小説は、好きですか――?
実を言うと、風呂があまり好きではない。
風呂がというよりも、そこまでに至る過程が嫌いなんだ。服脱いだら寒いじゃん脱ぐの面倒じゃん、と。冬はいつもより余計に面倒なんですが、入ったら即寝てしまうという子ども体質なのもいただけない。
そんなこんなでここ最近はいつもパソコン触らずに寝ちゃうのだ。
■あらすじ
中学生の時に小説家としてデビューした千谷一也だが、発表した小説がことごとく酷評されて売れず、小説を書けなくなってしまう。
そんな時、転校生の小余綾詩凪が同じ高校生作家である不動詩凪であることを知り、編集者の勧めで詩凪がアイディアを出して千谷が書くという合作で小説を作ることになる。
最初こそ反発し、何度もコンビ解散の危機に直面する二人だが、お互いが抱えている問題を知り、二人の小説を作り上げる。
■感想
ふむ、初めてのタイガ文庫です。
私がこれを手に取ったのは、元々出掛ける予定だった時に兄貴からメールで「忘れ物をした。届けろ」という指令を受ける。
なに、兄ちゃんのピンチか!ともうほとんどなにも持たずに駆けつけたというのに「別に急いでねぇ」という裏切りを受けた。ちょっ、それならそうだって言えよ!
ま、そんなこんなで本を持たずに外に出てしまったので、本屋で買って読みながら行こうと思った時に買った次第です。
辛辣なことを言ってしまうと、私のこの本に対する感想はうるさいだった。
初めて読書でこんな感想を抱いたのだが、もう最近の私はどうかしているのでしょう。
中学生の時に小説家としてデビューした千谷だが、評価も売り上げも上がらず小説が書けなくなっていた。病気の妹、妹のために稼がねばならない。うん、なんともよく聞く環境ですね。
転校生・小余綾詩凪=不動詩凪と分かり、二人で組んで小説を書くことになるというのが大筋なのだが、この主人公が嫌がるラノベ的展開のオンパレードで胸やけがした。
そもそも、主人公が昨今の小説に対する偏見とか売り上げについてとか延々と語るんだけど、ものすごいかったるいんだ。
後輩の小説家志望女子へのアドバイスっていいながら、他所様の小説を改変して別物――昨今の売れるラノベ要素たんまりにするとか悪夢か。
私は三谷幸喜さんの『ラヂオの時間』が笑えないほど苦手なんだが、他人が勝手に手を入れて別ものにするとか、誰得だっていうんだよ。
主人公が成功論を語りまくるのだが、ならお前がそれやれよだ。
昨今の出版事情で小説家さんが大変なのは分かったが、この周りにあたるわ、友達も親も分かってくれて仕事放棄したってずっと待っていてくれる編集者のいる優しい世界でうじうじされても彼の発言は私にはうるさいだけだった。
悲劇の主人公に浸り、完璧超人かと思っていたヒロインが自分と同じ傷を抱えていた。やっぱり小説を書くよ!とか言われてもなー。自分の文章を信じられないなら、あなたの文章を信じる私を信じて。ふむ、グレンラガンですね。
なんだろうな、延々と押しつけられている気分だった。
そりゃあネットで酷評なんかされたら痛い。本当に読んでいなくても、星1の作品を手に取るのは勇気がいる。けれども、そこは割り切るしかないだろうプロなのだから。
主人公は「なら、ネットで書いてろ」とか言っていたが、売り上げで続編が出せなくなったなら是非ネットで続き公開してくれよ。確か、犬ハサの作者さんは二次創作という形で公開しているんだろう?
ほら、書くだけなら方法なんかいくらでもあるじゃないか。書きたいものを書くスタイル、すごくいいじゃないか。ダメになったもう書かない。でも、周りはいつまでもお前のことを信じてるよ、じゃなー。
小説は好きだけど、この物語に出てくる小説家は理解できない。むしろ、周りの優しい人たちがフィクションレベルである。
この作品も評価高いから私がおかしいのですが、この作者さんの他の作品を読みたいとは残念ながら思わなかったなー。
あと私は本を買う時に値段は見ないのだが、これくらいの厚さの文庫で八百円越えってすごいな。
では、今回のお気に入り。
しかし、なにもかも響いていないので今回はおそらくこの本が伝えたいのであろう言葉にしておく。
「小説は……。きっと、願いなんだと思う」
にやりと笑う小説家がいた。
どうだ面白いだろって、失望はさせないって。
その人が私にとっての至高なので今回の主人公は受け入れられないのだが、主人公が作品に込めた願いが読者に届いたかは気になる。
しかし、売り上げに拘りながらも作品が売れたかどうかは書かれていないのである。むー。
小説の神様
相沢 沙呼
講談社 (2016/6/21)