたん格好いい。
 膝が震えようとも魂が拉げようとも立ち続ける少女なんか最高じゃないか!

 魔眼蒐集列車が動い出し、グレイは雪崩に呑み込まれて乗れなかったんだけど、ヘファイスティオンが助けてくれる。戦士は戦場以外で死ぬな、か。この二人は王とU世のこととかなければ相性良さそうだよな。

 大楯サーフィンで戻って来たグレイだったが、その間に所長がトリシャの首を見つけて菱理による推理劇。犯人は過去視のカラボーさん、そして魔眼摘出となるがこの辺は首を傾げる部分がある。力押しだなと思えば案の定。
 車椅子で復活したU世とオークションに望む前の準備があり、本番へ。オークションは胃が痛かった。高額ペットとかエルメロイにお金ないでしょっ、師匠なにやってんの!?状態。

 休憩中に資金作りをしまたオークションに望みますが、それは時間稼ぎ。材料が揃ったことでU世の推理が始まりますが、犯人はカウレス。え、カウレス!?
 正しく言うと、カウレスに化けていた奴なんだが、兄のために飛行魔術ぶっぱしてくるライネスさん素敵ー!

 真犯人の正体は現代魔術科の先代学部長、ハートレス。
 目的はサーヴァントを呼び出すまででそれ以外はおまけでやってくれたどえらく厄介な奴。
 U世が菱理と結託していてもサーヴァントを呼ばれてしまうと逆転されますが、口で戦うU世は格好いいです。

 ヘファイスティオンを名乗るサーヴァントはEXTRAクラスの偽者(フェイカー)。名乗る時はイスカンダルの名か兄であるヘファイスティオンの名を名乗った王の影武者。
 イスカンダルの後継争いを知って怒り、王に全てを捧げながらも王の軍勢の招集にはそっぽ向く忠臣。……うちのカルデアの主力がイスカンダルでいつも王の軍勢にはお世話になってるからここは辛かった。あの人にマスターとして認められるのはたまらなく嬉しかったから、王を使役するうちのぐだーずも彼女に試されるんかな。

 フェイカーの宝具を前にグレイも聖槍の力を解放する。
 魔眼を取り戻し、視力を失った代わりに魔眼の力を解放させて英霊を追いつめる力を発揮してくれたカラボーからの助言を得て、聖槍にかけられた円卓の騎士になぞられた封印が解かれる。
 十三の封印のうち、ランスロットやアグラヴェインなどの五人から承認される。完全開放の半数には届かないが、この機能だと結構大変ですね。

 退けた後はこれからの話、第五次聖杯戦争参戦――イスカンダルを呼び出して第四次はマスターが劣っていたから負けたのだと証明しようとしていたU世だが、それはU世がしたいだけでイスカンダルには関係ないと諦める。お気に入りに一矢報いたのだから、それだけで十分だったのだ。
 フラットやスヴィンも戻り、終わっていないハートレスとの決着にエルメロイ教室で乗り出すようだ。なにそれ超楽しみ!

 というわけで今回も楽しかったU世の事件簿ですが、カウレスのことが驚いたな。この世界ではアポクリファは起きていないらしい。
 てっきりその後でエルメロイ教室だと思っていたから、ガルバーニの電池の実験魔術の名づけとか歓喜したのだが、フランちゃんとの出会いはこっちではないのか。
 世界が変わろうともフィオレが退くことは変わらないようで、運命に出会わなかろうともつながりがあるのはいいものだ。

 では、ここで今回のお気に入り。
 グレイが列車に戻り、U世の様子が安定したことを伝えた時のこと。カラボーやオルガマリーが気にして聞いてくることへのグレイたんの感想を。 


 さほど接触が多かったと思えない師匠なのに、不思議と気にされているのは、あの人ならではの特性だろうか。そんな師匠だからこそ、今自分も倒れ込まずにすんでいるのだろうと考えた。自分のために立ち続けるのは難しいけれど、それがあの不機嫌そうな人の支えにわずかでもつながるのなら――そんな傲慢なことを思ってもいいのなら、もう少しだけ、うずくまらずにいられるような気がしたから。


 グレイたんがマジ健気すぎる!
 今すぐスヴィンと語りたい。乗り込んでとどめを刺しに来たと思われたいw
 今回、アッドもいい奴すぎたので夏が楽しみに待とうっと。





ロード・エルメロイU世の事件簿 5 case.魔眼蒐集列車(下)
三田誠(著),坂本みねぢ(イラスト)
TYPE-MOON BOOKS (2016/12/31)
posted by SuZuhara at 13:26| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月03日

謎好き乙女と奪われた青春



「先輩、私のことを好きにならないと言うのなら、私と付き合ってもらえませんか?」


 夢を見た。
 蛇女――まんまラミアに喰われそうになって巣から脱出するために走る。響く怨嗟の声など知るかとばかりにただただ光を目指して走っているとぼそりと「行かないで」と寂しげな声で言われて思わず止まる。いずれ殺されるまで静かに暮らしたいだけだ、それ以外はなにもいらないのだと。
 私は願いを受け入れたらしく二人の新居とやらに連れて行かれる。なにかに襲われたのか血塗れだったが人間の家。家主らしき人が家族を殺したと喚いているが、彼女を殺すのはこれじゃないだろうと処理をする。
 蛇はにやりと笑いながら隣に立っている。いつまでも一緒に、と囁かれるそんな夢。
 え、ちょっと待ってこれが初夢!? あまりの衝撃に兄貴に相談。「初夢が蛇は縁起がいいだろ」そっか、なるほどなー。
 そんなこんなでスタートしますが、今年もよろしくお願いします。


■あらすじ
 ミステリを引き寄せる体質を持つ矢斗春一は入学式で新入生代表の早伊原樹里に手渡した花束が目を離した隙に薔薇の花束に変わるというミステリに遭遇する。
 ミステリ好きの早伊原は春一の体質に目をつけて恋人の振りをしてミステリを堪能しようとするが、春一の体質にはとある秘密があった。


■感想
 ミステリを引き寄せる体質というのに興味があって手に取ってみた作品。けれども、大した謎ではなかったような。エブリスタの作品は以前にもう一つ読んでいますが、私にはあまり向かないようです。

 だけども、えっちゃら行くよ感想。
 あらすじに書いたような入学式の花束が変わる事件があり、樹里はぶりっ子で春一に近づきつつ告白、恋人、付き合っているという認識を獲得する。会長にだけはそんな誤解されたくない春一は花束の謎を解くことになる。

 わりと回りくどいな、というのが第一印象かな。おそらく樹里の毒舌が売りなのだろうけど、まず語尾に「♪」をつけることが私は受け入れられない。「先輩♪」とか樹里が言う度にざわざわした。俺の潔癖さがまだ足を引っ張るのか。
 要するにこれは春一を試した樹里の手品なんだよね。ミステリを楽しむために仕組み、そして春一がどう出るかを試していた。

 春一でミスリードしつつ早伊原が解くというタイプのミステリで行くのか、とちょっとわくわくしたが、その後は結構想像通りだったかな。不可能カンニングの春一の推理にはがっかりだ。基本的に私は自分の評価が最下層にあるのだが、そんな私でも分かる穴の推理とかぐぬぬである。ミステリの流れもなんだかなーだしな。

 春一の浮気を告発するメールは、なんでこいつらこんな面倒なことしてるんだろうと思うばかりである。
 続く春一の過去もこの酔った正義感には共感できない。振り回されて落ちたクラスメイトもなんだかなーだが、きっかけを作った女は図々しくないか。君たちはもっと言葉を使え、会話しなければ伝わらないよ。春一の体質も若気の至りで作られたものだたのでなんと言えばいいやら。みんな自業自得なんだよねこれ。

 おそらく続きは買いませんが、美少女後輩と毒舌合戦とか好きなら買いではないかと。私的には毒が足りなくて満足できないのだけども。

 では、ここで今回のお気に入り。
 春一が早伊原との偽装恋人関係を解消することを決めた時の台詞。なんやかんやと付き合ってきたくせに今になってやめる理由なんてただ一つ。 


「君が、僕の許容範囲を超えたからだ」


 この気持ちは分かる。
 それがどんな些細なことであったとしても、許容できないことは無理なのだ。
 だが、言わせてもらえるなら、過去に春一が振りかざした正義も私にとっては嫌悪すべき悪だがな。





謎好き乙女と奪われた青春
瀬川 コウ (著),赤坂 アカ (イラスト)
新潮社 (2015/2/28)
posted by SuZuhara at 09:29| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月07日

演じられた花嫁



 舞台裏には魔物がいっぱい!?


 インフルエンザでぶっ倒れていました。
 実はまだ調子がよくなかったりして、安静にしてろと買ってもらった――ま、金は自分持ちでしたが――ビルダーズも気持ち悪さMAXでやったくらい。もうすぐ終わるよー。
 調子が悪い以上にゲームができなくなっているなー。今じゃvitaも兄貴のようつべ視聴用になっていて、充電に帰ってくる時しか触れない。しかも、どうにも気持ち悪いのが治らなくて持ってられないんだよなー。
 ま、調子が悪いのはどうしようもないのでえっちゃらブログ更新は再開していこうと思うのです。


■演じられた花嫁
 とある劇団で千秋楽の日にベテランの北川が主演の女性にプロポーズをした。その二人の様子を快く思っていなかった尾田ことみを見てしまった亜由美は女優ならばと祝福する演技を進め、尾田は吹っ切れたようにお祝いの席に向かう。
 その後、尾田はTVドラマの出演で有名になり、亜由美と再会するのだが、尾田の活躍をよく思わない主演女優の殺人計画に浮気の末に自殺まで考えた若手女優を巻き込んだ事件へと発展していく。


 久々に赤川さんの本ですが、この無駄のない簡潔さは本当に憧れる。私が書く感想は無駄だらけだからな。ああ、この一言が無駄だな。

 いつも通り、亜由美は聡子と遊んでいて事件のきっかけとなる出会いを果たす。
 劇って結構好きでさ、ちょこちょこ行くんだけど、こういう内輪なサプライズは嫌いなので私がこの場にいたらドン引きしてるんでしょうね。私は舞台の余韻に浸りたいんだよ!

 北川のサプライズプロポーズを快く思っていなかった尾田は、勿論関係があったということ。実力者なら何人も相手がいるらしいからね、たくさんの人の相手ができるとかコミュ障にはてんで無理だな。
 亜由美が思い詰めていた尾田に助言をし、その後に女優として脇役からヒロインの姉役になり、演技力で成功していく。

 しかし、それを良く思わないのが主演女優。
 人気だけで演技力がないので比較されることから、マネージャーに殺してくれなんて頼んでしまう。
 そんでもって若手女優は不倫の末に遊ばれて自殺しようとするが、尾田の経験談に説得されて自殺をやめる。

 これだけならば芸能界怖ぇーで済みますが、物語はここで終わらない。
 尾田を狙って突っ込んでくる車。自殺未遂の女優の入院する部屋から出てくる主演女優の事務所社長にして父親、浮気相手にしたてあげられるぱっとしない男性俳優……。

 要するに、一番悪いのは北川だったんだ。
 北川は自殺しようとした子も主演女優にも手を出していて、事務所社長は妻と別れさせて結婚させようとした。そうすれば娘の名は汚れない。浮気相手を見立てたのもそのため。
 浮気のことを知った自殺しようとした子のマネージャーが妻を脅して、妻はその人を殺してしまっていたから感嘆のはずだったが、そこで北川は妻の自分への想いに気づき妻と再びやり直していくことに。

 尾田への殺人未遂は主演女優のファンだったタクシー運転手の暴走で、上手くかち合ってしまったという話でしたね。
 どんでん返しなどはなかったけれども、男女つーのは本当に難しいなと思ったものです。


■花嫁は時を旅する
 土砂崩れによって隣人の松井家が潰されてしまう。後に遺言で財産を相続した大倉家は生活を一変させるが、息子を狙った誘拐、デパートで刺されそうになったりと命を狙われることになる。
 元刑事の大倉は殿永と連絡を取り相談していたのだが、亜由美の気転によりかつて面識のあったヤクザの女房・ななこが関わっていることが分かり捜査を始めるが、大倉には松井の娘を名乗る佐和が接触してくる。


 これまた絡み合った事件でした。
 遺産を貰ったことから息子を私立に行かせたりと生活が変わって、弥生は母親たちの集まりなど忙しくしていた。
 だからデパ地下で食事を買っていたところ、ぶつかって来た男が一人。男はすぐに去ったが、残された汁物の容器は穴が開いて中身が出ていた。ナイフぶっすんだったというわけだ。

 息子も、祖父が緊急でおばちゃんと病院に行こうと言ってくる女がいたが、怪しいと気づいて母親に電話をしようとする。だって、今どきの子だからスマホ持ってるもん。
 無理矢理にでも連れ去ろうとする女に通りかかった亜由美とドン・ファンで阻止する。
 そこに元刑事の大倉と殿永がやってきて、ヤクザの女房の関わりが見えてくる。

 金目的の誘拐と思われたが、元重鎮のヤクザとは言え、今はもう権力のない海老原は妻のななこがこの行動から掃除屋に狙われていることを知る。やってきた殿永に頼み、ななこは守られるが、その後は松井の娘を名乗る佐和が接触。
 遺産を分けろと言うわけではないと言うが、佐和とのコーヒーを飲んだ時に大倉の調子が悪くなり、またも通りかかった亜由美がやって来たところで佐和は消えていた。

 今回の発端は自称松井の娘が娘ではなく、妻であったということから。東京での妻という立場で浮気相手なのだけれども、正妻がもうすぐ病気で死ぬから正妻にしてねという約束が結ばれていたのだと。何これクズい。
 だが、妻が怪しんだことから金は隣人にやるという遺言書だけ作り、土砂崩れで夫婦揃って死んでしまったと。
 なんのためにあの老人に抱かれてたのか、という言葉は結構ショッキングでした。金のためだってことくら分かってたよコンチクショウ!
 全部がなくなり怒った佐和はななこともう一人のチンピラをたきつけて事件を起こしていたというわけ。

 今回ドン・ファン大活躍でしたが、浮気の話が多かったな。亜由美たちがメインではなかったのでテンションは上がりませんでしたが、今回も安定していて面白かったです。
 でも、私としては塚川ファミリーがもっと出てほしいんだが。

 では、ここでお気に入りへ。
 花嫁シリーズ様式美な一文を今回も抜き出しておこうと思う。『演じられた花嫁』より、思い詰めた尾田を見て心配する亜由美に聡子は演目のように刺してしまうような展開になるんじゃないかと言ってくる。
 その根拠は案の定。


「分んないよ。あんたが係ると、たいてい殺人事件が起る」
「いやなこと言わないで」


 名探偵の憂鬱ですなー。
 でも、大丈夫。亜由美の場合、そこにドン・ファンがいなければ大したことにはならない。ドン・ファンがいると完全にドックファイトになるがなw





演じられた花嫁
赤川 次郎
実業之日本社 (2015/12/10)
posted by SuZuhara at 11:58| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月10日

ロード・エルメロイU世の事件簿3 下巻



「最強たるものを喚び出すか、つくりあげればいいんだ」


 もうここに書くこと一時間も悩んでるんだけど、悩んでも書くことは出てこないことにやっと気づいた。このスペースいらないんじゃないか。
 私は基本的にご機嫌に生きてますが、最近のお気に入りは床。うん、床。
 床に座ってパソコンしてそのまま寝オチしている。ちょっとぐだーずの気持ちが分かったぜ、この固さいいな。てか、何もない部屋って最高だな!


■あらすじ
 双貌塔イゼルマでの黄金姫殺害の容疑をかけられたライネスの前に立ち、事件を預かると宣言したロード・エルメロイU世だったが、アトラム・ガリアスタの乱入により推理どころではなくなってしまう。
 エルメロイ教室の生徒、フラッドとスヴィンが独自に応戦に動き出す中、蒼崎橙子までもが敵として戦闘に出てきてしまう。
 弟子を守るためにもエルメロイU世は自身の持つ聖遺物を賭けた賭けをアトラムとすることになる。


■感想
 あらすじが上手くいかないのはいつものこと。
 いやー、面白かったですエルメロイU世の事件簿3! まさか、フラッドとスヴィンの戦闘模様が出てくるとは思っていなかったので、すっごい嬉しい。あと、グレイのあの顔の理由とかかなり好みだ。

 さて、前回の続きからですが、始まりはグレイとエルメロイU世の出会いからでした。
 今回からグレイ視線に戻るんですが、エルメロイU世がセイバーの顔に似ているから怖がっているのではなかったようだ。確かに初めて見た時は驚いたけれども、顔を嫌うのはグレイとの約束だったから。
 また後で書くけど、これはスヴィンじゃなくてもグレイはぁはぁせざるを得ないわー。

 エルメロイU世とその弟子たちが集まった時、アトラム・ガリアスタがバイロン卿が競り落としたというあるものを奪うために襲撃してくる。
 前回の感想の時にアトラムについて触れるの忘れていたけれども、あれだ第五次聖杯戦争でキャスターのマスターだった人。
 ということはあの金に物を言わせられる魔術師であり、精鋭魔術師を連れて乗り込んでくるのである。

 その術式の問題点に気づいたフラッドがすぱっと襲撃者に会いに行ってしまい、フラッドを止めるためにスヴィンも行ってしまうので弟子の勝手すぎる行動にエルメロイU世の胃痛は計り知れないぜ。
 スヴィンは素早くフラッドに追いつくんだけど、イゼルマの味方をして襲撃者を撃退すれば教授も喜び、トリムマウも返してもらえるだろうというフラッドの案に乗ってしまい、二人で襲撃者撃退に乗り出してしまう。

 ここで思ってもみなかったことにフラッドとスヴィンの戦闘模様が描かれてて嬉しすぎた。相手の術式に介入するフラッドと完全前衛の獣性魔術で纏った魔力で幻狼のようになって戦うんだ。これが楽しくないはずがない!
 エルメロイ教室が強すぎるとか思っているとアトラムが出てきて、敵に回ると言った橙子さんまで出てきてしまう。

 フラッドは一度でまずいと悟って逃げ出すけれども、スヴィンはその性格から逃げ出さない。その結果橙子さんに返り討ちにされ、アトラムに捕まってしまうのだが。
 一方でフラッドの方も逃げきれず、グレイと合流しても橙子さんからは逃げられない。
 もうやめてよ。橙子さんが敵とか、絶望的すぎて希望が持てない。それでもフラッドとグレイならとちょっとは思ったけど、これは無理すぎる。

 このちょっと前にグレイの顔がセイバーに似ていることの理由が明かされる。
 元々似ているのではなく、槍を扱うに相応しいように顔が変わっていったのだと言う。槍の持ち主そのものであるように。
 故郷の人たちはそれを喜んだ。けれども、自分は変わっていく顔が怖かった。
 だから、この顔を怖がってくれたエルメロイU世に嫌いなままでいてほしいと願ったのだ。
 ……うわ、グレイのこれつらいなー。自己の否定だもんな。

 だから、フラッドとスヴィンが倒れ、自分も太刀打ちができないと悟った時、グレイは委ねてしまおうとする。遥か昔の英雄に。

 だが、絶体絶命の弟子たちを救うが師匠である。
 白銀姫とイノライがちょっとぶつかり合っている中に間に合ったエルメロイU世はイスローとマイオの協力をとりつけ、ライネスが黄金姫を再現する。

 その美しさに誰もが言葉を失って魅入られた。
 イスローとマイオの協力を得て白銀姫の顔に黄金姫を投影したのだと言う。そういう美に出会ったことがないからいまいち想像できないんだけど、本当にいつか心憑かれてみたいもんだ。

 介入したエルメロイU世の言葉に橙子さんはすぐに引いてくれるのだが、こういう頭がいい――すぐに察することができる人たちの会話は格好いいよな。
 しかし、アトラムは退く理由がない。彼が欲しいものはある英霊を呼び出すための聖遺物――竜血を受けた菩提樹の葉。すまないさんを呼び出すつもりだったのか!

 その在処を教える。もし外れていたら、自分が持つ聖遺物を差しだそうという賭けをするのだ。
 あれだ、ライダーの――征服王イスカンダルの聖遺物を賭けるんだ。グレイの悲痛な叫びはzeroを読んだらみんな同じ気持ちだろう。もう、そんなのだめにきまってるだろー!

 けど、それだけ自信があるってことなんだよな。
 実際にエルメロイU世の推理は当たる。ここから事件の真相になるんだけど、全部書くとあれなので端折りますが、さすが橙子だ。すまないさんが涙目じゃないか。
 灰かぶりのシンデレラとか、想像してなかったな。

 この事件は徹底的に美を追求したからこそ起こったものだが、マイオがこう動くとは思わなかったな。
 ディアドラしか見てなかったマイオとマイオを想い続けていたカリーナ、カリーナから伝えられたマイオを助けてとの意識に白銀姫とレジーナは庇うと決めた。
 魔術師なのだから常識では測れないけれども、マイオの「だって……どうして、いけないんだ?」の言葉はちょっと憧れてしまった。目的のために疑問すら抱かない境地というのは、憧れないはずがないじゃないか。

 推理して真実が明かされれば終わりじゃないのが、エルメロイU世の事件簿である。マイオは橙子さんに飲ませた薬に仕込んだ魔術で橙子さんを脅すのだが、この人を殺してはいけないことをマイオは知らなかった。
 橙子さんの内側に入れていたという鞄の中身が殻を失い、敵と認識されたマイオを喰らう。
 敵対さえしなければそれはマイオだけしか狙わなかったが、グレイは動いてしまった。

 捧げようとしたのが他人か自分だったか、きっかけがあったかなかったかの違いだけでマイオが向こう側につれて行かれようとしているところをアッドを手に挑んでいた。
 ここからのエルメロイ教室総出の戦闘が素敵すぎる。月霊髄液のドレスとか、アッドが盾になったり大槌になったり、もうロマンが詰まりすぎているよコレ!

 最後はルヴィアも出てきてくれるし、もう早くエルメロイ教室に凛の加入が望まれる。てか、楽しいなエルメロイ教室!
 法政科が裏で動いているようなことが匂わされましたが、最後のエルメロイU世の行動は見たのがグレイじゃなくても征服王と再会を会わせてあげたいと思ってしまう。
 その再会を見たいと思ってしまうよ。

 いやー、本当に楽しかった事件簿3。
 私はエルメロイ教室組が好きすぎますが、やっぱり橙子さんの存在はずるいよ。あの煙草をエルメロイU世に預けたってことはまた出てきてくれるんですか期待していいですか?

 では、もう日付けも変わってしまったしこの辺でお気に入りへいきましょうか。
 今回はフラッドとスヴィンが行った後でエルメロイU世とライネス、グレイの三人で少し推理をするのだがそのシーンから。
 グレイの顔のことをライネスに明かした後、推理で考え込むエルメロイU世の顔を見てグレイが思ったこと。


 ひどく難しげに、眉間の皺を寄せている。この人のこういう表情が、自分は嫌いじゃなかった。ライネスのように他人の苦労や不幸を愉しむわけではないけれど、師匠が不意に見せる横顔を、なぜだか愛おしく思っている自分がどこかにいるのだった。
 彼の頭の中で、一体どのような光景が広がっているのか。
 見たい、とふと思った。


 これ、完全にグレイの方は恋愛感情が入っているんじゃなかろうか。
 もう所々にあるエルメロイU世に対するグレイの信頼を感じさせるシーンすごくよすぎてたまらなくなるじゃないか。
 しかし、ここまで来るとグレイと凛や士郎の邂逅とか、絶対に有り得ないことまで期待したくなっちゃうよなー。






ロード・エルメロイU世の事件簿3 下巻
三田誠(著),坂本みねぢ(イラスト)
TYPE-MOON BOOKS(2015/12/29)
posted by SuZuhara at 00:38| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする