「誰も死なない。レオンが、そんなことさせない」
僕の父親は特殊な人だったりする。
何があっても滅多に怒らない人なのだが、唯一キレたのは「俺は朝飯が食いたいんだよ!」だったのだ。食への欲求が強すぎるんだな。
私がそんな話をしたことを覚えていた友人が、とあるゲームが物理的にプレイできないことへのストレスから「ゲームがしたいんだよ!」と人間的におかしくなりかけている私に「お前も奇妙なことでしかキレない。ベクトルが遊びに向いてるだけでそっくりだよ」と言われて結構なショックを受けた。
この親にしてこの子ありって本当なんだなー。
■あらすじ
一仕事終えた撤収時にレオンは一人の少女・サナと出会った。
サナはレオンをパパと呼び、彼女の母親はレオンの歴代契約者の一人だったのだが、母親捜索に乗り出すとギャングと麻薬の影が見えてきてしまう。
■感想
もう買ったばかりで読めないと思っていたレオン3巻。
未だに大迫さんの死は受け入れられていませんが、読まないなんて選択肢が一番失礼だと思い、えっちゃら読み始める。
いやー、やっぱりブラックとは毛色が違う事件ばっかですなー。
ギャングのボスの女に手を出した坊やを助けるという依頼のため、ついつい組織もろとも壊滅させてしまったレオンだったが、そこで小さな女の子と出会う。
サノアトリカことサナはレオンをパパと呼ぶのだが、精霊であるレオンに子どもは作れない。だからセヴンは呆れ顔で、レオンもとりあえずとホテルに連れかえって話を聞くと、元契約者の娘であることが分かる。
なんでレオンが父親だと言ったのかは不明だが、サナの帰って来ない母親に関わるべきではないと頭の隅で思いつつも、二人の家に行ってみるとそこは汚部屋だった。
ゴミの散らかった部屋にあるのは大金と薬。前回の殺し屋・ロザムも出てきて、母親がレオンが殺したギャングのボスの女で麻薬の運び屋をやっていたことが分かる。
だからレオンは助けに行くんだけど、セヴンもサナのことがあるから全面的に協力してくれるんだけど、再会した母親とレオンの関係は最悪だった。
だって、大好きだった精霊が突然消えてしまって彼女は神曲が弾けなくなっていたのだ。彼女がここまで落ちた原因はレオンだったのだ。
母親を殺さんと追っていたクギョウ・ディオネアルサはロザムを使って親子を殺しにかかるので、セヴンが防御しつつのカーチェイスはちょっと楽しかった。
だって、セヴンが優しい。初めはサナが苦手だったのになー、セヴン。
ロザムとの戦闘はレオンとサシに変わっていくが、ロザムは神曲支援つきに対し、レオンはここまでの疲労がピークに。
以前の契約者に支援を申し出ても彼女は首を縦に振らなかった。その理由は今回のお気に入りで。
なんとかロザムを退けますが、母親には受け入れられない。
それでもレオンはもうこれ以上親子が狙われないように、パパと慕ってくれるサナを振り切り、警官アレクシア――この人ってマナガの射撃試験でドヤ顔してた人かな? 彼女の制止も聞かずに走る。
獅子の姿でクギョウを殺した。
そこにいた全ての人間を引き裂いて。
最後はアレクシアがレオンの元に逮捕にやってくるわけだが、その時のレオンの髪は金から血の色に変わっていた。
うわー、レオンつらいな。
次でレオンがなぜ契約者を次々と変えていくのか分かるようなので上巻のような扱いなんでしょうが、こいつはつらいぜ。
でも、そんな内容でも大迫さんの文章だなーと思う。私的にはレオンの一人称より、ブラックの三人称の方が好きですが、僕が好きになった文章だった。
前にどこかで書いたと思うけど、私はブラックを手に取っていなかったら今の自分はいないと思ってる。俺、自分大好きだからねw 本当に感謝してるんだ。
レオンが読み終わったら、またブラックも読み直そうかな。
では、ここらで今回のお気に入りへ。
前述したようにレオンから神曲を求められた時に母親は首を縦に振らなかった。
もう弾けない?
いいや、それだけだったらまだいい。
弾けない理由はもっと絶望的だった。
「もし、届かなかったら?」
ああ。
なんてこった。
お前が怖がっていたのは、それなのか。
「あなたにまで届かなかったら? あなたにまで届かなくなってたら!?」
レオンが消え、彼女は神曲が弾けなくなった。
誰にも届かなくなった神曲。ただ弾けないだけでなく、最愛だったレオンにまで届かなくなってしまったら――それは恐怖以外のなにものでもない。
かつて当たり前だったものを今でも変わらないと思ってしまうのは傲慢だって分かっているけれども、その絶望を突きつけられる筋合いもない。希望は希望のままだっていいじゃないか。
だから、彼女の気持ちは痛かった。
そして、再び弾いた彼女の誰にも見向きもされない神曲が恐怖や絶望、そしてレオンへの想いでできていたことに。
神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 3
大迫 純一(著),忍 青龍 (イラスト)
ソフトバンククリエイティブ (2008/11/15)