気づかないふりをしていただけなのだ。現実を見ないように、いつまでも変わらないと。
ちょこちょこと過去の私からは信じられないことに、ほぼゲームに触れていない。まぁ、ソシャゲは別な。あれは義務みたいな物であり、FGOのホワイトデーはまだ手をつけてない。だって、アークナイツのイベント最後がクリアできてないんだもん!
ゲームの発売情報とかも全然確認していないので自分も変わったもんだなーと。クリアできてないゲームも多いしちょっとずつやっていきたいもんだ。ずっと苦しめられていた試験が終わったからな、もうゲームやったって誰にも文句は言わせねぇのだ。
■あらすじ
福岡薬院の裏通り、三日月から満月までの帰還だけオープンする本が読めて手紙が書ける店『文月』。家に帰る前ちょっとどこかに寄りたい、話がしたいという時に店主の文と季節のちょいごはんが寄り添うお店。
■感想
完全無欠の表紙買いでした。最近というか、料理モノの物語が好きなこともあり、この特別カバーじゃなかったから、本来のポプラ文庫の表紙だったらおそらく目には止まらなかったんじゃないかな。うーむ、本来のが好きじゃないのではなく良くも悪くもよくある雰囲気なのでスルーしたと思われる。
このシリーズはもう1冊あるみたいなのだが、読み終わって続きを本屋に買いに行ったら棚からなくなってしまっていたので縁がなかったのでしょう。
じゃあ、ざくざく行くぞ。
・月夜のグリューワイン
独立して以降、自分のデザインが認められてやってきた店舗デザインの仕事に全力を出す澤井だったが、予算などの都合があり思い描いたとおりには行かない。それでも予算内でできるよう案を練り続けるが、クライアントの希望と上手く一致せずに案件自体が採用されずに終わってしまう。
まず福岡弁というのが私には新鮮だった。てか、大阪弁とかと違って脳内で上手く再生できないって初めて知った。知らないからできないわな。関西や東北の方とは接点あったけど、西に行けば行くほど私には遠いらしい。ふむふむ、実は4月に福岡に行く予定があったのだが見送ってしまい、なんだか惜しいことをした気分だ。
澤井の話は一仕事人として一生の問題じゃないかと。
輪っかを回るハムスターのようにがむしゃらに仕事をしても上手くは行かず、にっちもさっちもいかない状況に苦しんだ澤井はちょっと前に知った文月でグリューワインを出してもらい、文から「疲れて横見たらそこに洞穴があるかも。ダメだと思ったらそこに逃げ込んで、休んで元気になったらまた輪っかに戻ればいい」という話をして、気持ち改めて次の仕事に向かうという話。
……え、輪っかに戻んなきゃダメですか?1w
・森のカクテル
唯は自分が立てた完璧な計画通りに行動するため、結婚相手に相応しい人物として浩行を選んだ。婚活パーティーで出会った二人は唯の計画通りにサプライズプロポーズの場所として文月を選ぶ。サプライズといいながら全てを唯が進行しているところに周りには奇異な目で見られていたが、唯は自分の計画通りの幸せのために当日を待ちわびていた。
正直、気持ち悪いと思ったw
いやだって、計画なんて計画通りに行かないってのが私の考え方なもんで。無理だよー、なんだよこの人ー。結婚とか、お前の意志だけのもんじゃねぇし浩行の意志が一切ねぇじゃんかよーって震える女性だった。
もちろんプロポーズはなし。
だって唯は浩行のことをなんも知らないし、ちゃんと会って話をしようってところから始めることになるんだが、いやーこの人無理ーとしか思えませんな。
・本とおさかなのスープ
福岡の小さな出版社に務める大城は昨今の出版事情、小説を読まない人が多いことを悲しく思っていた。時代の移り変わりで仕方ないと思っていたが、自分が福岡の出版社に来たときのこと、編集者になった時のことを思い出す。
……ちょっとあんまり長い文章を書いてなかったから、もう書くのつらくなってきた。
私は小説を、本を読むという行為を最近難しく思えてきている。文章の合う合わないがあることは何度か書いてきたけど、それを見つけるのが難しいんだよ。
例えば、アニメを観て原作読もうって思っても文章読めないことが最近は多い。アニメは時間の都合もあって原作が端折られているって印象があったんだけど、昨今は逆に保管されていたりするから両方見なくてもいいかってなっちゃうんだ。電車移動中とかはラジオ聴いてた方が楽だったりすることもあるから、本を読む機会ってのはやっぱり減ってますね。
でもだからってゼロになわけじゃない。
漫画とか電子書籍を使う機会は増えたけど、やっぱり本がいいって作品も多い。
なので、大城さんたちのお仕事を僕はいつまでも応援しています。
・池田飲みとしろくま
実家の和菓子屋の手伝いをしながら燻っていた祐介だが、同窓会で元カノの千晴と再会したことをきっかけに自分の将来を考え始める。店を継ぐ弟の結婚が決まり追い詰められている中で千晴と連絡を取り合っていたのだが、福岡に戻ってきた千晴に文月を紹介しようとすると生憎その日は休み、店は彼女の方から指定してきた。
ビールジョッキに氷入りワインを池田飲みというらしい。自分は味が分からないのでお酒は飲まんのですが、こういうの知るのか見るの好きなんで本物を見てみたいもんだ。
さて、祐介の話は耳が痛い。きっと同世代ですわ。
結婚とか将来とか言われなくてもチクチク刺さる。同級生の子ども、しかも病気とかなっちゃうとかける言葉もない。どうせ上っ面にしかならないんじゃないかってね。
元カノの千晴との再会、そんでもってお互いにフリーともなればあわよくばと思うのが人の心情でしょう。嫌いで別れたわけじゃないし、子どもだったからこその自然消滅なら尚更再熱しても仕方ない。
けれども、千晴が宗教勧誘に来るとは想像できんかった!
なにか買えは本当にだめだ。むしろ、祐介のSOSに速攻で応じた諏訪という友人を大切にすべきだ。
都合のいい話なんか転がっていないという現実ですね。でも、祐介が新たな道を決められたのだから笑い話としていい過去だったのでしょう。
・柚子と適燗
かつての同僚、そして定期的に会っていた友人・さかもっちの唐突な訃報は平井を動揺させた。結婚退社をし子どもを立派に育てていた彼女の死因は特になく、ストレスの可能性が高いという。力になれなかったことを後悔する平井だが、一周忌の際に彼女の夫が再婚すること、相手女性は今月にも子どもを出産すること聞いてしまう
。
くっそつら。
主人公となる平井が得られる情報は伝聞でしかないので本当のことは分かりませんが、家族ぐるみで長い付き合いにあった人が後妻に、そんで子どもも生まれるとなると勘ぐるのは仕方ないですな。
けど、彼女が亡くなってしまう一年前、いい文の日に文月に来ていたさかもっちは文月でやっていた1年後に届く手紙を平井に宛てて書いていた。1年後に文がポスト投函、もしくは店に来た時に渡すってものなのだが、内容は他愛もなくて大まかに言えば『あなたに会えてよかった』というもの。
だから、平井の選択は間違いじゃない。間違っているなんて言える奴は他人だけだろう。
私だけは二人のことを絶対に許さない。むしろ君の選択は人間くさくて好きだよ。
しっかし、文も言っていたが「いい感じで」という注文の仕方はいいな。熱燗とぬる燗の間のいい感じの適燗。こういうの知るのは本当に面白いや。
・スルメとてんとう虫
人事部に配属された頃は新人だった鈴音も上司の下田の元で十年仕事をやってきた。後輩もできベテランになりながらも下田には支えられていたのだが、下田が早期退職するという一報が入る。突然支えがなくなってしまったことに不安を覚えならがらも、育ってきている後輩たちが提案する将来のためにも、守られるのではなく今度は自分が守る番であることに気づく。
ざっくりですがまとめたとおりの話。
じんましんをきっかけに化粧をしなくなったとか、きちんとした身なりでとか、そういう小言を言ってくれる人の大切さは失ってからじゃないと気づかないものでしょう。気づきたくないんだよ、失ったら悲しいからね。
・バレエシューズとうすぎりショウガハイボール
莉絵は同じ会社に務める長谷部と親しくしていた。毎日「おはよう」などのメールを交わしながらも相手は妻子ある身なのでなにかあるわけではなく予定を合わせて文月に行く。
だが、社内報で見た長谷部の唐突な一報に驚くことになる。
すまん、正直この話はよく分かっていない。
不倫略奪NTRは知っているが、私にこの選択肢はないので莉絵の感情が分からないんだ。長谷部とどうにかなりたかったのか、なんで妻子ある人と毎日メールとかする?って理解できないってシャットアウトしてしまうんだよ。
でも、良かったんじゃないか。前に進める選択ができたんだから。もしも自分が莉絵だったなら、そんな大事なことを社内報で知らされたこと、友人とも思われてなかったのかとショックを受けるかもだが。
・新茶と煮物
結婚して子どもを産む、それが女の幸せだと信じているかのような母親にうんざりする葵は実家に帰ることが少なくなっていた。仕事が楽しいこともあるが、自分が放任主義だった父と父に従うばかりだった母を見て育ったことから結婚に理想も何もなかったのだ。
そんな中、母が事故に合ったという一報を受け、改めて母と向き合ったことで自分たち家族の在り方を知る。
だからこういう世代的に一致するのは胸が痛いぜ。
結婚は自分もできないと思っている人間だが、葵の母がなんとしても相手を見つけたかったのは自分が父と出会えたことがすごく嬉しいことだったから、そんな相手を見つけて欲しいと思っていたから。今は元気でいてくれればいい、亡くなったお父さんも葵は一人でやっていける子だって言っていたから。
放任じゃなくて信じていたんだってこと、言ってくれなきゃ分からないけど分かる時には相手はいないんだよな。
・七月のみかづき
テレビショッピングのカスタマーセンターで働いていた文は仕事をする毎日に疲れてしまっていた。生まれた頃に母を、育ててくれた父を社会人になってすぐに失った文は父の故郷である博多に行くことにした。
そこで物件を探していたところ、現在の文月の物件を紹介してもらい、母が残してくれたレシピノートを使って三日月から満月までというささやかな間だけ開く営業期間の理由が明かされる。
やはり同世代じゃないか、就職氷河期の正社員とか本当に逃げられないからな。東京ですり切れてしまった文の姿はつらいが、悲しいかなよくあること。逃げるか壊れるか適当に乗り切るかしかない。俺は適当です!
自分が稼いだ分と父が残してくれた分で資産はあったから、不動産屋さん勧められるまま喫茶店としてお店を、ゆっくり息をするための充電期間としてのお休みを。そんなお店があってもいいじゃないか。
ふー、全部書いた。
今回はあまり料理には触れていませんが、お客さんの話は全部文月で繋がっていて添えられるように料理があるという感じでした。読みやすかったのですが、福岡弁のニュアンスが分からないことだけは勿体なかったな。
さて、今回お気に入りへ。
新茶と煮物の葵さんから、結婚結婚言っていた母が事実婚でも別居婚でもいいから相手を言い出したときの反応を。
なんてわかったふうなことを言う。でも特定の相手をあてがいたいという考えは同じだ。この年になると一からの恋愛はもとより、自分のペースを乱される存在がいるなんて想像するだけでげんなりする。多少寂しいことはあっても。いまの自由に比べたらどちらがいいか歴然だった。
まー、これに尽きるわな。
面倒はなるべく抱え込みたくないんだよなー。
終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ
標野 凪 (著)
ポプラ社 (2019/6/5)