2015年10月25日

仮面舞踏会



 別の顔をした「もう一人の私」が事件を巻き起こす!


 珍しくここに書きたいことが多いのだけれども、ちょいとFate/GOの話をしよう。
 決して真面目にやっているわけじゃないけれどもちまちま無課金でやっていたのですが、タマモ参戦と聞いて石40個集めてガチャを回してみた。
 気分はCCCでサーヴァントの名前を呼ぶザビーズのように、「来い、キャスター!」と。――メフィストフェレス×3。
 慎二、アゾット剣といういつも通りの面々に絶望しながら「俺はタマモが欲しいんだよ!」と叫んだところ、最後の最後で出てくれました! 初の星5サーヴァントだひゃっほうw
 これでもう何もいらない。スカノハさんが参戦するまで石を溜め続けよう。


■感想
 今回は久々に赤川さんの短編です。
 すっきりと分かりやすい物語は面白いことこの上なく、私も短くて分かりやすい文章を書けるように目指してみよう。……今回省エネとかじゃないんだからね!


・消えたアイドル
 人気アイドル・杉田あるのはメイクで別人となった顔で街中を歩いたところ、室田という男に彼女役を頼まれて踊りに行くことになる。そこで室田のことであるのを脅してきた女が次の日に死体となって発見されたことから、あるのはマネージャーと協力して事件を調べることにする。


 この話はなかなか面白かったです。
 ディスコという場は古くて私には想像でしか分からないが、必ず事件が起こる場だなw
 メイクした姿ではなくあるのとして葬儀に出て、姿を使い分けて真相を探っていくのですが、この一般人たちのアイドル=楽して稼ぐという考えにあるのが顔をしかめるのも仕方がないと思う。
 そんでもって、誰かを犠牲にして幸せになんかなれるわけがないのだ。赤川さんは勧善懲悪派だからなー。


・見知らぬ恋人
 付き合っていた松山に別れ話を切り出したところ、車で無理心中を謀られて顔に大怪我を負った真知子。しかし、整形で美人に生まれ変わった真知子は偽名で以前に良い仲であった畠山と再会するのだが、彼は既に真知子の親友と関係を持っており、偽名を名乗った真知子のために親友を捨てようとしていた。
 そんな時、死んだはずの松山が真知子の前に現れる。


 この話は人間不信になりそうですね。
 私は人の顔を見れない人間ですが、顔一つで人を好きになることはあるんだろうか。逆に嫌いになることもあるかも分からない。
 人間大切なのは心だと言うほど聖人ではないが、すぐに手のひらを返すような奴はごめんだな。

 だからだろうか。松山と再会し、死のうとしていた親友を助けてくれた松山が、やけどで酷い顔になっていたとしても彼が大切なんだと気づいた真知子の気持ちというのが信じられないんだ。
 君は自分が嫌がっていることを松山にしてるんじゃないかって。うーむ、こう思ってしまうのは私が捻くれているからかな。


・影の反乱
 時の人である梅川勇一郎に似ていることが原因で彼の影武者となることになった笠原は、それまでと暮らしが百八十度変わることになる。
 だが、命を狙われる場面に出された事や想い人であるあかりと梅川が無理矢理関係を持ったことから笠原は怒り、影武者として動いたために知っている事実を使い、梅川を追い詰めていく。


 この話はあかりが寝取られるとことかしんどいですが、梅川が落ちていく過程は楽しい。
 今回のお気に入りは復讐をする笠原が梅川の付き人田淵に言った言葉から。大事な先生になんてことをしてくれたのか、と言う田淵に笠原は言う。


「分かってないのはそっちだ」
と、笠原は言った。「どんな弱い人間でも、踏みつけられて黙っていなきゃいけないってことはないんだ。どんな重要人物だって、人を傷つけていいわけじゃないんだ」


 そして、どんな奴だって反撃しないわけじゃないんだ。
 こういう奴らはどうして、僕らが弱者だからといって反撃なんかないと思うのか、それが私には不思議で仕方ない。
 ほら、サスペンスドラマで影の上で脅して逆に突き落とされる的な。もう様式美の一種なんだろうか。


・忘れられた姉妹
 もう一人、克子がいる。
 そう言われた克子の身には知らないことばかりが起こっていた。不倫として遊んでいたはずの相手に結婚の話をしたり、克子だと名乗る人物からの電話を受けたり。
 自分がやっていないはずのことを突きつけられた克子は自分に死んだはずの姉妹がいることを知るが、そのもう一人の自分が原因で家庭が壊れていく。


 双子ネタですね。半分この双子並みに怖い双子だ。
 私には双子が身近にいるせいなのか、見分けがつかないという双子には会ったことがないのだが、この知らないところで自分を名乗って追い詰めていく感は恐怖以外のなにものでもない。
 しかも、だ。実の父親と関係を持つという、徹底的精神攻撃。
 最後は克子がもう一人の自分・紀子を殺してしまうが、最初はもしかして入れ替わったんじゃないかと思ってしまった。これから少し変わるから、なんて言うから。


・私だけの境界線
 深夜に夫ともに病院に駆け込んだ加津子だったが、そのまま夫を失ってしまう。夫の死を受け入れられずに夫がいるかのように振る舞う加津子は、夫の声が聞こえるがままに心配した団地の住民を殺し、夫の上司まで手にかけてしまう。

 これは不思議な話だった。
 どう転がっていくのかすごく楽しみであったけど、加津子の行動と死んでいるはずの夫が殺人を肯定して唆していく様子は復讐でもあったのかと悩むところ。
 団地の住民もあの人がいつも救急車を呼んで騒がなければ夫も呼べて助かっただろうし、上司もその態度を改めていれば殺されなかっただろうしな。
 けれども、夫が死んだ時に死んでいた加津子に羨望を向ける浮気相手の心境は僕には分からないな。






仮面舞踏会
赤川 次郎
光文社(2014/3/12)
posted by SuZuhara at 21:00| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月09日

やさしすぎる悪魔



「そのときは諦めて。運が悪かったと思ってさ」


 所謂マリッジブルーなるものはなったことにもなる言われもないのですが、ゲームの発売日前はそんな状態になります私は。
 つまりあれだ、買うべきか買わぬべきかと悩むわけです。
 それが現在のP4Dに対する私の気持ちだったりします。いや、すごい楽しみなんだけど、元々原曲好きだからリミックスPVばっかり見ていたら別に買わなくてもいいんじゃないかと思いだして……でもP4はやりたいから、別に限定版じゃなくてもほらお金厳しいしと考え続け、そしていろいろあってやっぱり限定版買おうとなる、ゲーム発売まで2〜3週間はこんな感じの不安定さで僕は生きています。


■あらすじ
 香子に連れられて高級レストランにやってきていた由利子と旭子の花園学園の名物三人組はそこで女性が連れの男性にナイフで襲われるという騒動に遭遇したのだが、次の日その女性が怪我で休みになった担任の代わりの新人教師・暁であることを知る。
 その後、香子の別荘に行くことになった三人と由利子の妹・真由子は別荘の管理人である千恵の姿が見えず、胸を刺されて庭に埋められていた。
 命は取りとめた千恵だったが入院先に殺し屋が現れたりと執拗に犯人につけ狙われ、三人プラス一人は犯人を捕まえるためにとある芝居を打つ。


■感想
 ひーさびさに赤川さん小説です。
 悪魔シリーズはちょこちょこ読んでいるはずなのですが、案の定どこを読んでとか把握できていないので、基本、手に取って知らなかったら読み続けるスタイルだったりする。

 さて、いつもどおりに香子のお嬢様っぷりの恩恵を受けていた由利子たちはレストランで、「ここまお金は私が払うわ」と女性が言った瞬間に怒った男性がナイフで脅してきたという奇妙な事件に遭遇する。
 うん、俺も変だと思ったけれどここでは突っ込まないよ。
 すぐに担任としてやってくるのでそれまでのつなぎと思ってくれればいい。
 男の方が警察から脱走していたって問題なしだっていうんだから怪しさ満点ですがね!

 しかし、三人にとっても大した興味の対象ではないのか、妹・真由子も加えて香子の別荘まできていた。
 その途中で管理人・千恵の恋人という市川を車で拾って別荘に向かうと千恵がおらず、部屋には血が残されていた。
 そして、肝心の千恵は重症のまま庭に埋められていたのだ。

 命は取りとめるのですが、三人は他には千恵は死んだと言い、状況を見るわけですが、市川が千恵は死んだと誰かに報告していた。やっぱりっ、リア充なんか存在しなかったんや!
 だが、依頼者の方は慎重で、死体を確認できなかったことから殺し屋を送り込む。
 だが、香子だってなにもしないわけではない。由利子を入院させるからなw

 嫌な予感は当たるもので病院からは由利子と真由子以外いなくなり、そして警護の警察官は殺されてしまっていた。
 由利子の気転と香子のヘリでなんとか助かりますが、病院を移した先でも千恵は狙われ女装した警官ではなく、看護師が怪我をおってしまったりしますが、こういう展開って絶対恋愛に発展するんだよなこんちくしょうめっ!

 暁先生と千恵さんが腹違いの姉妹だったりといろんなことが分かりますが、調べている間に三人がいるとされる別荘が燃やされてしまう。
 そこで三人が死んだことにして葬式を行い、犯人の目星をつけることに。もう、本当に大人顔負けな女子高生だよ。

 途中、真由子が市川に恋をしてしまって拉致されたりとかしてしまいますが、犯人は暁先生でした。人は美しい時に死ぬのが一番という教祖のような存在になっていたのだ。男性に裏切られたことがあり、結婚すると女性は汚れると思っていたらしく腹違いの妹を汚れる前に思ってしまったというわけです。
 理由はちょいとなんだかなーですが、二転三転してもがっちり掴めない犯人像というのは面白かったです。

 では、今回のお気に入りへ。
 今回は自分たちが死んだことにして捜査を進めると決断した香子の言葉を聞いた由利子と旭子の反応を。


「これはただごとではございません」
「そうだよね」
 と、由利子が肯く。「私たち――学校、サボることになるよ」
「私、嬉しい」


 俺も嬉しいw
 って、瞬時にそんなことを判断するんじゃない!
 他にも葬式の写真にケチをつけたりといろいろありますが、こういう女子高生だからの反応は素晴らしいですなー。






やさしすぎる悪魔
赤川 次郎
光文社(2011/12/8)
ラベル:赤川次郎
posted by SuZuhara at 21:03| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月22日

四次元の花嫁



 会場、日程、ドレスもばっちり……ん? 花嫁はどこ?


 物凄い好きだったものがどうでもよくなってしまうということは多々あることですが、そういうのに出会ってしまうと悲しいのです。あんなに好きだったのに捨てるなり譲るなりできてしまう自分はなんて薄情なんだと。
 そんなことで悩んでいた後で、去年結婚した先輩が離婚したことを知らされました。愛が冷めたのだと。お前だって好きだったゲームに失望することはあるだろう、と。
 そうか、俺はそんな人間なのか。なら、もう何も欲しがっちゃいけないな。偽善と言われようとも、誰かが泣くと辛いんだ。
 

■花嫁たちの袋小路
 それなりに裕福な家庭だったが、娘の妊娠と夫のリストラが重なり転落した美里。働きもしない夫に学校を卒業した娘と美里の稼ぎだけではやって行けず、美里は置き引きに手を出してしまうのだが、その腕を見込まれて麻薬の運び屋をやらされてしまう。
 しかし、要求がエスカレートして娘が新たな相手と結婚することになり両親との顔合わせの日、人を殺さなければならなくなってしまう。


 久々の赤川さんの小説です、しかも犬のドン・ファンが活躍する花嫁シリーズ。相変わらずすんなり読めるので、疲れた時には癒される。
 さて、この話はなかなか複雑です。
 始まりは美里の裕福な主婦からの置き引きに運び屋、人殺しという転落劇なのですが、捨てたはずの銃をホームレスとなってしまった女子高生に拾われてどんどんやっかいなことへ進んでいく。
 ホームレスたちが家を作っているところに銃を持ち込んでしまい、それがリーダー格の園長と呼ばれる強盗の常習犯に取られてしまい、その銃が使われたことで事件が美里と繋がっていくのだが、これすら罠なんだよ。美里に全てを擦り付けようとする会社のね。

 正直、自業自得だし、娘とホームレス少女がなんとか無事だっただけで嬉しい。少女が流れ弾で撃たれた時なんか、もうドン・ファンと一緒で見っともなく取り乱しちゃったよ。


■四次元の花嫁
 ブライダルフェアに訪れた亜由美はそこで知人の一柳と出会う。結婚するらしい彼だが、花嫁は一度も式に訪れず式場側も困惑していた。
 担当である河本は叔父の殿永から亜由美のことを聞いていた彼女は亜由美に調査を依頼するのだが何者かに襲われてしまい、婚約者とされるゆかりの方も人には言えない秘密を抱えていた。

 やー、これは面白かった。
 一度も姿を見せない花嫁に訝しがった担当が夜道で襲われ、ゆかりも婚約は解消したという。まるで新郎がストーカーと化しているようだと思うが、そんな簡単じゃない。

 ゆかりは先日事故に会い、一緒にいた母を失った。
 そして、母が死んだことを認めない父がゆかりを母だと思い出したのである。娘の中で生きているってやつでね。
 だからゆかりは父親に抱かれていたりして拒めずにいたのだが、新郎の方も自分たちを嗅ぎまわる河本を刺したりしてもう、みんな仲良くしようぜ!

 新郎と父親が殺し合ったりしてしまうのですが、最後に妻として見送ったのは正解だったんだかなぁ。

 ではここらで今回はお気に入りへ。
 今回は河本みどり氏が襲われて殿永さんが珍しく取り乱しているところでの安心の亜由美の存在感を。


「現場の保存が大切です。亜由美さん――」
「私たち、ここにいます。殿永さん、病院へ行って」
「お願いします。すぐ他のパトカーが来ますから」
「ええ、任せて。慣れてます」


 だろうね、亜由美は名探偵も真っ青なくらい巻き込まれているもんなw
 しかし、このシーンでは河本の恋人が女性というのは気づかなかった。相手の名前が男でも行ける名前だったから亜由美も殿永さんもなにを言っているのか分からなかった。
 あそこは衝撃的だったなー。







四次元の花嫁
赤川 次郎
実業之日本社 (2014/12/11)
posted by SuZuhara at 16:34| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月13日

孤独な週末



 いたずら? それとも本気の殺意?


 今年度に入ってから私の人生は一変したことは何度も書いていますが、割と壊れてしまっていたのか今まで大切だった物とかが大切じゃなくなってしまっています。
 この機会にとせっかくなので部屋の掃除をちまちましていたのだが、大切に大切にしまっていたものを造作なく扱えてしまう自分が悲しい。私はどうでもいいことを大切にしていた自分が好きだったんだが、どこに行っちゃったんだろうな。


■感想
 さて、今回は赤川さんの短編集です。
 最近の記事を読み返してみると結構書いているので、さらっと書くように心がけます。


・孤独な終末
 子持ちの男性と結婚した女性の話。
 夫とはラブラブだけれども、子どもが厄介。既に物心ついてしまった息子とあまりなじめていなかったのだが、父親が仕事で留守中に殺しにかかってくるという、デンジャラスな子でした。

 しかも、ナイフ装備で来るならまだしも嫌がらせのようにじわじわくる。
 伝奇物じゃないから殺し合いにはならないと思っていたけれども、結構な長期戦でどこに着地するのかがとても面白かった。

 しかし、この父親がモテる理由がよう分からんのだが……。


・少女
 「私を買っていただけませんか?」
 そう言って近づいてきた少女の提案を飲んだ笠原だったが、話している内に話しているだけで満足してそのまま家に帰宅する。
 すると、家で妻が死んでいてあっという間に容疑者となってしまう。

 これは怖い話っすなー。
 いや、少女もだけど友人とか人間関係が。容疑者として報道されたら助けを求めたら拒絶、もしくは通報。そりゃあわが身はみんな可愛いけれど、絶対に裏切らない人の存在を夢見てはいけないのだろうか。
 しっかし、少女の最後の決断はちょっと惚れますなー。


・尾行ゲーム
 有休をとってその一日誰かを尾行するというゲームを楽しんでいた花村。だが、今回のターゲットとして選んだ女性は一味違い、殺人とその隠ぺい工作の一部始終を見てしまう。

 なんて趣味してやがるw
 これは好奇心は猫をも殺すの典型的一件かと。ゲームはゲームと割り切って心に秘めるか、さっさと警察に通報すれば良かったのに花村は殺された男の恋人に連絡をとって、運悪く犯人と接触してしまうことに。

 この話のオチは想像できなかったです。
 あー、じゃあヤキモキしただろうな、と。あの人も守りたい、けれどこの突っ込んでくる男を巻き込むわけにはいかないみたいなヤツ。
 そして、もうゲームはやめると言いつつ続ける花村には脱帽です。


・凶悪犯
 K市警察では予算削減を理由から特別狙撃班を解体することを決めた。一度も活躍することなく終わる自分たちの行く末を歎いていると、特別狙撃班に出動要請が。
 最後のチャンスをものにしようとする特別狙撃班だったが、事件は大したことはなく円満に解決しそうで、それではまずいと手柄を得るために行動してしまう。

 おそらく、今回一の問題作。
 銃を持った男がスーパーを襲ったという通報が入る。自分たちの有用性を誇示しようと現場に急行すれば、現役警官の妻がまだ犯人とともに中に残っているらしい。
 そういかんことに張り切った狙撃班だが、実はこの犯人も食べ物欲しさ、奥さんは違う場所にいた。

 犯人を狙撃するために奥さんを騙してスーパーに押し込み犯人と接触させるのだが、犯人は決して悪人ではなく奥さんの説得に応じてくれる。
 しかし、先走った狙撃班が――。

 もう欲に目が眩んだら人間だめだな。
 最終的には怪我人一人と死者二人。誰が死んだかなんて言わずもがなでしょう。
 最近はテレビとか本当に興味持てなくて観ていないのだが、とある一つの事件でもニュースでは簡潔にしか伝えられない。その一面で判断するのは怖ろしい。
 おそらくこの事件はきちんと調べれば、監視カメラの映像とかで真実はあっさり判明しそうだろうけど、隠ぺいされそうだよなーいらんことっていうのはさ。

 では、ここでお気に入りへ行きます。
 今回は『凶悪犯』から、犯人が自首すると決めたと伝えたにも関わらず狙撃班は撃った。それに対する奥さんと狙撃班の会話。


「奥さん、奴は凶悪犯なんですよ」
 と桜井が言った。
「いいえ! いいえ、違うわ! 銃を捨てたのに……。もう一人の人だって、背中から撃とうとしたわ。どうして! 殺さなくても良かったのに!」
 鈴木が、順の捨てた拳銃を拾って言った。
「奥さん、あなたは興奮して自分の言っていることが分からないんですよ。無理もない。恐ろしい思いをしてきたんだから」
「とんでもない! 恐ろしいのは……あなたたちだわ!」


 ふーむ、何気なく銃を取った鈴木に嫌な予感がすれば案の定。
 物語のシメの言葉を見ると薄ら寒くなるので困ります。




孤独な週末
赤川 次郎
徳間書店 (2014/5/2)



ラベル:赤川次郎
posted by SuZuhara at 16:19| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月18日

真夜中の散歩道



 僕が殺されたわけを調べてくれないか――


 ペルソナQ絶賛プレイ中です――と言いたいところだが、世界樹の時にも思ったことを再確認する。マップが複雑になると書くのがかなり面倒だ。
 今はもう一周目の終盤ですが、ちょっと根気がいるので休日しかできてなくもうちょっとかかりそうです。おかげで防衛班が帰還しません。フリーダムウォーズは時間的にできそうにないので諦めることにしました。
 だって、ボクと魔王もできてないし。8月までと思っていたものが7月までとか言われてしまったし……。
 うむ、ゆとりのある生活に戻るのはもうちょい先のようです。


■あらすじ
 新米霊媒師・神崎茜はひょんなことからニュースキャスター・一色大吾の霊と出会い、自分が殺されたわけを調べてほしいと頼まれる。付きまとわれてしぶしぶ協力していた茜だが、TV出演をして話題を呼び、さらには死んだはずの暴漢に取りつかれて殺人をおかしてしまったりと茜の生活は一変していく。
 事件を追うにつれ、全ての元凶は茜の根幹にかかわる事であることが分かる。
 

■感想
 憑かれた時の赤川さんです。
 今回の話はなかなか痛快で面白かったです。有沢ポジション羨ましい。

 さて、物語は売れない新人霊媒師・茜がホテルで大晦日から新年にかけて行われる正月プランの余興としてとあるホテルに来ていたところから。
 厳密に言うと大吾の死からなんだけど、ここは割愛。

 そのホテルで茜は師匠である天竜宗之助の娘・麻美と再会する。麻美は結婚していて、父である師匠とは喧嘩別れしていて死には立ち会わなかったらしい。麻美は金持ちと結婚してそこそこ幸せそう。

 そんなホテルで茜は大吾の霊と出会う。
 このペースで書くと長くなるのでここからはざっと書く。

 大吾の言葉で同じキャスターの有沢の不倫現場を見てしまったり、大吾の葬式で勝手に彼女扱いされたりとなかなか厄介なことになるが、ここで茜は大吾の妹・ゆかりと出会い、そして何かの縁とばかりに一緒に暮らすことになる。
 お葬式で飯田あかりという女優が大吾の妹であることが分かるのだが、ゆかりには新しい姉妹、茜には霊媒という職業に興味を持った有沢の無茶ぶりの救世主となる。
 生放送で大吾と喋れと言われた時に「え、この中に妹が?」みたいなことを言って。この一件で茜は有名霊媒師となる。

 しかし、まだまだ続くよ茜の受難。
 ちょっと順不同になってしまうけれども、茜はそれからTV出演をバンバンすることになるのだが、有沢の不倫問題に茜暴漢に襲われる、そしてその暴漢自分の傍で射殺される。
 この辺ややこしいのだけれども、実は暴漢は茜の兄弟子にあたる人で霊能力があったから茜に取りついて殺人を犯してしまう。
 茜は初め分からなかったんだけれども、暴漢を射殺した刑事の家族を狙っていたりして茜vs兄弟子戦である。
 傍観の方が強いのだけれども、有沢たちに助けられて茜はなんとかここを切り抜ける。

 その後、麻美が夫の殺人未遂をして逃走する。
 暴漢のことを調べていた時に分かる事なのだが、麻美には師匠がついていたのだ。麻美の中でじっとしていて、いずれは夫の身体に移るつもりだったと……。
 え、なにそれ。娘ラブな人なの? ガチなの?

 最後は茜と師匠の一騎打ちとなり、茜は師匠には勝てないと分かっていたので道連れにしようとするのだが、そこに現れる茜母。実はもっと前から出ていたのだけれども、母は娘を守るためにここに来たのだった。
 母は茜にまつわる重大な事実、師匠の子であることを告げて買ってしまうのだった。うむ、やはり娘ラブなパパだったか。

 大分飛ばしてしまいましたが、どんどん増えていく茜の家族や茜と大吾の恋、転んでも起き上がる有沢辺りが見どころだと思います。
 茜と大吾の関係は恋に至ると思っていなかったので驚いたよ。
 でも一番は有沢なんだな。茜もどんだけ振り回されても有沢を拒絶しないしね。

 では今回はこの辺でお気に入りへ。
 ちょうどいいので茜が有沢真季について述べたところを。TV出演の衣装がどんどんきわどくなっていくことについて呆れつつも茜はこんなことを言う。


 茜も、真季のやり方は呑み込めてはいるのだが……。結局は真季のペースに巻き込まれてしまう。
 でも、茜は要するに真季のことが好きなのだ。いろいろ無茶は言われても、どうしても真季と本気で争う気にはなれない。


 こういう人は尊いと思う。あ、茜ではなく有沢の方ね。
 見たかによっては嫌われるけれども、まあいいかと思われて許されるのは貴重だ。彼女の場合それが好転するのだから尚更。
 今回はいろいろあったけれども茜は大分有沢に助けられているからね。





真夜中の散歩道
赤川 次郎
幻冬舎 (2014/4/24)

posted by SuZuhara at 22:47| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする