真夜中のタクシー 向かうのは<愛とは何か>の答え
ガンダムの映画、ジークアクス先行に行こう行こうと思っていたら放送日が決まって出鼻をくじかれる。い、いや、お腹いたくならなかったら行くつもりだったんだけど、毎回痛くなってな……あんま縁がないんだろうな。
まぁ、今年はだいぶ映画に行っているし、来月はミッキー17は観たい。でも、公開日決まって以来絶対に行くと思っていたウィキッド熱はなくなっているのでムビチケとか買えんのよ俺。
■あらすじ
ジョン・F・ケネディ空港から一人の女性がタクシーに乗り込む。夜の街を疲れた様子の女性に壮年のタクシー運転手はジョークを交えながら会話を交わしていく。
だが、当たり障りのない会話を交わしていたはずが、女性が抱える悩みを運転手は言い当ててきて、女性にとっては運転手が話す男の本音はつらく心に痛いものだった。
途中、事故に巻き込まれたせいでタクシーの中にいる時間が長くなる中、二人はもう二度と会うことのない関係だからとお互いの本音を、女性は誰にも明かせなかった秘密を打ち明けていく。
■感想

フライヤーと来場者特典ポストカード。
僕は会話劇というのがものすごく好きで、会話のテンポがよい作品とかに出会っちゃうと監督と脚本家の部分を絶対にチェックする。あと役者さんにも。僕という人間は普段ここまではしない。興味がない。
今放映しているドラマならば『ホットスポット』とか。もともと市川実日子さんが好きで、俺の好きな『マザーウォーター』にも出てるしな。そんで見始めたんだけど、これはキャスティングが上手すぎるよな。
あとオススメドラマは『俺の話は長い』。生田斗真さんと小池栄子さんの殴り合いのような会話がテンポ最高である。僕はこのドラマのせいで清原果耶さんをはるみんと認識している。
さてさて、話が逸れまくったが会話劇は――さっきから会話撃とか会話撃破とか変換してくれる俺のパソコンの素晴らしさよw
言いたいことは会話劇は最高だ、ということ。
この映画に興味を持ったのもタクシー内というワンシチュエーションで行なわれるほぼ二人劇というのがどうしても観たかった。実のところこの映画を観るために2時間かけて上映館にいくつもりだったんだけど、近所の映画館でやるって聞いた時はガッツポーズものでしたね!
だが、思った以上に男と女で気軽に観に行くことはオススメしない。性的な会話が苦手な方はちょっと待てなので注意。
はっきり言って、この話はあまりに現実的で、きっと世界にはありふれている。
空港からタクシーに乗り込んだ女性・ダコダ・ジョンソンに運転手・ショーン・ペン。ずっと携帯とにらめっこすることのない女性に好感を示した運転手がちょこちょこ話しかけてくるんだけど、その会話が女性にとって不快ではなかったのか続けていく。
むしろ、たぶん不快だったのは恋人からのメッセージ。
もうついた?
会いたい。
黄味が欲しい。
→君が
みたいな頭足りない思春期真っ只中としか思えないメッセージはヒートアップして、臨戦態勢のブツ写真とか送ってくる。もちろんモザイクされているが、たった数分の会話でも女性の知的さ、聡明さを感じるのだからこういうのは好きじゃないはず。実際、疲れたから今日はやめよう。渋滞、遅れている。とか、今日は会いたくないメッセージを送っているほど。
そんな中、運転手に自分の仕草から性格を言い当てられる。それで自分のことをちょこちょこ話してしまうんだけど、この後で「君の相手は既婚者」とこれも言い当てられてしまうんだ。
これ、めちゃくちゃ驚いた。
しかも、あのメッセージ男、二人の子持ちだとよ。
え、こんな頭足りないメッセージを送っている男が?
会話中も写真送って、下着見せてとか送ってくるような男がだと結婚して家庭があるだとぅ? ――世も末だな。
「愛しているなんて言うなよ」
その言葉を受けた女性が痛かった。運転手は事実を続ける。そんなものは君に求めていない。
運転手は数々の浮気を繰り返し二度も結婚を経験したと豪語するだけあって正しい。家庭とか愛とかは妻とするもので、浮気相手に求めるものって性欲を満たすことだ。若い女を囲うのであれば自己顕示欲としてかな?
つまり、人並みの幸せってヤツはあなたから欲しいものじゃない。だから愛しているなんて言葉は迷惑なんだ。
ここから男の話をする女性は僕には痛々しかった。
妻や子どもの写真とか見せてもらっている、男の大事なものを知らされていることから「よほど信頼されているんだな。普通(浮気相手には)見せない」と運転手が言うのがフォローに聞こえてしまうほど。
そんでさ、うるさく性的なメッセージ送ってきていた男が子どもが起きたと引き下がろうとすると、女性もエロいこと言い出して男を惹きつけるんだ。写真送って、で撮ってあった写真を送るほど。
……あ、ああ、なんでそんなことするんだ。
会話だけでも彼女は知的で魅力的だ。父親に愛されていなかった過去から年上男をダディと呼んで関係を結ぶとか、そんな安く見積もってほしくない。
正直、これだけならまだよかった。
運転手と奥さんの話とか、本当に奥さんが好きだったんだなって分かって好きなんだけど、彼女が悲惨すぎてな。
ドライブ中、二人は張り合うように話していたんだが、最後に女性がポツリと話す。
今回の離れていた姉に会いに旅行に行っていたんだが、その時に彼女は妊娠していた。旅行中、ずっと止まらない血が流れていた。生理だと嘘をついた。病院には行かなかった。彼女には子どもが出来ていて、見殺しにしていたんだ。
ここの彼女の心境を、分かるとか言えない。
でも、どうしようもない感がすごすぎる。子どもを産むという選択ができるはずがないからだ。
ここでの一夜限りの二人の会話ではなんの解決もしない。
けどさ、きっと聴いてもらえるっていうのはかなりありがたいものなんだよ。
本当はパンフを買うつもりだったんだけど、かなり内容が怖いから買わなかったんだ。でもやっぱ買いに行こうかな……。
僕は会話劇というとどうしてもテンポの良さ、耳心地の良さを期待してしまうのですが、今作はそういうものではなく100分の中で中弛みもせずに濃厚に背景が分かる会話だった。
日本だったから絶対にできない会話もニューヨークならありえると思えるし、だからこそ曝け出せたものがある。この数時間のドライブで彼女の人生が少しでも良い方向に向かうことを願う。
でも、その男は絶対にやめたほうがいいよ!!
では、この辺で今回のお気に入りへ。
感想では女性の方をメインにして書きましたが、運転手の妻に関する話が終始茶化しながらも愛に溢れてて良かった。頭が弱い、男にとって都合がいいエロさなんて言いつつも彼女との暮らしを本当に愛していたんだと感じたのかここ。
「何かが起きる時、いつも彼女は笑うんだ」
いたずらを仕掛けたりすると怒るとかでなく笑う。彼女が笑うから男は何度もいたずらしたし、逆に仕掛けられると同じように笑ってしまった。
何度も浮気をして結婚も二度していたけど、たぶん彼の幸せはここにあったんだろうな。
ドライブ・イン・マンハッタン
公開日 2025年2月14日
配給 東京テアトル