2022年04月09日

フーガはユーガ



「お前も忘れられないんだろ。あの時のこと」


 なんかものすごーく久々に本を読んだ気がする。いや、もちろん久々なんてことはなく主には漫画だが本は読んでて今年に入ってからは電子書籍で30巻一気買いした小説を読了していたりするんだけど、やっぱり本として読むのは久々ですげー楽しいのだった。
 かつてないほどにお久しぶりになりましたが生きてます。今はちょっと集中力が続かなくて一気にがっとやることができないのでいろんなものを平行してやっているのですが……こういうところ器用貧乏なんだよなぁ。


■あらすじ
 双子の兄弟・優我と風我には誕生日にだけ二時間毎に入れ替わるという不思議な現象が起こる。身体ごと、場所を入れ替わってしまうこの現象を不思議に思いながらも、それは彼ら二人の家庭環境を変えるほどの力はなく
、誰かを救えるような劇的な力ではない。
 それでも二人はこの現象を利用して、一人の女の子ために、とある母子のために、そしてずっと胸に引っかかっていたかつて少し擦れ違っただけの家出少女を殺した犯人に立ち向かう。

 
■感想
 電子書籍では結構読んでいるが、きちんと本を買って読むなら何がいいかと考えて伊坂さんの本がいいなって思った。
 今作『フーガとユーガ』はもっと前から気になってはいたんだけど、その時に買っても積む気がして手を出してなかった。だから今回はタイミングが良かったんだろうな。まぁ、何度も言ってるが私の兄貴が双子なのでいまいち双子ものって手を出しにくいんだよ。

 双子が誕生日の一日だけ、二時間後とにお互いの身体が入れ替わる。これは所謂「私たち入れ替わってるぅ」ではなく、お互いの身体の位置が入れ替わる、瞬間移動である。
 正直、こんな能力で何ができるよって思ったね。そうやさぐれたくなるほど優我と風我の家庭環境はひどい。ちょいと1年ほど前にネグレクトについて囓ったのだが、どんなに詭弁を弄そうとも暴力で従えるという行為は酷い以外のなにものでもない。……もっと酷い状況ってのもたくさんあるってのがキツいが、それこそ風我が言うように、簡単に解決しないことは俺たちのほうが分かっている、なんだよなぁ。

 話はファミレスで高杉という男と優我が話しているところから始まる。高杉は優我と風我が入れ替わっている映像を手に入れたことで優我に接触してきたわけだが、そこで優我は自分たちの過去を話すことになる。

 過去の話は大きく分けて3つ。
・優我と風我の家庭環境について。
・小玉について。
・ハルコとハルタについて。

 最初のは簡単、ほぼ育児放棄された優我と風我の家庭環境と入れ替わりの瞬間移動を自覚した時のこと、それが二時間置きに起こること、1年に1回誕生日――彼らの親は出生届を適当に出したのでおそらく誕生日だろうと思われる日に起こることを知っていく。
 他にも細かいこと、移動する時は少しの間周りの時間が止まるとか、持っているものは一緒に移動するが、車などに乗っていても一緒に移動するわけではないとか分かっていくわけだが、それが分かったところで暴力を振るう父親に立ち向かえるわけじゃなかった。
 母は姿を消したが、二人は父親の元にいるしかなくなった。岩窟おばさんっていう理解者、グレーだが頼りになる大人がいるが、その状況から救い出されるわけじゃない。

 双子はこの入れ替わり現象を利用して、学校で虐められていたワタボコリと呼ばれる同級生を助ける。義憤からではなく怒りから。いじめという自分よりも弱いものに行われる理不尽な暴力に対する怒り……なんかこういうとチープだが、いじめられている姿から父親と自分たちの関係を重ねてしまったことからの行為だったけど、

 この日の出来事は双子にとって大きな意味を持つことになる。

 この後にワタボコリと一緒に出会った小学生の家出少女のこと。風我が面白半分でお守りなんて言って渡した血で汚れたシロクマの人形を抱えた少女が車に轢かれて死ぬことになる。
 それもわざと。
 しかも何度も。
 逃げられないように縛りつけた少女を何度も轢いたのだという話を聞くことになる。

 このことは優我と風我にとって根深く残る事になった。

 次は小玉という少女。
 優我が高校生、風我が岩窟おばさんのリサイクルショップで働いていた時の誕生日、入れ替わりの時に出会った少女。
 風我はちゃっかり彼女と付き合うことになるのだが、小玉には秘密があった。自分たちと同様に家に問題があるのだろうとは双子も感じていたが、小玉の親は既に折らず、親代わりである叔父にショーを行なわされていた。苦しむ女の子の姿を鑑賞するショーで小玉はどでかい水槽に落とされることを繰り返しやっていた。

 ……うわぁ、この手の輩がいることは知っている。海外映画によくある秘密クラブである。双子は小玉を助けるためにこのショーに乗り込むのだが、彼らの力は入れ替わるだけでなにかを変えられるわけじゃない。
 入れ替わりで武器を持ち込んだ風我が水槽を壊しめちゃくちゃに暴れるってだけだったけど、幸い上手くいった。
 ただここでは岩窟おばさんにお金を借りるシーン、岩窟おばさんの信頼を裏切るようなことになったってもやらなきゃいけないってのがつらかったな。

 ハルコとハルタは優我が大学生になってバイトのコンビニで知り合った母と子。ハルタが捨てた雑魚カードに意味を持たせたいって優我はカードゲームを始めてこの親子と知り合っていくが、初めハルコを姉だと思っていた優我に下心がないはずない。風我と小玉と一緒にわっくわくで話を聞きたいね。
 優我は大学生になって一人暮らしをして父親の元から離れていたが、バイト先に来られてハルコたちのことを知られてしまう。過去の家出少女を思わせるような事件が再発し、ハルタが姿を消す。父親の家にハルタを探していたはずのハルコがいて――とまぁ、胸クソだからか書かないがこの父親は本当にどうしようもない。
 運動神経は風我で頭の良さは優我なんて役割になっていて手が早いのは風我の方だったのに優我は父親を殴っていた。

 親子とはこの一件で疎遠。
 入れ替わりで父親をバイクで追った風我は死んだと優我は話す。高杉にはフェイク画像を利用して接触したのだと。
 過去の轢き逃げ犯が名前を変え、そしてまた犯行を繰り返していることを知ったからだった。

 ワタボコリはそんな日に常磐くんと再会した。お前が結婚して子どもが生まれるとか嘘だろおおおと思ったが、ここは重要、なるほどなーに繋がる。
 ワタボコリにとって過去のクラスメイトとの邂逅はなんだか気になるくらいだったが、そのクラスメイトが頭を殴られて連れ攫われたら追いかけるしかなかった。
 そして、セキュリティ関係の仕事をしていたこともあって連れ攫われた豪邸に侵入していくのだが、そこは元小玉の家で、汚れたシロクマの人形。頭から血を流す優我はどうしてワタボコリがここにいるか分からなかった。分かるはずがねぇのだよ、優我には。

 猟銃装備の高杉にワタボコリが撃たれて優我も既に瀕死。
 でも、優我は何度も言っていた。僕の話には嘘がある。

 そして、跳んできた風我が見たのは事切れた優我の姿だった。
 死んだら瞬間移動は行なわれず、最後の瞬間移動。優我は風我がいつもやっていたように親指を立てていた。行け行け、と。

 つまり、優我は風我が死んだという嘘をついた。
 生きていた風我は瞬間移動で跳んだが、絶命のタイミング的に優我は飛べなかった。
 ここから風我はいち早く状況を理解し、理解できない高杉をボコるわけですが、このシーンは説明するよりも優我視線で進むことが面白い。死んだ優我が状況を俯瞰していて、その後のこと――風我と小玉に生まれた子どもたちの時も優我は一緒にいる。
 優我――この時は風我だったのだが、ワタボコリを巻き込もうとして巻き込めなかったのは小玉も妊娠していたから。だから優我はワタボコリの存在を知らなかった。新幹線が止まって動けず、二人は側にいなかったんだ。

 最後、風我は大きくなったハルタに会う。
 ここでハルコのことを詳しく聞かない風我に優我が不満げなのはすげー面白いのだった。

 なんとも言えない読了感のある本でしたが、たぶん『バイバイ、ブラックバード』と同じくらい好きですね。文庫版は小玉のショーがマイルドになっているだと……? 単行本も買ってくるか、なんて思うくらいには好きですな。
 あとがきにもあるけど問答無用のハッピーエンドではないけれど、優我と風我のただ兄弟・双子だからでは説明できないような絆が良かったんだろうな。特異な力を持ったってなんの役にも立たないかもしれない。それでも、なんとかしようと足掻いた姿がこの二人を好きにさせるんだろうな。

 ではここらで今回のお気に入り。
 久々の読書だったから付箋を忘れて記録できてないんだが、強いて上げると優我が死んだ後の風我とワタボコリのやりとり……なんだけど、長いので抜き出しはなし。

 死んで俯瞰している優我が風我に、自分は手遅れだからワタボコリの傷を見てやってくれ。お礼を言ってくれって思うだけで風我はそれを当然のように行動するするのが、ああいいなぁって思ったのでした。
 






フーガはユーガ
伊坂 幸太郎
実業之日本社 (2021/10/7) (2021/9/16)
posted by SuZuhara at 21:16| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月17日

MELTY BLOOD: TYPE LUMINA



「―――では再戦だ、殺人鬼」


 ちょいとメンタルに来ることがありましたが、まあまあ元気です。ここに書いて残るのもあれなので書かないが、おかげで俺の身辺整理が爆速で進んだよ。
 しまい込むよりのであれば誰かに譲ってくれという約束は果たせていますが、物がなくなった部屋を見ると自殺の準備と思われてたのは笑った。
 なんでかなぁ、学生時代からよくそのうち自殺すると思われるのですが、そんなことを考えたことは一度もない。僕はゲームと本と映画があればいつだってハッピーなのだ。せいぜい、ちょうどいいところにいたという理由で心中相手に選ばれるくらいだよ。
 こういうことがあってもはた迷惑な話だとか、よくもまぁそこまで他人に興味が持てるものだなぁと流しちゃうから人でなしと言われるんだろうがね。


■感想
 やっとメルブラのボスラッシュモードまでクリアできました。
 いやー、もう無理。リーチ短いキャラって苦手なんだよ。コンテニューできない最終戦で負けるともう一回なんだけど、俺、初戦の相手が苦手すぎて進めるのにめっちゃ時間かかるんですけどおおおおっ!って泣きそうだった。真剣にアケコンの購入を考えたほどだよ。
 まぁ、アケコン買ったところで僕の腕前ではどうせ大した違いはないでしょうが。

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 さて、感想ですが、操作性とかは格ゲーはほとんどやらないのでよく分からないというのが本音ですが、コンボはほぼ押すだけということもあり、やりやすいと思われる。まぁ、おかげで僕みたいな単細胞は戦闘がワンパターンになりやすいというのもある。けど、ボスラッシュではラピッドビートと投げ嵌めでなんとかなったんだけど。
 超必殺技とも言えるラストアークを結局シエル先輩でしか出せなかった。4ゲージの上限はなかなかムズい。むしろ、先輩のはどうしても見たかったからやりきった。その後、ミッションモードで簡単に見れることを知った俺の悲哀を分かってくれ……。

 本音ではシエル先輩使いたいけど、僕がやると黒鍵による遠距離攻撃中心になっちゃって格好いい先輩が見れないので主な使用キャラは軋間とノエル先生でした。後者は圧倒的リーチとボイスの不安定さが好き。勝ってると強気なのに劣勢になると弱音ばっかなのすっごくいいよなw楽しすぎるww
 前者はなんか使いやすい。ジャス学でも一番使いやすかったのボーマンだし、パワーファイターが性に合うんでしょうな、ロアとかも楽しいので、こんなに女性キャラばっかなのに男ばっかすかってんのなんで?と思ったくらいだw

 反対に苦手だったのは翡翠&琥珀と都古。あと秋葉も使いこなせない。ヒスコハはどっち使ってんのか分からなくなるという、対戦相手がヒスコハでも苦手だから救えないつー、自分。

 しかし、私に格ゲーは極められないのでメインはシナリオの方。格ゲーあるあるでシナリオは短いし、時系列?が違うのか、月姫R開始の前のはずだけど、志貴がもう遠野邸にいたり、ロアが覚醒してたりとこの辺はIFだと割り切って見てた。

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 シナリオで面白かったのはヴローヴ関連かな。
 秋葉シナリオで妻が10人いることは分かったが、勝利ボイスで明かされる妻の一人が琥珀さんとかシエル先輩に似ているらしいこと……ちょ、それ詳しく!

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 軋間のこの発言もあってヴローヴくん掘り下げがすっげー楽しみになりましたね。

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 あとこの辺りの似たもの師弟も好き。
 使用キャラとしては苦手ですが、ヒスコハのシナリオは面白かった。翡翠&琥珀クリアからの翡翠、琥珀の単独シナリオ解放はこういうことかとw

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 けど、一番好きだったのはロアのシナリオだな。
 ステージ3での志貴を倒した後シエル先輩戦で、志貴を殺したことから甘さの消えた先輩とやりとりは正直ゾクゾクしたw
 こういうの大好きなんだが、先輩撃破後にはアルクェイドにこれでしょう? こんなん僕、ロアのこと、超好きですわー。

 シナリオ以外にもバトル中のキャラの掛け合いは面白いのだが、如何せん、少ない。ちょっと頑張ればすぐに見れてしまうくらい少ない。
 やっぱり主人公だけあって志貴に対するものが多いのはGoodだが、都古とかセイバーとか他キャラとの関係が薄いと一気にバリエーション少なくなるからな……。
 まぁ、シエル先輩はいっぱいあってとっても良かったがな。志貴に対して「あなたの交友関係について〜」とか言い出したときは、本当に嫉妬深いなぁってニヤニヤしてしまった。おかげで対吸血鬼戦や対ノエル先生への辛辣さが際立っていたので僕は大変満足です。

 ボスラッシュモードの方はシナリオの節々が面白いのだが、まぁ、なんというか、月姫Rしかやっていない僕にはそのキャラ馴染みないのと使いにくいのもあってつらかったな……。
 キャラクターセレクト画面とかで先輩が「今回は武装はなしで」みたいなことも言ってるし、すっごい次を匂わせてきている。けど、初回限定盤についていた小冊子を見るにエンドシナリオは似たり寄ったりみたいだからそこまで魅力は感じられないかな。がっつりシナリオつけてほしいなぁ。

 あとはちまちまと先輩を格好よく使えるように練習しておくくらいで僕のメルブラはお終いかな。
 あ、2つ予約した今作ですが、友人が予約漏らして変えなかったとのことで引き取ってくれました。先輩のねんぷち片手にやらせてって僕ん家に来たんですが、そこに2つあったんでびっくりしてたのには笑ったw そうね、俺、複数買いとかしないもんね。

 初回限定盤の方が欲しいとのことだったので、僕の方は通常版ソフトと先輩3Dクリスタル、あっちは初回版とエビテン特典の志貴とアルクェイドのアクスタ持って帰った。遊びに来た言ったのに滞在五分もなかったw その後、しばらく連絡取れなくなったww
 ですが、よほど嬉しかったのか後日同人版月姫と歌月十夜をくれるという、俺の方が得した結果になりましたのでOKです。世の中、無駄なことなんてないのであるな。switch版じゃなかったことに文句は言われたがな!
 ちょっと今はメンタル的に一気にプレイできないのですが、落ち着いたらがしがしやろうと思う。

 では、この辺で今回のお気に入り。
 勝利ボイスランダムだから全部出すの大変なんだけど、これを見た瞬間にめっちゃ笑った。

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 これは嫌われる、めっちゃ嫌われるw
 本人に悪気はないんだろうが、どう見てもノエル先生にも裁縫スキルないだろw しかし、毒突きながらも頑張って直してたらどうしよう。それ、超見たいw
 今作でノエル先生のシエルガチ勢っぷりはめっちゃ実感しますが、先輩の方からも大概だったりする。遠慮がないっていうか、信頼?ちょっと履き違えてるみたいな。対志貴よりもパターン多いし、普段は優しい先輩がノエル先生には辛辣なのがいいよな。
 先輩のノエル先生に対する「ちゃんと日課はこなしていますか?」ってボイスは脳内再生して、僕も、ちゃんと日課……サボらないよう頑張ってます。

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 あとノエル先生のこれも好き。
 ノエル先生は時には卑怯だったりと真っ当に人間だから、こういうこと言ってくれるときすっごい好きなんだよなー。裏側でも活躍してくれるって信じてる。うん、たぶん、さっちんシナリオではきっと――だろうけど。








MELTY BLOOD: TYPE LUMINA
ディライトワークス (2021/9/30)
ラベル:TYPE-MOON
posted by SuZuhara at 20:33| Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月09日

妄想銀行



「こうしたほうが派手でいいじゃないか。ものごと、ショッキングでなければならぬ。なあ、そうじゃないかい」


 現在、ちょいと身辺整理中です。元々物が多いってのもあるけど、いろいろとけじめとして終わらせないといかんというのもあるけど、昨今の時代的にサブスクもあるから物自体持ってなくていいんだなってやっと気づいたのである。いや、重要な物は今でも現物主義だけど、固執する必要はないなって。
 僕、決断までは時間かかるんですが、一度決めたらさっさとやってしまうにかぎるのでこのままやってみようと思われる。


■感想
 久しぶりに星新一のショートショート。毎回思うんだけど、これを読むと前にテレビでやっていたドラマとかアニメとかまた観たくなるんだよなぁ。

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 夏に購入したプレミアムカバー2021ver。
 黄色でおしゃれな感じだが、よく見るとカバー裏が透けてしまっているのが残念かな。
 ま、どうせ僕はブックカバーつけちゃうんで関係なくなるんですがね。

 ショートショートなので今回もお気に入りだけピックアップする。

■住宅問題
 部屋代を払ったことがないエヌ氏のアパートには広告が溢れていた。部屋に響く声は常に商品を紹介し、視界の邪魔にならない部分にも常に広告が入る。無料だから仕方ないと諦めていたが、格安で高原地方に家を買えることになり、広告のない静寂を求めて見学もせずに購入を決めてしまう。

 これは時代を先取りしすぎている。携帯広告なんかがまさにそうじゃないか、広告消したければ課金せよ、ってね。
 エヌ氏も静寂を求めて高価な買い物をするんだが、そこにあったのは自然すら広告に変えた景色で……。
 うわー、なんつーデストピア。途方に暮れる以外の行動ができないよ。

 ちょっと早いけど、今回のお気に入りはこの話から。
 エヌ氏の家に響く声や視界に入る広告について書かれた説明のところ。


 巧妙きわまる画面の構成と色彩、心の奥底に忍び込むような音楽、反感を刺激しない洗練された上品なしゃべり方、生かさず殺さずの極致といえた。押しつけの度がすぎて住民の頭をおかしくしてしまっては、スポンサーたちにとっても、もともこもなくなるではないか。


 この、生かさず殺さずの極致ってとこ。
 本当に笑えないよな。現状、僕らは搾取されることに慣れすぎているから、気づかないのであれば気にならないのであれば、別に構わないって思ってしまうもんよ。


■陰謀団ミダス
 軽率で優秀でもない青年は就職の面接中、嫌味な担当に当たった。腹を立てて出てきてしまったが。ひょんなことから手に入れた図面の家に嫌がらせの意味も含めて泥棒に入るが先客がいて失敗してしまう。
 脅される形で住所等を教えてしまったのだが、その時の反応が陰謀団ミダスに認められて合格となる。殺人はしないという陰謀団ミダスからやってきた指令は宝石店に強盗に入ることだった。

 これは面白いな。
 要するに、依頼の強盗は決められたもの。この騒動により、保険への関心、警備員の警報器の強化、人質になった女は脚光を浴びてタレントになどなど。陰謀団ミダスの目的は強盗の結果ではなく、強盗騒動によって引き起こる副産物の方ってわけだ。
 こんな一団で尖兵できるなんて楽しいのに、青年は欲をかいて陰謀団ミダスのことを告白しようとする。世間の注目を自分に集めるためっていう、僕には一切ない自己顕示欲のためだ。

 けど、そんなのさ、組織が対応していないはずないだろ?
 青年の告白は精神異常者の妄言とされる。現代病患者として、研究と治療のための資金集めとして利用されるのだった。


■さまよう犬
 毎日なにかを探す犬の夢を見ていた女だが、ある男に出会い結婚すると夢を見なくなった。
 そして、夫となった男が夢の中でなにかを探す犬になっていたことを知る。

 たった2ページの作品ですが、テレビ版も含めて印象深かった。
 星新一のショートショートはいいぜぇ。


■宇宙の英雄
『私たちは死に瀕しています』
 そんなメッセージを収めた小型ロケットが地球にもたらされ、宇宙パトロール隊員の男は周囲の制止を押し切って駆けつける。
 様々なトラブルに見舞われ、つらく死ぬ思いをしても「いかなることがあっても行かねばならぬ」と使命感を胸に行動し、ついには目的地へと到着する。

 そして、SOSのメッセージの意味が「退屈で死にそうだからここまで大冒険して辿り着いてその話を聞かせて」というのはなんとも報われないオチだった。こういう悪意のない悪意、好きなんだよなー。
 あと、エヴォリミットの雫を思い出したな。どうしても月へ向かうという説明できない使命感。まぁ、全年齢化してないんでまだやってないんですけどねエヴォリミット。簡単に説明してもらっただけなんですけどね。二挺鉈とか、すっげー読みたいんですがね!

 好きなのはこんなところでしょうか。
 やっぱり読むと面白いですね、星新一作品は。
 








妄想銀行
星新一
新潮社; 改版 (1978/4/3)
ラベル:星新一
posted by SuZuhara at 23:22| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月25日

CharadeManiacs for Nintendo Switch 限定版



 あなたは誰を信じますか? その人が“裏切り者”だとしても、信じることができますか?


 やばいな、ちょいと執着しすぎたと理解しているのだが、どうにも自分を止められない。昔から所有欲が激しいくせに、飽きるのも早かったりするから厄介だって認識しているんだが、こればっかりはどうにもなぁ。
 というわけで、再販していた月姫のエビテン特典付きをポチってしまった。だって、通常版イラストタペストリー作っていうんだもん。あれ、シエル先輩いるじゃん。メルブラの方もシエル先輩3Dクリスタルつくっていうからポチってるし……散財が酷いな。ちょっと整理しないと。


■あらすじ
 異世界でドラマを演じると何でも願いを叶えてくれるらしい。そんな都市伝説の話をしていた瀬名ヒヨリは幼馴染みと共に都市伝説の異世界アルカディアへと連れ去られてしまう。
 ヒヨリたちと同様にアルカディアに来た10人は異世界配信・ドラマを演じることを求められ、それに応じたポイントを集めることで願いを叶えることができるが、元の世界に帰るためにはポイントを貯めるか、10人の中に潜んだ裏切り者であるプロデューサーを探し出すことが条件だった。
 月が二つある異世界で提供される不自由のない暮らしと奇妙なドラマ、演技を拒否すれば死ぬという恐怖と自分たちの中にいる裏切り者の存在に疑心暗鬼になりながらヒヨリたちキャストはドラマを演じていく。
 
 
■感想
 あらすじはVita版の時に書いたモノです。今回はswitch移植版ですが、これはベタ移植なのかな? またゲーム自体はクリアしきれていませんが、特に追加はあるようには感じられなかった。

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 序盤も序盤、超序盤。
 でも、一度クリアするとこの言葉の重さが超好き。

 まあ、シャレマニ自体完成度の高いゲームなのでswitchでできるというのは需要があるのでしょうが、せっかくだから追加が欲しい。追加があると信じてちまちまやってますが、ちょっと長いゲームなのと本編感想は既にVita版で書いているので今回は割愛。

 じゃあ、なに書くの?
 今回はステラワース特典のエンド後小説についての感想である。

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 Vita版の時もステラワース特典小説はなかなか曲者で後々になって買い直したのですが、全ルートのエンド後小説とか、ズルくないか。買うしかねぇ。
 でも、小説の方しか注目してなかったから、ブロマイドとかついてきて驚いたのは内緒w

 1人6ページくらいのショートストーリーではあるのですが、ただただイチャイチャして幸せなヤツからストーリーに関わってくるものまであって楽しかったですね。

 特に好きなのはケイちゃんと凝部かな?
 メイちゃんはダメだ、姉貴のキャラが強すぎるw でも、あんな大変な思いをした後でヒヨリと幸せそうでなによりでした。

 ケイちゃんは相変わらず口が悪くてヒヨリに思っていることを上手く伝えられないから女嫌いを克服しようとする話なのですが、その過程でヒヨリを避けてしまうのに他の女の子と話せるようになっちゃうからその擦れ違いがよかった。

 次は凝部。ケイちゃんの話でも存在感放っていましたが、自ルートでは結構シリアス的でした。ヒヨリのことは好きだけど、なくしたものを取り戻すためにもう一度月を目指す。
 くそ、凝部は前回参加者であり、覚えていない約束から戻った男なんですよ。そして、再び月に戻る。今度こそ約束を果たすために、今度はもうヒヨリは隣にいないままで。
 ヒヨリもそれに気づきながらも止めずに凝部のバックアップデータをもらって見送るんだから、本当にいい女だな。イチャイチャする話もいいものですが、こういうのやられると僕は弱いです。

 今回のお気に入りはこの話の最後のところ。
 再び月に向かう凝部のこと。


 名前も知らないキミにもう一度会うために。
 俺は、月へ行く。

 
 メイちゃーん。もう陀宰くんはヒヨリと一緒になれなくても十分幸せなんじゃなかろうかw
 そういや、限定版特典冊子の方に各キャラの漢字名表記がありましたが、メイちゃんは陀宰明なんだな。字画が面白いなと思った。ネタバレ相関図の同じ学校の仲間からハブられているメイちゃんをどうにかしてあげてw

 あと、限定版特典冊子にも小説あるのですが、SSと大団円あとの話。このエンドは誰とも結ばれていないから相変わらずヒヨリ関連でトモセが周りを威嚇し、メイちゃんはうだうだ悩んでアタックできていないって漢字でしたね。アステルメインですが、僕はもうちょっとこの世界の黒いところ突っ込んで欲しかった。

 概ね満足の行く特典でしたので、少しでもこの世界が好きならBUYです。
 いやはや、久々の乙女ゲーでしたが、世界観が合うとすっごく楽しいんだよなー。





CharadeManiacs for Nintendo Switch 限定版
アイディアファクトリー(2021/9/16)
posted by SuZuhara at 15:44| Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月21日

ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団



「それじゃ、コーレイトウさん!
 早速、特異性奇品……っていうのを探しましょう! おー!」



 どうしよう、FGOイベント完走してしまった。今までこんなことなかったのに。
 そんなにがっつり育てられていないので結晶も素材も余りまくっているのですが、さすがに水着鯖が4体も引けちゃうと種火ストックがなくなりましたね。まぁ、それもすぐに回収できちゃうんだけど。
 金リンゴ900個あるからなぁ、これがなくなるまで俺は走れるんだろうか。


■あらすじ
 探索助手募集の張り紙を見て魔女マダム・マルタの助手をすることになったユリィカは召喚した彷徨える魂=プレイヤー・降霊灯の憑代となる。ガレリア迷宮に隠された奇品を探すため、降霊灯に人形兵を使って地下迷宮を探索させていくことになる。
 
 
■感想
 今回はあらすじ投げた。いや、これ無理だわ。
 確かキャッチコピーは『不思議を探す――愛と勇気の冒険譚!』どの口が言うと言いたくなるからなw
 正直なところ、このゲームについてしっかり内容を説明できる気がしないのだが、えっちゃら頑張ろうと思う。

 最後のPSVita新作として大分期待が高かったと思うのですが、それ以上に前作のルフランが良作すぎた。私の方でも前作の感想を書いているので分かるでしょうが、非常に楽しませてもらいましたので、今作のガレリアに対する期待は否が応でも高かったですね。

 しかし、やってみたらもう難しすぎた。

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 ユリィカがガレリア宮にやってくるところから始まるわけですが、まずこの世界観に慣れる間もなくストーリーはどんどん進んでいきます。この辺はいい、ルフランだってそうだったし、チュートリアルでいちいち説明されるよりはやっていけば慣れる派なので全く構わない。
 しかし、ストーリー関して本当に説明がされない。

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 コーレイトウとしての私はユリィカの味方でいたかったが、ユリィカはユリィカで家族のことで訳あり。ナチルはなんかマダムに似てる……むぅ。
 まぁ、ルフランの時からも信じられる人間なんていないようなものなので奇品集めを進めていきますが、私がどうにもこのゲームが嫌な理由に気づく。
 ルフランの時、レキテーちゃんの時とは違って、コーレイトウとしてストーリーに関われいないのが嫌なんだ。コーレイトウの選択肢とか、ほとんどあってないようなものだし、コーレイトウがそこにいるだけの部外者のようにしか感じられなかったんだよな……。

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 頑張って進めていくと、ユリィカがぷらーんします。
 初め、ここの抜け出し方分からなくて3回くらいぷらーんさせてしまったのは本当に悪かったと思っている。

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 ここで主人公交代でナチル編へ。
 ナチルの世界である巫女庁関連が自分的には好きでしたけど、ナチルの母親との関係はつらいものがあるな。醜女とか本当にやめろ。
 このナチルもやっぱり友達いないからコーレイトウコーレイトウ言ってくれるので、じゃあお前の味方になるわとか思っていると、一部で噂になったお股ユリィカと出会うことになる。自分がフリーズすることになるとは思わなかった。

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 この辺りの、所謂性的な描写はめちゃくちゃ多いので苦手な人には進められない。このライターさんは好きなんだろうな、と遠い目しかできない。
 ライターさんと合わないなぁってここで思っていたけど、ゴズとネリの戦闘描写はめちゃくちゃ好きでした。

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 こんな合法ロリのようなネリさんには子どもが二人いる。だから、二つのボールを投げ込むんですよ。うん、発狂ですね。
 この後の巫女庁の強い方たちがどんどん減っていくのはすっごい絶望でした。
 ここまででなんとなーく物語の繋がりが見えてくる。が、次はツェツィーリアの過去に話が移るからもうはっきり言って興味がなくなってしまったんだよな。

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 匂わせ匂わせ連続のストーリーなのでよく分からない→考察にはならない。もうとりあえず進めよ→やっぱり分からないにしかならなかった。いや、分かるんだけど、ストーリーに入り込めないから興味がないとしか言えないんだよなぁ。ランダム生成ダンジョンも面倒なだけだし、結局パターン覚えちゃうし。しかし、カテドラルだけは殺意しか沸かない。プレイ時間が長くなったのはこれのせいだ。

 頑張って頑張って辿り着いたトゥルーENDでユリィカとナチルがイチャイチャするのが見れるよ。このライターさんは前作から百合が好きなんだなぁとしか思えなかった。
 私はもともと育成に重きは置いていないんだけど、人形兵の転職を繰り返していくと見た目も変わっちゃうから愛着がよく分かんなくなっちゃって、コーレイトウにも人形兵にも愛着が持てないままのストーリークリアでした。最後の方は苦痛すぎてスクショも撮ってないしね、俺。
 ガレリアは楽しかったかと言われれば、めちゃくちゃ面倒くさかったとしか言えない。日本一ソフトウェアの作品はこの手の終盤難易度上がることが多い気がしますが、ちょっと今回の件はしばらく買わなくてもいいかなと思ってしまうほどでした。

 さて、今回のお気に入りと行きたいところですが、ないんだなーこれが。
 でも、ルフランの頃から好きなのはキャラクターが怒りに任せて戦えと言ってくるシーンですね。

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 ナチルもユリィカも好きなんですが、何度もプレイしたいと思わないからやっぱりルフランの方が好きだなぁー。






ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団
日本一ソフトウェア(2020/11/26)
posted by SuZuhara at 23:01| Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする