2017年07月15日

アカシックリコード



 ようこそ、人類の生み出した全ての叡智が管理される場所――アカシックレコード“悪魔の書架”へ。


 ふー、また随分と久しぶりになってしまった。
 ちょこちょこ本は読んでいるけれども、それ以上に暑くて死んでいる。夏は本気で弱いんだって。
 しかしこのままぶっ倒れてもいられないから動き出さないと――ああ、クーラーの効いた部屋でな!
 もうFGOの頼光ピックアップでエミヤ(オルタ)、エミヤ(アーチャー)、エミヤ(アサシン)という爆死で石を使い切ったことからいい加減立ち直らないといかんしな。


■あらすじ
 片倉彰文は記憶が失われているような感覚に襲われていた。そんな中で友人の甲斐浩太郎が投稿している小説サイト『悪魔の書架』を管理人を名乗る悪魔から浩太郎が書き、そして現在は放置している作品が紙魚よって蝕まれ、改変され食い荒らされることによっていずれ消滅するという事態に陥っていることを知らされる。
 同じく紙魚と戦う作者(クリエーター)として鳳かりんとともに作品の中に入り、キャラクターたちの力を借りて世界を正していく。
 読者である彰文はクリエーターではなく自分のキャラクターも持たないが、なぜかライラという夢魔の少女をして同行し、その先でライラとの関係、そして失われた記憶について知ることになる。


■感想
 久々に行った本屋で手に取ってみた本。というか、このレーベルを初めて見てデザインが良かったからというのが目についた理由かな。イラスト帯を外すと真っ白のデザインとか、良いと思います。
 だから、この作品自体の背景を全く知らなかったのです。スマホゲームであることとか、作者さんの前作とか一切知識がない上に辛辣になってしまうかもしれないので注意。

 内容はざっくりあらすじで語ったけれども、私はこの世界観がいまいち理解できていない。そして好きではない。
 要するに『悪魔の書架』はなろう等の投稿サイトで、登場人物たちはそこに投稿する作者だ。そして主人公はそこの読者。この関係は僕らにとって非常に慣れ親しんだものだけど、彰文がチート読者すぎる。

 連載物で続きが投稿されずに放置されたり誤字などがあったりすると紙魚に食われて作品が永遠に失われる――失われたことすら分からないという完全消去されてしまう。
 それを阻止するために作者である浩太郎が悪魔に呼ばれた時に彰文も一緒に来てしまう。

 自キャラを召喚して戦うとか、作者なら憧れるものでしょう。そりゃあ僕だって子どものころはポケモンとかゾイドとか本当だったらって何度も考えたさ。
 ほら、レクリエーターズのアニメとかもロマンがあるよな。けれども、これはそれらとはちょっと違う。
 物語の世界に入って物語をなぞりながら紙魚を見つけ戦う。けれども、その戦いのために作者はキャラの設定は盛れる。作者以上に作品を理解している読者は作者じゃなくてもキャラクターを召喚できるとなると、それ何が楽しいんだ?疑問符しか私は湧かなかった。え、これのどこに負ける要素があるの?

 かりんが怪我したが浩太郎の作品は紙魚退治できたため、浩太郎はもう戦わないと言う。作品のために死ねぬ、と。しかし、リアルな世界でポケモンGOしながらかりんと接触するよ、かりんには許嫁がいるけどなんかあれで浩太郎とファーストキッスするよ。その間に彰文は失われていた記憶、幼馴染の穂村千尋がいる作品に入るよ。
 ……そこから始まる両想いだけど気持ちを伝えなかったことでの擦れ違い、モテモテ彰文、千尋の嫉妬とか、なんだかおいていかれて進んでいく。

 ずっと読みながら考えていたんだが、私がこんなにも興味を抱けないのは彰文が無色というかなんの感情も抱けないのがこの作品に入り込めなかった理由だと思う。共感とか一切抱けなかった。
 浩太郎が微妙に主人公しててかりんとの恋愛描写とかあるが、あくまで第三者でどんなことにも理解のある彰文。
 千尋は彰文が転校しちゃうことから絶望し、今までのモテモテだけど彰文は気づかない状況を小説に書いて彰文に見せようと思ったのに間違えて投稿しちゃってバッシングを受けて歪むという地雷っぷりもあれだが、彰文になんの愛着も持ってないから話に全然入れないまま終わってしまったよ。

 1とナンバリングされていないから続くか分からないけれども、彰文と千尋、浩太郎とかりんの恋愛よりも悪魔の書架で起きていることや世界観についての方がもっと知りたかった。
 読み終わってからスマホゲームであることを知ってその辺はゲームでってことかと納得したけど、なにかと消化不良でした。

 では、今回はお気に入りではなく印象的なシーンで。
 作者である浩太郎も思い出すことのできないキャラクターを読者である彰文は覚えていて、そして召喚できると分かった時の台詞。


「世に出した時点で、作品はもう作者だけのものじゃないんだよ」


 ここから世界観について掘り下げられると思ったら、まさかの千尋と二人の世界=物語へだった。
 悪魔のこと全然語られなかったなー、残念だ。





アカシックリコード
水野 良(著) 中原,ずじ(イラスト)
KADOKAWA (2017/6/15)
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2017年05月29日

冴えない彼女の育てかた 12



「だから、だから……もう一度、あの、一年前のお祭りを、やり直そうとしちゃ、いけないんじゃないかなぁ……」


 『死印』体験版やりました。と、久々の更新のことはスルーして初めてみる。ちょっと犬の調子が悪いので心配でたまらんのです。
 都市伝説チックな話として、今までやった中で一番好みのタイプに近いゲームだった。探索中に初めて霊を見つけた時はヒヤッとしたが、分かってしまえばいかに即死を回避するかが問題ですね。
 しかし、如何せん霊とのバトルが好きじゃない。あの最終戦と終わり方に僕はどうにも納得できていないのだ。先は知りたいが、買うかはちょっと分からないなー。


■あらすじ
 恵とのデートを断って倫也が向かったのは紅坂朱音が入院する病院だった。朱音の退場により詩羽と英梨々のゲームが理想形で発売される可能性が無くなってしまったことから、倫也は朱音の代理となることを名乗り出る。
 しかし、期限が迫っているのは倫也たちの同人ゲームも同じであり、サークルを蔑ろにするような倫也の決断に恵は倫也のメインヒロインを、一緒にゲームを作ることはできないと告げられてしまう。


■感想
 発売日には買ってましたが、全然読めてなかった冴カノ12巻。この話を読んで気づいたことがありますが、それは最後にでも。

 さあ、前巻での加藤とのイチャイチャからシリアス展開だよ!分かっていたことではあるが、加藤と離れるのはつらすぎるな。
 超人朱音が倒れたことでクオリティアップよりも妥協した完成となってしまうことになったフィールズクロニクル。
 こいつはどうだろうな。ユーザーとしては最高のヤツを一刻も早くやらせてくださいだが、延期に延期を繰り返した上になんだこれってゲームも多く経験している。発売日は守ってほしいという希望は捨てられない。だって、ゲーム発売延期が発表されたばっかなんだもんよ……。

 ま、私の気持ちなんぞどうでもいいですが、詩羽節も英梨々の神イラストも中途半端になってしまうことなんか許せなかった朱音と倫也は最終手段として倫也が朱音の代理となって動くことになる。倫也たちのサークルのやり方でやれ、という言葉にエセ社会人となった倫也が交渉役となる。

 しかし、こんな決断を加藤は受け入れられない。
 倫也が返ってくると約束しても、それが正しいと分かっていても納得できるかは別問題でまた加藤と絶縁状態になってしまう。やめて、胃が痛いから加藤が怒ってるのって。

 詩羽と英梨々を説得して倫也の部屋でフィールズクロニクル作りしつつも、倫也は時間があれば加藤にメールをする。このケンカ状態を巡璃とのイベントに使うといいながら、自分の気持ちを込めたラブレターを書き続ける。
 うん、ばっちり二人に見られるけどね! 内容かなり恥ずかしいのだけどね!

 でも、ここにいてくれたらな、と思ってしまう気持ちを笑うことはできない。本当にふとした瞬間思ってしまうこの気持ちだけは恋い焦がれているとしか言えないことだけは私にも分かっている。

 だから、最後のメールを送った時の倫也の部屋の前にいた加藤はどんな気持ちだったのかな。ずっと欲しかったものは目の前にあるのに意地もあって手を伸ばせなくて、後から来た英梨々たちが手を差し伸べてくれてやっとみんなでゲームを作るという加藤が望んでいた場所に帰って来れた。表紙がこのシーンとか本当にズルい。

 正直倫也視点ではこの辺りはさらっとしかできないと思うので、次のガールズサイドが楽しみだ。僕は結構ガールズサイド好きなんですよ。竜虎とか。

 最後はついに倫也が加藤に告白しますが、フラットに返されてしまうので受け入れられたかは不明。いや、でもあの返しとこれまでを見れば明らかっちゃ明らかか。

 この、おそらく加藤ファンは望んでいただろう展開に喜んだのは私も例外ではないはずだったんだが、残念ながら例外だった。
 前回の冬コミ後くらいからちょっと私はこの話が苦手になっていた。加藤が怒ってるからかな、と思っていたが、今回の加藤の告白で分かったよ。
 僕は、みんなでゲームを作っていく様子が好きだったんだ。喧嘩しながらも作られていくゲーム制作が楽しくてたまらなかったんだ。
 だから、この結果に対してはなんの感動もなかった。フィールズクロニクルが終わったから次は同人ゲーム・冴えない彼女の育て方の大詰め。もうすぐ楽しい時間が終わってしまうのかという寂しさしかなかった。私はやはり恋よりも友情派なのでしょうな。

 では、ここいらで今回のお気に入りへ。
 正直今回は特になかったりするのですが、敢えて言うならここというところを。
 詩羽先輩たちにフィールズクロニクルに関わることを話すとその内容の切迫さからも反対されるんだが、最終的に先輩は分かってくれる。


「色々と、覚悟を決めたのね……倫也君」
 何がそういうことで、何の覚悟を決めたのか……。
 俺には、詩羽先輩が俺の何を察したのか、正確には掴みきれなかったけれど。
 それでも、彼女の口調の、そのニュアンスから、それが多きく外れていないことだけは、悟った。
「なら、わかったわ……澤村さんの説得は任せて」
「……いいの?」
「今夜中になんとかする。なんとかしてみせる」
 それは、俺に対する理解なのか、信頼なのか、呆れなのか、あるいは、その全部なのか。
「だから、明日からは、いつもの……」

「いいえ、一年ぶりの、チーム再結成よ」


 かなり長くなってしまったが、詩羽先輩のこういうところ好きだなー。てか、エロに走らなければこの人の事本当に好きなんだが。





冴えない彼女の育てかた 12
丸戸 史明(著),深崎 暮人(イラスト)
KADOKAWA (2017/3/18)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 11:59| Comment(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月23日

神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター4



 どんなに想っていても、言葉にしなければならないことは、ある。


 やばい、本気で月一更新になりつつあるじゃんか俺!
 まあ、言い訳が許されるなら最近本とか全然読めていないから感想を書くに書けないのである。決して、FGOぐだぐだイベントで土方さん目指してアルテラ、エジソン、エレナと連続で来ても本懐は遂げられなかったり、ソルトアンドサンクチュアリ超楽しいけどソルトは一粒も無駄にしないチキンプレイしてて忙しいわけじゃない。BBちゃん配布とか速攻で聖杯捧げるね、種火ストックしとくね、とかのせいじゃないんだから!


■あらすじ
 精霊の身で殺人を犯したレオンは刑務所に収監されることになった。自慢の金髪はどす黒く染まり、ただ過ぎていくだけの二千三百年という日々を過ごすはずだったが、刑務所見学のバスに仕掛けられた時限爆弾の事件から、レオンは悉く命を狙われていくことになる。
 精霊文字の刻まれた首輪により力の使えないレオンは自暴自棄になりつつもヒマワリ色の少女に叱咤激励され、自分を取り戻していく。


■感想
 ああ、読んでしまった。これで私が持つ大迫さんの詠んでいない本はあと一冊だけだ。
 悲しみは未だになくならないけれども、読むとやっぱり好きだなと心底思うのだからどうしようもないね。ポリ黒とか読み直して感想書きたいくらいだ。

 さて、これは神曲奏界ポリフォニカのスピンオフブラックシリーズから生まれた黄金の獅子レオンガーラ話である。何度も言っているが、私は本家本元を知らない。スピンオフなのに、シリーズものの三巻目から手に取ってなにがなんだかわからないまま大迫節に惚れたからだ。
 前巻を読んだのは大分前だけど、キレて人間を殺してしまったレオンの話。ブラックシリーズに精霊法に関してはかなり触れられているけれども、精霊が人間を殺すことは大罪だ。精霊は人間の善き隣人でなければならないのだから。

 レオンは刑務所で腐りきっていますが、時限爆弾バスでちゃんとレオンであることを見せてくれる。看守ティガーとの関係も良かったんだがなー。
 見学者の中に僕らのよく知る少女がいた。レオンは見えていないがヒマワリ色の少女である。バイクにまたがり、そして大好きな親友の真似してメモを取るようになった少女である。

 正直なところ、ブラックとレオンではイラストが違いすぎるので表紙では誰か分からなかった。レオンもどうもイメージが違いすぎてちぐはぐな印象を受ける。難しいな。

 レオン宛の手紙から時限爆弾だったので他の刑務所に移送されるところで襲撃。やめろっ、ティガーだけはやめろって!
 ボロボロで逃げ延びたレオンを拾ったのはおでこが印象的な少女である。バイクで移動し次は電車。レオンが助けを求めるのはブラックの主人公であるマナガとマティアのもとへ。

 しっかし、二人は不在。どうすりゃいいのか、と思っている時にレオンが大事にしている少女たちの職場が爆破。
 絶望とさらなる襲撃を受けてもレオンを助ける少女。突き放して、そして傷つけたくないと気づかされたレオンは初めて少女の名前を聞く。
 ヒマワリ色の少女――サジ・シェリカの。

 うん、知ってた。
 だってシェリカがどんだけすげー奴かなんてことはとっくのとうに知っている。レオンの負けなんぞ決まっている。

 レオンを執拗に狙っていたのは前回にレオンが依頼を受けてちょっと痛い目を見たミサワさん親子。息子がギャングに置いたした結果顔が修復不可能な状態になったことへの報復だった。
 しかし、問題はそれだけでなくレオンが首輪を外しても力を使えなくなっていた。なんてことだ。

 そんな状態で飛行機爆破が目の前で迫る。
 レオンを殺すためだけに二百人を道連れにしようとする。この事件の解決法は、レオンにしかないですな。

 知らない、けれども知っている顔の女たちが集まっていた。
 何百回と、レオンが契約しては捨てていった女たちだった。みんなレオンガーラを知っていて、シェリカの叫びに応えて集まった女たちが奏でる神曲で戻れないなんてレオンじゃない。
 レオンがずっと暴走状態だったとか衝撃の事実は有りますが、そんなことよりもかつての契約者たちの何十年経っても変わらない面影が私は嬉しくてたまらなかった。

 あとのことは語るまでもないね、レオンの復活と大団円だ。シェリカがマティアの親友であることに気づくレオンは楽しいな。やっぱり特別なんだな。

 いやー、やっぱり大迫さんの話が好きだ。
 私という人間は単純だから格好いいと思ったことは永遠と貫くという厨二なことをするのだが、その一つが大迫さんのせいであることに気がついたよ。ホント、どうしようもねぇことだから書かないけれど、小さなことだって俺に根づいてくれていることが嬉しくてたまらないんだ。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
 さっき書かないって書いたばかりだけど、読み返してもお気に入りはここなので私の趣味を晒そう。
 無人駅で始発まで時間を潰すことになるのだがシェリカのバイクに積まれた携帯用ストーブやら、普通は積んでないものを見ての会話。


「いつもそんなもの積んでるのか?」
「まあね」
 それはつまり、いつ必要になってもいいように、ということだ。予定を立てずにふらりと遠出してしまう、そういうことが頻繁にあるのだろう。
 少なくても俺の知る限り、神曲楽士志望としては珍しいタイプだ。
「備えあれば嬉しいな、って言うじゃん?」


 この、でたらめな諺が最高に格好いいと思っているのである。
 なんだろうな、私は正しく使うことにあまり興味はないんだよな。ニュアンスが伝わるのであれば面白い方がいいじゃないか。間違ってなければいいんだよ、独りよがりだってさ気張った正しさよりもこっちの方が伝わる気がするんだ。





神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター4
大迫 純一(著),忍 青龍 (イラスト)
SBクリエイティブ (2009/4/15)
posted by SuZuhara at 17:58| Comment(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月28日

霊感少女は箱の中



 おまじないを誰かに見られたら、五人の中の誰かが死ぬ――


 ご無沙汰していますが生きてます。少々忙しいと言うこともありますが、今まで顔を出せていなかった一番の理由は寒いこと。だって、私の部屋寒すぎて凍る勢いなんだ! 暖を取ろうとベッドINすると寝ちゃうんだよ。
 というわけで、最近はゲームもできてないです。でも本は読んでいるからえっちゃら感想書いていきます。


■あらすじ
 心霊事故に遭遇し退学処分となった柳瞳佳は転校先の銀鈴学園でチェーンメール『友情リレー』に巻き込まれることになる。指定の人数に回せるほど友達のいなかった少女四人組からメールを回さずともすむおまじないを行うメンバーに組み込まれたのだ。
 しかし、おまじないをするために五人以外誰もいない場所で鏡に向かって一緒に撮った写真には霊が写ってしまっていた。
 おなじないをした少女の一人が消えてしまい、瞳佳は関わるまいと思っていた心霊案件を請け負う占い師である同級生・守屋真央に相談することになる。


■感想
 相変わらずちまちまと怖い系に手を出しています。
 しかし、やはり私の怖いという感覚は子どものころに起因するものらしく、童謡『たき火』とか聴くだけ結構キツい。
 そんなこんなで、今回この本を手に取ったのは私のトラウマの一つであるチェーンメールについて書かれているようだったからという理由。
 だがしかし、私はこの作者さんを知らなかったのだが、学生時代に友人がめちゃくちゃ勧めてきた『Missing』の作者さんだったとは。久々に友人を思い出してほっこりしたのは内緒です。

 さて、ざっくり説明すると以前の高校を退学になった瞳佳は心霊にだけは関わるまいと決めていたのだが、お人好しの転校生ということで気弱な少女のグループからチェーンメール『友情リレー』を止めるためのおまじないをするための人数に入れられてしまう。
 ……これな、経験談だが私はこの手のメールを送ってきた時点で友達やめたからな。怖い系ではなくメール止めたら金払え系のメールだったんだけど、その頃はチェーンメールを知らなかったし冗談としても笑えないじゃないか。心狭いと思ったけど、笑えない冗談はダメなのである。

 しかし、いきなり送られてきたメールに引きつつも瞳佳は事情を聞いて受け入れてリレーを止めるおまじないに参加することになる。
 これまたざくっと友情リレーについて説明すると、メールを回した人とはずっと友達。けれども、他の四人の友達に回さなかったら友達いないからこの友情もなかったことになるよ、という感じ。ぼっち殺しか。大切な一人、二人の友人すら狩りに来るとか怖ろしいな。

 だが、このメールを回さずとも友情を続けることのできるおまじないがあると言う。リレーで回さなければならない人数と一緒に他に誰もいないところで鏡に映り、人数を数えてから鏡に向かって写真を撮る。それを持っていればオッケー、というものなのだが、いざやると心霊写真が撮れて六人写っている。
 誰かに見られてはいけないのに、六人目がいた。

 ギャー、と帰るわけだが寮の門限があった瞳佳以外は一人が落とした携帯を探しに戻っていたらしい。そして、そのままいなくなった。

 これはおかしいと学生にして開業をしている占い師である同級生・守屋真央にお金を払ってみてもらうことに。
 真央の仲間には巫女さんや自称魔女の少女がいるが、今回は顔見世程度なのであまり深くは掘り下げられていない。巫女の芙美はちょっと性格的に好みですが、見た目はダントツ那琴だなー。

 現場に行ってみると、とくになにもないのだがいなくなった少女が探していた携帯を鳴らすと洗面台の排水溝の中から鳴っていた。

 心霊現象に遭遇する霊感少女だった瞳佳は、自分を見ても何も言わない真央が霊感がないことを看破していた。霊媒(ミーディアム)として真央の調査に関わっていくことになるのだが、ここまで読んでガチに心霊な小説だと思っていなかった私は焦った。怖いとは感じなかったが霊は苦手なのだ。怪異であってほしかったのだ。
 これを書いている間、怖い話流しているせいか嫌な予感がガツガツしているよ。霊感とかなくて本当に良かったや。

 真央は特別な箱を持っていてそれが在るから霊感がなくても占い師としてやっていっている。芙美や那琴がいるのもその箱のため。棺とか嫌な予感しかしないね。
 調査していくと、いなくなった少女は汚水溜まりと化した池で見つかった。

 次々と分かるのは彼女がいじめられていたこと。嫌がらせで友情リレーが送られ、数少ない友人を失わないためにおまじないをして死んだ。
 彼女の言葉を聞くために交霊会が行われることになったのだが、箱と瞳佳の存在によって交霊会はばっちり成功する。しかし、少女の友達三人のうち二人がいじめの対象が自分たちにシフトしていることからいじめっ子を殺してくれと願ってしまったことから少女は悪霊として召喚されてしまう。

 極小の地獄である箱、真央の家族を飲み込んだ箱に少女の霊といじめっ子たちは呑まれて行く。
 少女は友達のために悪霊となったとあるが、これはやだなー。友情だけは信じさせてくれ。やっぱり霊に関する話は苦手だ。
 ロザリアの棺、瞳佳に関する秘密は面白かったんですが、少々予感はあったよな。真央の奇妙な仲間たちに瞳佳も加わって続くという感じでした。

 なかなか面白かったんですが、霊関係は苦手なので次は読まないかも。けれども、文字だけで恐怖を表現するのはなかなか難しいと興味深くもありました。怖いって本当に難しい。

 では、ここらでお気に入りですが、今回は印象的だったところを。
 交霊会の最中に死んだ少女の友達だった二人が死を願ったシーンを。彼女たちはいじめられていた少女の影に隠れることで自分を守っていた。少女がいなくなって自分たちがいじめの標的になることを知った時保身に走った。

 あの時、自分たちの盾が最後に一度だけ還ってくると分かった時、叫んだのだ。あの三人を殺してくれと。ありったけの、恐怖と、悪意と、卑劣と、希望を込めて、哀れな優しい私たちの盾に最後の仕事をしてくれと、赤い光の中で願ったのだ。


 人を呪わば、なので彼女たちも哀れなことになりますが、これは酷い。対人関係において優越感や劣等感は抑えられないものだと思うが、死者に対してそんな風にしか思えないなんて人間は嫌だな。
 ま、どっちにしろそういう人付き合いもできないぼっちには関係ないんだがなー。






霊感少女は箱の中
甲田 学人 (著),ふゆの 春秋 (イラスト)
KADOKAWA (2017/1/10)
posted by SuZuhara at 23:07| Comment(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月28日

冴えない彼女の育てかた 11



「嫌なところ、見せるよ? 倫也くんだから……」


 週末はちょこちょことお出かけしていました。
 土曜は平田志穂子さんのインストアライブ、日曜ははペルソナオーケストラに行って来た。久々の渋谷は人の多さに辟易としたがな。
 二日連続で平田さんの歌が聞けたのは最高でしたが、ゆみさんの声の力強さに歓喜した。オーケストラのコーラスの「Burn My Dread」も良かったけど、やはり恋しかったので。Lynさんは正直ゲーム中はあまり印象に残っていなかったのですが、この人はライブの人なんだな。オーケストラ演奏も喰ってしまう声量はすごかった。星と僕らも聞きたかったぜ。12月に行く人羨ましすぎる。
 いやー、楽しかった。私の今年のお出かけはもう終わりですが、実に有意義な時間でした。


■あらすじ
 ついにメインヒロインである叶巡璃ルートの制作に入る倫也だったが、今までのようにとは行かずに書けなくなってしまう。
 とある助言を得て、倫也はメインヒロインのモデルである恵と共にシナリオを作っていく。


■感想
 冴カノ新刊にしていつでも待ってる加藤メイン回! 
 でも、こんな終わりってマジかよーっ!

 始まりはカットでお送りするかの如く、美知留(仮)と出海(仮)ルートできたよがお送りされる。うん、それ英断。ずっと加藤のターンがいい。
 二人の覚醒シーンもありますが、一番は前回詩羽先輩を怒らせてしまったシナリオのトゥルー版、詩羽が詩羽を貫いて二人は別れるという倫也が一度書いたけど受け入れられなくて没にしたシーンを加藤がちゃっかり作ってた。そして美知留と共にゲームシーンを作成w
 いや、完全なるハッピーエンドもいいけど信念を貫くエンドもいいよ。それが別れというバッドでも、たぶんきっと俺が好きになった彼女を守るエンドだと思うから。……で、このゲームは原作完結したら出してくれるんですよね?

 巡璃がどうしても書けない倫也は詩羽先輩には頼れないので、連絡先を知っていた紅坂朱音に電話する。
 私は彼女が好きなので嬉しいのだが、この人の言っていることがきっと真理だよな。空白で一時間過ごすか、一時間書いて全部消すかだったら後者の方が絶対いい。スランプで描けないとかよく目にするけど、それってすごいよな。スランプになれるほどの力量なんかないのである。やれるだけやるしかねぇのである。

 助言を得た倫也は深夜に加藤に電話してシナリオの読み合わせを手伝わせる。今までの主人公――倫也の行動を加藤が駄目だしする形になるんだけど、ここでの加藤の気持ちはなんとなく分かる。
 理想があるわけじゃない。特別なことじゃなくて、ただ何気ない一言が欲しかった。僕もそういう人が好きですね。私が中学時代の友人に拘っているのも、奴に言われたたった一言が原因でしょうし。けど、今じゃもう呪いみたいになってるけどね。

 ここからの加藤はね、もう本当に可愛いんですよ。
 移動時間に本を読むことが多いんだけど、ニヤニヤしたらどうしようかと思ってた。無防備な姿晒して、これ以上はダメだと分かっていても倫也に近づいてしまう。
 なんで隣にいないんだよっ、と思うのとこのままの時間がずっと続いてほしいジレンマがつらいぜ。

 決定的なイベントはないくせに確実に一番近くなってしまった最後、加藤は倫也から距離を取る選択をする。きっと英梨々のこととかまだ割り切れない部分がネックなのでしょう。
 しかし、加藤の誕生日は譲れない。今年はお祝いしたいという気持ちから二人はデートすることになるのだが、当日になにかが起こったらしいというところでお終いでしたよこんちくしょうっ!

 マジか、次はいつですか?
 他の人ならまだしも加藤だけは本当にやめて。くっつこうともくっつかなかろうとも劇的なイベントはいらない。加藤だってそう言ってたじゃないか!
 いやー、楽しかったけどつらいな。頼むから、いつもみたいに隣にいてくれよ。

 では、今回のお気に入りへ。
 加藤と電話で読み合わせをしていたが、物足りなくなって倫也がスカイプを提案すると深夜で寝てもいない顔だから嫌だという。それでも、と食い下がっていると加藤の「なんだかなぁ」が出て倫也はスカイプの通話を押す。


『ちょっと……まだ、出るって、言ってないよ?』
「でも、“なんだかなぁ”って言った」
『それが、なに?』
「それは、恵の、OKだろ」
『……もぅ』


 倫也もこの「もぅ」に萌えたって言ってるけど、私もここで初めて「もぅ」がクる意味が分かったよ。
 本当に女性のこういう包容力系の態度はやばいですね。好きだなぁって、本気で思ってしまう。






冴えない彼女の育てかた 11
丸戸 史明(著),深崎 暮人(イラスト)
KADOKAWA (2016/11/19)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 09:18| Comment(0) | ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする