2015年08月02日

神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 3



「誰も死なない。レオンが、そんなことさせない」


 僕の父親は特殊な人だったりする。
 何があっても滅多に怒らない人なのだが、唯一キレたのは「俺は朝飯が食いたいんだよ!」だったのだ。食への欲求が強すぎるんだな。
 私がそんな話をしたことを覚えていた友人が、とあるゲームが物理的にプレイできないことへのストレスから「ゲームがしたいんだよ!」と人間的におかしくなりかけている私に「お前も奇妙なことでしかキレない。ベクトルが遊びに向いてるだけでそっくりだよ」と言われて結構なショックを受けた。
 この親にしてこの子ありって本当なんだなー。


■あらすじ
 一仕事終えた撤収時にレオンは一人の少女・サナと出会った。
 サナはレオンをパパと呼び、彼女の母親はレオンの歴代契約者の一人だったのだが、母親捜索に乗り出すとギャングと麻薬の影が見えてきてしまう。


■感想
 もう買ったばかりで読めないと思っていたレオン3巻。
 未だに大迫さんの死は受け入れられていませんが、読まないなんて選択肢が一番失礼だと思い、えっちゃら読み始める。
 いやー、やっぱりブラックとは毛色が違う事件ばっかですなー。

 ギャングのボスの女に手を出した坊やを助けるという依頼のため、ついつい組織もろとも壊滅させてしまったレオンだったが、そこで小さな女の子と出会う。
 サノアトリカことサナはレオンをパパと呼ぶのだが、精霊であるレオンに子どもは作れない。だからセヴンは呆れ顔で、レオンもとりあえずとホテルに連れかえって話を聞くと、元契約者の娘であることが分かる。

 なんでレオンが父親だと言ったのかは不明だが、サナの帰って来ない母親に関わるべきではないと頭の隅で思いつつも、二人の家に行ってみるとそこは汚部屋だった。
 ゴミの散らかった部屋にあるのは大金と薬。前回の殺し屋・ロザムも出てきて、母親がレオンが殺したギャングのボスの女で麻薬の運び屋をやっていたことが分かる。

 だからレオンは助けに行くんだけど、セヴンもサナのことがあるから全面的に協力してくれるんだけど、再会した母親とレオンの関係は最悪だった。
 だって、大好きだった精霊が突然消えてしまって彼女は神曲が弾けなくなっていたのだ。彼女がここまで落ちた原因はレオンだったのだ。

 母親を殺さんと追っていたクギョウ・ディオネアルサはロザムを使って親子を殺しにかかるので、セヴンが防御しつつのカーチェイスはちょっと楽しかった。
 だって、セヴンが優しい。初めはサナが苦手だったのになー、セヴン。

 ロザムとの戦闘はレオンとサシに変わっていくが、ロザムは神曲支援つきに対し、レオンはここまでの疲労がピークに。
 以前の契約者に支援を申し出ても彼女は首を縦に振らなかった。その理由は今回のお気に入りで。

 なんとかロザムを退けますが、母親には受け入れられない。
 それでもレオンはもうこれ以上親子が狙われないように、パパと慕ってくれるサナを振り切り、警官アレクシア――この人ってマナガの射撃試験でドヤ顔してた人かな? 彼女の制止も聞かずに走る。

 獅子の姿でクギョウを殺した。
 そこにいた全ての人間を引き裂いて。

 最後はアレクシアがレオンの元に逮捕にやってくるわけだが、その時のレオンの髪は金から血の色に変わっていた。

 うわー、レオンつらいな。
 次でレオンがなぜ契約者を次々と変えていくのか分かるようなので上巻のような扱いなんでしょうが、こいつはつらいぜ。
 でも、そんな内容でも大迫さんの文章だなーと思う。私的にはレオンの一人称より、ブラックの三人称の方が好きですが、僕が好きになった文章だった。
 前にどこかで書いたと思うけど、私はブラックを手に取っていなかったら今の自分はいないと思ってる。俺、自分大好きだからねw 本当に感謝してるんだ。
 レオンが読み終わったら、またブラックも読み直そうかな。

 では、ここらで今回のお気に入りへ。
 前述したようにレオンから神曲を求められた時に母親は首を縦に振らなかった。
 もう弾けない?
 いいや、それだけだったらまだいい。
 弾けない理由はもっと絶望的だった。


「もし、届かなかったら?」
 ああ。
 なんてこった。
 お前が怖がっていたのは、それなのか。
「あなたにまで届かなかったら? あなたにまで届かなくなってたら!?」


 レオンが消え、彼女は神曲が弾けなくなった。
 誰にも届かなくなった神曲。ただ弾けないだけでなく、最愛だったレオンにまで届かなくなってしまったら――それは恐怖以外のなにものでもない。
 かつて当たり前だったものを今でも変わらないと思ってしまうのは傲慢だって分かっているけれども、その絶望を突きつけられる筋合いもない。希望は希望のままだっていいじゃないか。
 だから、彼女の気持ちは痛かった。
 そして、再び弾いた彼女の誰にも見向きもされない神曲が恐怖や絶望、そしてレオンへの想いでできていたことに。






神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 3
大迫 純一(著),忍 青龍 (イラスト)
ソフトバンククリエイティブ (2008/11/15)
posted by SuZuhara at 06:08| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月05日

冴えない彼女の育てかた 8



「今のわたしは、あの時よりも、あなたの物語の、ヒロインに近づいてるかな?」


 毎回ここに書くことを悩むのですが、最近どうも納得できないことがありまして。
 ゲームが発売されるのは毎回楽しみなのですが、売り方とか特典商法があざとすぎると辟易してしまうじゃないか。私はそういうので引いてしまうことが多いのだが、最近そういう情報に疲れつつある。一応チェックはしてるけど、今のところ予約しているゲームはうたわれるもの2だけだしなー。
 もういっそのこと全部やめてしまうかな。そっちの方が楽な気がする。


■あらすじ
 倫也たちが三年に進級し、新たなメンバーでスタートする「blessing software」。
 本来の目的であった最強のギャルゲーを作るためにプロット作りをする倫也だが、詩羽と英梨々がいないサークルで美知留のバンドのマネージャーも両立させることは無理だと気づく。
 絵師として出海を迎え、そして彼女の兄である伊織に企画書を見て受けたアドバイスを聞き、伊織をサークルへと勧誘するのだが、「このままじゃ売れない」の一言で断られてしまう。


■感想
 ちょいと感想書くまでに時間がかかってしまいましたが、冴カノ最新刊読了です。
 原点回帰? いやいや、怖いよ! 関係がドロドロしすぎだよ!

 始まりは新生メンバーたちとわいわいやるのですが、溢れ出る加藤の正妻っぷり。安芸家の台所とか、もう制覇しているんじゃなかろうか。
 学校では倫也と英梨々が同じクラスで隣の席で、余所余所しくも二人で話すことからクラスでは激しい動揺が見られますが、出海のサークルに同級生勧誘の際の先制パンチを受け、そして加藤とは気まずい擦れ違いで英梨々のHPがヤバい。

 てか、二人の喧嘩怖い。
 私はいまいち分かっていないんだけど、これって倫也の眼鏡が尾を引いてんのかな? 加藤もこだわってるっぽいんだが、つくづく自分は人の感情を理解できておらずシステムしか分かってないんだなと実感したよ。
 私は英梨々のようなテンプレツンデレの「勘違いしないでよね」と言われたら、それが本音であるという形式しか分かってないんだ。
 だから、今回の加藤の行動は本音がてんで分かっていない。
 そんなせいで今回の話は胃が痛かったぜー。

 新しいゲーム作りのため、加藤がスケジュール管理を徹底しようとするのは前回のことがあったせいですが、そこでもやはり英梨々とのことが尾を引いている。
 だが、倫也は楽しくやっていきたいというのがあり、加藤もなんとか肩の力を抜く。

 出海に今回のゲームの企画書を持って一緒に考えてほしいと伝えると、出て行けと言われてしまう倫也。
 ま、すぐにキャラデザをするからなのだが、伊織に前作のヒロインを再び使うことで共用するプレッシャーなどのことを指摘される。
 あー、なるほどなー。やはり絵師さんが変わると前の方が良かったと思うのは否めない。好き嫌い以前に愛着の問題で。

 だが、出海はそんなものには負けず、巡璃を乙女ゲーのヒロインのようだと捉えてすぐにデザインしていた。
 この乙女ゲーのヒロインというのは目から鱗でした。
 私はあんまりやらないけれど、乙女ゲーのヒロインって好きなんですよ。自分を投影ではなくその人として見ることが多いので、そっちの方が好きだな。

 シナリオ部分を倫也が担当するということで伊織からアドバイスを貰った倫也はプロットを書き上げて伊織にプロデューサーになってほしいと誘いに行くが断られる。
 その理由が告げられることはなく、勝手に伊織勧誘を決めたことに怒っていた加藤がまたも怒る。
 フェアじゃない。ダメな理由を言っていないというが、それは昔に出海から聞いていた話で売れないという理由で伊織は切るが、売れる売れないの感性は彼の方が上だったから書き直しすることに。

 伊織の一言でヘコむ加藤は可愛いですが、ここで二人によるプロット作成タイム。
 こういう創作の手順は知らんのですが、加藤が倫也にされたことをチクチクするのは胃が痛いw
 再び六天場モールへなデートはもう完全に加藤ルートでしたが、やはり二人にとって英梨々の存在は大きいんだな。加藤が英梨々との仲直りを引きずっていて、倫也が間に入ることになったのですが最後で仲直りは当分無理そうだなと。

 プロット作り中だって先輩の穴を埋めようと気を張ってたし、加藤への負担が半端ないな。
 伊織加入は無事に成功したので、どうにか力が抜けるといいんだが。

 最後は英梨々たちのゲームの制作発表で英梨々が壁画並のイラストを披露しサークルが震撼する。
 うーん、どうだろうな。もうイラストだけ力が入っているゲームとかいろいろ経験しているから、口ではなんとでも褒めますが自分の冷静な部分ではどうせ課金でしょとか思っちゃうんだよな。某大作RPGリメイクも私にはあんまり響いていない。
 だから、はー、って感じだったのですが、イラストの出海が震え、加藤が分かってくれない親友への苛つきを高めてしまった。

 うわぁ……天才は残酷だな。
 もう正直、わいわいとゲームを作っていく感じは戻らないんだなと。これからどうなっていくかは分かりませんが、誰も悲しまない結末であってほしいよ。

 では、今回のお気に入りへ。
 伊織に重いと言われて死んだ目になる加藤のシーンにしようかと思いましたが、今回は最後のゲーム制作発表時のメインヒロインについての倫也たちの会話を。


「メインヒロイン、金髪ですね……」
「でもロングだよ?」
「何があったんだあの二人……?」


 主人公は誠司=倫也似で、メインヒロインが先輩+英梨々とかw
 クリエイターさんって自分の好きな人と自分をキャラにインスパイアしちゃうんかな。それは大変冷めるので知りたくないですが、この先どうにも大団円には程遠いのが僕的には胃が痛いです。






冴えない彼女の育てかた 8
丸戸 史明 (著),深崎 暮人 (イラスト)
KADOKAWA/富士見書房 (2015/6/20)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 13:30| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月16日

冴えない彼女の育てかた Girls Side



「けれど、もし自分の思い通りに読者の感情をコントロールできるなら、それって作家としては最強でしょう?」


 映画『チャッピー』と『海街diary』、そしてB'zのライブに行ってきた。うん、つまり週末はハードスケジュールだったということだ。
 でも、今回でB'zのライブは最後でしょうな。嫌いになったわけではないんだが、もういいかなと思ってしまった。
 ……たぶんきっと、B'zファンならと言って過去のB'zライブ時に振ったという雨の匂いとか嗅がされたのが原因だと思うんだけど、あれは我ながらびっくりするぐらい引いてしまったなー。
 結局、勝てないからでしょうな。ファンだというその人ほど好きになれないならばと私は結構簡単に諦めてしまう。やっぱり場違いとしか思えないからなー。


 はい、今回はちょいと発売日前に感想を書きたいので巻きまして、冴えカノGSです。
 先輩と英梨々メインの二本立てとなっております。


■冴えない竜虎の相見えかた
 自分のファンである倫也との会話と執筆の時間を楽しみにしていた詩羽は、突然後輩の美少女・英梨々に難癖をつけられる。
 そのことから美術室に乗り込んでいった詩羽はそこで英梨々が描いた絵を見て、柏木エリの存在を知り、彼女の絵にのめり込んでいく。
 一方で英梨々の方も、仲たがいしたままの倫也と再び話すきっかけとして『恋するメトロノーム』にかけていたが、倫也が楽しげに詩羽と話すシーンを目撃し、詩羽が作者だということも知らずに喧嘩を売ってしまう。
 そうして、お互いはお互いがファンであることも伝えられないままサークルメンバーとして一つの作品を作ることになるのだった。


 倫也視点ではない、倫也の知らないところで出会っていた二人の話。
 いやー、面白かったw 先輩の気持ちも英梨々の気持ちも分かる。好きな絵師さんなんか発見したら根こそぎ見るし、その人が自分の作品でコピー本とか出してたらオークションで落とすんだろうな。例え十八禁でもな!
 英梨々のコピー本について先輩が「自分が考えた設定から外れない口調や語り」と言っているところがあったけれども、そこをがっちりつかんでいるとこの人は作品が好きなんだなぁと感じるよな。違和感を覚えてしまうともう進めないけれど、この辺を語ると自分の首を締めるのでやめような。

 一方で英梨々の方の行動も分かる。読んで面白かったら本を買い漁るし、サイン会の整理券終了なんて聞いたら血涙である。いや、私は行動力ないから行かないけれども。
 本を読んでさ、面白かったと話し合える友達がいれば最高だよな。それが想い人なら尚更で、だからこそ倫也との仲直りのきっかけには最適だったが、倫也の詩羽先輩がいた。

 だから、英梨々は喧嘩ごしでふっかけた。
 そして先輩の方もなんとか英梨々と話そうとして、そして英梨々の十八禁同人誌展開の妄想を聞いてしまうのだったw 初めての相手は決めてるとか、英梨々は本気で倫也のこと大好きなんだなー。

 倫也のことはお互い一切引く気がない癖に、お互いファンであることを伝えられずにサークル活動をこなしていた二人に、ゲーム制作が一段落した段階で倫也からサイン色紙を書いてほしいと言われる。
 そして、サークルのためなんて言いながら差し出されたサイン色紙に、加藤も欲しいと声をあげる。負担がかかるならイラストはなくても……と言った加藤に二人はぎこちなく否定して、そしてサイン色紙を追加で一枚買いに行く加藤に、英梨々が、先輩が追加で二枚を注文する。

 やっとのことで二人はお互いのサインをゲットすることが出来ましたという話でしたが、とりあえずその色紙は欲しい。いや、手に入らなくていいせめて見たいぜ。


■そして竜虎は神に挑まん
 冬コミの場で紅坂朱音に出会った詩羽は、後日自分と英梨々が紅坂朱音が作るゲームのシナリオとイラストとしてオファーがあったことを知る。
 話を受けるつもりはなかった詩羽だったが、英梨々とともに紅坂朱音と向き合った場で自身のスランプを完膚なきまでに笑われて、スランプから脱出し、そしてクリエイターとして倫也の元から離れて立ち向かうことを決意する。
 詩羽も柏木エリと再び作品を作るために倫也と別れ、英梨々のための盾となることを決意して、二人で打倒紅坂朱音を誓うのだった。


 これは、泣いた。
 てか、二人の出会いからこの話に続くのはズルいよ!

 もう二人のお互いファンである信頼感がすごい。紅坂朱音は柏木エリのあくまでおまけとして霞詩子を選んだんだけれども、そんな仕打ちを受けても、英梨々と再び仕事ができる方が先輩には良かった。
 そして、再び描けるようになって、加藤が乗り込んで来てしまった英梨々を慰め支えたのも先輩だった。
 加藤はクリエイターではない。けれども一番の倫也の理解者だ。だからこそ、親友も失ってしまうのは耐えられないと泣く英梨々を抱きしめるシーンはぐっときましたな。
 その前の、英梨々の言葉に涙を流す先輩からの流れは本当にずるいよ。

 しっかし、紅坂朱音のことが今回分りましたが、正直どうなんだろうな。約束されたクソアニメとして自分の作品が使われたら怒りしか湧かないけれども、逆に言えばあなたの理想のために好きな作家さん方が使い捨てられたらいやだな。
 伊織が紅坂朱音の元を離脱したので、なんだか倫也と組むような気配がありますが、それもそれで面白そうだな。

 ということで、なんとか追いつきました冴えカノ。
 新刊が出たら速攻で読もうと思います! だって、今回加藤分が少なすぎたんだもんよ。

 では、今回のお気に入りへ。
 やっぱりここだろうと英梨々が霞詩子を軽んじた紅坂朱音の間違っているところを指摘した時の言葉を。


「いつまでもナメられてんじゃないわよ霞詩子……っ」
「澤村さん……?」
「紅坂朱音は一つだけ見逃した……あんたの才能を、あんたの努力を、あんたの諦めの悪さをっ!」
「ぁ……」
「霞詩子の凄さを理解していない紅坂朱音なんて、全然大したことないっ!」


 こんなこと、大好きな絵師に言われたら泣いちゃうに決まってる。
 初めは見た目だけ好きだと思っていたんですが、先輩が最近好きすぎてたまらない。倫也が関わっていないことでの考え方とかすごい好きなんですよねー。
 もちろん加藤は別格ですがね。






冴えない彼女の育てかた Girls Side
丸戸 史明(著),深崎 暮人 (イラスト)
KADOKAWA/富士見書房 (2015/2/20)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 22:16| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月08日

冴えない彼女の育てかた7



「加藤、お前さ、本当に……
『blessing software』のこと、好きでいてくれたんだなぁ……っ!」



 GEの5周年記念設定資料集のサンプルを見ましたが、アラガミのページめっちゃ見たいな! 人物ページのサンプルが毎度安定のシエルさんでしたが、もうジュリウスのせいでブラッドがギャグにしか見えないのが困りものである。
 資料集、見たい気持ちはあるんだけど、GE関連本はいろいろと重複しちゃうから買わないだろうなー。


■あらすじ
 冬コミでの同人ゲーム発売を目指していた倫也たちだが、倫也の独断によって冬コミでの販売を断念した。
 だが、冬の一件で倫也と英梨々との長年の断絶は解消されてお互いに自然に話すことができるようになったのだが、「許せない」と言っていた加藤とだけは今までのように話すことができずにいた。同時に絵師としての英梨々も書けなくなってしまっていた。
 どちらにも強く出られない倫也だったが、本当に作りたかったゲームの企画書を作り、まず初めに加藤を誘うことで自分がこのメンバーでやりたかったゲーム作りを再確認するのだが、下準備が整って改めてメンバーの勧誘に卒業してしまう霞ヶ丘先輩の向かうと先輩ともう一人のもとには既に他の話が来てしまっていた。


■感想
 やー、ついに冴カノ本編の最新刊です。
 表紙は美人すぎる加藤ですが、嫌な予感がひしひし。初めの口絵の加藤とか、本当に美人すぎてやばい。

 物語は冬コミ後の、何もかも上手くいってるかのような日常から。
 英梨々と一緒に登校して、途中で先輩が合流したりしてわいわいがやがやと楽しい日常ですが、どこかが違う。
 うん、加藤がおかしい。フラットなのは変わらないんだけど、始業ギリギリにやってきて終業直後に帰ってしまう彼女に、倫也はどう考えても避けられていた。

 けれどもどうにもできない中、サークルにもある問題が浮上していた。
 委託販売したソフトが一瞬で捌け、追加発注が来るという嬉しい事態。初期の絵のパッケージは嫌だという英梨々がリニューアルパッケージを描き下ろすことになっていたんだけれども、そのパッケージ絵がなかなか上がって来ないこと。

 前回の極限状態で書けるようになった絵を、英梨々は倫也の隣という満たされた状況じゃ描けなくなっていたのだ。
 けれども、倫也は英梨々に無理強いすることはできなくて、ゆっくりでいい、なんなら描かなくてもいいとしか言えなかった。

 そうしている間に先輩は新シリーズを発売させていて、倫也はまたこのサークルでゲームを作りたいと伝えるが、柏木エリと組みたいことを伝え、そして倫也が英梨々にだけ過保護でクリエーターとして殺してしまっていることを指摘される。

 雪の降るバレンタインは最悪な日になったが、後日以前のファミレスで加藤の姿を見つけていた。
 サークルのことで話し合いたいというメールを送り、倫也からのメールをフラットに三十分も見続けてくれる姿に倫也は一から
企画書を書き始める。

 自分たちのゲームをプレイして泣いて、そしてこのゲームの隅々に加藤がいることを理解する。
 ネットの評価は絵とシナリオばかりだったから気づかなかったけれども、システムには不満の声が上がってなんかなくて、加藤は最高の裏方だったことを改めて思い知る。

 ああ、やばい。
 加藤強すぎるだろうよ。ゲームとかやってるとさ、結果的にシナリオが酷いとか言うことはできるけれど、一番最初に目につくのはシステムなんだよね。
 やりやすいか、分かりやすいか。この琴線に触れられなければ最悪どんなに他が良くても投げる理由になるからなー。物語の花形がシナリオと絵だとしても、システム次第で死んでしまうことだってあり得る。でも、システムが目立ちすぎてもいけないんだ。最高の裏方でなくてはいけない。
 ま、これは一方的な消費者の戯言ですが、要するに加藤の仕事っぷりは最高だなってわけですよ!

 倫也は徹夜で書き上げた企画書を持って加藤の逃げ道を塞いで二人っきりでのミーティングに入るわけだが、いいなこの初めの頃のような一方的な倫也のトークにドン引き加藤がw
「……正気?」「もちろん本気だとも!」の件とかww

 英梨々や先輩ばかりに任せるのではなく、倫也がシナリオの八割を書いて新規イラストレーターをスカウトして今度こそ僕の考えた最強のギャルゲーを作る。
 しかし、これは倫也だけの企画じゃなくて加藤もサークル副代表として参加してもらい、今まで以上にサポートしてサークルを背負ってほしいという話をするんですが、加藤はいまいち反応が悪い。

 それは次も加藤をヒロインにすることを英梨々には言ったのかということを心配していて、え? これ、え!?
 ど直球で倫也がもしかして嫉妬してるのかともっと面白い感じで聞いてくれますが、加藤は否定します。
 しかし、その三点リーダの長さは図星なんじゃないかなって思うわけだよ俺は! そうなったら俺得ですから!!

 けれども、お遊びはここまで。
 倫也はずっと謝れずにいた冬コミでの出来事を謝罪してそこで加藤が泣いてしまうんだ。本当にサークルのことを大切に思っていた加藤だからこそ、普通の人たちと一緒にいるより楽しかったと言ってくれて、勢いで倫也のうちに泊まっちゃってめんどくさい彼女みたいになってしまうんだよ!
 ああ、なんて俺得なんだろうかこの巻は。

 しかし、幸福にも長くは浸っていられない。
 加藤と一緒に直した企画書を手に先輩の元に向かうが、既に紅坂赤音のゲーム企画に先輩も英梨々も引き抜かれていたから。
 クリエーターとしてゲーム企画に乗った二人に倫也は抜け殻になりますが、あの一年前の坂でショートボブの加藤が待っていてくれた。
 まるであの日の再現のように、二人でサークルの再出発を決めた。

 先輩と英梨々の旅立ちの日に新幹線出発前にやってきた倫也は二人を気持ちよく見送る。
 そして、この前の段階で加藤とぎくしゃくしてしまった英梨々は倫也と加藤との絆として加藤が倫也に上げた眼鏡を欲しがり、そして先輩は普通に倫也にちっすしていたwww
 ここのイラスト三連続には笑わせていただきましたw

 最後は新年度の倫也と加藤。
 美知留は編入しようとして失敗したのでいませんが、加藤は眼鏡のことを納得してはいないようで、倫也は思い切ってとコンタクトデビューしています。
 そして、新入生に出海を迎えてサークルは新たな活動を再開するわけですが、波乱のクラス替え。
 加藤と倫也のクラスが別になり、倫也は英梨々と同じクラスになった……っ。

 いやー、次が楽しみですね。
 現在進行形でGSを読んでいる途中だったりしますが、新刊が発売したらすぐに読みます。
 やっと追いついた甲斐があったな!

 では、今回のお気に入りへ。
 今回も先輩のとあるシーンにしようと思ったんですが、お前どんだけ先輩好きやねんと言われたら困るので、今回はこの巻で一番重要だと思われるシーンを。
 加藤を説得した最後、今まで積りに積もった鬱憤を晴らすかのように喋る加藤は最後に見逃せないことを指摘する。それは、次のゲームの仮タイトルだった。


「あと、タイトル案の『冴えない彼女(ヒロイン)』って何かな? 今までさんざんキャラ死んでるとか言われてたけど、まさかタイトルにまで使われるとは思わなかったよ」
「いいい嫌ならやめますから!」


 ここでタイトルが使われるとはなー。
 使い方には脱帽ですが、ここまでくるといよいよ後半戦って感じがしますね。
 これからどうなるか、本当に楽しみだー!






冴えない彼女の育てかた7
丸戸 史明(著),深崎 暮人 (イラスト)
KADOKAWA/富士見書房 (2014/12/20)
ラベル:冴えカノ
posted by SuZuhara at 22:11| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月31日

いたいのいたいの、とんでゆけ



「あなたにも手伝ってもらいますよ、人殺しさん」


 ここ最近はある人の代わりとして土日が忙しかったりするのだが、やはり引きこもりはどう頑張っても引きこもりであって日中動き回るとか性に合わないな。
 この一年はこのままでしょうから去年までできていたことなどてんでできなくなってしまっていますが、今年の私は部屋からして去年とは違いすぎるからなー。
 ちなみに、まだタンスは壊れたままである。もういっそ解体して作り直せばよかろうとか考えていたりするw


■あらすじ
 湯上瑞穂は自ら経ってしまった文通相手・日隅霧子に会いたいと願って出した手紙の待ち合わせ場所に彼女は来なかった。
 親友の自殺などいろいろあって自暴自棄になっていた瑞穂は飲酒運転の末に一人の少女を轢いてしまう。
 しかし、“先送り”する力を持った少女は自分の死を先送りすることによって十日間の猶予を得たことから自分の人生を台無しにした連中へ復讐することにして、瑞穂は贖罪にそれを手伝うことにするが復讐をする少女に恋をしている自分に気づく。


■感想
 本屋に行く機会がないため、行った時には何かしら買うのですが、帯買いした作品です。ネット小説で活躍されていた作者さんのようですが、私は読んでいません。
 うん、このブログでたくさん文章書いといてなんだけど、画面上で文章読むのって苦手だったりするんだ。どれだけの量かいまいち測れない。だからめっちゃ書いてしまうんだろうけれど。

 初めに言ってしまうと、正直に言って私はこの本を受け入れられていない。
 初めは特殊な設定だなと思い読み進めていたが、徐々に言葉は悪いけれど嫌悪感が高まってしまった。ていうかだな、去年の自分を思い出して悔しさで泣いてしまった。俺になんてことを思い出させやがるって怒りが買ってしまったんだ。
 変なことは書かないけれども、感想が端的になってしまったら申し訳ない。

 十二歳、小学校卒業目前に転校することになった瑞穂は天候の日に今まで特に仲良くもなかった日隅霧子と文通をすることになった。
 文通相手として選ばれただけだろうと特に思い入れもなく始まった文通だったが、二人の価値観が似ていることもあり瑞穂にとって唯一無二のものとなっていく。 
 しかし、あまりに冴えない瑞穂の日常をそのまま伝えることはできずに嘘を書き続けて送っていたことから「会いたい」という霧子の要望に応えられずに文通をやめてしまう。

 大学生になって親友の自殺をきっかけに霧子に再び会うことにした瑞穂だが、突然の呼び出しにやってくるはずもなくヤケ酒を飲んで運転して少女を轢いてしまう。
 だが、少女は先送りの力で死んだことを先送りにしていた。

 先送り。少女は嫌なことを先送りにすることのできる力を持つ。
 それはあくまで先送りであって、なかったことにするわけではない。だから十日後には死が訪れる。
 この特殊な設定について私はいまいち把握していない。初めは分かっていたんだが、読んでいるうちに分からなくなって思考蜂起した。なんでも少女の精神状態とか追い詰められ度が関わってくるんだが、先送りによって死が確定している少女がこの先何を――殺人を犯したとしても、先送りが終わればなかったことになるからオッケー。おそらくこの考えが私には合わないんだろうな。

 贖罪のために殺人までの脚になる瑞穂はその過程で少女のことを知ることになる。義父とその娘である義姉が最低で学校ではいじめられていて身体には無数の傷、そして子どもの頃のいじめにとって最悪の恥を塗りつけられたこと。
 瑞穂の方も昔は優秀なピッチャーだったけど期待から逃げたり、写真好きな同級生と二人っきりの撮影会でその後彼氏がいることを知ったりと過去の傷をどんどん明かしてくれるが、それが私は嫌悪感しか抱けなかったんだ。残念ながら。

 僕にはそれは不幸自慢としか受け取れなかった。
 君はどん底なのかもしれない。どん底なんて人それぞれだから分かれないよ。けどな、少なくとも私が思うにそのどん底は口にできる程度なんだな、と。
 だめだった。どうしてもだめだった。少女は先送りという力でやってこられたのかもしれない。瑞穂にいたっては親友と隣人の存在で恵まれているとすら思う。

 なんでこんなにも私は怒っているのだろうとずっと考えていたのが辛かったなー。おかげで去年の今頃を思い出しちまったじゃねぇか。
 答えはまだ出て来ないけれども、どうやっても好きにはなれそうにない。

 初めに義父を殺したらしい少女は義姉や同級生たちを殺していきますが、これはグロ注意。私は少しでもグロシーンがあればこう書きますが、がっつりあるから本当に注意。
 しっかし、自分を殺しに来た女を逆に犯そうとする男には恐れ入ったな。エロスとタナトスは表裏一体ですか、そうですか。

 血まみれ姿をハロウィンの仮装と偽って街を闊歩したり、怪我の影響から瑞穂が寝込んでしまったあたりから瑞穂と少女の距離が近づきますが、瑞穂が好きなのは復讐をする彼女なので復讐をやめようとする彼女に発破をかけて予定より多くの復讐をする。

 そして、少女が霧子であることを知る。
 霧子の方も瑞穂が書き溜めていた霧子への手紙で気づいていたわけだが、霧子も瑞穂への手紙に幸せな嘘を書いて送っていた。
 だが、養父が手紙に気づいたことから文通を続けるのが難しくなり、「会いたい」と告げれば返事が来なくなった。

 気が狂いそうだったというのは印象的だった。
 しかし、自転車で轢かれたことから瑞穂に再会した霧子はその後、瑞穂は霧子のために養父を殺してしまう。
 現実から逃げるように遊園地に行った二人はジェットコースターに乗り、事故に合った。

 瑞穂くんを殺人犯にした事、瑞穂くんだったものになってしまったことを先送りした霧子は年が取れなくなり、高校生のままで、今に至るというわけだ。

 これは優しくない世界の不器用な恋の話だったのでしょう。
 私は苦手だったが、とても丁寧な物語だったと思う。縁があれば他の本も読んでみたいと思います。

 では、今回のお気に入りへ。
 ちょいと選ぶのが難しい。どこを選んでもなにか違う気がするので、今回は先送りする前の瑞穂が霧子に約束した言葉を。


「本当に何もかもが嫌になったら、そのときはいってくれ。僕が、君を殺してあげよう」


 この話を読んでもう私には悲恋的な話は読めないかもしれないと思った。
 もう一つ、このブログには感想は書かないつもりでいますが、追い詰められた人間の物語を読んでいますが、そっちは平気なのにどうしたんだろうか。






いたいのいたいの、とんでゆけ
三秋縋
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014/11/21)
posted by SuZuhara at 22:05| ライトノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする