2015年12月05日

冴えない彼女の育てかた 9



「俺は英梨々を裏切って、そして英梨々に告白する――」


 かなり深刻なゲーム離れが起こっている。だって今、遊撃隊やってるけれどもまだ10話だし。時間が取れないとはいえ集中力がないな。
 うたわれるものの続編が1年後の9月というニュース話は嬉しかったけれども、やはり閃の軌跡とダブっちゃうので戦々恐々。トラウマになっているのかもしれんなあれ。
 そんなことをぼちぼち思う昨今、調子が悪いぜ。


■あらすじ
 波島伊織とその妹・出海を加えてサークルは新たに始動したはずだったが、英梨々の書いたイラストをきっかけにぎくしゃくしていた。
 イラスト担当として比べられることになり自分の絵柄を見失う出海、そして英梨々と仲直りできていない加藤にどう接していいか分からないまま、倫也は霞ヶ丘先輩のアドバイスに従って英梨々をモデルとしたキャラを使ったシナリオを書くことになる。


■感想
 ああ、私が英梨々が苦手な理由が分かった。
 この奇妙な一途さが、自分を見るようで嫌なんだな。

 さて、今回は冴カノ9巻。
 発売日に買ったけど読むのに時間がかかりましたなー。最近よく寝ちゃっているんですよね私が。休みがもらえてないんで、自衛のために寝るしかないんですよ。
 ま、そんなことはどうでもいい。今は加藤の話をしよう。

 前回の続きからで英梨々のイラストを見てサークルに激震が走ったところからですね。
 一見、普通であったサークルだがその衝撃は出海と加藤には激しく、出海はスランプに加藤は仲直りのきっかけを掴めなくなってしまっていた。
 新たに加入したプロデューサー伊織と加藤の中が前回のことから最悪で、めっちゃ喧嘩していて怖いんだがw ほら、前回の伊織による「倫也の彼女は黒い」という発言から、加藤さんは一ミリも許してらっしゃらなかったww

 加藤=黒い説が現実味を帯びてきた中、出海のギャルゲープレイとかあるけど、やっぱりああいうのって自分と似たキャラを好きになるのかな?
 出海は後輩キャラを好きになって主人公の幼馴染み、親戚キャラを嫌いになるんだけど、まあ案の定の展開だよw

 加藤が渦中の人のためにまとも路線がいなくなってしまったからか、美知留が倫也の相談に乗ってくれる。
 そして倫也は加藤が英梨々と喧嘩状態をつらいと感じていること、出海が英梨々の絵に引きずられて自分を見失いつつあることを知らされる。

 そこにやってきてくれたのは、霞ヶ丘先輩だった。
 ちょい前の巻で加藤が倫也を待っていたらすぐにやってきたのに、自分が待っている時は全然来ずに雨まで降ってきても待っているという一途さに自己嫌悪しながらw
 やばい、ちょっと先輩が可愛いと思ってしまったぜww

 いつの間にか美知留と繋がっていた先輩は倫也の危機を聞きつけやってきて、そして解決法を教えてくれる。
 サークルとしては英梨々を切れれば終わるが、そんなことをすれば英梨々が潰れる。ならばどうすればいいのか。

 それは、シナリオに使うこと。
 こんな面白いネタがあるならシナリオにしろ。直接はなせないのであれば、シナリオにして伝えろ。

 ああ、やばい先輩格好いい。
 今回のお気に入りはここなので後でまた書きますが、それはちょっと本当に憧れる。

 それから倫也はこれまでの――一巻から英梨々とのことをシナリオにして書き始める。加藤のことで絡んで来た時とか、倫也との間にずっとあった喧嘩の話をそのままつかった英梨々ルートである。
 それを書く前に倫也は英梨々と電話でこれまでの喧嘩状態だったこととかのお互いの気持ちを話し合っているんだが、ここ読んでいて本当に英梨々の奇妙な一途さが自分と被ることに気づく。……八年か、俺はもう友人のことを十年以上思ってるよ。

 そんなこんなで書き上げたシナリオを加藤が読み、出海と伊織が読む。みんなの感想が倫也はどんだけ英梨々が好きなんだで笑ったw
 その萌えとは程遠いリアルな感情に伊織は出海に萌えでコーティングすることを提案する。こてこての萌えで相手を引き込めと。

 イラスト買いというのは結構あるが、絵とシナリオが合わないのはこういう目的があったんだな。ちょっとタイトルが思い出せないんだが、とあるスパイゲームもこてこての萌え絵で、なのに内容結構グロくもあり厚いシナリオに引き込まれて最終的には私の中で現在も上位にある作品がある。
 あ、ジャケ買いじゃないよ。ネット上で勧められて買ったんだと思った。あなたは絶対好きだとか言われたらやらざるを得ないw

 出海は倫也のシナリオのリアルな泥臭さを隠すために自分の絵で飾ることを決意し、加藤も倫也がシナリオで書けなかった巡離と英梨々の仲直りのシーンのためにも仲直りに行ってくる言う。そして、関節キッスに再びやってきた倫也くん呼び。
 英梨々ヒロインと見せかけて加藤が持っていった――っ!

 いやー、今回は手放しに面白いと言うにはちょっと展開が辛かったですが、面白かったです。
 次はこの話の倫也がいないところでの女性陣の話になるので、この巻の評価は次を待ってからでしょうな。楽しみだ。加藤の気持ちと美知留と先輩の繋がりが知りたいぜ。

 では、今回のお気に入りへ。
 上でちょっと書きましたが、先輩がやってきて倫也に全ての問題を解決するためにシナリオを書けと伝えたシーンから。
 面白い話は人の心を動かす。そう言った先輩を見た時の倫也の気持ち。


 その瞳には、何かが宿っている。
 それは、かつて何度か見た、クリエーターモードの彼女。
 俺がドン引きし、恐れおののき、そして憧れた……
「そうすれば、あなたは自分の物語に相応しい絵を手に入れられる……自分の力でね」
 俺が、そうありたいと、ちょっとだけ願ってしまった、人間をやめた時の瞳。


 ここから英梨々と話をしてシナリオを書き上げていくシーンはぐっときたなー。
 特に倫也がシナリオで物語る英梨々の加藤への気持ちとか泣きそうだった。加藤の普通さに癒されて憧れて、そして自分への劣等感に潰されそうになる。
 自分を偽るのはいつだってつらいけれど、そこに自然体で嫌われもせずに好かれてもしないなんてことはないなんて人がいたことを考えると……英梨々が心を開くまでの時間の長さが感慨深い。
 しかし、最終巻を迎える時はちゃんと倫也たちが作る冴えない彼女の育て方(仮)はきちんとゲーム化していただかないとな、うん。





冴えない彼女の育てかた 9
丸戸 史明(著),深崎 暮人(イラスト)
KADOKAWA/富士見書房 (2015/11/20)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 22:25| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月08日

無限の住人 刃獣異聞



「そいつが、もうそれ以外には何も出来ねェからだよ、お嬢ちゃん!」


 うたわれるもののアニメがまさかのエルルゥを出してくれるとは、深夜の歓喜がやばかったですな! ゲームには出なかったから完全に続編の方にしか出さないんだと思っていたよ。
 Fate/GOの三章もうはうはとプレイしましたが、この東出シナリオのズルさ。もう絶対にアステリオスを好きになるに決まってんじゃん。エウリュアレとセットでいてほしくなっちゃうじゃん。
 ま、一番は幕間後のタマモキャットであることが判明したがなw


■あらすじ
 両親の敵である逸刀流への復讐を誓う浅野凛はひょんなことから出会った万次を用心棒として仇討ちを図るが、逸刀流の一人との戦闘中に怪物が現れる。
 逸刀流に万次と凛、そして謎の怪物の三つ巴と発展しそうになるが、怪物の現れた場所から怪物サイド・無骸流と接触することに成功する。
 仇討ちに対して自分の気持ちを考えながらも凛は逸刀流当主が、そして怪物が現れるという宿屋に向かい、万次とともに怪物・イヌガミと戦うことになる。


■感想
 映画化が決定した漫画のノベライズ本です。
 私は失礼ながら原作は未読なんですが、大迫純一さんがノベライズを担当しているということで買っていた。
 ……映画化が決まったから早く読めって言われたんだけど、やめろよぅ、読んでない大迫さんの作品が無くなっちゃうじゃないかよぅ。

 さて、感想に行こう。
 浅野道場の一人娘であった凛は目の前で両親を逸刀流に殺されたことから復讐のために逸刀流を狙っていた。
 運悪く擦れ違った男たちの話に反応してしまったことから浅野の娘であることがバレて追いかけっこになっていたところに、顔面に傷がある隻眼の男・万次に出会う。

 万次のことは八尾比丘尼の婆さんから聞いていたらしく、そしてその強さを見込んで仇討ちの用心棒に雇うことになるという流れ。
 この段階では万次は奇怪な刀を持つ武士という印象でしたが、次の黒衣鯖人戦で認識は改められる。

 凛の両親を目の前で殺した時から凛に恋していたという黒衣は、これまでの二年間ずっと凛に恋文を送っていた。
 このシーンはかなり驚いたが、ラブレターww嫌がらせすぎるwとか茶化すことはできずに、二人の歌の詠み合いを見守ってましたな。
 どんな外見か見たくて読了後にググったのだが、凛の母さん剥製にされて肩にくっつけられているのな。リンダキューブを思い出したよ。

 死を究極の愛情表現と思っている節があり、凛を殺して自分も死ぬ、心中を提案すると歓喜するという変質者ですが、どうしてか嫌いになれない。むしろ、この異常愛好きだなどうしよう。
 黒衣は万次が後ろから来ていても凛から目を離したくないという徹底っぷりを見せてくれますが、それも肩骨が背面170度までいけるらしく、万次を容易く奇襲してしまう。

 黒衣との戦闘で万次への感想は、あれそんなに強くないんだろうかと言うものだった。タフだけど圧倒的に強いというタイプではなかった。
 逸刀流を七人も殺した輩を万次だと思われるが、万次が殺したのは凛を助けた一人のみ。この前から凛はおかしいと気づきますが、黒衣との戦闘に乱入した怪物によって黒衣は殺されてしまう。

 刀の整備からもう一人の逸刀流・凶戴斗と出会い、父の形見である刀を取り戻すが、この件から万次と凶が戦闘することになる。
 ここでも万次は結構やられるのだが、彼の強さは圧倒的な力ではなく、不死身ということだった。なんでも体内にいる虫がどんな傷も塞いでしまうのだという。間桐さんの虫より優秀な虫。

 ここでも怪物が乱入し、凶しか狙わなかったが凛が攻撃したことから敵と認識され、その場はなんとか逃れるも逸刀流への復讐に第三戦力がいることが分かる。
 怪物の移動する水路から尸良に辿り着き、協力はしないが怪物と話をしたい凛は次に狙う情報をヒントとしてもらうことに成功する。

 尸良たち無骸流については今回はあまり語られていないので、機会があったら漫画の方もよんでみたいな。

 阿片を使って薬塗れのドーピング怪物・イヌガミを使って。逸刀流当主が泊まる宿屋を襲撃するが、先に勘づいた凶が成り代わっており戦闘へ。
 万次たちも間に合い、凛は自分にも問いかけているなんのために戦うのかということを怪物に問うが、イヌガミに答えるだけの感情は残っていなかった。
 ただ逸刀流を殺す、それだけしか彼の頭にはない。

 当主の出現でどうなるかと思ったが、最後に決めてくれたのは万次だった。
 当主との邂逅も答えの出ないまま行動するんじゃなくて、そこで一度離れて自分の意志をきちんと固めているところを見るし凛は良い子ですね。黒衣が好きになるはずだw

 原作を知らないままで読みましたが、面白かったです。
 個人的に小説の地の文で「どどん」とかあるのは苦手なんですが、きっとこれは大迫さんが漫画の表現を再現しようとした結果なんだと思う。
 文章も大迫節というよりは作品に合わせてある様子でしたし、それでもああ大迫さんだなと思える文章ににやりとしてしまうのはきっと私だけじゃないはず。

 大迫さんの死を知ってもう随分経ちますが、未だに受け入れきれてないんですよね。ひょっこり新刊が出ていそうな、そんな気がする。
 けど、だからって大切に本をしまっていてはいけないな。ちゃんと読んでいかないと。

 では、この辺で今回のお気に入りと行きましょうか。
 仇討ちのためなら鬼とだって組むと言った凛に黒衣から奪った十字手裏剣を見せながらこいつも鬼だと万次は言う。


「うん、判った」
「よし」
「でも、それ嫌いだから」
「判った。こっそり隠れて使うわ」


 このシーンでの言いかけるような物言いと暖かい目。そして最後に茶化すように言って和らげる男性像が、大迫さんはすごく好きなんだろうなと思った。
 あとがきで原作のものすごいファンだと語っていますが、こういう器の大きい男性像が好きで私はゾアハンターを一気読みしたもんなーと思い出したので。





無限の住人 刃獣異聞
大迫 純一(著),沙村 広明(原作)
講談社 (2013/2/21)
posted by SuZuhara at 17:03| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月12日

コロシアム 2



 部外者でいることは許されない。


 うたわれるものアニメ、ゲームで結末が分かっていても胸が躍ってしまうな。いろいろと突っ込めるところはあるけれども楽しい、クオンさんが可愛いとか詐欺かw
 やはりテンションの上がるOPは歌詞とかすごい考察したくなるが、あの歌はハクとクオンのことを歌ってるのかななんて思ったりする。
 うーむ、早くフルで聞きたいぜ。


■あらすじ
 今まで画面の中でしかなかった月島伊央が巻き込まれた殺し合いは、学行全体をコロシアムとして生徒全員が殺し合いのゲームに巻き込まれることになる。
 萩原はチェス研でいち早く状況を察することができたが、プレイヤーたちの帰還により学校全体がコロシアムになったことでクラスと合流することができなくなり、副会長の金剛真澄を頼って寄宿舎を拠点とする。
 ゲームから抜け出すために選択が迫られる中、校舎や体育館、ショッピングモールを拠点とした生徒たちの対話が始まる。


■感想
 ひゅー、待ってたよコロシアム2巻!
 発売日に発売されることを知って速攻で買いに行きましたが、なかなか想像していない展開になってきましたな。

 前回の続きからで伊央が高槻里美を殺したところからですね。前の感想では私は参加者と書いていましたが、この銃とナイフを持たされたプレイヤーたちは里美の死で協力したこの場を抜け出すことを決める。
 ここから出るには最後の一人になる必要などなく、全ての弾丸を集めること。だってここは本当のコロシアムではないのだから。

 生徒側がプレイヤーたちを見る目であるワームの視界を閉ざし、弾丸を全て集めてプレイヤーたちは帰還を選択する。ここで五十嵐渚がプレイヤーたちにその後も協力関係を求めているところは後々で重要。

 萩原たちはチェス研でコロシアムが画面越しの出来事ではなく、学校全体であることを悟って動き出すのですが、学校側の生徒にも弾丸が下られ、チェス研は一番初めに帰還した桜木環奈を捕まえることに成功する。
 しかし、それは遅すぎてチェス研の沖羽留奈は帰還したプレイヤーの伊奈川により、前のコロシアムでろくなサポートを受けずに死亡した中谷さんの敵討ちをするように二年一組を皆殺しにする。

 この二人がどういう関係なのかは知らないが、羽留奈が語るように伊奈川は真意が読めない人間だ。咲季の言葉からしてもこの後の行動的にもこいつは分からないので、ちょっと怖い。
 羽留奈だけ殺さなかったのって、やっぱりセレクションのためなんかなー。

 あ、ここでゲームの勝利条件を簡単に。
 このゲームで生き残る方法は二つ。

・最後の一クラス(ラストワン)
 自分たち以外のクラスを全滅させ、最後の一クラスになること。一人から最大三十人が生き残れる。
・三十人選抜(セレクション)
 一年から三年までの三十クラスから一人ずつ集めて三十人以外を殲滅する。同じクラスの人間は生き残ることができず、一クラスでも全滅してしまえば成立不可能。三十人が生き残る。

 これはね、自分だったらどっちを選ぶかな。
 私の高校時代で考えると、絶対に私だけは裏切るなと約束させられたクラスメイトがいるのでラストワンの方だろうけど、クラス単位で動かなきゃいけなくなるから正直窮屈だ。
 上手い手だとは思わないけれども、セレクションを選択した五十嵐にも一理あるしなー。
 どっちにしろ、協調性がない時点で私は生き残れなさそうだ。

 プレイヤーたちが帰還して、伊奈川や前園といった二人のように今まで傍観者だった生徒を殺す者が現れて学校は混乱する。
 今までサポートしてやったんだから私たちを守って戦え、と身勝手なことを言うクラスメイトもいますが、この展開を考えると初めの三十人で銃とナイフを装備したプレイヤーたちは幸運なのかもしれないな。銃は認証がついていて自分しか使えないから、絶対的武力だし。

 萩原はこの時に自分を呼びに来た鳴美とともにクラスに合流できなくなってしまうが、羽留奈を回収して後に寄宿舎で副会長の金剛と合流する。
 この学校は未来に行きすぎだが、生徒会メンバーの静脈認証とかすげーな。副会長が二人もいるわけだ。

 金剛の手のひらを使い、全校生徒に放送を流すのですが、シリアルキラーと化していた前園に襲撃されて萩原は撃たれてしまう。そのことを隠して金剛と羽留奈、鳴美と誰も見捨てないという約束を結び、咲季が用意したという金剛しか使えない武器を求めて校庭へ。

 ここで前園戦ですが、ここはちょっと胸が躍ったw
 萩原が囮となり、捕まっていたはずの桜木環奈が参戦するんだが、桜木環奈はちょっと好みだったので金剛さんを味方につけてよかったな。

 七組の方は伊央と合流し、緋香里がちょっと怪しいまま伊央を最大武力に進んでいく。

 ちょっと順序が逆だが、前園キラーの一件で生徒たちは体育館に避難することを誘導されており、そこで五十嵐はプレイヤーたちに呼びかけて協力を呼びかける。
 セレクションでゴールするということだ。チェス研の北村はクラスのプレイヤー原田に裏切らて人質になってしまうが、本当に五十嵐の戦法が一番簡単だよな。
 銃持っている強い奴らが集まれば、圧倒的に優位に決まっている。

 こうして五十嵐らの体育館、伊央たちクラスが集まる校舎、咲季らサークル系が集まる部室棟、落ちた生徒会長であるはすの椎名がいるショッピングモールに萩原たち金剛の呼びかけで集まった非戦闘派の寄宿舎。
 ポイントからの通信でお互いの意見を言い合い、牽制と高度な情報戦が行われますが、萩原たちの代表として金剛が前に出なかったことが災いし、最大武力の体育館組が寄宿舎を狙うことに。

 体育館は補給という意味で分が悪く、そしてセレクションを狙うために羽留奈とあともう一人の二年一組の重傷者がいることから確保に出たのだ。
 金剛さんはわりと難しい人だが、なんとか自分への勝手なイメージにしがみつく生徒たちからなんとか逃げ出して初めの四人で脱出を試みるが、萩原は負傷しているしで逃げきれないと思っていた頃に動いたのは伊央だった。

 モニターに萩原が一瞬映ったことから襲撃される寄宿舎に乗り込み助け出そうとしたが、その時には既に逃げ出した校庭で絶体絶命だった。
 だから、伊央がしたのは重傷者を殺して羽留奈を二年一組最後の一人にすること。

 金剛は校庭に潜ませておいた桜木環奈で羽留奈を殺すと脅しをかけさせていたために、セレクション狙いの五十嵐はなんとかして羽留奈を守らなければならなくなり、引くことになる。

 こんなところで今回はお終い。
 土橋さんの作品では必ずブレイン的な存在がいますが、今回は咲季と椎名のようですな。自らは戦わないが制すタイプ。だが、こういうタイプは総じて最後にコケるんだがな。

 最後の生きるためでもなく無抵抗の人間を殺してしまった伊央の話はつらかった。それでも萩原を助けたくて、画面越しで心は確かに触れ合っていたが、この汚れた手に触れてくれるだろうかとか、もう早く合流しろ! 合流したらしたで絶対に緋香里がなんかするだろうけど、もう早く手を握ってやってよ。
 この伊央の描写と対になるような表現が羽留奈にあることがちょっと気になりますが、萩原がこの先どういう選択をするかが気になる。

 体育館組の襲撃で北村と合流できた萩原たちは、どちらかというとセレクションの方がゴールに近いのだろう。けれども、それでは鳴美とも伊央とも生き残れず、ラストワンを選べば金剛たちと敵対することになる。
 多くの生徒が理想を掲げるようにみんなが生き残る道っていうのは、土橋さん作品じゃほとんどの場合ないからなー。

 では、ここで今回のお気に入りへ。
 今回は正直状況説明とメンバー分けといったところだったので劇的なシーンこそなかったのですが、やっぱり最後の伊央のシーンかな。
 無抵抗の人間を殺してしまい、あの中庭に倒れながら萩原を求めていた。


 この血まみれの手は届くのか。彼に触れることができるのか。あの時は、画面越しだったが、確かに触れ合った。未だにこの手で触ることはできていないが、この体以外は、それはぞくりとするほどの接触で、確実に……


 ゲームのプレイヤーたちが日常に戻ることは想像できないけれども、伊央は精神的に萩原に依存してしまっているのでどうなっていくのか。
 早く合流してあげてくれ、頼むから。





コロシアム 2
土橋真二郎(著),白身魚 (イラスト)
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2015/10/10)
ラベル:土橋 真二郎
posted by SuZuhara at 22:50| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月02日

神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 3



「誰も死なない。レオンが、そんなことさせない」


 僕の父親は特殊な人だったりする。
 何があっても滅多に怒らない人なのだが、唯一キレたのは「俺は朝飯が食いたいんだよ!」だったのだ。食への欲求が強すぎるんだな。
 私がそんな話をしたことを覚えていた友人が、とあるゲームが物理的にプレイできないことへのストレスから「ゲームがしたいんだよ!」と人間的におかしくなりかけている私に「お前も奇妙なことでしかキレない。ベクトルが遊びに向いてるだけでそっくりだよ」と言われて結構なショックを受けた。
 この親にしてこの子ありって本当なんだなー。


■あらすじ
 一仕事終えた撤収時にレオンは一人の少女・サナと出会った。
 サナはレオンをパパと呼び、彼女の母親はレオンの歴代契約者の一人だったのだが、母親捜索に乗り出すとギャングと麻薬の影が見えてきてしまう。


■感想
 もう買ったばかりで読めないと思っていたレオン3巻。
 未だに大迫さんの死は受け入れられていませんが、読まないなんて選択肢が一番失礼だと思い、えっちゃら読み始める。
 いやー、やっぱりブラックとは毛色が違う事件ばっかですなー。

 ギャングのボスの女に手を出した坊やを助けるという依頼のため、ついつい組織もろとも壊滅させてしまったレオンだったが、そこで小さな女の子と出会う。
 サノアトリカことサナはレオンをパパと呼ぶのだが、精霊であるレオンに子どもは作れない。だからセヴンは呆れ顔で、レオンもとりあえずとホテルに連れかえって話を聞くと、元契約者の娘であることが分かる。

 なんでレオンが父親だと言ったのかは不明だが、サナの帰って来ない母親に関わるべきではないと頭の隅で思いつつも、二人の家に行ってみるとそこは汚部屋だった。
 ゴミの散らかった部屋にあるのは大金と薬。前回の殺し屋・ロザムも出てきて、母親がレオンが殺したギャングのボスの女で麻薬の運び屋をやっていたことが分かる。

 だからレオンは助けに行くんだけど、セヴンもサナのことがあるから全面的に協力してくれるんだけど、再会した母親とレオンの関係は最悪だった。
 だって、大好きだった精霊が突然消えてしまって彼女は神曲が弾けなくなっていたのだ。彼女がここまで落ちた原因はレオンだったのだ。

 母親を殺さんと追っていたクギョウ・ディオネアルサはロザムを使って親子を殺しにかかるので、セヴンが防御しつつのカーチェイスはちょっと楽しかった。
 だって、セヴンが優しい。初めはサナが苦手だったのになー、セヴン。

 ロザムとの戦闘はレオンとサシに変わっていくが、ロザムは神曲支援つきに対し、レオンはここまでの疲労がピークに。
 以前の契約者に支援を申し出ても彼女は首を縦に振らなかった。その理由は今回のお気に入りで。

 なんとかロザムを退けますが、母親には受け入れられない。
 それでもレオンはもうこれ以上親子が狙われないように、パパと慕ってくれるサナを振り切り、警官アレクシア――この人ってマナガの射撃試験でドヤ顔してた人かな? 彼女の制止も聞かずに走る。

 獅子の姿でクギョウを殺した。
 そこにいた全ての人間を引き裂いて。

 最後はアレクシアがレオンの元に逮捕にやってくるわけだが、その時のレオンの髪は金から血の色に変わっていた。

 うわー、レオンつらいな。
 次でレオンがなぜ契約者を次々と変えていくのか分かるようなので上巻のような扱いなんでしょうが、こいつはつらいぜ。
 でも、そんな内容でも大迫さんの文章だなーと思う。私的にはレオンの一人称より、ブラックの三人称の方が好きですが、僕が好きになった文章だった。
 前にどこかで書いたと思うけど、私はブラックを手に取っていなかったら今の自分はいないと思ってる。俺、自分大好きだからねw 本当に感謝してるんだ。
 レオンが読み終わったら、またブラックも読み直そうかな。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
 前述したようにレオンから神曲を求められた時に母親は首を縦に振らなかった。
 もう弾けない?
 いいや、それだけだったらまだいい。
 弾けない理由はもっと絶望的だった。


「もし、届かなかったら?」
 ああ。
 なんてこった。
 お前が怖がっていたのは、それなのか。
「あなたにまで届かなかったら? あなたにまで届かなくなってたら!?」


 レオンが消え、彼女は神曲が弾けなくなった。
 誰にも届かなくなった神曲。ただ弾けないだけでなく、最愛だったレオンにまで届かなくなってしまったら――それは恐怖以外のなにものでもない。
 かつて当たり前だったものを今でも変わらないと思ってしまうのは傲慢だって分かっているけれども、その絶望を突きつけられる筋合いもない。希望は希望のままだっていいじゃないか。
 だから、彼女の気持ちは痛かった。
 そして、再び弾いた彼女の誰にも見向きもされない神曲が恐怖や絶望、そしてレオンへの想いでできていたことに。






神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 3
大迫 純一(著),忍 青龍 (イラスト)
ソフトバンククリエイティブ (2008/11/15)
posted by SuZuhara at 06:08| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月05日

冴えない彼女の育てかた 8



「今のわたしは、あの時よりも、あなたの物語の、ヒロインに近づいてるかな?」


 毎回ここに書くことを悩むのですが、最近どうも納得できないことがありまして。
 ゲームが発売されるのは毎回楽しみなのですが、売り方とか特典商法があざとすぎると辟易してしまうじゃないか。私はそういうので引いてしまうことが多いのだが、最近そういう情報に疲れつつある。一応チェックはしてるけど、今のところ予約しているゲームはうたわれるもの2だけだしなー。
 もういっそのこと全部やめてしまうかな。そっちの方が楽な気がする。


■あらすじ
 倫也たちが三年に進級し、新たなメンバーでスタートする「blessing software」。
 本来の目的であった最強のギャルゲーを作るためにプロット作りをする倫也だが、詩羽と英梨々がいないサークルで美知留のバンドのマネージャーも両立させることは無理だと気づく。
 絵師として出海を迎え、そして彼女の兄である伊織に企画書を見て受けたアドバイスを聞き、伊織をサークルへと勧誘するのだが、「このままじゃ売れない」の一言で断られてしまう。


■感想
 ちょいと感想書くまでに時間がかかってしまいましたが、冴カノ最新刊読了です。
 原点回帰? いやいや、怖いよ! 関係がドロドロしすぎだよ!

 始まりは新生メンバーたちとわいわいやるのですが、溢れ出る加藤の正妻っぷり。安芸家の台所とか、もう制覇しているんじゃなかろうか。
 学校では倫也と英梨々が同じクラスで隣の席で、余所余所しくも二人で話すことからクラスでは激しい動揺が見られますが、出海のサークルに同級生勧誘の際の先制パンチを受け、そして加藤とは気まずい擦れ違いで英梨々のHPがヤバい。

 てか、二人の喧嘩怖い。
 私はいまいち分かっていないんだけど、これって倫也の眼鏡が尾を引いてんのかな? 加藤もこだわってるっぽいんだが、つくづく自分は人の感情を理解できておらずシステムしか分かってないんだなと実感したよ。
 私は英梨々のようなテンプレツンデレの「勘違いしないでよね」と言われたら、それが本音であるという形式しか分かってないんだ。
 だから、今回の加藤の行動は本音がてんで分かっていない。
 そんなせいで今回の話は胃が痛かったぜー。

 新しいゲーム作りのため、加藤がスケジュール管理を徹底しようとするのは前回のことがあったせいですが、そこでもやはり英梨々とのことが尾を引いている。
 だが、倫也は楽しくやっていきたいというのがあり、加藤もなんとか肩の力を抜く。

 出海に今回のゲームの企画書を持って一緒に考えてほしいと伝えると、出て行けと言われてしまう倫也。
 ま、すぐにキャラデザをするからなのだが、伊織に前作のヒロインを再び使うことで共用するプレッシャーなどのことを指摘される。
 あー、なるほどなー。やはり絵師さんが変わると前の方が良かったと思うのは否めない。好き嫌い以前に愛着の問題で。

 だが、出海はそんなものには負けず、巡璃を乙女ゲーのヒロインのようだと捉えてすぐにデザインしていた。
 この乙女ゲーのヒロインというのは目から鱗でした。
 私はあんまりやらないけれど、乙女ゲーのヒロインって好きなんですよ。自分を投影ではなくその人として見ることが多いので、そっちの方が好きだな。

 シナリオ部分を倫也が担当するということで伊織からアドバイスを貰った倫也はプロットを書き上げて伊織にプロデューサーになってほしいと誘いに行くが断られる。
 その理由が告げられることはなく、勝手に伊織勧誘を決めたことに怒っていた加藤がまたも怒る。
 フェアじゃない。ダメな理由を言っていないというが、それは昔に出海から聞いていた話で売れないという理由で伊織は切るが、売れる売れないの感性は彼の方が上だったから書き直しすることに。

 伊織の一言でヘコむ加藤は可愛いですが、ここで二人によるプロット作成タイム。
 こういう創作の手順は知らんのですが、加藤が倫也にされたことをチクチクするのは胃が痛いw
 再び六天場モールへなデートはもう完全に加藤ルートでしたが、やはり二人にとって英梨々の存在は大きいんだな。加藤が英梨々との仲直りを引きずっていて、倫也が間に入ることになったのですが最後で仲直りは当分無理そうだなと。

 プロット作り中だって先輩の穴を埋めようと気を張ってたし、加藤への負担が半端ないな。
 伊織加入は無事に成功したので、どうにか力が抜けるといいんだが。

 最後は英梨々たちのゲームの制作発表で英梨々が壁画並のイラストを披露しサークルが震撼する。
 うーん、どうだろうな。もうイラストだけ力が入っているゲームとかいろいろ経験しているから、口ではなんとでも褒めますが自分の冷静な部分ではどうせ課金でしょとか思っちゃうんだよな。某大作RPGリメイクも私にはあんまり響いていない。
 だから、はー、って感じだったのですが、イラストの出海が震え、加藤が分かってくれない親友への苛つきを高めてしまった。

 うわぁ……天才は残酷だな。
 もう正直、わいわいとゲームを作っていく感じは戻らないんだなと。これからどうなっていくかは分かりませんが、誰も悲しまない結末であってほしいよ。

 では、今回のお気に入りへ。
 伊織に重いと言われて死んだ目になる加藤のシーンにしようかと思いましたが、今回は最後のゲーム制作発表時のメインヒロインについての倫也たちの会話を。


「メインヒロイン、金髪ですね……」
「でもロングだよ?」
「何があったんだあの二人……?」


 主人公は誠司=倫也似で、メインヒロインが先輩+英梨々とかw
 クリエイターさんって自分の好きな人と自分をキャラにインスパイアしちゃうんかな。それは大変冷めるので知りたくないですが、この先どうにも大団円には程遠いのが僕的には胃が痛いです。






冴えない彼女の育てかた 8
丸戸 史明 (著),深崎 暮人 (イラスト)
KADOKAWA/富士見書房 (2015/6/20)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 13:30| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする