2014年03月13日

終電へ三〇歩



 終電に乗っていたら、あの事件は起きなかった。


 ポケモンのタイプ占いというやつをやってみて、私のタイプはじめん・かくとうタイプらしい。
 なんと超物理タイプw え、でもこの複合タイプのポケモンいるなら愛すわと思い調べてみましたが、いないっぽいんだよね。え、存在しないのか俺は。マジかー、いるなら全力で好きになるのになー。
 そんなこんなな私ですが、閃きの軌跡の続編情報に心が揺れる。買うのは見送る満々なのに、剣であること前提のラウラやクレアさんが使えるとあっちゃー見逃せねぇのだ。私服が可愛いやばいやばい。これで妹も参戦すれば私的に完璧である。え、アリサ? 俺は金髪のアリサに興味はないのだよ。


■あらすじ
 リストラにあった柴田が家に帰れずにいると、上司の永井と常務がホテルから出てくるところを目撃する。それをネタに会社に戻れないか脅そうとしたところ、永井が涙したところを見てしまい、その上駆け落ちして心中も考えている高校生カップル・治と彩に会ってしまい、二人は放っておけず関わっていくことになる。
 また夫の暴力を怖れて家を離れていた圭子だが、娘が心配になり帰ろうとすると終電が人身事故の影響で遅れていた。そんな時に本多と出会い、お互いに惹かれ合い身体を重ねてしまうのだが、本多も連れて一緒に家へと向かうそこには何も話さない娘と消えた夫と血だまりがあったのだった。


■感想
 疲れた時は赤川さんを読もう。ということで、ちょいと久々の赤川さん作品。
 今回は一応、大きく分けてリストラされた柴田と治と彩のカップル、本多と圭子の三つの話に分けられるんだと思うが、ちょいとまとめてざっくり書く。登場人物32人の時点で全部書くとか無理だからな。
 もう、私はどこでもかしこでも書きすぎなんだよな。簡潔目指していこうな。目指すだけならタダだからな!

 あらすじのようなことがあり柴田と永井は治と彩と出会う。治と彩は親同士に因縁があり交際を認められず、駆け落ちして最後には心中する気もあった。そんな二人を見捨てることが出来ず永井は自分の家に二人を一時的に連れて行くが、そこに先の常務が妻に閉めだされたと来てしまい、奇妙な四人で一夜を過ごす。
 しかし、朝になっても常務だけが起きず脳出血を起こしていた。しかし、不倫相手である永井が表立って動くことはあまりよろしくなく、治が付き添って病院に行くことに。
 治からすると凄い展開。しかも、病院にいると常務の娘が惚れてくるというね、彩の目からハイライトが消える展開になるかと思ったがそんなことにはならないのでご安心を。少なくとも僕は終始ドッキドキだったよ!

 一方、柴田は家に戻ると娘が悪い子に生徒手帳を奪われたという。
 金で解決できることならと柴田が金を持っていくことになるが、実はその男と娘はできていて金をせしめる作戦だった。
 割り込んできた女の子に助けられるのだが、この女の子が一番の謎だった。随分大人びた子だけれども、その後も柴田と接触するようになってくるんだ。

 常務がいないことで仕事が分かる者がいないと永井が柴田を呼び出したことで柴田は会社に復帰、その後も助けてくれた女の子が接触してきて人生は上手く進んで行く。歳の若い女の子の手を握っていい感じになれるくらいにはな。

 治と彩について言うと、二人して家出をしたことで治の家に彩の両親が乗り込んできていた。治の家への電話を彩の父が取ってしまったことから病院にいた治の父が二人が出来てると勘違いして怒りのままに病院を抜け出してしまう。
 しかし、自分の家が分からず右往左往していると昔の知り合いにばったり会ってその女・しのぶの別荘へ。そこでいろいろ楽しんだ後、心中相手として選ばれた父は殺される。しかし、しのぶは死ぬのが嫌になって死なない。ちょっ、おまっwww

 不倫相手が戻っていたので治父の死体を捨てに行くことに。
 これまたいろいろあってもう一人殺したりなんやかんやで、男の方が人を簡単に殺すしのぶが嫌になり、妻の元へ戻ろうとして、また捨てるのか貴様が死ねば全てが終わりだこの野郎と殺してしまう。……すまん、ここ大分違うわw
 殺したと思われたしのぶが生きていて、奥さんとイチャついた後で男はしのぶを引き殺してしまう。おお、結局死ぬんか。デッドコースター並みの死の運命なんだろう。
 その後、妻がしのぶを捨てに行こうと言い出して、結局この男は逃げられないんだなと思いましたね。しのぶのその辺が嫌でにげたはずだったのにな。
 この二人の結末は因果応報ですが、パンチが足りないと思ってしまうのは俺が酷いのでしょう。

 治たちはいろんなことに巻き込まれますが、少し時間を置いたことで交際を認められます。初体験がまだだから死ねないんだって。うん、リア充はどうにかなればいいのに。

 最後に圭子チーム。
 家に戻ると血だまりと娘。本来であれば真っ先に圭子が疑われる展開だったが、本多とタクシー運転手の証言で関係ないことが分かる。その後、喋った娘により、父親が知らない女がお母さんをハメるために演出したのだと。
 翌日、警察に届けようとすると父親、実の娘を誘拐。やめろっ、ロリに手を出すな!

 あ、そういや話は変わるんだが、ちょいと前に可愛いロリに会ったよ。エスカレーターに乗れず泣きそうな顔をしてお母さんが駆けつけようとも先に降りちゃってたから一向に行けない。
 ひょいっと抱き上げて乗せてあげたのだが、めっちゃいい顔で笑ってくれたんだ。イエスロリータ、ノータッチの誓約を破った私に。天使か、天使だったなーあれは。

 脱線終わってなんとか娘を取り戻すのだが、本多はその際に死んでしまい、圭子のお腹には本多の子が……。
 私は英雄の条件は一発で当てるってことだと曲解しているんだが、まさに本多は英雄でした。

 こんな感じだろうか、まだ書けていない話は多いけどちょっと32人は無理ですやっぱ。
 ちょいちょい納得がいかないと言うか、えっこの人ここで終わりって感じで物足りない人もいましたが、場面はころころと変わっていくのに飽きず、先の気になる作品でした。面白かったです。

 では、今回のお気に入りに。
 気に入ったというか印象的だったのはやはりしのぶを殺したシーンでの男と妻の会話でした。


「どこかへ運びましょう」
「何だって?」
「気の毒だけど、もう死んでいるのよ。どこで見付かっても同じだわ。ここで見付かったら、あなたが疑われる。どこか別の場所でなら……」
 桑原は、信子が本気だと分った。
 同じだ。――しのぶが、あの常田の死体を前にして言ったことと。
 何という皮肉!


 常田は治父です。
 この男・桑原は妻にも嫌気が差すのではと思いましたが、結局妻にもしのぶにも振り回されて嫌な終わりを迎えます。私的にあまり面白くないというか、その後が知りたかったので残念なのですが、それ以上にしのぶに殺された泥棒の片割れがどうなったのか気になるなー。




終電へ三〇歩
赤川 次郎
中央公論新社 (2014/2/22)
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2014年02月13日

祈りの幕が下りる時



「頼みがある。一世一代の頼みだ」


 なんとも未だに調子が取り戻せませぬ。
 二月は予想外のことが目まぐるしく起こるので混乱しているのかもしれませんが、そろそろいつもの調子に戻りたい。また今週末も雪らしいので新しいゲームでも買ってくるかなー。


■あらすじ
 松宮が身元不明の遺体を調べていたところ、遺体の身元は分かったのだが分からないことばかりが浮かんでくる。その謎に頭を悩ませていた時、親戚の加賀と飲みに行き、ひょんなことから遺体のあった部屋のカレンダーに記されたの日本橋にある橋のことを話す。
 すると加賀は血相を変える。それは加賀が日本橋を希望した理由であり、亡くなってから再会した母の部屋に全く同じ内容のメモが残されていたからだった。母の想いを知ろうとしていた加賀はこの事件を通してある親子について、そして母について知ることになる。


■感想
 ここに感想を書いているかはちょっと覚えていませんが、ちゃんと最初から読んでる加賀恭一郎シリーズ。
 今回は加賀さんにとってとても重大な事件でしたね。読んでいて先が気になって仕方なかったです。しかも、全然想像できなかった。最後まで行って収束していく感じはもう脱帽の一言でした。

 さてさて、感想に行こうか。
 始まりはとある女性が仙台で暮らすことになり、そこで周りの人に支えられながら生きていくところから。傷を抱えていた女性はある一人の男に会い、恋愛関係というか大切と思い合える人を得る。だけども、病気で一人死んでしまうのだ。
 彼女の死を知った男は事情があって表に出ることが出来ず、代わりに彼女の息子の連絡先を掴んでくる。
 そう、それが加賀さんだ。この女性は加賀さんが子どもの頃に家を出た母親だったのだ。

 話は飛んで松宮の事件。越川睦夫という男の部屋で死んでいた身元不明の遺体が押谷道子という女性のものだと分かったが、二人の接点が全く見つからない。同じ頃、焼かれていたが絞殺されたホームレスの死体があり関連が疑われるが、それを繋ぐものがない。
 押谷の方を追っても、以前の友人の母親らしき人を見つけてその友人が明治座でやる演劇に関わっているためにそれを伝えにたまたま東京に出てきただけで、捜査に行き詰っていた。
 そんな時に加賀に捜査のことを話して、加賀はカレンダーの謎、越川と母が繋がっているのではと捜査に協力を申し出る。

 ここから先は上手くまとめられる自信がないのでちょこちょこっとで行きますが、もう綿密に織り込まれた伏線だったのだなと思います、はい。

 まず今回の事件の重要人物として角倉博美という人がいる。この人は押谷が会いに来た友人で、明治座で演出した芝居が公演中だった。そして、加賀が先生をやった剣道教室で面識のある人物。今回の事件でこの人の波乱の人生が紐解かれるといっても過言ではない。
 この辺は読んだ方がいいと思うからざっと行くけど、子どもの時に母が金を持って家を出て、借金だけ残された父子。二人は執拗な取り立てから夜逃げしてしまう。
 その先であった男を博美は抵抗する弾みで殺してしまうのだが、そこからこの父子の壮絶な人生が始まる。父が死んだ男になりすまし、自分は死んだことにして借金から逃れる道を選んだのだ。

 殺してしまった男は原発作業員でずさんな体勢であったこともあり入れ替わりは容易に出来た。父は原発を渡り歩きながら生きて、博美は施設で育った。
 その時博美は演劇に出会い、その道を行くのだが、一時とはいえ隙になった男が悪かった。その男は博美の小学生時代の担任でずっと支えてきてくれた苗村。これだけならいい先生だが、教え子に手を出しよった。いくら生徒の方から誘ってこようとも、妻のいる身で、しかも無理矢理離婚して博美と結婚しようとする男だった。

 博美の方は苗村のことは好きだったんだろうけど、東京に出てから演技の方を学んでいる時に来ちゃったとばかりに唐突に何もかも捨ててやって来た苗村には困惑を隠せない。
 東京で僅かな間でも会うことが父と子の大切な時間だったのに、この男は博美をつけてきて父が生きていることに気づいてしまう。父の存在は知られてはならなかった。だから、殺した。
 実は押谷も同じだった。明治座での初日、舞台を見に来た父に押谷は気づいてしまった。
 善意だったんだろう。あんな母親でも博美の母だと教えに来るくらいで、押谷はこの二人がどんな生き方をしてきたか知らなかったんだから。

 満足に会うこともできなくて、面と向かっては会えないからと場所――あらかじめ決めておいた橋で川を挟んで携帯で会話するという徹底してでも隠し通そうとしたのに。

 博美の父はもう疲れていた。支えであった加賀の母も亡くし、人を殺して逃げる生活にも耐えられそうになかった。だから、自殺しようとした。焼け死ぬことで博美に迷惑をかけまいとした。
 だが、博美はそれを拒んだ。父が焼け死ぬという死に方は嫌だったと言っていたことを覚えていたので公演している『異聞・曾根崎心中』のラストのように首を絞めて殺したのだった。

 最後に博美から渡される手紙に加賀さんの母のことが書いてあるのだが、加賀さんの母のことよりも博美の方に感情が傾いてしまうな。孤独に必死に生きてきた父にできた大切な人、その人に会いたいと思うが、もういない。ならばせめて息子に会いたいと思って接触をしてしまったのが今回の真相が晒される原因になったとしても後悔なんてしていないんだから。

 今回は加賀さんと登紀子さんにちょっと進展があって終わりでした。私は卒業の沙都子が好きなので複雑なのだが、もうあの二人が出会うことなんてないもんなー。まだツメの甘い加賀さんが精一杯隙になった感じが好きだったので、この二人がどう進展していくか楽しみにしてます。

 では、ここらで今回のお気に入りに行きましょうか。
 今回は加賀さんと松宮の会話にしようと思っていたのですが、最後の方の父子の回想シーンには勝てなかった。
 会うのはもう何年振りか。ちゃんと向き合うことはできず、同じベンチに座って他愛もないことを話すだけだったけれども、それで良かった。


 言葉のやりとりなんかどうでもいい――そう痛感した。こうして一緒にいられるだけで十分だ。


 ああ、なんでこんな風にしか生きられなかったのだろうか。申し訳ないが、全てを知らされた博美の母が自殺未遂をしようとも知ったことではない。ただこの人たちには幸せになってほしかった。
 楽になりたいと死を望んだ父の願いを叶えることも罪になってしまうか、娘の手で死ねることを喜んだ父の想いすらいけないものなのか。ならどうすればいいんだよって今思いだすだけでも泣いてしまう私はいったいどれだけ涙腺が弱いのか。
 でも、罪は罪だと頭では理解していても納得なんか出来そうにないんだ。




祈りの幕が下りる時
東野 圭吾
講談社 (2013/9/13)

posted by SuZuhara at 22:10| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月08日

花嫁は墓地に住む



 幽霊だけが知っている1億円の行方


 雪ですね。もうびっくりするくらいの雪なのでいろいろ予定が狂ってしまった。映画行きたかったんだけどなー。こういう寒い日は大人しく家にいようと思います。
 なので、ここに特に書くことがない。試験も終わったから切羽詰まってないけれども、試験ラッシュだったせいでどうも調子が狂ってしまって今まで休日ってどう過ごしていたか分からなくて途方に暮れていたりする。
 うーむ、なげっぱなしのゲームでもするかな。


・花嫁は名剣士
 バイト先で時限爆弾に遭遇した塚川亜由美はなんとか怪我人一人出すことなく、その場にいた会社役員たちを救出する。しかし、その助けたはずの人々から爆弾を持って来た人をある特定の人物であったと証言してほしいと言われて雲行きが怪しくなってくる。その人は内部告発をした人物らしく、この一件から亜由美はある会社のごたごたに巻き込まれることになる。


 自分で書いておいてなんだが、バイト先に時限爆弾とかさすが亜由美さん次元が違うw
 物語としての始まりは、ある内部告発をした人が襲われるところから。お前に恨みはねぇが、と雇われ感たっぷりの男たちに囲まれるのだが、そこに現れるのは剣士。そう、剣士。
 まさか現代に剣士とは。赤川さんの作品とは言え、この存在には驚いたな。だが、ここで剣士は一度退場で亜由美へ。

 あらすじで書いたように、爆弾事件から亜由美はM重工という会社と関わることになる。あまりに変な様子だったため、亜由美は内部告発をした笹田氏と会い、あらましを伝えるのだが、この会社は根っこから腐っていた。
 まず、笹田氏も襲われることになる。ここでも剣士の出現で難を逃れるが、この策が失敗したことで男たちを手配した河辺氏は死に追い込まれる。
 笹田氏は笹田氏で、妻が浮気していることをバラされないために河辺氏の後をやらされている。そもそもその浮気も仕組まれたモノだったりするから性質が悪い。
 あとなー、内部告発の原因がこの会社が武器を作っていたということだったりする。亜由美が遭遇した爆弾はパフォーマンス用に仕組んだものだったけど、もっと殺傷能力を高めたものを作ってたりするんだ。もうここにいちゃまずいよ。ブラックどころじゃないもん、ここ。

 社長の次なる標的はなにかと目障りは亜由美へ。
 最低なところには最低が集まるのか、笹田氏の妻の浮気相手、この男も酷い。こやつ、笹田氏の妻と学生時代の先輩後輩ということで手ごめにすればポストを与えるといった感じで食いついていた奴。現在の会社に居場所はなく、社長に次は亜由美を犯すか殺せと言われて戸惑うが、、日頃の行いから妻も息子も出ていってしまった家を見て亜由美を殺すことを決意してしまう。
 勿論、亜由美にはドン・ファンがいるので簡単にはいかない。そして今回は強力な助っ人がいる。
 それは、浜本ゆかり。M重工社長秘書の彼女は細見のステッキを持っていて、そこに仕込まれた剣で撃退するのだった。
 うん、突っ込みどころだが最後まで行こう。最後までいったら突っ込もう。

 最後はみんなで社長室に乗り込む。
 ゆかりが仕組んでいた録音で社長が亜由美を殺せと言っていた証拠を掴んでいた。ゆかりは汚職の罪を被って死んだ婚約者がおり、その復讐のために乗り込み、剣を持っていたという。うん、まだだ。もうちょい行こう。河辺氏も死んでいなくてその証言から社長は御用に。
 それを終えて、ゆかりは殿永警部にステッキを差し出し、人を傷つけた罪を償うと言う。そんな彼女に殿永警部の答えは――

「これで切ったというより、相手の方が勝手にこのステッキにぶつかって来たとも考えられます」

 それは無理! その解釈は絶対に無理!!
 吹いたわw 百歩譲ってそうであったとしても、確か銃刀法違反って簡単に取り出せる状態で保持しているってのがいかんのだったではなからうか。引き抜ける時点でアウトだ。いくら勧善懲悪でもおとがめなしという展開には笑うしかない。会社関連が面白かっただけに、ちょっと残念でした。
 

・花嫁は墓地に住む
 亜由美が親友の聡子と温泉に訪れると、そこには聡子の親戚である朱美がいた。彼女は不倫相手の男とそこで落ち合う予定だったのだが、男の妻と朱美の母が一緒に宿に現れてしまう。他にも生徒と関係を持ち自殺に追い込んだとされる教師や飛び込みでやって来た男が以前に仲居頭を犯した相手だったり、そして亜由美たちの方も父と母、殿永まで一つの宿に集まってしまう。
 そんな中で朱美が以前に深夜の墓場でデートした時に現れたという花嫁の幽霊の話をし始める。


 これはスゴイハナシダッタナー。
 ひとつひとつは面白く、どう繋がっていくのか楽しみだったのですが、どうして大団円になってしまうのか。バッドエンドスキー症候群が発動しているのかもしれん。

 だいたいはあらすじに書いた通り。
 一つの宿に集まった人々は朱美の墓場デートの話である行動に出る。それは話を聞いた殿永がそれは幽霊ではなく、墓場に近寄せたくなかった誰かがやったのではないかと言い出したことから。

 宿に泊まっていた教師・正倉は急にやってきた生徒に薬を飲まされ、その後服を脱がされた後に生徒が自殺したという過去を持つ。だが、言い分は信じてもらえず教師をやめることになり、その退職金でここに来ていたのだが、宿で出会った以前の教え子の母に正倉が学校のお金、1億円を父母会の準備金を使いこんでいたと言われていることを知らされる。つまりあれだ、ハメられたのである。

 その話があれよこれよと宿中に伝わり、殿永が幽霊が一億円を墓地に隠していると言ったせいでみんなが墓地に向かってしまうのだった。
 だが、亜由美も感じたようにこれはおかしい。剣士ではああだったが殿永がこんな初歩的なミスを犯すはずがない。

 墓地には一億円などなかった。あったのは使い込んだ帳簿。バーを経営していた朱美の母がここに隠すことを進言して学校のお偉方を揺すろうとしたらしいが、肝心の店が亡くなってしまったために警察に協力。そして、朱美が見た花嫁とは母の事だったらしい。
 不倫に関しては奥さんの方が寛容で、若いんだからあんな男といちゃいけないと許してくれる。
 最後、仲居頭・唯と因縁の男・林田に関しては、再会してお互いに気づいた時に林田が忘れられなかったと言っていたのだが、ここで一億円を手に入れて二人――お腹の子を含めて三人で暮らしたかったらしい。殿永が証拠不十分で捕まえられなかったがいずれ捕まえると言っても、林田はこの温泉宿に落ち着くと言う。何日かでも夫婦の真似ごとをしたいのだと……。

 という終わりでした。
 みんながまとまってしまって、おう何の波乱もないとがっかりする私は異常なんだろうな。
 むぅ、今回は二つとも綺麗にまとまってましたね。あんまりドン・ファンの出番がなくて物足りない感じでしたが。

 では、今回のお気に入りに。
 もう今回は上の殿永さんの言葉でいいかと思ったが、あの言葉がお気に入りというのもどうかと思うので、「花嫁は名剣士」から爆弾が送られて来た場所から男をおぶって逃げると進言した時の亜由美の言葉を。
 

「君……。無理だよ。男は重い」
「火事場の馬鹿力って言うでしょ!」
 と、亜由美は言い返した。「少なくとも、『馬鹿』だけは自信があります」


 あの場面でもユーモアを発揮できるのが亜由美なんですよね。それに亜由美のユーモアはあの両親譲りだから。
 しかし、今回は亜由美も両親もあまり見せ場がなかったのが残念だったな。亜由美のお母さん好きなんですよ。ちゃんとする時はちゃんとするが、ほとんど緩んでいるあの人が。




花嫁は墓地に住む
赤川 次郎
実業之日本社 (2013/12/12)


ラベル:花嫁シリーズ
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2013年12月27日

ダンガンロンパ霧切 2



 霧切響子、「探偵オークション」に挑む――!

 
 今年は正月がお休みを貰えるという。しかし、その代わりに年末毎日残業ってなんぞそれ――っ!
 先輩のクリスマスの婚約者と過ごした模様を聞きながら仕事をしていると、上司に大丈夫かと聞かれる。あんなノロケをよく普通に聞けるな、と。え、そっち? 仕事の量じゃなくてそっちかよw 
 正直に言うと、私には関係のないことなので実に興味深かったりするんだが。リア充死ねと叫ばなかったことがお気に召さないらしい。生きるって大変だなぁと思った今日この頃であるw

 
■あらすじ
 犯罪被害者救済委員会の黒の挑戦(デュエル・ノワール)で指定されたダブルゼロクラスの探偵・七村についていき、五月雨結と霧切響子は舞台となる以前に殺人となった廃ホテル「ノーマンズ・ホテル」に訪れる。
 そこには探偵三人のほかに七人がいて、計十人となった時にオークションが開かれることになる。それぞれ一億円が配られて競り落とすのは、その日の「探偵権」という探偵オークションだった。
 疑心暗鬼で協力することすらできず繰り返されるオークションと殺人。探偵七村の手は借りずに霧切は五月雨とともに事件解決のために探偵オークションに挑む。


■感想
 あー、やっと読み終わった。読むのが苦痛とかではなく、ただ私に読む時間がなかった。読書タイムの移動時間は寝てて、ちょいと二、三ヵ月前からpixivで遊んでまして、相変わらずの誤字脱字ばかりだけど楽しいのだ。読むのも書くのも好きなんだな、自己満足でしかないけれど――今のこの残業ラッシュを耐えられているのは心が死んでないからでしょうな。趣味人は遊ばないと死んじゃうんだぞぅ!

 ま、私のことはどうでもいいので感想に行きましょうか。
 物語は前回の続きで結と霧切さんが七村と食事をするところから始まる。内容は黒の挑戦についてだけどもこの男には嫌な予感がする。速さが大事だとかの兄貴のようなことをいいながら、自分が連れて来たレストランで金を払わないという悪魔。
 金に関することを他人に押し付ける奴は悪だぞ!

 そんなこんなで黒の挑戦に同行することになった二人は、以前に殺人があったというノーマンズ・ホテルへ。
 そこに行くと既に七人が集まっており、十人集まった屋敷は鍵が閉められて逃げ出すことは不可能に。
 オークション開始には十人必要で、その中に一人探偵が必要になる。詐欺を追ってやって来ていた魚住という探偵もいたのだが探偵とは七村を差しているらしい。

 七村が来て十人が揃ったのでオークションが始まる。
 ここで簡単に探偵オークションについて説明。
・一人1億円の元手が配られる。
・その金で競り落とすのはその日の「探偵権」。
・門限である夜十時には自室にいなければならない。
・その時点で部屋はロックされる。出入りが出来るのはマスターキーを持つ探偵と犯人だけ。
・犯人は一日に一人殺せる。ただし、探偵の前では殺人は起こせない。
・門限を破るとオークション参加権を失う。

 とまあ、こんなところかな?
 要するに殺されたくなければ探偵権を取ること、というわけである。
 結が一所懸命協力して乗り切ることを促すが、疑心暗鬼は止まらず、その一日目をなんとかしたのは七村だった。
 オークションは五日、全部で五回行われるというのに初回で全てを投入したのだ。
 それを見て一日目は七村に譲る流れで迎えるのだが、むー、部屋の説明がむっかしいな。部屋はL字型になっていてそこの一番端に探偵が入って片っ端から開けていくことで助けるという方法をとるのだが、呆気なく一人死ぬ。
 その人は結にとあることを言い残していて、その言葉が最後に繋がるのが怖いっすなー。

 この辺りで霧切さんが七村捨てて笑うw
 あの人使えない、じゃなく、本当に捨てている。七村にいち早く扉を開けて貰い、殺人現場に至るまで行動を共にしていた結の言葉を聞き霧切さんは推理していく。

 しかし、二度目のオークションは無情にも行われる。
 探偵権を落としたのは水無瀬という男。彼は二日目で多額を消費し、勝ち続ける方法が分かったと言って誰も助けないと一人で部屋にこもってしまう。
 霧切さんと結は廊下に水を撒くことで犯人を牽制するという罠を張ることに。

 それでも殺人は起きてしまう。
 廊下の水による足跡はなく、残っていた足跡は探偵の水無瀬が殺人現場に入ったものだけ……。

 これを受けて霧切響子は推理する。
 相変わらず七村を頼る気はなく、それなのに結のことは全面的に信頼していて。腕力担当とばかりに運動神経にものを言わせた結の行動にはしゃいだりもする。
 中学生の、ロリ切が。なんだここは天国か。

 トリック云々はネタバレがすぎるので書きませんが、北村さんらしい事件じゃないかなっと。犯人って大変だよな、頭使わなければやり遂げられない。
 今回のオークション参加者にはある共通点があり、それは誰も彼もが詐欺師であること。そして犯人の標的は三人。

 三日目は死者から金を奪った水無瀬だったが、霧切の罠にハマったために結が探偵権を取り事なきを得る。
 四日目は水無瀬を仲間に引き入れ、犯人の最後の標的である元エスパー少女・美舟を守りに出るが、七村と新仙が夜鶴についてしまいここに来て二大闘争へ。
 霧切曰く、犯人は夜鶴。残り二日、いかに美舟を守るかにかかっている。

 残り二日のオークション攻防戦は楽しかったなー!
 後のことを考えて動く霧切は探偵としてすごいが、まさか私が結と一緒に「ハスキーボイスのボクっ子。割と嫌いじゃない」とか言っている間に動いているとは。

 さて、この辺で書いていなかった霧切が七村を捨てたわけを。
 黒の挑戦で七村は指定された探偵なので絶対に殺されない。それを逆手にとって彼は事件を解決する気がなかった。彼の目的はお金で、『激情にして最速』の名を持つ探偵は自分の利益のための行動をとっていた。

 だから、犯人を告発しても黒の挑戦の探偵ではないためにタイムリミットまで待たなければならず、それでも最後の日の探偵権を取った霧切は守れたことを言外に喜びながらその日を終える。
 目覚めると、みんな死んでいたが。

 結の携帯に霧切祖父から元トリプルクラスゼロ――新仙帝のことを知り、矢もたまらず逃げようとする二人が見たのは昨日まで生きていた人の死んだ姿。犯人の夜鶴すら死んでいた。
 それは、探偵七村による犯行だった。簡単に言って金と名誉のために全員殺した。そして、霧切と結も――。

 なんとか霧切だけは守ろうとする結だったが、そこに現れたのは新仙。そして、現役トリプルゼロクラスの二人の探偵。
 今回は挨拶だけだったようで、どうにも彼は霧切に興味がある模様。そして、結には探偵への失望と妹を助けられなかったことへの後悔とかいろいろフラグが立ってて笑う。霧切さんが結を信頼しまくっているのもフラグだよなー。
 結に犯罪被害者救済委員会が接触して、結が霧切指名で黒の挑戦とかやってほしい。お姉様を信じたい。でも、この人が犯人だと探偵として知っている、みたいな展開があったら俺は叫ぶ。
 ひゃっほーいっ、何この俺得展開ってww

 さて、今回も書きすぎなのでこの辺りでお気に入りへ。
 一日目で門限が迫り部屋に入って行く時の霧切と結の会話を。
 

「またすぐ会えるよね?」
「……どうかしら?」
 彼女はそっけなく云って、振り返らずに部屋に入っていく。
 扉が閉じられた。
 何故か彼女との別れは、いつもそれが最後になりそうな気がしてならない。


 ここは印象的でした。後の絶望を期待せざるを得ないw
 自分が最低だなと思う時は好きなキャラが幸せになるといいと思いつつもそうならなくてもそれはそれで面白いと思っているところだな。
 今年を振り返って自分の感覚が振りきれたのは一回だけだった。いや、いいことだったので嬉しいことなんですが、それを感じてしまうと今までの私の反応は義務としてのものだったのかなと少し悩んだ。うん、悩む間もなく風邪引いたからそれどころではなかったがw
 



ダンガンロンパ霧切 2
北山 猛邦
講談社 (2013/11/29)
posted by SuZuhara at 22:54| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月28日

ガラスの麒麟



 人間はいつになったら、正しい道を選択できなかったという負い目から、自由になれるのだろう?


 そういやP3映画観てきました。ゆかりっちがヒロインしてて俺得。風花まで行ったので、次はラブホ回があると期待していいんですよね?
 あまりに出来が良かったのでBDは買う予定。てか、タナトスフィギュア買ってしまった勢いで。……どこ、置こうか。家族にバレない場所が知りたいぜ。
 

■あらすじ
 一人の女子高生が通り魔に殺された。
 美しく聡明だった女子高生・安藤麻衣子の死を発端にその周囲の人たちは危うい内面を晒し出すことになる六つの物語。


■感想
 薦められて手に取った本でしたが、なかなか興味深く短編なのに先が気になる作品でした。結構がっつり読んでしまったよ。
 さて、ざっと短編それぞれの説明。これは所謂連作短編というやつで物語は全て繋がっています。

・ガラスの麒麟
 安藤麻衣子の亡くなった後、娘の直子が安藤麻衣子を名乗って豹変してしまう。その事態に困惑する父・野間となぞを解き明かす保健室の先生・神野の話。
・三月の兎
 教師・小幡はクラスの中心人物で優等生の安藤麻衣子を失い、生徒を理解できていないことを痛感する。そんな中、生徒を疑わなければならない事件が起こる。
・ダックスフンドの憂鬱
 幼馴染の少女から飼い猫が血塗れで帰ってきたことで助けを求められる高志。なんでも猫が切られる事件が多発しているようで、ひょんなことから神野に伝わり真相が分かる。
・鏡の国のペンギン
 学校に安藤麻衣子の幽霊が出るという落書きが発見され、小幡がそれを伝えると神野はただの悪戯ではなくSOSだと言う。それは一人の少女が見えない視線を感じてしてしまった行動だった。
・暗闇の鴉
 恋人にプロポーズした伸也は断られてしまい、その原因となった手紙の差し出し主・安藤麻衣子を求めて神野を訪ねてくる。しかし、彼女は証印の日には既に殺されていた。
・お終いのネメゲトサウルス
 野間は神野を通じて安藤麻衣子の母に会い、彼女が投稿していた絵本を本にする話があることを告げる。そして、彼女が残したもう一作を読み、神野の動かない足に関する過去の事件、そして安藤麻衣子の死の事実を知る。


 ざっと、こんなもんでしょうか。
 全てに共通して出てくる神野先生は聡明で、どこか探偵役のような印象を受けますが、どうにも実感の無い人だなと思いました。なんというか、きっと目の前にいても目を反らせば思い出せないようなそんな印象がつかめない感じ。

 それぞれ人の心の脆さに触れる話ですが、ダックスフンドがお気に入りですな。ああなるほど、そういう理由で猫は傷つけられていたのか、と。
 あと、高志がぼろくそにいう両親が小宮夫妻だとは気づけなかった。あの両親素晴らしいじゃん、なんで文句を言うのか! 
 私は高志を許せないな。だって、最後に彼女できやがったんだぜこいつ。

 神野はいろんなことを解決していきますが、最後は彼女の話。神野は結婚目前で婚約者を未成年の飲酒運転による交通事故で失っている。その時の後遺症で足が完治していないのだと。あれだ、精神的という奴だ。
 しかし、その引きずった感情が一人の少女をこんな行動に走らせてしまう。

 安藤麻衣子という少女は実に聡明で、屈折した価値観を持っていたのだろう。自分に似ていた神野に懐いていたが、彼女の身に起こった事故を知り、彼女が「人殺し」という呪いをかけた犯人に恋をした。
 丁度、麻衣子の両親は離婚で揉めていて彼女は死にたいと思っていた。だから、「人殺し」の言葉に縛られている犯人を本当の人殺しにすることで呪いをかけてしまった神野も二人とも救い、自分は死ぬという結論に至ったらしい。

 うむ、上手く説明できないな。
 でもこれ読んだ時、頭がいいって大変だなって思った。生き難い、生きづらい。
 彼女は多くの人に影響を与えていて、彼女一人の死がさまざまなことを巻き起こした。だけど、その死に救いたいという思いがあったとは。だが、この子は聖女じゃないから性質が悪い。ずかずかと入り込んで、一方的な救いを押しつけられる感。

 うーん、上手く言えない。ただ彼女はもっと気楽に生きればよかったんじゃないかと思うよ。
 分からない、女子高生分からない。最後に野間と神野がいい感じなったのかも僕には分からないよこんちくしょうっ!

 では、今回はこの辺でお気に入り。
 ダックスフンドの憂鬱より、高志が猫の一件を遊びに来ていた直子に話すシーンから。物語とは関係なく、高志の話を聞いてなんてことないように猫の件についての情報を集めていた母の姿を見ていった直子が言った言葉。


「いっつも人のために忙しいよね。普通はさ、みんな自分のことで忙しがってるじゃない? わたし尊敬しちゃうな、おばさんのこと」


 この時はまだ小宮夫妻が両親だと思ってなかったからさ、それが分かったらこの母の強さを実感した。てか、この物語の女性癖が強いから癒しだったわけですよ。
 でも、すごいよな。他人のために忙しい、それは私の価値観にはないことでした。こんな人になれたら人生違うんだろうな。




ガラスの麒麟
加納 朋子
講談社(2000/6/15)
posted by SuZuhara at 22:23| ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする