2011年09月08日

沈黙のアイドル



 声優志望の少女に与えられた役は、アイドル?殺人犯?


 今日はついにテイルズの発売日ですな。
 グランナイツヒストリーが無事に一段落したのでがっつり臨もうと思っているのだが、時間ェ……。
 本の感想もたまっているので、さくさく行こう。

・あらすじ
 声優を目指す林亜紀はアイドル・小沼エリンの声真似ができることから、声が出ないという彼女の声の代役に抜擢されてスイスへ行くことになる。だが、声が出ないというのはエリンの嘘で彼女は事務所の移籍問題を抱えており、撮影中のスイスで殺されてしまう。そして、亜紀はその犯人として山の上から突き落とされることに。
 運良く助かった亜紀だが、落ちたショックで記憶を失ってしまう。カメラマンの杵家雄一郎に拾われてから少女趣味を持つ小山田の元へと渡り歩くことになるのだが、その先で犯人の一人と遭遇し、その後の一件を元に記憶を取り戻すのだが、犯人に母を人質に取られてしまい、母と一緒に跳び込むことになったドナウ河で帰って来たのは亜紀だけだった。
 自分に罪を被せただけでなく、母の復讐のために亜紀は犯人のいる日本へと帰って来た。


・感想
 やー、面白かったです。亜紀の総モテっぷりは半端じゃねぇですよw

 いつも長くなるので物語にそうのはあらすじだけにしまして感想を行きます。
 声優の卵である亜紀はエリンの声真似という特技を好きになれずとも売れるために頑張ってきた。声優さんのオーディションとかどんなものか全く知らないのですが、ここで書かれているような感じなんでしょうね。人数が多いなら何時間も待つとか。
 そこにやってきたエリンの声の代役。だけどいつの間にか事務所の引き抜きとか、とんとん拍子に美味しい話がやってきて亜紀は喜ぶが怖いことこの上ない。

 撮影の間、エリンが抱えていた問題を知ったこと、そしてホテルの部屋で死んでいるにも関わらずエリンが生きているかのように接するスタッフらを前にして、亜紀はエリンに嫉妬して殺した犯人として山の上からドーン。
 ここから落ちで生きていて、なおかつ記憶喪失というのは赤川さんらしいと思いましたが、助けてくれた雄一郎、雄一郎のスポンサー小山田、アイドル・江上、日本で恋人未満な間柄の岡本、この全員が亜紀に行為を抱くというここだけピックアップすると超展開w

 だけど、一番衝撃的だったのはドナウ河の一件。
 娘を想って助けに来た母。だが、それは犯人の思惑通りで人質に。そして別れ……。18歳の亜紀がこんなにも短期間で成長したのは確実にこれが原因でしょうな。

 最後の復讐劇は亜紀の男らしさに惚れそうだったが、何事も囚われちゃいかんとも思わせました。この犯人がテレビに囚われた最後を演出したように、ゲーム発売日以降の私は酷いからな……。
 ま、この犯人たちのように一線を超えないように気をつけよう。過度な執着は何もいいことを生み出さない。

 では、ここでお気に入りに。
 犯人とジュネーブまで来た母は何者かに誘拐される。その誘拐犯に母はどこに向かっているのか尋ねた。その時の犯人の返答と母・有美子の反応を。


「ジュネーブのこと知ってるのか?」
「いえ別に……」
「じゃ、聞いても分からないだろ」
 確かに理屈だ。――有美子は変なことに感心していた。


 亜紀もそうだけど母も肝が据わりすぎていたw
 この母親だからか結末の展開は素直に良かったと思いましたね。この親にしてこの子ありってやつですなー。



沈黙のアイドル
赤川 次郎
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011/3/25)
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2011年08月13日

明日を殺さないで



 絢子、十九歳。
 新婚二週間で未亡人。



 今月の電プレ『碧の軌跡』記事にて、「支援課の三人と絆を深めていると引き継ぎ効果で三人と仲が良い状態でスタートできる」と書いてあり、既に実績をコンプした私に死角はないと友人に言ったら、メモステを奪われたw
 ちょっ、お前ww 私まだFF零式体験版やってねぇのに。ストラタスの発売日も決まって、この体験版で買うかどうか決めようと思ってるのに!

    
・あらすじ
 十九歳という若さで結婚した絢子は、結婚してから二週間で夫が殺されて未亡人となる。早すぎる死と短すぎる結婚生活に歎く暇なく、絢子は幼い頃から恋を邪魔してくる兄・岳夫を問い詰めると夫を殺したことをあっさりと承諾される。岳夫が自分の恋人を排除するのは昔からのことなので慣れていた絢子だが、今回の殺しにまで発展してした事件に刑事・吉岡が絢子を犯人として追い始める。
 そして、夫の腹違いの弟だという八木と付き合っていくうちに惹かれ始める絢子だが、妹に兄妹以上の愛情を向けていた岳夫が絢子の親友・由貴子と結婚すると言いだして、兄を取られることに複雑な想いを抱きながら絢子は事件の真相を知ることになる。


・感想
 ちょっとラノベ食中っぽかったので、僕の救世主赤川さんに戻る。
 てか、これか面白い。こう、今まで人の思惑と心理が入り混じった描写ばかりだったせいか、さらっと行動するキャラクターがすごいいい。だからと言って短絡ってわけじゃない。表に出さないだけできっちり考えているから、最後まで読んでいて楽しかったぜ。

 では物語へ入りますと、新婚二週間にして夫を殺された絢子。だが、彼女は夫が殺された場所から逃亡する人影……兄の姿を見ていた。
 兄に問い詰めたところ、あっさり肯定。一秒も迷わない兄、素敵すぎるだろw

 絢子も絢子で兄に恋路を邪魔されるのは慣れっこなのだが、事件のことを知っているような口ぶりをする荒井や夫の腹違い弟の八木、絢子を犯人と睨む刑事の吉岡などと出てくるのだが、絢子の親友・由貴子が兄に恋をしていることもあって兄の犯行がバレるのはまずいと絢子はなるべく自分に目が集中するように仕掛ける。
 この辺で由貴子が心配しているように、この兄妹は兄妹の枠を超えている。近親相姦云々ではなく、絆的な部分で。だが、由貴子と兄の距離がくっつきだしたら嫉妬する絢子は予想以上に可愛くて困ったw

 この後、由貴子が攫われたり絢子が連行されたりといろいろあるのだが、今回の物語に至っては各章タイトルがピンポイントすぎて素敵です。「岳夫、アクセルを踏む」や「絢子、乱闘す」のように由貴子を加えた三人が何かをするという形なのだが、この形で最後まで行けるのはすごいと思う。
 何と言うか、目次をざっと見ただけでは筋が読めないところが特に。

 兄の婚約の一件から兄と夫の面影があるという八木への想いで揺れる絢子だが、様々なことに巻き込まれてそれどころではなくなる。そして、最後に兄が単身で黒幕の元へと向かうのだが、ここからは完璧に岳夫無双!
 え、何この兄貴。強いだけじゃなく格好良すぎるw 絶対この人カタギじゃない、戦闘技術がハンパないぜww
 最後の絢子の行動すら計算に入れている部分も素晴らしいよな。こんな兄に守られてたら、他の男は排除されるよなー。しかも最後の章タイトルが「絢子、後悔する」なんだけど、これはやらかした失敗じゃなくて兄のことじゃないかなー、とも思っていたり。ヒロインは絢子だけど勝ち組は由貴子であるよ。

 今回の物語は大雑把に言うと絢子を取り巻く男性達が絢子を巡って起こった事件だったが、だからこそ初めは異常愛としか見えない兄が一番真摯に絢子を思っていたのが良かった。愛故の行きすぎた行動も、ハンパない事件のおかげで結果オーライであるよw

 さて、ここいらでお気に入りシーンへ。
 吉岡に無理矢理連行された絢子が鞄の中の拳銃がバレたことからやけになって引き金を引いたシーン。
 撃った。そして、倒れている吉岡。絢子にしては珍しく慌てるが、彼女の肝の据わり具合は半端ないのであるw


「死んじゃった……」
 まさか! そんなことって――。
 絢子は、手にした拳銃を、まじまじと眺めた。そうだ、これが悪いんだ。私が悪いんじゃない!
 でも、そんなこと言ったって、誰も同情してくれないだろう。絢子にも、それくらいのことは分った。
「落ち着くのよ……落ち着いて……あわてる乞食はもらいが少ない……」


 絢子はどんなことがあろうと配給とかで二回は並ぶタイプだと思うw
 こんな風に書きましたが、久々に読書がすんなりと楽しめたので読んで良かったと思ってます。お兄ちゃん格好良すぎだよホント。



明日を殺さないで
赤川次郎
徳間書店 (2011/6/3)
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2011年07月07日

三毛猫ホームズの大改装



 片山刑事に恋人発覚!?


 もう知ってたとか言われそうですが、やはりというか案の定というか、『イース7』が買えそうにないことが判明した。
 6月にハッチャけたのがまずかった。そして、メルルプレイ中の廃人っぷりもまずかった……。
 やっぱり、イースとはとことん縁がないのだなー。

    
・あらすじ
 ある雨の日の夜、悪い友人たちとつるんで金をせしめていた女子高生・立石千恵は片山との出会いから改心する。そして後日、彼女の父であり売れない漫画家・立石みつぐが知らない外車に乗せられたところを目撃し事件を心配した彼女に助けを求められ、それをきっかけにマンション改装を計画する鮫田たちの企みによって起こる事件に関わっていくことに。
 一方、窓際編集者・平栗悟士は売り上げの低迷している雑誌をリニューアルする際の編集長に抜擢されるが、メンバーは誰もが崖っぷちの編集者ばかりでコケてクビにされるのが目に見えていた。そんな中、起死回生をかけてマンションの改装工事に反対して脅迫受け、心中を考えている老夫婦の取材を行う。


・感想
 言わずもがなな三毛猫シリーズ第34弾ー。
 このシリーズの安定した面白さは半端ないです。それを今回も思い知らされ、軽く電車を乗り過ごしそうでした。くそぅ、なんて罠を仕掛けやがるっ!

 さて、この物語は実際に起こりえるだろうマンション改装という言葉に仕掛けられた甘い罠の話。
 ざっくり分けますと、物語は二つに分けられる。
 ・売れない漫画家・立石みつぐがマンション改装計画の住民説得に利用され、その一家の崩壊。
 ・雑誌編集者・平栗たちがマンション改装に反対して脅迫を受けている老夫婦が心中する現場の取材。

 とても悲しいことだが、この話は確実に有り得るから辛い。
 漫画家の立石は次なるヒット作に恵まれず腐っていたところに、R企画の鮫田よりマンション改装についての住民たちを説得する仕事を頼まれる。それは上手くいき、今後の仕事、漫画と違って同じ話を繰り返してもいい講演の仕事を回されることが約束されていて、側に若い女の子をはべらかす充実した暮らしを過ごせるようになる。
 奥さんの方も若い男といい関係になるが、千恵だけは違った。漫画家である父が好きだった彼女は漫画家を捨てた父や父の行いにより、傷つけられている老夫婦・狩野夫婦を心配していた。

 ま、いい暮らしは夢のようなもので、立石はいずれこのからくりに気づく事になるのだが、この一家では父と娘の想いの擦れ違いが悲しかった。
 「漫画と違って同じ話を使える」という父の発言を嫌がる娘。だが、父も辛かった。家に帰る度に「漫画を描いて」と娘は言うが、一番漫画を描きたかったのは父だった。でも、どうすることもできなかった。
 だから、最後に漫画家として父を送り出した千恵の言葉は良かったなあ。本来ならばここが今回のお気に入りなのだが、今回はなかなかいいシーンが沢山あったので悩んだ。しかも、今回は私の中で石津さんが負けたからな。

 片山さんたちが主に関わっていくのは、この千恵たち立石一家。
 金をせしめようと騙したというのに優しく諭した片山の人柄に惹かれた千恵は、片山の彼女を名乗って彼を呼び出す。こんな事だろうと思ってたよ、片山さんに彼女ができるはずがない。なぁ、兄弟。
 呼び出しをきっかけにマンション改装、そして狩野夫婦に関わっていくのだが……こっちの話は重いぞ。

 マンション改装に反対したことから脅迫を受け、怪我まで負わされる狩野夫婦。
 失敗前提の雑誌のリニューアル、事実上クビにするための雑誌の編集長を任された平栗は部下から「老夫婦が心中しそうだ」聞き、企画のために接触することに。
 そして、この企画に乗った狩野夫婦は心中を決意し、平栗たちが土壇場で躊躇することも視野に入れて心中とともにR企画鮫田たちに報復する算段まで立てる。

 このシーンはちょっと怖かったな。
 やはり年の功とでも言いますか、年寄りだからといって舐めてはいけない。どんなに上手くやっている奴も、彼らからすればどこまで行っても若造でしかないのだから。

 後は最後のオチかな。これは正直他人事ではない。
 この人ほど重症ではないが、私も大したことくらいしかできないから言われたことは確実に遂行しようと考えているものなので。
 
 では、今回のお気に入りへ。
 鮫田と部下を家に招き入れた狩野夫婦がお茶に薬を入れ、動けなくさせたところで焼身心中を図る前のシーン。鮫田たちを見降ろしてこう言った。


「あんたたちじゃ、道連れにならん。行先が違うからね」
 と言った。「しかし、分れ道までなら付き合ってあげよう」


 やー、怖ぇよ! けど、格好いいじゃねぇか!
 でも、この夫婦の死を覚悟したからこその行動は潔くて悲しかった。全部準備したのに……この最後を思うと失敗と成功はどちらが良かったのかな?


三毛猫ホームズの大改装 (角川文庫) [文庫] / 赤川 次郎 (著); 角川書店(角川グループパブリッシング) (刊)
三毛猫ホームズの大改装
赤川次郎
角川書店(2011/5/25)
posted by SuZuhara at 23:24| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月10日

幽霊晩餐会



 今夜、シェフが殺される?


 PSVに関しては特別欲しいソフトができたら買うの決めるかと考えていたら『ドラゴンズクラウン』が好みすぎて参ったw やはりあの雰囲気に弱いのでしょうな。
 今回はラノベが続いていることに気づき、手に取った赤川さんだが、連作長編という名の短編なのでちょいと気合入れるぜ! 


・明日に生きた男
 失業してホームレスとなり寒さに震えていた菅原は、同じホームレスの女性が一等が当たった宝くじを拾って亡くなったことから「綾子に」という娘に対する遺言を無視して自分のモノにしてしまった。その後、とある事件をきっかけに刑事・宇野と恋人・夕子は綾子という女性を知り合うのだが、彼女の前に現れた菅原は綾子と他の男の元に走った妻と娘のためにあることを行おうとしていた。


 幽霊シリーズ久々なのと、前回読んだものがさらりと行きすぎていてあまり好感は持っていなかったのだが、今回は全体的に好きでした。一つ一つは短いのだが、綺麗に違和感なくまとまっていて、そして恋愛問題ばかりでなかったのが個人的に良かった。結構のめり込んで電車乗り過ごしそうになってしまったぜ。

 この話に関しては、私の人間性が問われるくらい「何企んでやがる」精神で臨んだのだが、まさかこういう企みをしているとは思わず驚いた。
 一度はお金に走ってしまったが、だからこそ最後の賭けに出たこの人は格好いいな。


・息子と恋人
 息子の恋人を殺したとして十二年の刑期を経て出てきた元アナウンサー・工藤彩子を出迎えた宇野たちは、一目息子の子ども、孫を見たいという願いを聞いて会いに行くのだが、息子に嫌がられて会うことができない。
 それから彩子は服役したのだからと再びアナウンサーとして働き始めるのだが、テレビ放送中に被害者の父に刺されてしまう。彩子が運ばれた病院で十二年前の事件からの全ての真相が明らかになる。


 アヤコ、続いてたんだなw
 今回はちょっと不自然に思いつつ読んでいましたが、蓋を開ければ全ての辻褄が合う。母という立場から出た行動だったが、そんなものは当人には関係なく、必要なら利用して不要なら廃棄するという利己的な考えが悲しくなる一件だった。

 それも救いはいい嫁さんを貰ったことかな。
 離れたっていいのに、一緒にこれからを生きていくと言ってくれる人だったことが最大のあの人がした親孝行だったのだろう。

 
・良妻賢母の詩
 夫の誕生日に夫が好きな中華料理を注文しようとしたら、そこは結婚式準備のためその日の宅配はできないと言う。息子の英一はともかく、夫や義母と義妹に文句を言われることを怖れていた久美子だったが、結婚するはずだった新婦・リサが車に跳ねられてその日の夕食には中華が並ぶ。
 宇野は知り合いであったリサの母からの頼みで事件を調べていたところ、通夜に訪れた久美子の車に人を引いたような傷を見つける。


 初めはそんなことで人を殺すのかとぞっとしたが、この夫家族はキツすぎるので違和感は覚えながらもそれくらいは仕方ないと思っていた。
 でも、真相知って驚いた。今回のお気に入りはここなので犯人を明記することになるが、この作品で一番好きなお話でした。

 では、お気に入りシーン。家族の信頼を押し切って母を犯人にはできないと自供した英一と宇野の会話。母、あの女に全て押しつければいいと自分たちの血じゃないからと切り捨てるような人たちの中で育った英一の言葉はなんだか深いんですよ。


 英一は、ふと我に返ったように、「そうなんだ。――僕、もう大人なんですね」
「そうだよ」
「今まで、誰もそう言ってくれなかった」
 と、英一は呟くように言った。


 大切だから守っていたのかもしれないが、それは逆に危険なんだよな。
 私たちは経験以上に学ぶことができないから失敗でも多くことを経験した方がいい、と引きこもり志願の身で言ってみるw


・はじめの一歩……
 夕子の知り合いの日本舞踊の家元・秋草俊介の元に踊りを習うために無理矢理連れて来られた宇野は、そこで刑事という職業を見込まれて相談を受け、その流派にかかわることになる。
 この流派には家元騒動があり、駆け落ちしていなくなった兄・靖男とその妻が当日になって突然現れ、家元や舞台を裏で支えている辻あかねに一言もなく娘のために一曲追加してしまっていた。


 正直に言って、私はこの話がよく分かっていない。
 いや、この手の家の事情に明るくないというのは確かだが、家元からの依頼が明確にならないまま当日を迎えて、厚顔な駆け落ちカップルだなと思ったら事件発生。でも、自業自得だからいいんだよ、な展開でした。

 うーむ、赤川さんは勧善懲悪という考えを改めるべきか。
 ま、この話に悪はいないがね。


・灰もまた消える
 夕子とデート中に元恋人・充子と出会った宇野は勢いのままに恋人のフリを承諾させられる。そして、充子に結婚を迫るイラストレーター・野田を諦めさせた後で、本来恋人役をするはずであった小説家・寺水と合流して食事をするのだが、その後宇野は何者かに襲われる。
 犯行予告まで出され、寺水に案内してもらい一番怪しい人物である野田の家に行くとそこには爆発するトラップが仕掛けられていた。


 みんな犯罪に対する前段階のこだわりがハンパないくせに、いざ実行すると結構お粗末だったりするのは机上の空論では限界があるということか。
 これは恋愛問題のようで全く関係のなかった話。

 夕子の水着シーンとかあるけど、誰得……。喜ぶの宇野さんだけじゃないか!


・幽霊晩餐会
 都内屈指の高級レストランの招待状を得て半信半疑ながらも夕子と向かった宇野は、そこで殺されるかもしれないという依頼を受けて、他に集められたメンバーとともに食事をすることに。
 どうにも塩辛いスープを筆頭に各々一品ずつ文句をつけるフルコースが行われた後、宇野とそしてシェフは犯行を企む人物を特定する。


 これはなかなか先が読めなかった。イチャイチャしやがって、のせいかもしれないが。
 シェフが自分の土俵で戦い、そして宇野もそれに気づくという専門分野というか自らの得意分野をいかして犯人を特定するのが面白かった。

 しかし、高級料理が全く想像できない自分には笑ったw


・タダより安く
 リストラされてほぼホームレス状態であった田丸が食事にありつけず困っていると、そこで出会った平山はるかに食事を奢ってもらっただけでなく一夜を誘われることに。
 しかし、その後はるかが殺されて宇野が調べていると田丸が犯行を自供。なぜこれだけの恩を受けながらと困惑しているところで田丸の妻と娘が離婚届を手に会いに来るのだが、その前に妻と名乗る女性・はるかの上司・久保の妻と面会していた田丸はそこで抱き合ってキスをしていた。


 ちょっと待て、この人私より人生充実してる! と軽くショックを受ける展開だったが、そんなおいしいことがあるわけがなく、全ては会いした男のために行動した女性たちに田丸は使われていただけだった。

 でも、それでも最後の展開を思うとリア充だと思うね私は。
 何があればこんな風になれるとですか!


幽霊晩餐会 [新書] / 赤川 次郎 (著); 文藝春秋 (刊)
幽霊晩餐会
赤川 次郎
文藝春秋 (2010/03)
posted by SuZuhara at 06:41| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月27日

あなたも殺人犯になれる!



「だから、これからどんなことが起こるか、想像してみようっていうのよ」


 びっくりしたことに、まどかBDをやめて買ったノベルゲームが一向にプロローグから抜け出せない。なぜか、やる気が起きないのである。
 本は読めているのに……なぜだ? 鬼哭街買っちゃったけど、こんな調子で大丈夫なのだろうか。


・あらすじ
 漫画家を目指す女子高生・岡本聡美は、「あなたも漫画家になれる!」が売り文句の二週間の漫画家養成学校の研修に参加するのだが、その研修に参加したのは一癖も二癖もある面々ばかり。
 研修先のロッジで現役とは言えども落ち目の漫画家・七ツ谷むらさきに二週間の間、講師として漫画を教わるという研修であったのだが、台風のおかげで孤立してしまうことに。
 そして、護送中の凶悪犯が警官を殺して逃亡中、警察官を名乗ってロッジの中へと入り込んでしまう。


・感想
 初めに、今回は少々読むのが疲れました。やっぱり、体調が元に戻ってないのかな―。
 養成学校の研修ということもあって人数が多く、ちょっと分かりにくかったりしました。お笑い担当の三人組の女は絶対に同性からも異性からも嫌われるタイプだぜw

 始まりは聡美が研修に申し込むところから。
 税込で十万超えるとか……いやいや、こういうバカなことにお金をかけたことがあるのであまり大きなことは言えないが、落ち目の漫画家が講師の時点でやめようせ。それ以前に研修直前まで講師が見つからないって聞いた時点で地雷だろこれ。

 研修に参加したメンバーは各々野心を抱いているようで、これで漫画家になったら離婚しようとかこの研修が終わった日に結婚するんだとか……リア充が混ざっている時点でこの人の結末は想像できるというもの。

 ロッジに到着していよいよ先生登場だが、聡美ともう一人以外は誰が講師か知らなかったので落ち目すぎて白ける。なんだかいい加減な雰囲気のままその日は終わりになるのでかなり前途多難。
 そして、同時期に凶悪犯である山名が警官を殺して逃亡。

 次の日、聡美たちのロッジは台風で橋は流され電話は通じず孤立することに。
 そこに来たのは、山名。殺した警官を装ってまんまと中に入り込み、逃亡した山名からみんなを守るふりをして人を殺していく。
 なかなか楽しい展開なんだが、キャラクターたちの反応がいまいちなのであまり楽しくなかったかな。三人娘はいらない子だろー。

 山名を追って心臓病に苦しみながらやって来た刑事を「山名」に仕立て上げて犯人は人を殺していくのだが、そんな中で逞しい漫画家の卵たちは自分のおかれた状況を元に漫画を考えたりして過ごす。
 この方向から漫画家ならではの展開が来るかと思っていましたが、特に何もなく、普通に事件は終わってしまう。
 その後は、この体験を漫画に生かそうとする人や夢をきっぱり諦める人。別に漫画家でなくても良かった気がするのは私だけか。

 さらっと読めるのはいいが、最後の展開とせっかくの密室的な場所で起こる殺人事件なのに一切怖くないのが少しネックでした。

 さて、今回はお気に入りシーンというか印象に残ったシーン。
 台風の影響で通行止めの道を承知で走る山名を追う警官・田所と部下の会話。危ない道を通ることを怖いという部下に田所が言った一言。


「怖いさ、もちろん」
 と言った。誰でも、<死>を感じさせるものは怖いんだ」


 べっ、別に解説の三浦しをんさんとお気に入りの場所がかぶったからって急遽えらんだわけじゃな……かぶったんだ。
 ちょっと、いやかなり、へこんだぜ。


あなたも殺人犯になれる! (角川文庫) [文庫] / 赤川 次郎 (著); 角川書店 (刊)
あなたも殺人犯になれる!
赤川 次郎
角川書店 (2005/12)
posted by SuZuhara at 23:09| Comment(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする